代表に選ばれたもこっちは、必須カードを投入し、残りの枠を考える。
バランスよく、それでいて爆発力も入れなければならない。
黄泉ガエルは中々良いが、エンジンチューナーでは蘇生が阻害される。
黄泉ガエルについては使えれば良し、としてもいいのだが。
思考を巡らしていると、黄色い制服が目に入る。
顔をあげるもこっち。見知った顔がカードを提示している。
「なぁ、黒木。今度の対抗試合にウォータードラゴンを入れてくれないか?」
テキストと攻守に素早く目を通した上で、もこっちは告げる。
「ボンディングH2Oのカードを一緒に渡してくれるなら、入れよう」
「それなら。待て、ハイドロゲドンとオキシゲドンのカードも持っているのか?」
「オキシゲドンは持っていないが、ボンディングH2Oがあれば条件はクリアされる」
「…俺の知らない戦術があるようだが、それは当日を楽しみにさせて貰う」
ウォータードラゴンのカードとボンディングH2Oのカードを受け取り、同時に太もものカードケースから予備のカードを取り出す。
何かに使えると思って持っていたが、意外と出番が早く来た。
他の生徒からも預かったカードを広げていると、ゆうちゃんから話しかけられる。
「全部入れるの?」
「当然だ」
「でも、それだと回らない気がする。」
「皆の思いが詰まったデッキ、と言うのだろうか?最も、戦略とセオリーを無視した寄せ集めデッキでしか無いが。」
とはいえ、戦略は成立した。後は当日を待つだけだ。
ノース校との交流試合当日。港町にて待っていると、潜水艦が浮上し、中からノース校の生徒が出て来る
「鮫島校長、またうちの若い者が世話になります」
一之瀬校長が鮫島校長と話し合う。褒美云々は分からないが、さて、相手は誰なのかとノース校のメンバーを見渡すもこっち。
「代表は万丈目君だ!」
「万丈目君?!ノース校に行っていたのかね!」
相手がノース校の生徒では無く、同じ本校生徒である事にややがっかりしつつ、気を取り直すもこっち。
思えばデュエル出来なかった相手だ。良い機会かもしれないと思考を切り替える。
「では、交流戦は午後2時、デュエルフィールドで行います」
鮫島校長の言葉により、その場はお開きとなった。
一体万丈目が何時の間に本校からノース校に行っていたのか気になったもこっちは、情報収集を行う。
デッキは組み立てた以上、今更修正はしない。
「遊城に月一試験で敗れ、そして三沢との寮の入れ替えに負けて退学したのか」
「ああ」
「だが、万丈目に勝ったのだから、ブルー寮に入れば良かったのではないか?」
「名実ともにナンバーワンになってから、と思ったからだ」
「天が与えた物を取らざれば、かえってその咎を受けるというが…」
そこでもこっちは言葉を切り、視線を向ける。廊下には奇抜な髪型の男子生徒がウロウロしている。
「あれは、ノース校の生徒か?」
「道に迷っているようだ、案内してくる」
もこっちはノース校の生徒に近づき、声をかける。
「失礼、道に迷ったか?」
「?!本校の代表選手!」
「黒木智子だ。そちらは?」
「俺は橘一角。ノース校の生徒だ」
自己紹介を済ませ、もこっちは橘を案内する。
「40枚集めれば入学出来るとは面白いシステムだが、8パック買えばだれでも入学出来ると言う事か?」
「学費とかを納めないといけないがな。本校はどれぐらいの倍率なんだ?」
「まず筆記で120人まで絞られ、その後、実技試験が行われ、入学出来るのは36人だ」
「…すさまじい倍率だな」
実技で七割落とす、という厳しさに驚く橘。
「大事なのは入学する事では無く、そこで何を学ぶかだと思うがな。最も、それは私が入学しているから言える事ではある。さて、この先がステージだ。」
「ありがとう」
軽く頷いたもこっちは踵を返し、控室へ向かう。
午後二時。デュエルアカデミア本校のデュエルフィールドにて。
「レディース&ジェントルメーン!ただ今より、デュエルアカデミア本校、ノース校の交流戦を始めるノーネ!
まずーは!デュエルアカデミア本校生、シニョーラ智子!そして、」
「要らん!俺の紹介は俺がする!」
「ナパ?!」
「皆、俺を覚えて居るか!俺が退学して、せいせいしたとか言っていたやつ!自業自得とほざいた奴!耳をかっぽじってよく聞け!
不死鳥のごとく地獄の底より蘇ってきた俺の名は!」
「一」
「十」
万丈目が数え出すと、ノース校生も続く!
「「「「「百」」」」」
「「「「「千」」」」」
万丈目は手を高く上げる。
「万丈目サンダー!」
「「「「「「「「「サンダー!サンダー!サンダー!」」」」」」」」」
そのカリスマに、もこっちは驚きつつも表情は変えない。動揺しても、それを悟られる訳にはいかない。
故に静かに深呼吸を行い、気持ちを落ち着かせる。
「行くぞ!俺は負けるわけにはいかないのだ!」
「負けられないのはどちらも同じ。結末はデュエルだけが知っている。始めよう」
デュエル!
もこっち ライフ4000
手5 場
万丈目 ライフ4000
手5 場
「俺の先攻、ドロー!俺は仮面竜を守備表示で召喚!カードを伏せて、ターンエンドだ!」
もこっち ライフ4000
手5 場
万丈目 ライフ4000
手4 場 仮面竜 伏せ1
「様子見か、私のターン、ドロー!私はハイドロゲドンを召喚!」
「?!そのモンスターは!」
「これの効果を知っているか。バトルだ!ハイドロゲドンで仮面竜を攻撃!ハイドロポンプ!」
出来ねぇよ、と小さく呟きブレスを吐きだすハイドロゲドン。
「仮面竜の効果発動!俺はアームドドラゴンLv3を特殊召喚!」
「ハイドロゲドンの効果発動!相手モンスターを破壊し墓地に送った時、仲間を呼ぶ。現れろ、二体目のハイドロゲドン!
追撃だ!ハイドロカノン!」
出来ねぇよ、と呟きつつもブレスを吐きだす二体目のハイドロゲドン。だが
「罠発動!和睦の使者!これにより俺のモンスターは戦闘では破壊されず、ダメージも0になる!」
「戦闘回避か。カードを伏せて、ターンエンド」
もこっち ライフ4000
手4 場 ハイドロゲドン ハイドロゲドン 伏せ1
万丈目 ライフ4000
手4 場 アームドドラゴンLv3
「ハイドロゲドンとは、血祭りにあげるにはちょうどいい。さぁ行くぞ!俺のターン、ドロー!
スタンバイフェイズ、アームドドラゴンLv3はLv5に成長する!」
小柄なオレンジの幼竜が大柄な竜に成長し、雄たけびを上げる。
「む…」
「どうだ!これがノース校に伝わる秘伝のカード、アームドドラゴンシリーズだ!」
「攻撃力2400か、それで攻撃するのか?」
「当たり前だ!バトル!アームドドラゴンLv5でハイドロゲドンを攻撃!アームドバスター!」
腕を振り回し、攻撃しようとするアームドドラゴンLv5の前から、ハイドロゲドンが消える。
「なっ?!」
「リバースカード、速攻召喚を発動した。これにより、二体のハイドロゲドンを生贄に捧げ、古代の機械巨人を召喚する!」
機械仕掛けの巨人が立ちはだかる。
「三沢のカードの次は、クロノスのカードとは」
「いいや、これは神楽坂が渡してきたカード。万丈目、このデッキは本校一年生の知り合いが託してくれたカードに、私が元々持って居たカードを組み合わせたデッキ。
戦略もセオリーを無視した寄せ集めデッキかもしれないが、この想いを打ち破れるかな?」
「それがどうした!速攻魔法!収縮!これにより、古代の機械巨人の攻撃力を半分にする!」
「?!」
収縮を受け、古代の機械巨人が古代の機械小人になってしまう。
「やってくれるな」
「行け!アームドドラゴンLv5!古代の機械巨人を破壊しろ!アームド・バスター!」
「…」ライフ4000から3100
マンマミーア、という声が聞こえる。もこっちも万丈目もその声の主が誰かわかったが、デュエルに集中する。
「よし!バトルに勝利したアームドドラゴンLv5の効果発動!このカードを墓地に送りデッキからアームドドラゴンLv7を特殊召喚!
カードを伏せてターンエンドだ!」
雄たけびを上げて現れるアームドドラゴン。大柄になり、より攻撃的な姿になったが、反面防御力が薄くなった、そうもこっちは思考を巡らす。
もこっち ライフ3100
手3 場
万丈目 ライフ4000
手3 場 アームドドラゴンLv7 伏せ1
「私のターン、ドロー!ものマネ幻想師を召喚!」
「?!そいつは、相手モンスターの攻守をコピーするモンスター…」
「これにより、アームドドラゴンLv7の攻守を得る。さらに装備魔法。ミストボディ。これでものマネ幻想師は戦闘では破壊されない。
バトル!ものマネ幻想師でアームドドラゴンLv7を攻撃!ミスト・アームド・バスター!」
「迎え撃て!アームド・バスター!」
先にアームドドラゴンLv7の攻撃が届くが、霧に姿を変えてものマネ幻想師は攻撃を躱し、反撃を打ち込み、アームドドラゴンLv7を沈める
「ぐっ!」
「カードを伏せる。ターンエンド」
もこっち ライフ3100
手1 場 ものマネ ミストボディ 伏せ1
万丈目 ライフ4000
手3 場 伏せ1
「俺のターン、ドロー!魔法カード、四次元の墓を発動!墓地のアームドドラゴンLv7とLv3をデッキに戻す。
そして永続罠、リビングデッドの呼び声を発動!蘇れ、アームドドラゴンLv5!」
「アームドドラゴンLv5を…だが、攻撃力が足りないな」
「俺の心配をする暇があるなら、自分の心配をするんだな!魔法カード、レベルアップ!を発動!アームドドラゴンLv5をLv7に成長させる!」
再び現れるアームドドラゴンLv7。
ものマネ幻想師を睨み付けるが、ものマネ幻想師は泰然と構える。
「リベンジのつもりか。たしかに攻撃力は互角だが、ミストボディがある限り、どんなモンスターでも今のものマネ幻想師を戦闘破壊する事は出来ない」
「クックック、そいつが付与するのは戦闘破壊耐性のみ。効果破壊には対応できまい!俺は手札のタイラントドラゴンを捨てて、アームドドラゴンLv7の効果発動!
消え去れ!ジェノサイド・カッター!」
鬱憤を晴らすように、カッターが飛び出す。霧に変化出来るものマネ幻想師だったが霧への変化が間に合わず、破壊される!
「…やるな」
「当たり前だ!バトル!やれ、アームドドラゴンLv7!ダイレクトアタックだ!」
「罠発動!カオスリターン!相手モンスターの攻撃を無効にする!」
「戦闘回避か、姑息な手を」
カオスリターンに攻撃を阻まれ、アームドドラゴンLv7は一歩下がる。
「効果はまだ続く!手札を一枚捨て、墓地の魔法カードの効果を発動させる!」
「お前の墓地には、速攻召喚しかない。そしてお前の手札は0!何を召喚するつもりだ!」
「私が発動させるのは、今捨てたボンディングH2O!」
「なっ?!馬鹿な!そいつは場のハイドロゲドン二体とオキシゲドンを生贄にしなければ」
「カードの発動では無い、効果の発動だ!力を貸せ、三沢!現れろ!ウォータードラゴン!」
雄たけびを上げて現れるウォータードラゴンと、対峙するアームドドラゴンLv7
「ちっ、攻撃力2800同士では相打ちか…?!」
万丈目の目の前で、雄たけびをあげながらウォータードラゴンに襲い掛かろうとするアームドドラゴンLv7。
「なっ?!何が」
「カオスリターンの効果はまだある。この効果で攻撃を無効にされたモンスターは、攻撃を再開しなければならない」
「何?!攻撃を無効にする最初の効果は何だったんだ!」
「知らん。行け、ウォータードラゴン!アクア・パニッシャー!」
「打ち砕け!アームド・バスター!」
互いの攻撃が直撃し、大爆発を起こして消えさる。
「ちっ、ターンエンドだ!」
もこっち ライフ3100
手0 場
万丈目 ライフ4000
手1 場 リビングデッドの呼び声
「私のターン、ドロー!お前か」
「何だ?何を引いた」
「私はバブルマンを特殊召喚!このカードは手札がこのカードのみの場合、手札から特殊召喚出来る!そして場に他のカードが無ければ、二枚ドロー出来る!」
「チッ…」
ドローカードを確認し、もこっちは告げる。
「チェックメイトだ、私はパワーボンドを発動!」
「?!それはカイザーのカード!何故、お前が!」
「いいや、弟の方だ。手札のユーフォロイドと、場のバブルマンを融合!現れろ、ユーフォロイド・ファイター!」
ユーフォロイドにバブルマンが乗り込み、バブルシュートを万丈目に向ける。
「攻撃力は融合素材の元々の攻撃力の合計、1200と800だから、攻撃力は2000になる、だが…」
「そう。パワーボンドによりその攻撃力は二倍になる!よって攻撃力は4000!」
「ぐっ!お、俺は…」
「バトル!ユーフォロイド・ファイターでダイレクトアタック!フォーチュン・バブルシュート!」
交流戦、その勝敗が決する。
「勝者!デュエルアカデミア本校生徒!シニョーラ智子!」
「そうか…負けちまったか。」
その後、港で見送ろうとすると、万丈目はノース校に戻らず、本校に復学すると告げる。ただ出席日数の都合上、オシリスレッドに配属されていた。
三沢の強化が来ますね。OPの炎の竜がOCG化される日は近いかもしれません。