クーデレの彼女が可愛すぎて辛い   作:狼々

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どうも、狼々です!

一ヶ月が経ちましたね、もう十二月です(*´ω`*)
寒いなか、冷たい指先でキーボードを叩く狼々(´・ω・`)
皆さん、風邪にはお気をつけて。

さて、ここで一報。
テストがある程度終わりましたので、ペースが少しの間よくなりそうです。
早く来い来い冬休み(´;ω;`)

では、本編どうぞ!



第16話 されど、扉の向こう側の真実は

 翌朝。

 前日の看病の御蔭か、鉛の体は随分と重量を減らしたものだ。

 感覚的にも、快調とは言い難いが調子を取り戻しつつある。

 

 こうして朝の陽光を多少マシに見られるのも、案外幸せなことだ。

 

「もう少し、健康に気を遣わないとな」

 

 そのためには、まずは食生活からだろうか。

 体調を左右する毎日の要因としては、食事は見ぬふりはできない。

 今の食生活を続けていると、生活習慣病になりかねない。

 

 と、そこで。

 俺のために企画された、ここでの料理教室。

 最低限の調理器具や調味料は揃えてあるが、逆に言えば最低限()()ない。

 

 加えて、まだ未使用どころか栓を開けたことすらないものも。

 さすがにそれでは勿体無いので、いい機会なので使っておこうという作戦。

 

 現在、午前の六時三十分と少し。

 何時に来るのか全く見当もつかないが、連絡がいずれ訪れるだろう。

 遥斗とは連絡先を交換しているので、情報が入らない断絶状態では一応だがない。

 

 と、心内で噂をしていたところに電話がかかってきた。

 画面を見て、相手を確認。勿論と言うべきか遥斗。

 

「はい、もしもし」

「あ、おはよ。今日は大丈夫そうかい?」

「あぁ、おかげさまでな」

「了解、三人で昼になったらそっちに向かうことにするよ。食材は適当に買っておくから、器具の用意だけしといてね」

「わかった、じゃあな」

 

 伝えることのみを伝えて、早めに通話を切り上げた。

 というのも、ある程度の部屋の準備をしなければならないのだ。

 

 昨日体調が悪すぎて、出しっぱなしにしていたもの。

 開けた後、放置していたダンボール箱の束。

 元々部屋に広がっていたもの等々。

 

 考えてみると、物が多い上にダンボールは時間もかかる。

 今からでも取りかかるべきだろう。

 新生活の足跡がまだ残る家の中を、前日に比べてずっと軽い足取りで巡った。

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 ……起床。

 枕元を見るが、目覚まし時計が仕事をしていない。

 否、仕事をしたが私がその働きを拒絶したか。

 

 それを私に見せつけるように、短針は既に九時を回っている。

 スマホを確認すると、麗美奈からのメッセージが一時間ほど画面で待機していたらしく。

 

 内容としては、彼の容態が良好だから、準備のために十時半に私の家へ向かう、とのこと。

 彼とは最早、言うまでもあるまい。

 私を引き止めておきながら、自身は寝て一時間が経過。

 帰宅時間は完全に遅れ、就寝時間も必然的に遅れた、その原因である彼だ。

 

「……急いで準備しなきゃ」

 

 どうして休日まで顔を合わせないといけないのだろうか。

 第一、料理教室は私が提案したわけではない。

 が、あの時。

 

 麗美奈の意味ありげな質問に対し、乗ってしまった。

 彼女の思惑があるのか、それとも私が勝手に勘違いして意志とは逆に口が動いたか。

 と、過去の行いに後悔しながらベッドからやや慌てて起きたのだった。

 

 

 

「さてと、こんなものでいいでしょ」

 

 特に持ち物に関する準備の必要がなかったことが幸いし、想定よりも時間はかからなかった。

 服装の面でも――

 

「――ま、別にあいつになら何でもいいかな」

 

 適当に選んで、迷いもなく着たデニム生地のショートパンツと白シャツ。

 言ってしまえば、目を瞑って手に取ったも同然。

 

 駿河の方は論外として、何故、東雲に会うことに気を遣って服を選ばなければならないのだろうか。

 時間の無駄だ。それくらいなら、新聞作りの仕上げにかかりたい。

 

 大分新聞は完成に近付き、あと一日コンピューター室でボードを叩けば完成するほど。

 まぁ、夏休み目前なのでこれくらいは当然か。

 

 ともあれ、服を選ぶ理由がない。

 着替え直す時間も、手間も惜しいというものだ。

 対価となるものも理由もない以上、意味も必要性も感じない。

 

 

 …………。

 時計を、横目で確認した。

 相変わらず、指定された時刻を過ぎることはない。

 あと十分や二十分なら、まだ大丈夫か。

 

「……選びなおそ」

 

 意味もなく呟いて、着ていたシャツのボタンを外した。

 

 

 

 二度目のインターホンが鳴ってから、やや急ぎながらに玄関を開け放った。

 夏にしては涼しい気温で、今日一日は過ごしやすそうだ。

 手にかけた荷物の中身は確認したので、忘れ物はないはず。

 

「こんにちは。遅れてごめんなさい」

「やっほ~、俺は気にしてないから大丈夫」

「少しだし別にいいんだけどさ、七海ちゃんが遅れるなんて珍しいね。どうしたの?」

 

 自分で言うのもおかしな話だが、私は約束された時刻は殆ど破ったことがない。

 事前の準備は前日に済ませ、余裕を持って早めに家を出る。

 そこまでを習慣化させている以上、破る方が難しいというものだ。

 

 そして、遅れた理由なのだが。

 

「……服装選ぶのに手間取ったのよ」

「へえ、そりゃもっと珍しい。意外と迷うものなんだね、なんだかんだ言って」

「……料理面を考えると適さなかったってだけ」

 

 言いつつも、私が最終的に着た服は白のワンピース。

 あれだけ時間をかけた挙句、こんな単純な答えを渋々と出すことしかできなかった。

 全く、自分がどうにも情けない。

 

 ……もうそろそろ、受け入れる準備くらいはするべきなのだろうか。

 

「料理に適さないって、そのワンピース白だぞ? 似合う分にはいいが、とうとう目が――」

「うっさい。ちゃんとエプロンは持ってきてるわ」

「じゃあ何の服でも――ま、いっか。さっさと買い物終わらせよう!」

 

 意気込む麗美奈の後ろを、駿河と並列。

 こんな時にでも、どうやらいつも元気な子は今日も元気らしい。

 休日は「休む日」と書くのだから、早く家に帰りたいものだ。

 

 家を出て一分もせず、思考を巡らせて溜息。

 気が乗らない中、昨日もお世話になったスーパーへととんぼ返りを進行したのだった。

 

 

 

「こんなものでしょうね」

「こんなものだろうね」

「こんなものだろうな」

 

 三人で打ち合わせたかのように口を揃え、会計のためにレジへ。

 作る料理を決め、念頭に置いてから必要な分だけを買った。あいつの希望は知らない。

 取り敢えずで買った材料を料理して、文句を言ったらすぐに包丁を渡してやろう。

 

「あぁ、全部持てるから預けていいよ」

「でも結構な量あるよ? 全部とは言わないから、いくらか分担しよう」

「大丈夫だって、これくらい」

「そう。じゃあ遠慮なく頼むわね」

「お前は少しは遠慮しろ」

 

 頼もしいものだ。荷物持ちとして最適。

 ただ一つ、口をガムテープで塞いでしまえば、もう完璧だろう。

 

 顔はいいのに、勿体無い。

 入学早々の彼は私に勝るとも劣らず、女子の間で名を馳せたらしい。

 告白やラブレターを渡しに行く恋い焦がれる少女を、私自身何人も見かけた。

 

 そして誰かを模倣するように、全て玉砕。

 玉砕と言うほど思い切りではなかったが柔らかく、それとはなしに断っていた。 

 先の通り、全て。一つ残らず。

 

 運動の方も悪くはなく、勉学の方も悪くはなく。

 良い意味でも悪い意味でも、顔以外は中間なわけで。

 良く言えばそつなくこなすイケメン、悪く言えば。平凡の少し上を行くイケメン。

 本当に勿体無い限りだ。

 

 結局、彼一人に任せるはずもなく、少し多めに持ってもらった。

 冗談を八割で言ったので、元々持つ気ではあったのだ。

 しかし、逆に言えば二割本気ではあったとさ。

 

 家の前まで着いて、彼の方を向いた。

 少しして目が合うと、駿河は私の思考を覗いたように言う。

 

「荷物が多いのでインターホンが押せませんよっと」

「でしょうね。それに関して、今回は頼むつもりもないわ。麗美奈、少しだけ荷物を預けるわよ」

「え? うん、いいけど……」

 

 随分と軽いビニール袋とその中を預け、自分の手荷物を開く。

 確かに、これは忘れずに持ってきているはずだ。

 失くしたりしたら、それこそ責任が取りきれない。

 

 記憶通り、光る金属製の「それ」は手荷物の中にあった。

「それ」を躊躇なく、何の不思議も違和感もなく――()()()()()()

 

「「えっ!?」」

 

 ついでに、二人の驚いた声も私の背中から聞こえた。

 まぁ、考えてみれば当然の反応か。

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 そろそろ彼ら三人が到着してもいい時間だ。

 一応外出用の服装に着替えたが、問題ないだろう。

 現在、リビングのソファにて休憩中。休憩するようなことはしていないけども。

 

 料理教室と聞くと、学校のクラブやママさん達の方を彷彿とさせる気がしてならない。

 遊びを交えたような、コミュニケーション作りのような。

 

 だが、意外と俺にとっての今日は笑えない。

 ある程度の技術を習得しなければ、今後の生活に関わってくる。

 前に綾瀬に言われたように、栄養失調になっては笑い話では済まされない。

 

 自炊から遠ざかっても、後々必要になってくるので、結局は先延ばしにしているだけ。

 ならば、早い内に覚えてしまった方がずっと楽で得だ。

 

 はて、肝心の料理は一体何を作るのだろうかと思った時。

 

 ――()()()()()が扉越しにリビングまで伝わった。

 

「おかえり――じゃねぇよ!?」

 

 如何せん、癖というものは恐ろしい。

 実家での迎えの挨拶が定着化しているせいで、いないはずの人間を迎えるところだった。

 

「おかえり」なんて言う相手は当然いない。

 もしかしたら、泥棒や空き巣だったりするのだろうか。

 にしても堂々すぎるだろ。我が物顔で胸張って歩いてきたらどうしようか。それはそれで困る。

 

 突飛な想像をしていた割には、玄関の向こう側の真実は思いの外あっさりとしたもので。

 

「こういう時、私は『ただいま』って言えばいいの? それとも指摘するべき?」

 

 ――ある意味で、一番突飛な解答だった。




ありがとうございました!

入学当時の話は、勿論どちらも一年生です。
わかるとは思いますが、今は二年生です。
いつか一年生のときのことを簡単に書こうと思っていましたが、二年の転校生である主人公君には不可能なわけで。

蒼夜君視点が少ない今回、書いた次第ですねはい。

さて、前回の違和感というもの。
これも見てわかる通り、鍵の持ち出しですね。

蒼夜君が鍵を内側から閉めない限り、鍵が閉まる音はしないですよ、普通。
ではどうして施錠音がしたのかといいますと、もう鍵を持ち出した以外ないんですね。

「ちょっと短いのかなぁ?」、と思ったそこの貴方。
気のせい、だよ?(*´ω`*)
……ごめんなさい。

ではでは!

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