東京喰種 そこそこ強い(自称)捜査官   作:ディルク

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第3話

「さてさてさっそくジェイソンを発見したけどどうしますかね」

 

ジェイソン達に見つからないようにかなり距離をとりながら建物の屋上から監視を続けていた。攻撃を仕掛けたい気持ちもあったが周りに一般人も多く、また中津二等から発見しても攻撃するなと言われていたため監視に専念していた。

 

ジェイソンとオカマは腕を組んで楽しそうに街を歩いている。それに置いていかれないように建物の屋上から別の建物の屋上へと跳び移る。

 

さっきまであった眠気も吹き飛び、とても生き生きしている。その理由としてジェイソンが鱗赫のSレートだったからだ。白石はクインケを集めることを趣味としている。そのコレクションの中には数多くのクインケがあるが、未だにSレート以上の鱗赫のクインケは持っていなかったのだ。

 

ジェイソンを倒して所有権を確保できれば念願の全種類Sレート達成となる。絶対に逃してなるものかと血走った目でジェイソンを追う。

 

「早く家に帰れ。こっちは早く支部に戻って討伐の準備をしたいんだよ」

 

そんな白石の願いが通じたのかジェイソン達が街の中心部から離れ始めた。さすがに建物の上から監視するのは限界なので地上で尾行することにした。

 

しばらくついていくとそこそこ大きい廃れた屋敷が見えてきた。ジェイソン達はやはり仲良さそうにその屋敷に入っていった。

 

「よしよし、気づいた様子もないし大丈夫そうだな」

 

双眼鏡で中を覗きこんで2人が寝たのを確認すると、屋敷を写真におさめて、現在位置をGPSで確認して支部へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけでジェイソンの居場所が分かりました」

 

白石のジェイソン発見の知らせをきいて直ぐに捜査会議が開かれた。まさかたったの1日で発見できるとは思っていなかったので皆が驚いていた。

 

「まさか1日で発見されるとは、流石は有馬特等の後継者といわれる御方です」

 

中津が驚きながらも白石を褒め称える。この捜査は長くかかると予想していたためこんなに早く発見できるとは思っていなかったのだ。

 

「黒磐特等、早く討伐に行きましょう」

 

白石の急かすような言葉に対して黒磐が首を横に振る。それを見て、てっきり直ぐに許可をくれると思っていた白石は目を丸める。

 

「白石一等、ジェイソンの追跡ご苦労だった。君は昨日から寝てないようだし体を休めたまえ」

 

「自分なら大丈夫です。ですので討伐に行かせてください」

 

黒磐の言葉に納得できない白石は自分は大丈夫だから早く討伐に行こうと黒磐に言う。しかし、それに対してまたしても黒磐は首を横に振る。

 

「まだ何の作戦もたてていない。行き当たりばったりでうまくいくほどSレートは簡単ではない」

 

「では早く作戦をたてましょう」

 

「いいや、例え今作戦をたてても少なくとも今日は討伐には行かん。そもそも君の体が万全でないときに行けば君だけでなく他の者まで危険にさらしてしまう」

 

黒磐の話を聞いて今日はもう無理かと顔を俯かせる。そんな白石の肩を黒磐が優しく叩く。

 

「君は両親を喰種に殺されたと聞いている。復讐心が君を駆り立てているのだとしたらもう少し冷静になるべきだ。君の両親も君が復讐のために早死にするのは望むまい」

 

黒磐のそんな言葉にこの場にいた捜査官は黒磐に対して尊敬の眼差しを送る。たった一人、張本人である白石を除いた。

 

(やばい。これはただ早くクインケが欲しいだけなんて言える空気じゃない)

 

「とにかく白石一等は今日は休め、五里二等と柿沢二等、田中二等はジェイソンの拠点周辺を調査、中津二等は私とともにここで待機だ」

 

いつもと違いやけに話す黒磐の指示を聞いて皆が行動を開始する。結局白石は今日1日は大人しく休むことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで俺は今日休みになったんだよ」

 

「へー、黒磐特等いい人ですね」

 

「それは班長が悪いんじゃないですかね」

 

「そうですよ、いくら鱗赫Sレートのクインケが欲しいからって無茶は禁物ですよ」

 

軽く仮眠をとった白石は暇だったので本局にいる部下達の元へ訪れていた。食堂で昼食をとりそこで今日の愚痴をこぼしたのだが白石の話を聞いた3人、上原二等、丸岡二等、赤坂二等は黒磐に対して理解を示した。

 

「へいへい、ところでお前達誰の下につけられたの?」

 

白石が今の上司を尋ねると3人が一緒に顔をしかめた。そんな3人の反応を見て、白石は首を傾ける。こいつらがこんなに面倒くさがる人間がいただろうかと。

 

「「「有馬特等です」」」

 

「へー、じゃあお前達は俺の後輩か」

 

「あ、やっぱり班長有馬特等の下にいたことあったんですね」

 

「ほんの少しの間だけな」

 

あの地獄の日々を思い出して白石の目から光が消えていく。それを見た3人が慌てて白石のそばに近づく。

 

「班長、帰ってきてください!!」

 

「死ぬには早いですよ!!」

 

「過去を思い出しただけで何処かに逝かないでください!!」

 

「お、おう、帰ってきたから、あと君達近いよ」

 

3人で白石の体を揺さぶっていると目には活力が戻った。帰ってきた白石は3人にもみくちゃにされている現状に驚いていた。

 

「そんなにきつかったのですか班長?」

 

「ああ、休みなしで喰種狩り、喰種狩り、少しの休憩を入れて喰種狩り、喰種狩り、それの連続だ」

 

「うわー、そんなことしてたら精神が死にますよ」

 

「実際に死んだんだよ。まあ、あれのおかげでたくさんクインケが手に入ったんだけどな」

 

今となってあまり良くない思い出となった過去をしみじみと思い返す。

 

「クインケの所持制限はどうなったのですか?」

 

「爺が特例として許可してくれた」

 

有馬の下についていたのが二等だった頃なのでそうでもしなければクインケは1つだけ、それもレートが低いものになっていただろう。

 

「とりあえず有馬特等の下は色々大変だろうけどまあ頑張れ」

 

「俺の下につくのは大変なのか」

 

「ええ、有馬特等は自分が規格外なのを自覚していなくて周りに自分と同じレベルを求めて……あれ?」

 

「元気そうだね、白石」

 

途中から聞こえてきたすごく聞き覚えのある声を聞き、白石の首が錆びたギアのようにぎこちなく後ろへと振り向く。するとそこには見慣れた顔があった。

 

あまり変化の見られない表情、色素の抜けきった白髪、底の知れない眼差し、間違いなく自分の記憶の中にあるCCGの死神、有馬貴将特等捜査官。

 

その有馬の後ろには苦笑いをした有馬班のホープ、副班長宇井郡准特等捜査官がいたがそんなことは白石にとってどうでもよかった。

 

「あ、ああ、有馬特等、お久しぶりえす」

 

「そんなに動揺して、どうかしたのか?」

 

さっきまでの白石の言葉をまるで気にしていない様子で話しかけてくる有馬に逆に恐怖を感じていた。

 

(お、終わったー!!)

 

「い、いえいえ、ところで有馬特等、自分の部下がお世話になっているみたいですけど何かご不満などはありませんか?」

 

「不満?3人とも優秀だから不満なんてないよ。むしろなんで二等なのか疑問なぐらいだよ。もし良かったら俺が推薦状を書こうか?」

 

有馬の誘いに対して部下3人が慌てて反対する。

 

「あのー、有馬特等そんなことしないでいいですよ」

 

「そうです、もし階級上がったら班長の下にいられなくなっちゃうので」

 

「自分達は班長の下で仕事をしたいんです」

 

「そうか、慕われているな白石」

 

「あはは、そうみたいですね」

 

冷や汗をかきながら返事をかえす。内心ではあの失礼な物言いを指摘されるまえに早く話終われと必死に願っていた。

 

「有馬さん、そろそろ会議の時間です」

 

白石の必死な願いを読み取った宇井が有馬に会議のことを知らせる。この声を聞いて白石の顔が笑顔に変わる。そんな態度に宇井が苦笑いを浮かべる。

 

「もうそんな時間か。白石久しぶりに会えて良かったよ。また会おう」

 

「はい」

 

白石が返事をかえすと宇井と一緒に会議室へと向かった。その姿を見届けると白石は椅子に崩れ落ちた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「疲れた~。あの人苦手なんだよな」

 

赤坂の声に疲れきったように返事をする。完全に非は白石にあったのだが本人はそう思っていないようだった。

 

「まあ、有馬特等はCCGで一番優秀な人だ。お前達も色々と学んでこいよ」

 

「あの有馬特等から学べることなんてあるんですかね?」

 

「もはやレベルが違いすぎますし」

 

「俺達に再現できるようなことがありますか?」

 

「…………」

 

部下達の疑問に白石は答えることが出来なかった。


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