クーデレの彼女が可愛すぎて辛い   作:狼々

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どうも、狼々です!

いやあ、話を重ねるごとに、期間が空いていますね()
全く洒落にならないぜ(´・ω・`)

テスト期間が被って、ろくなことができませんでした。
しかし、それが終わった今、私はちょっとだけ自由の身なのじゃ(*´ω`*)

では、本編どうぞ!


第18話 そうめん

 特定の人同士が出会う確率は、天文学的数字である。

 この世界の人口が、一体どれだけだと思う。

 同じ国に産まれる、県に、街に、範囲は狭くなるにつれて確率は飛躍的に低くなる。

 さらにそれに、出会う対象の人が集まるとなると、また確率は分母だけを大きくする。

 

 なので、ここでこの四人が集まっているのは、奇跡の先にある奇跡とも考えられる。

 人同士が集まる確率は、天文学的。

 ならば、その人に宿る性格もまた天文学的ではないだろうか。

 

 しかし、俺のこの疑問をどうしても神にぶつけたい。

 

「ここまで、随分と時間がかかったわね。正直言って、素人のさらに下だったわ」

「仕方ないよ。これから上手くなればいいんだから」

 

 ――どうしてこうも、人間の性格は違うのだろうか。

 

「ダメよ、麗美奈。こういう人間は甘やかすとダメになるタイプだから。躾はしないきゃ」

「し、躾って……ペットじゃないんだし、ね?」

「いや正直綾瀬より高波の方が、オナペットにでも何にでもなるわ」

「お、オナっ……!?」

 

 おお、その赤面の反応やよし。

 そういう面に弱い高波さんマジ綺麗だし可愛い。

 

「セクハラね。110でいいのかしら? それとも、119でコイツに放水をお願いすればいい?」

「冗談だからホント通報はやめて」

 

 別に俺は、本気でそういう系ペットになりたいわけではない。

 ……いやちょっといや全部嘘だよ? なりたいけどね?

 そういうのはその、倫理的に、ねえ?

 

 てか、高波のオナペットとか人生勝ち組じゃん。

 と、余裕で思える俺は変態なのだろうか変態だね。

 

「なんで私に謝るのよ」

「高波さん、ほんっとにさーせんした」

「い、いいけど、謝る気が全く感じられないね」

 

 きちんと頭を下げたのだが、誠意は残念ながら伝わらなかったようだ。

 綾瀬には呆れに呆れられた目線をぶつけられた。

 まあ、いつものことなのでもう馴れつつあり、心に傷など入らないのだが。

 

 今更なのだが、どうして()()()()()()()()料理教室をやっているのだろうか。

 全くもって意味がわからない。綾瀬辺りが狙ったのだろうか。

 だって、来週から――

 

「どう考えてもさっさと食べた方がいいでしょ、そうめんだし」

 

 遥斗が声を上げてから、ようやくやり取りが収まった。

 正直、コイツがいなかったら止めるヤツがいなかっただろう。

 ストッパーとしては、いてよかったと言えるか。

 

「よし、じゃ食べるか――って箸ぃ!」

 

 箸が足りない、どう考えても。

 俺の分は当然あるのだが、残り三膳分がない。

 

「大丈夫よ、各自で持ってきたわ」

「準備良すぎだろ」

 

 完全に食べに来ている。

 いや、料理教室だから最後は食べるのだろうが……目的が食べることみたいだ。

 毎度毎度思うが、これだけ気が回るなら、それを他人に向けてほしいものだ。

 

 盛り付けは既に終わっているので、後はテーブルに用意するだけ。

 各々の箸を置いて、席に着いた。

 

「いただきます」

 

 全員で手を合わせて、食物に感謝。

 氷水に浸して、めんつゆを通して麺をすする。

 

 そうめんの食べ方として、氷水につけて食べるのは本当は間違いとは聞く話だ。

 麺の味や香りが損なわれるんだとか。

 ただ、俺としてはしっかり冷やして食べたい方だ。

 めんつゆだけ冷えていても、なんだか物足りない気もする。

 

「うん、ちょうどいい具合にできてると思うよ」

 

 そう微笑む高波は、本当に天使にも見えた。

 ただ茹でただけなのに、この言い方だ。

 さぞかし、男子からの人気は絶大なのだろう。

 事実、うちのクラスでは高嶺の花を担当してはいる。

 学年単位となっても、恐らく彼女の人気は変わらないか。

 

「……これ、本当に練習になったのかしら。これじゃ簡単すぎて料理に入るのかも怪しい」

「大丈夫だろ。ネギの切り方は覚えたし」

 

 そう綾瀬に返したのだが。

 隣に座る高波の肩が、明らかに震えている。

 視界の端で、長い緑の髪から少し赤くなった耳が覗いた。いやさすがに笑いすぎだろ。

 

 高波と目を合わせるが、そっぽを向かれた。

 隠そうとするのはいいことだが、もう少しマシに隠せないのか可愛いな。

 

「もうすぐ夏休みだな~。あ~嬉しい」

「少なくとも、補習があるじゃない」

 

 そう、夏休みは静かながら目前に迫っている。

 炎天下の真っ只中を謳歌する、全人類の楽しみと言っても過言ではない長期休暇。

 だるさを誘う真夏に、夏休みという楽の代名詞的存在。

 これがありがたいと言わずして何と言うべきか。

 

 それにしても、やはりおかしいとは思わざるを得ない。

 休暇であるにもかかわらず、他と差をつけるチャンスだとか、それらしい理由を貼り付ける。

 貼り付けるだけならまだいいが、それを使って労働者や学生は労役や勉学を強いられる。

 

「それに、課題もそれなりに出るでしょうね」

「学生は勉強が仕事って言うだろ。俺、家には仕事持ち込まない主義だから。課題とか知らないから」

「実にあんたらしいわね」

 

 結構言われることだ。「学生は勉学に励むことが仕事だ」、と。

 というか、高波が笑いすぎてそうめんを食べていない。

 そ、そこまで面白いことか……? 甚だ疑問である。

 

「だから私にテストの点数でいつまでも勝てないのよ。勉強不足ね」

「うっせ。枕カバーの中に砂糖入れるぞ」

「何それ。何にせよ、あんたに抱かれることなんて一生どころか永遠に来ないわ」

「解釈がズレるにも程があるだろ」

 

 ああ、ダメだ。砂糖を言葉にした辺りから、高波が限界に来ている。

 きっと、何言ってんだこいつ、って思われていることだろう。

 現に高波だけでなく、綾瀬も遥斗も疑惑の目をこちらに向けている。

 

「で、どうして砂糖なのよ」

「夜寝る時、湿気とか汗とかで何かしらの水分が出るだろ。結果、どうなると思う?」

「……めちゃくちゃ砂糖でペタペタするわね、頭が」

「あっははは! もうダメ! 砂糖は卑怯だよ!」

 

 やはりと言うべきか、耐えられなかった高波。

 隠す気など既にさらさらなく、全力で笑っている。

 可愛らしい女性の明るい笑顔とは、これほどまでに魅力的なのだろうか、と痛感した瞬間だった。

 

 それはさておき。この方法、やったことはないのだが、かなり効果的だとは思う。

 くだらないことを憎悪的に、かつ隠密的にするというのは、思いの外気持ちが良さそうだ。

 バレた時も、ある程度の咎めで収まるレベルだ。

 そもそも、バレること自体も少なさそうだが。

 

「やめて頂戴、絶対に」

 

 ガチトーンで睨まれる俺、本当に可哀想だなあ。

 冗談に決まっているだろうに。

 

 ……いや、機会さえあれば一割くらい本気になったかもしれない。

 

「多分することはないから。命拾いしたな」

「あんたの命を拾えなくしてやりたいわ……ごちそうさま」

 

 挨拶だけして、席を立った綾瀬。

 今まで昼食をとってきてわかったが、彼女は少食気味だ。

 食べる量が極端ではないが、どう考えても少ないと感じる。

 

 結果、食べる速さも他人より随分と速くなるわけだ。

 

「食器、先に私のだけでも洗っておくわね」

「ああ、置いといてくれ。後で俺がまとめて洗うから」

「いいわよ、皿洗いくらい。全員、食べ終わったら私が洗っておくから、置いてて構わないわ」

 

 言い終わる前には、彼女は一人で皿洗いを始める。

 皿洗いに慣れるもなにもないが、やはり随分手際がいい。

 少なくとも、俺よりは速いな。

 

「……で、遥斗の言う『詳しく説明する』ってなんだよ。結局聞いてなかったろ」

 

 料理をする前に、俺がわかってないだとか言われた時だ。

 詳しく説明しよう、と宣言された割に、何も受けていなかった。

 

「ああ、簡単な話だよ。今日ちょっと気が立ってるの、あれ多分、女の子の日だからだよ」

「なんでもかんでも遠回しに言えばいいって問題じゃないだろ」

 

 隣の高波を見るが、苦笑いが絶えないようで。

 対する遥斗はというと、平然とそうめんをすすりながら言うものだから、一周回って凄みを感じてしまう。

 綾瀬は皿洗い中。水の流れる音で聞こえていないのだろうか、運がいいのか悪いのか。

 

「違うの?」

「わ、私に聞かれても……さすがに知らないし、聞くのもねえ?」

「そりゃそうだろ。そもそも、人の前で言葉にする時点でアウトだ」

 

 プライバシーにも関わるが、それ以前の問題でもありそうだ。

 というか、デリカシーのない質問に真面目に答える高波さんマジ女神。

 怒っていいんだぞ、コイツには。代わりに怒ってやりたいくらいだ。

 

「何がアウトなのよ」

「あっ、いや、あのですねぇ~……」

 

 綾瀬が戻ってきて、今度は遥斗は焦り始めた。

 会話の内容を探られて焦りを見せるほどやましいと思うならば、最初から話すなという話ではある。

 さて、これから遥斗はどんな処罰を受けるのだろうか。

 

「綾瀬が今日もご機嫌斜めだな~、って?」

「何で疑問形なのよ。それに、いつも不機嫌みたいな言い方、やめてほしいものね」

 

 ほう、意外に制裁が加えられない。

 全くもって、機嫌が良いのか悪いのかわからない。

 これがいつもの態度と言うのならば、それはそれで怖いし問題がありそうなものだが。

 

「それと、今日は周期は来てないわよ」

「聞こえてたのかよ。てかもう少し恥じらいくらい持てよ」

 

 がっつり聞こえていましたねえ。

 にしても、抱くだとか周期だとか、恥じらいに欠けるのは綾瀬の方だろうか。

 唯一まともな俺と高波。

 

 ……俺と一緒にされる高波が可哀想になってきたかもしれない。

 自分で思っていてなんだが。

 

「事実を言っただけよ。要らない誤解を生みたくはないものね」

「七海ちゃんは食べ終わったわけだけど、どうするの?」

「さあ? 適当に家の中で遊んどくわ」

「お~い? ここ、俺の家だからな? 自分の家じゃないぞ~」

「わかってるわよ。自分の家でできないことだからこそ、ここでやるんじゃない」

 

 これはひどい。

 人は他人の家に入る時、「お邪魔します」と声をかける。

 それは挨拶表現の一つだが、この場合、本当に邪魔になっているのだが。

 謙遜の欠片すら見えない。

 

「遊ぶ暇があるなんて、大分余裕なんだな」

「……? 何がよ」

「はあ? 何って……()()()()()()()()()じゃないか」

「……あっ!」

 

 ちょっと待て。今三人分の驚嘆が聞こえた気がするんだが。

 

 忘れていた、のか?

 まさか、テスト期間を? さすがにありえないだろう。

 

 そう思ったのだが、三人の表情を見る限り、どうにも嘘を吐いているようには見えなかった。

 取り敢えず。

 

 アホだ。この三人、テスト期間忘れるアホだわ。




ありがとうございました!

さて、前回の前書きの通り、東方の二期を書き始めました!
一つ作品が終わりそうなので、入れ替わりみたいな感じになりそうです(`・ω・´)ゞ

そして、ハーメルンでアンケートを取りました。
被お気に入りユーザー100人突破記念の短編小説の内容について。
集計も終わりまして、結果、病気で亡くなった彼女の遺した言葉の意味を探る話になりました。

詳しいことは、アンケとその結果発表の活動報告をご覧ください。

ではでは!

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