二ヶ月、空いちゃった(*ノω・*)テヘ
いや何考えてんだよ(白目)
申し訳ない、の一言に尽きますかね(´・ω・`)
私、どうして時間がないんだろうかと涙を流したい。
では、本編どうぞ!
「それでは……始め!」
先生の声と学校のチャイムを合図に、クラス全員が一斉に閉じられた冊子を開く。
各々の持つペンを走らせ、文字列とにらみ合い。
やがて五十分が過ぎ、再び電気質の鐘がスピーカーを通して流れ出す。
回収の呼びかけと共に、縦列の最後尾の生徒が席を立ち、己が列の分の解答用紙を預かっていく。
それが三回程続いて、その日の授業は終了。
試験なので、授業と言えるのかどうかは定かでないが。
テスト一日目終了を労い合う者達。
出来を報告し合い、一喜一憂する者達。
足早に教室を出て、放課後を迎える者達。
皆が皆、各々の課後を迎え入れていた。
俺はというと、最後の部類に近いだろうか。
ただ、少し違った点は、教室を出た後の目的地だ。
自宅ではなく、学校の図書室――でもなく、コンピュータ室。
残された新聞の課題は、僅か。
あと一時間も作業をすれば、終わる程度だ。
気が滅入る暑さに顔をしかめながら、爽やかな風が通る廊下へと出た。
「待ちなさいよ」
既にコンピュータ室へと向かっていた足を止め、声のした方を振り返る。
声や口調から想像できていたが、やはり綾瀬だ。
「せっかく人が待ってあげたのに、無視はないでしょう」
「待ってくれと頼んだ覚えもないのに、強要はないでしょう」
「あんた、絶望的にその口調が似合わないわね」
「ほっとけ」
小柄な彼女が追いつくのを待って、コンピュータ室へ。
ここで待たないと、後が怖い。
俺に綾瀬と同じような口調が似合わないことは、自分自身でもわかっている。
ただ、俺が彼女に関して言うのならば、逆にあの口調以外だと違和感を感じてしまう。
漂う雰囲気に、イメージとの相違を感じざるをえない、と言うべきか。
並ぶ彼女を、横目でちらと見た。
傾国の美女、と称するには、失礼だが華がつく言い方だろう。
しかし、これで男を掌で転がすような性格を持つ女性だとしたら。
正直、転がらない男がいるのか、甚だ疑問である。
「……どうしたのよ」
「あ? いや、特には」
「特に何もないのに、こっちをジロジロ見られると私が嫌なのよ。何だか落ち着かないわ」
横目で見ていたはずなのだが、バレていたか。
何という用もなく凝視されることに、気味が悪いというのも頷ける。
男だろと女だろうと、同性異性関係なくずっと見続けられることに対して、不快感を抱くものだ。
少なくとも、いい気分はしない。
「強いて言うなら、今まで何人の男を誑かしてきたんだろうなあ、と」
「人をビッチみたいに言わないで頂戴」
「そんなつもりじゃねーよ」
「……今までに、一人よ」
「交際経験、ってこと? それとも、遊んだ方?」
「前者に決まってるでしょ。『遊ぶ』って言葉の意味について小一時間ほど問い詰めてやりたいわ」
ほう、これほどの容姿を持ちながら、一人。
はっきり言って、意外だった。
五、六人はいるのかと思っていたが。
入学初日で、遥斗から教えてもらった話だ。
曰く、告白してきた男を全て玉砕した、と。
それを考えると、一人いるだけでも驚くべきことなのだろうか。
確かに、あの綾瀬を惹くような男と言われれば、かなりハードルが高そうだ。
「そんなことはどうでもいいのよ、私は。あんたに聞きたいことがあって待ってたのよ」
「これまた改まって珍しい。どうしたよ」
「大したことじゃないわ。テストの手応えよ」
「ん~……可もなく不可もなく、ってところだな」
本当のところは、結構な手応えはあった。
だからといって、かなりいい出来だと思う、と言うのも気が引ける。
それで綾瀬や高波、遥斗にも点数が低かったらさぞかしいじられるのだろう。
「へえ、そう」
「どうした、今回は悪そうなのか?」
「……ええ。あまり言いたくはないけど、あんたに勝てるのかすら微妙よ」
料理教室の後、遊べるはずもなく各々の家に帰宅。
三人の反応を見る限り、しっかりとした準備はできていないように見えた。
特に綾瀬に至っては、他の二人よりも尚更危ないだろう。
新聞作りの作業をしていてわかったが、彼女の作業効率はお世辞にも良いとは言い難い。
タイピングの速度は人並みかそれ以下。
内容を作る手際に関しては目を見張るものがあったが、無理矢理それでタイピング速度の遅さを補っている印象を受けた。
それにもかかわらず、綾瀬の作業は俺と同じくらいだった。
前日、学校で綾瀬が済ませた所と、翌日に作業を始める所。
明らかに違った時もあったので、校外で作業をしているのは明白だ。
本来彼女のテスト勉強に使われたであろう時間は、それに使われたと言っても過言ではない。
「ま、返却前に何を話そうと変わらないさ。それより、今日は早めに終わらせようぜ」
そう言い終わってから、丁度良くコンピュータ室に着いた。
戸を開いても、テスト期間なので、さすがに生徒会の人影もない。
通学用バッグと手提げ袋を置いて、カーテンを開け放ち、パソコンを立ち上げる。
俺と綾瀬が席に着いて作業を始めてから、数十分も経っていないだろうか。
扉が開く予期しない音が聞こえ、そちらを見た。
遥斗と高波が来てくれた。
最初に言ってくれたように、最後の確認をしてくれるらしい。
そして、作業開始から三十分と少しが経って。
「――うん、大丈夫だと思うよ」
「こっちも問題なし、かな」
「よっしゃ、終わり!」
「あ~……疲れた」
俺と綾瀬は、二人で同時にのびをした。
普段はあれほど冷ややかなのに、のびが小さい。
のびているのに、身長が身長なので小さく見えた。
普段と違う一面が見えると、本来よりも増して可愛く見えてくる。
「さっさと出して、帰るか。先に皆は帰る準備しててくれ。俺はこれ、提出に行ってくる」
「ああ、私も行くわ。それに、職員室に寄るだけだから、あんたも用意してきなさい」
「あ~……いや、鍵閉めて、返してから行く。すぐだから、先に下に降りてろ――」
そこまで言って、ふと気付いた。
俺達は。厳密に言えば、俺と綾瀬は。
最初に入った時に、鍵はどうしただろうか。
――開けていない。
否、鍵がかかっていなかった。
少し部屋を見渡して、コンピュータ室のキーが壁にかけられているのが見える。
俺も、俺以外の三人も、鍵に触れるような行動は起こしていない。
一日中、鍵が閉まっていなかったということもないだろう。
使用後に戸締まりはするだろうし、忘れていたとして、先生が閉めにくる。
それに、今日は月曜日。テスト期間が始まった日だ。
前日は日曜日なので、先生の管轄外でこの部屋を使ったとも考えにくい。
コンピュータ室を使う時は、大抵は生徒会が使用中で、鍵を取りに行くことも少なかった。
ただ、今日は生徒会の姿は一人すら見えない中、鍵だけが置いてある。
やや不審に思いながらも、三人が部屋を出たのを見送った後に鍵を手に取り、電気を消す。
廊下を歩きだして一分もかからずに、職員室に着いた。
ノックをしてから、軽い音を立てて扉は開かれる。
「おっ、そろそろだと思ってたよ」
ちょうど里美先生が職員室から出てきて、鉢合わせた形となった。
手に持っているメモリを見て、作業終了を察したようだ。
メモリを渡してから、もう一つの俺の持ち物に気付いたようで、声を上げる。
「鍵、閉めてきたのか?」
「え? えぇ、まあ」
「あ~……すまない。先に言っておけばよかったな。生徒会の一人が、先に来て作業を始める予定なんだ。悪いが、戻って開けておいてくれないか?」
「そうだったんですか、わかりました」
まさか、まだ来ていなかっただけだったとは思わなかった。
今来た道を引き返して、コンピュータ室へなるべく早く戻る。
小走りで向かった先には、かなり背の低い金髪の女の子が立っていた。
遠目で見た限りでは、あの綾瀬よりもさらに低い。
だが、確かに彼女の左腕には、「生徒会」と書かれた体躯に似合わない黄色の大きな腕章がつけられている。
「あ~、ごめんごめん。遅かったね」
「ひっ!? いえ、その……大丈夫、ですから」
狭い肩を存分に跳ね上げて、弱々しく呟いた。
察するに、この子は一年生だ。
彼女の背丈や小動物のように震え、怯える声は、高校一年生が一番近いだろう。
言動、身長、そして大きな瞳は見た目の年齢をぐっと下げる。
高校生というよりも、むしろ小学生みたいだ。
おどおどとした様子を心配に思いながらも、手早く鍵を開けて、中の照明を点けた。
「あの、わざわざすみません、助かりました」
「いやいや、元々は俺が悪かったんだ。申し訳ない」
「え、えっと……では、私は仕事があるので、これで失礼します」
そう言った彼女はお辞儀をして、逃げるようにコンピュータ室を去ろうとした。
不審に思い、呼び止める。
「お、おい待てよ。鍵開けたのに、どこ行くんだ?」
「その、大丈夫ですから!」
もう一度だけ頭を下げられ、脱兎の如くその場を離れられた。
何か気に障る真似をしたのかと不安になったが、見当がつかない。
強いて言えば、鍵を閉めたことくらいか。
それに関しては、弁解の余地もないので納得せざるを得ないのだが。
取り敢えず、考えても埒が明かない。
当の少女は既に走り去った後で、何もしようがないのだから。
「ま、いっか。……あれ?」
不意に手に虚無を感じて、疑問符を口にした。
これだけ聞くと格好がいいが、持っているはずの手提げ袋がない。
確かに、教室を出て綾瀬と会った時には持っていたはずだ。
コンピュータ室でも、荷物を下ろした際に、通学用バッグと一緒に下ろした記憶もある。
なら、どうして俺は手提げ袋を持っていない。
先週、綾瀬に偉そうに言っていた自分に、特大のブーメランが帰ってきたらしい。
コンピュータ室への無駄な往復のせいで、もう三人を随分と待たせている。
今更ではあるが、携帯で遥斗に先に帰るようメッセージを送った。
重い溜息を吐きながら、コンピュータ室を歩き回る。
明るい室内を見渡しても、目につくのはパソコン一式、コピー機など、大きなものだけ。
手提げ袋くらいなら、すぐに見つかりそうなものだが。
五分が経って、捜索をやむなく諦めた。
明日に行われるテストの教科に使う教材が入っているのだが、仕方がない。
それ以外に、別の形で復習するしかないか。
職員室を経由して、昇降口へと向かう。
もうそろそろ靴箱が近い、というところで、通りかかった部屋の扉が開いた。
開いた扉は事務室の扉で、それを開けたのは、先程の金髪少女だった。
「あ、さっきの」
「あっ、ご、ごめんなさい。邪魔してしまいましたね」
俺の足が止まったことへの謝罪を口にする少女。
そこまで過剰反応するか、と傷つきそうになるが、彼女の持っているものが目についた。
茶色の包みに覆われた、直方体。
何度か見ることがあるそれは、一目見ただけでコピー用紙だとわかった。
今日で三度目のお辞儀をした彼女だったが、直方体に小さな体躯を振り回されていた。
現に、今にも倒れ込みそうだ。
「あ~ほらほら、持つよ」
あまりにも不安定なので、半ば奪い取る形でコピー用紙の束を受け取る。
両腕にずしりとくる重みは、予想外のものだった。
一つだと思っていた束は、二つに重なっていた。
コピー用紙は一束につき五百枚の、二キログラムのものだ。
二つ分なので、四キログラムか。
こうして持ってみると感じるが、小柄な女の子がいっぺんに持つ重さではない。
「これ、どこまで持っていけばいい?」
「あの、本当にいいですから……これ以上、迷惑をかけるわけには……」
「お互い様だよ。俺だって、さっき君に迷惑かけたからね。で、どこに持っていくの?」
「……さっきのコンピュータ室に、よろしくお願いします」
「了解」
両手で抱える重みを直に感じながら、別棟のコンピュータ室へ。
後ろをとことこと着いてくる彼女が視界の端で見えるが、なんとも微笑ましい。
荷物を持っている俺よりも、何も持たない彼女の方が歩く速さは遅いらしく。
時々に小走りになって、俺に追いついてくる。
娘を持った父親、というのはこんな感覚なのだろうか。
……散々に可愛い、と騒ぎ立てる理由が垣間見えた気がする。
それに気付いて、幸せな光景を味わい続けたかったが、歩く速さを彼女に合わせる。
大分ゆっくりと歩くことになり、コンピュータ室に着くまでが随分と長く感じた。
腕に残る疲労の痺れを受けながら、コピー用紙を机の上に下ろす。
というか、なくなる前に誰か補充しとけよ。
「スパ――じゃなくて、その、何から何まで、本当にありがとうございます」
「い、いやこちらこそ。じゃ、俺はこれで」
なんだろうか、少しはかっこつけたいのだが、腕が痛い。
普通に持つ分にはいいのだが、長く持ちすぎた。
ただでさえ遠い別棟のコンピュータ室に、牛歩で向かったのだ。
その弊害は、思いの外大きかったようで。
「あ、あの!」
「ん? どうした?」
「よ、呼び止めてすみません。えっと……」
大きな声で呼び止める彼女だったが、どこか迷う表情を見せている。
どうしたんだ、ともう一度聞き返す寸前に、彼女は口を開く。
「お、お名前を、教えてください」
「えっ? あ、あぁ、東雲 蒼夜だ」
「東雲……やっぱり、貴方でしたか」
「へっ?」
やはり、ということは、俺の名前を知っているか、見当がついていたか。
どちらにせよ、不自然であることに変わりはない。
勿論、俺とこの少女に接点はなく、今日が初対面だ。
名前を大々的に知られる出来事など、あったはずもない。
「最近、少しだけ噂になってますよ? 東雲っていう中々かっこいい二年の男子生徒が転入した、と」
「か、かっこいいって……」
面と向かって言われたのは初めてで、突然ということもあり動揺してしまう。
幸か不幸か、褒められるようなことは今までになかった。
だが、嘘だとしても名前を知っていることに説明がつかない。
噂になっている、というのはどうやら本当らしい。
ただ、本人の耳に届かないほど小さな噂でよかったものだ。
もし肥大化しようものなら、俺の学校生活が危ぶまれていたところだ。
「その、転校生なら、私の名前も知りませんよね」
初めて見せた彼女の笑顔が、どんなに俺の心を掴んだだろうか。
純白、無垢、それ以外に形容し難い純粋な微笑みは、俺の息を一瞬だけ止める。
そして、碧の瞳の持ち主は謳うように。
「私は、浅宮・ソーフィヤ。この学校の、
「……えっ?」
生徒会長、ということは。
少なくとも、一年生ではない。
「い、一応、学年は?」
「勿論、三年です。私のことは、ソフィーと呼んでもらえるとありがたいですね」
「え……えぇぇええ!?」
陽気に笑う彼女の前で、驚きを隠すことは不可能だった。
ありがとうございました!
あの子、三年です。
ちょっとフラグっぽかったし、まあ想像できたかなって。
ソーフィヤの意味は、題名の通り、「知恵」という意味です。
「スパ――」って言いかけたの、なんだろうね。
ある国では、「ありがとう」って意味らしいよ。
最近、PS4のシージ友達が増えました。
読者の方からも、フレンドになりたい・一緒に遊びたい!
という方がいらっしゃって、嬉しい限りでした(*´ω`*)
……送っても、いいのよ?(´・ω・`)
PSNID送るときは、感想は人目につくからやめてねってだけ言おうかな。
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ではでは!