月一試験が始まる。アカデミアの月一試験は筆記と実技に分けて行われる。
まずは筆記から始まる為、さっさと席について授業中とったノートを読み直すもこっち。
板書は必要事項のみ、教員の話の要点だけ簡潔に記しているため、確認自体は即座に終わる。
試験が始まる。30分後、もこっちは解き終えたため、見直しを始める。
その直後、遊城十代が入ってくる。何やら丸藤と話をしていたが
「十代君、早く問題用紙を取りに来るのニャ、もう時間が無いのニャ」
「大徳寺先生。30分遅刻した場合、受験資格が無くなるのでは?」
「ええっ?!」
「確かにそうですが、今はまだ29分。先生の時計ではそうなっているのニャ」
「……」
もこっちは試験開始から31分が経過を示している壁掛け時計を見たが、黙って答案用紙のチェックに戻る。
言っても無駄と判断したためである。規定時間が過ぎ…
「ではこれにて筆記試験は終了、午後二時から体育館で実技試験が始まりますのニャ~」
生徒が一斉に駆け出していく。最新のパックが入荷されると言うから、それを買いに行ったのだろう。
静かになるのを待ち、もこっちは立ち上がって教室を後にする。お昼をさっさと済ませて、デッキを再確認し、試験開始を待つ。
午後二時。体育館にてもこっちは対戦相手を待つ。月一試験は基本的に同じ寮の生徒が相手になる。
「…天上院さん」
「ブルー女子のトップと、編入組のトップが直接対決か」
「明日香様~」
アウェーな空気の中、もこっちは毅然と立つ。
「行くわよ、黒木さん!」
「…よろしくお願いします」
互いにディスクを起動させ、デッキをセットし…
デュエル!
もこっち ライフ4000
手5 場
明日香 ライフ4000
手5 場
「私の先攻、ドロー!サイバー・ジムナティクスを守備表示で召喚!カードを一枚伏せて、ターンエンドよ!」
筋肉質の女戦士が登場し、守りの姿勢を取る。
もこっち ライフ4000
手5 場
明日香 ライフ4000
手4 場 サイバー・ジムナティクス 伏せ1
「私のターン、ドロー!モンスターをセット。そして永続魔法、機甲部隊の最前線を発動。カードを伏せて、ターンエンド」
ドローカードを確認し、手早く動くもこっち。
凡庸な一手だがそれまでのデュエルを見ている者は、その動きを警戒する。
天上院もその一人だ。
もこっち ライフ4000
手3 場 セットモンスター 機甲部隊の最前線 伏せ1
明日香 ライフ5900
手4 場 サイバー・ジムナティクス
「私のターン、ドロー!強欲な壺を発動、二枚ドロー!サイバー・ジムナティクスを生贄に、サイバー・プリマを召喚!効果発動!場の表側表示の魔法カードを全て破壊!」
「…最前線が」
「さらに魔法カード、融合を発動!手札のエトワールサイバーとブレードスケーターを融合!サイバー・ブレイダーを融合召喚!」
攻撃力2100と2300のモンスターが並ぶ。
どちらも【サイバー・ガール】におけるエースモンスターだ。
「上手い、これでガンナー・ドラゴンを戦闘破壊させる事でリボルバードラゴンを特殊召喚する基本戦術を封じた」
「まだよ!装備魔法、ビッグバンシュートをサイバー・プリマに装備!これで攻撃力が400ポイントアップして、貫通効果を得る!」
「攻撃力2700…」
サイバー・プリマが熱いオーラを纏う。
「バトルよ!サイバー・プリマで攻撃!」
「セットしていたモンスターは…アステカの石像!」
「なっ?!機械族では無い?!でも、守備力2000なら私のサイバー・プリマの方が攻撃力は上!」
「…永続罠、モンスターBOXを発動」
「えっ?」
「アステカの石像は反射ダメージを二倍にする効果があります」
「ええ、その通りね」
「そしてモンスターBOXが当たれば相手モンスターの攻撃力は0になり…反射ダメージ2000が発生しますが」
「モンスター効果により、そのダメージは二倍に…」
「では、コイントス。私は裏を宣言」
「確率は50%!当たるはずが」
「コイントス…結果は、裏」
サイバー・プリマを天上院に向かって突き飛ばそうとしたアステカの石像だが、蹴りが入って破壊されてしまう
「…これは」ライフ4000から3300
「サイクロンを発動したわ!これでモンスターBOXは破壊よ!」
「流石明日香様!」
「所詮運だけの女よ!」
「…サイバー・ブレイダーでダイレクトアタックしますか?」
「勿論。行きなさい!」
「…」ライフ3300から1200
「ターンエンドよ!」
もこっち ライフ1200
手3 場
明日香 ライフ4000
手0 場 サイバー・ブレイダー サイバー・プリマ ビッグバンシュート
「私のターン、ドロー!おろかな埋葬を発動。デッキから可変機獣ガンナー・ドラゴンを墓地に送り、魔法カード、旧型出陣を発動。墓地の機械族を特殊召喚する。
ガンナードラゴンを再起動」
「攻撃力2800…」
「永続魔法、エンジンチューナーを発動。場の全ての機械族は攻撃表示になり、その攻撃力は元々の守備力の半分だけアップする。よってガンナードラゴンはその守備力の半分、攻撃力がアップ。」
「攻撃力3800?!」
「バトル、サイバー・プリマを攻撃」
「きゃああああ?!」ライフ4000から2900
「カードを伏せ、ターンエンド」
もこっち ライフ1200
手0 場 ガンナー・ドラゴン エンジンチューナー 伏せ1
明日香 ライフ2900
手0 場 サイバー・ブレイダー
「くっ、私のターン、ドロー!装備魔法、フュージョンウェポンを装備!これで攻撃力が1500ポイントアップして3600!」
「それでも攻撃力が足りません」
「ええ、私はこのままターンエンド」
サイバー・ブレイダーは相手モンスターが一体なら戦闘では破壊されず、二体なら攻撃力が二倍、三体ならば相手のカード効果を無効にする。故にもこっちが新たなモンスターを召喚する可能性と戦闘ダメージを受ける可能性を考慮した上で、敢えて攻撃表示のまま場に残したのである。
もこっち ライフ1200
手0 場 ガンナー・ドラゴン エンジンチューナー 伏せ1
明日香 ライフ2900
手0 場 サイバー・ブレイダー フュージョンウェポン
「私のターン、ドロー!場のガンナー・ドラゴンを生贄に、ブローバックドラゴンを召喚。エンジンチューナーにより守備力1200の半分、600ポイントアップして2900」
「どうして?!サイバー・ブレイダーより攻撃力が低いのに…」
「勝つため。コイントス。対象はサイバー・ブレイダー。一回目…裏。二回目…表。三回目……表」
「なっ?!」
「サイバー・ブレイダー撃破。私にはまだ攻撃が残っている。ダイレクトアタック!」
「きゃああああああ?!」ライフ0
「あ、明日香様が…」
「ぐ、グーゼンよ、偶然!コイントスが外れていれば…」
自分のデッキが研究されている事を知っていたもこっちは、その先入観を逆手にとって地雷を張った。
それをサイクロンで躱した手並みは凄いが…
このコイントスの結果は、偶然では無い。人事を尽くしたからこその、答え。
試験が終わった事もあり、もこっちは観客席へと戻る。
「VWXYZにエンジンチューナーを使うと攻撃力4400、XYZは4100、VWは3050…彼とデュエルする時はエンジンチューナーの発動には気をつけないと…」
エンジンチューナーは相手の場の機械族も強化していしまう。もしもクロノス教諭相手に使うと攻撃力4500の古代の機械巨人になってしまう…
そんな事を思いながらもこっちはデュエルを眺めていた。
エンジンチューナーがOCG化されたら、機械族は守備力もかなり重視されるようになると思います。