東京喰種 そこそこ強い(自称)捜査官   作:ディルク

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第10話

「やっと白石上等のもとで戦うことができますね!」

 

「この瞬間をお待ちしていました!」

 

「やっと24から解放された!」

 

上から順に赤坂二等、丸岡二等、上原二等だ。白石が降格処分を下されたため有馬班に配属されていたがS0班設立にともない再び白石の下に配属されていた。

 

「お前達が来たのは嬉しいけどまだ全然人が足りてないんだよね。優秀な人材はすでに持っていかれてるし」

 

「そうですよね。だれかそこそこに優秀でかつまだ持っていかれていない人がいないですかね」

 

白石と赤坂が2人で条件に合う人を探し始めていた。しかし、そんな都合のよい人など簡単に見つかるわけがない。

 

「ハイル、お前誰か知らない?」

 

「うーん、いないですね」

 

「だよねえ」

 

ハイルにも尋ねるがやはりいい返答はない。そもそもずっと有馬班にいたハイルが他の捜査官のことなど知っているはずがないのだが。

 

「となると本当に誰もいなくないか」

 

「もう優秀で地味な人とかいないですかね」

 

「優秀で地味な人?そんな都合のいい人がいるわけがないだろ」

 

「ですよね。ハハハ」

 

白石と丸岡がそんな都合のいい人はいないと互いに笑い合う。

 

「まあまだ時間はあるんだ。ゆっくりと探していこう」

 

「そうですね」

 

とりあえず発見次第勧誘していこうということに決まり、全員がCCG本局、支局を回ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に誰もいないな」

 

「いませんねー」

 

白石とハイルは本局でめぼしそうな人を人事部に聞きに行っていたがやはり見つからなかった。

 

「腹も減ったし昼食食べに行かない?」

 

「賛成です」

 

時間もすでに12時をまわっており白石達も空腹を感じていた。ハイルの賛同も得られたので食堂へと向かう。この時間帯は皆が食堂へと集まるので食堂内はかなり混雑していた。

 

「混んでるな、誰か知り合いが近くにいればいいんだが……あっ」

 

「見つかりましたか?」

 

「……見つけた。見つけたぞハイル」

 

「じゃあ早くそこに行きましょう」

 

早く昼食を食べたいハイルが白石を急かして動かそうとするが白石はちっとも動かない。

 

「もう、どうしちゃったんですか?」

 

「……で優秀な人」

 

「え?」

 

「地味で優秀な人が見つかったんだよ!」

 

興奮したように話す白石にハイルは戸惑いをおぼえる。つい先程そんな都合のいい人はいないと話していたのにと。

 

「それで誰なんですかそれ?」

 

「あれ」

 

白石の指を指した方を見てみる。そこには糸目の軽そうな雰囲気の男と村人その5のようなとにかく普通といった男が昼食を食べていた。

 

「あの糸目の人と一緒にいる人ですか?」

 

「ああ、間違いない。どうして今まで忘れてたのか」

 

「すごい人なんですか?」

 

「平子 丈上等捜査官。有馬さんのパートナーだった人だ」

 

白石の説明を聞いてハイルは首をかしげる。有馬のパートナーにしては地味すぎると。しかし、白石にとっては地味だろうがどうでもいい。ようやく探していた条件に合う人を見つけたため急ぎ足で平子のもとへと向かう。

 

「タケさん、このカレー美味しいスッね!」

 

「そうだな」

 

どうやら2人ともカレーを食べているらしい。伊東が平子へと話しかけて平子は特に何も感じていないような雰囲気で答えている。

 

「タケさんッ、S0入ってください!」

 

「何のことだ?」

 

伊東と平子の会話を遮るようにして白石が平子へと話しかける。当然突然話しかけられた平子は何のことか分からずに白石へと問いかける。

 

「実はですね……」

 

「……」

 

白石の説明を平子が無表情で聞く。話している白石も平子がどう思っているのか全然感じとることができなかった。

 

「で、どうですか?」

 

「いいよ」

 

「おー、これからよろしくお願いします。タケさん」

 

「あのータケさん、これは一体?」

 

勝手に白石と平子の間で話が進んでいったため話についてこれていなかった伊東が平子へと尋ねる。

 

「俺達は新しく設立されるS0班に配属されることになった」

 

「S0班?聞いたことがないですね」

 

「新しく設立されると言っただろう」

 

「あっ、そうでしたね」

 

平子の話を聞いて納得したのかウンウンと頷く。しばらくして白石達のことを平子へと聞いた。

 

「タケさん、彼等って何者なんですか?」

 

「男の方は白石上等、かつて有馬班に所属していた。そっちの方は知らない」

 

「伊丙 入三等捜査官ですよ。彼女は庭出身です」

 

白石がハイルのことを説明する。伊東は少し驚いた表情をしていたが平子は表情筋を少しも動かすことなく静かに白石の説明を聞いていた。

 

「とりあえず自己紹介っスね。伊東倉元一等捜査官っス。適当によろしくお願いします」

 

「白石上等捜査官だ。こんな餓鬼の命令なんて聞きたくないだろうが我慢してくれ」

 

「いやいや、良いですよ。白石上等ってSSSレート討伐者でしょ。下につくことに不満なんかないですよ」

 

「そうか。よろしく」

 

「こちらこそ」

 

そう言うと白石と伊東が互いに握手をする。なんとか人材を確保することができたと白石は内心喜んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、何とか集まったな。うん」

 

手元の名簿を見てそう呟く。平子達をスカウトしてから1月が経った。各支局をまわって何とか人材をかき集めた。最初はどうなるのだろうかと思った白石だったが思いの外人は集まった。

 

「有名な人でいえば鉢川准特等、真戸上等、平子上等ですね。それにしても鉢川准特等はよく引き込めましたね」

 

「自分より上の階級だったからどうなるかと思ったけど爺に頼みに行ったらOKが出た」

 

赤坂と話ながらかなり優遇されていると白石は思う。頼んでみたら直ぐに許可が出たのだ。白石にとっては爺様様だった。

 

「真戸上等はどうやって勧誘したんですか?」

 

「入りませんかって聞いただけだよ」

 

丸岡の疑問に白石が答える。真戸も鉢川同様にあまり人に好かれるような人物ではないため、ちょうど空いていたのだ。

 

「そしてお前達が連れてきた捜査官達も加わるからそこそこ戦力は整ったな」

 

「そうですね。ところで伊丙二等はどこに?」

 

「風邪引いたらしいから今日は休むとさ」

 

「あの伊丙二等でも風邪はひくのですね」

 

「まあ、あいつも人間だしな。風邪ぐらい引くだろ。さてと、それじゃあ俺は今から鉢川さんと真戸さんの所に挨拶しにいってくるからこの書類よろしくね」

 

「了解」

 

「了解しました」

 

「お任せください」

 

上原、赤坂、丸岡が白石へと答える。白石はそんな彼等の様子を見てウンウンと頷いて部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、穂木ちゃん」

 

「なの」

 

鉢川班の捜査室へと向かっていると穂木が反対側から歩いてきた。ちょうどいいと思い声をかける。

 

「鉢川さんって今捜査室の方にいる?」

 

「なの」

 

白石の問いに首を縦にふる。

 

「ありがとう。じゃあまたね」

 

お互いに手を振って別れる。穂木と別れてしばらくすると鉢川班の捜査室へとたどり着いた。ノックもせずに部屋へと入る。

 

「鉢川さーん、いますか?」

 

「ノックぐらいしろ」

 

白石が部屋に入ると正面にある机に足をのせた鉢川の姿があった。どうやら白石が突然大声で入ってきたことで不機嫌になっているようだ。元々友好的に見えない顔がさらに凶悪化している。

 

「ただでさえ凶悪な顔してるんですからそんなに怒らないでくださいよ」

 

「けッ、知ったことか」

 

そんな鉢川の様子を見て苦笑いを浮かべる。このまま鉢川と話しているのも面白そうだしそうしようかと白石は思ったが、仕事の件を思い出して話を切り出す。

 

「S0に加入してくれてありがとうございました。鉢川さんが入ってくれて助かりましたよ」

 

「お前の提案に乗っただけだ。黒狗、奴に関する捜査情報を最優先で俺に渡す。S0の捜査対象に黒狗を入れる。発見次第俺に連絡する。これだけやってもらえればお前のところに行くのも悪くはないさ」

 

「あいかわらず黒狗に対する執着心がすごいですね」

 

「奴には同僚も師も殺された。何としてでも奴を殺してやりたいだけだ」

 

殺意に満ち足りた目で白石を見つめる。

 

「黒狗も大事ですけどちゃんと他の喰種も討伐してくださいね」

 

「ああ」

 

「ではまた会いましょう。あっ、そうだ。月1の会議には顔出してくださいね」

 

白石の言葉に手を振って返す。それを見て大丈夫だなと判断した白石は真戸のもとへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはこれは白石上等、どういったご用件で?」

 

手に資料を持ちながら笑みを浮かべて真戸が白石に話しかける。隣では亜門が白石へと軽く頭を下げる。

 

「挨拶に来たんですよ。真戸上等」

 

「それはどうもご親切に。これからは協力してクズ共を殺していきましょう」

 

「任せてください」

 

お互いに握手をする。真戸は不気味に、白石は楽しそうな笑みを浮かべている。

 

「亜門一等、これからよろしく」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

「真面目だね」

 

大きな声で白石へと答えた亜門を見て、白石は感心したように言った。それを聞いて真戸もその通りですと笑いながら言った。

 

「では自分はこれで」

 

「ああ、また今度お会いしましょう。その時には白石上等のクインケを是非とも見せていただきたいものですな」

 

「ご健闘お祈りしています!」

 

真戸と亜門に見送られながら自分の捜査室へと向かう。白石としては特等を誰か1人でも呼びたかったがいまだ実績のないS0では厳しいらしい。

 

「早く功績をあげていい人材を引き込まないとな」

 

よしやるぞと頬を叩いて気合いを入れる。目指せ月100体討伐と言いながら自分の部下達が待つ場所へと歩みを進めた。


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