クーデレの彼女が可愛すぎて辛い   作:狼々

1 / 30
どうも、初めましての方は、初めまして! 狼々です!
『東方魂恋録』ないしは『捻くれた俺の彼女は超絶美少女』、はたまた、両方見てくださっている方は、
私だ。

今回、ヒロインがクーデレということで進めていきます。
こちらは、先二作の交互投稿に加え、不定期の投稿とさせていただきます。
あらかじめご了承ください。

では、本編どうぞ!


プロローグ
第1話 儚く、美麗で


 晴れ渡った青空。今は五月。まさに、春眠暁を覚えず、といった日差し。暖かくて、今にも二度寝してしまいそうだ。

 ベッドから飛び起きて登校の準備を終え、着たこともない制服に袖を通し、服装を整える。玄関から出て、春の暖かさを全身で受けて、つい欠伸を漏らしてしまった。

 太陽からの日差しを真っ向から受けながら、見慣れない通学路を歩む。通う高校が歩いて15分と近いのが幸いし、迷うことはない。

 事前に通る道は確認したし、抜かりはない。

 

 俺、東雲(しののめ) 蒼夜(そうや)は、今日から露咲(つゆさき)高校二年生として転入することになっている。

 正直、友達作りとかは苦手中の苦手だ。できる気がしない。それに関しては、半ば諦めてしまっている。早すぎだろ、おい。今日が転入初日だぞ。

 ……そこ、ぼっち言うな。

 

 校門付近になり、見慣れない顔ということで生徒から注目を集めながらも、職員室へ。

 

「失礼します。今日から転入する、東雲 蒼夜です」

「あぁ、君が東雲君か。私は、君の入るクラスの担任の、遠山(とおやま) 里美(さとみ)だ。これからよろしく頼むよ」

 

 優しそうな女性教師が応えてくれる。

 女性教師って言い方には、どことなくエロスが漂っている気がするのは、俺だけなのだろうか。

 っと、そんなどうでもいいことは置いといて。

 

「は、はい! こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 少々拙いながらも、返事を返すことができた。どれだけコミュ障なんだよ。この学校もぼっちで過ごすことになるのかな……?

 俺はこの性格上、あまり友人関係を築かなくなった。別に、他人と関わるのが嫌とかいう、捻くれた考えを持っているわけではない。

 ただ、少し……あれだ、人見知り。シャイなのだ。シャイボーイなのだ。響きがかっこいいよね、なんか。

 

 

 

 

 少しの時間をかけて、職員室で手続きを終えた後、三階の教室、三組のクラスプレートがある教室へ。

 先生が先導してドアを開け、俺がそれに続いて教室に入室。

 俺が入った途端に、周りがざわざわとし始める。そして、こちらに向けられる珍しいものを見るような視線。

 俺はツチノコか何かなのだろうか? 絶滅危惧種なの、俺?

 

「はい、今日からこのクラスに転入する、東雲 蒼夜君だ。色々わからないこともあるだろうから、皆で教えてくれ。じゃあ、東雲君からも挨拶を頼むよ」

 

 遠山先生の促しに小さく首を縦に振り、肯定の意思表示。

 前に一歩出た瞬間、周りの視線を一層感じながらも、緊張をなるべく前面に出さないよう、自己紹介に移る。

 

「は、初めまして、東雲 蒼夜です。皆さん、よろしくお願いします」

 

 無難な挨拶を終え、一歩下がると同時に、徐々に緊迫感も引いていく。

 周りの対応もそれなりといったようで、特に悪目立ちすることもなかった。

 ぼっちにしても、悪目立ちするのは止めたほうがいいだろう。

 

 顔も悪いわけでもないが、整っているというわけでもない。

 髪は普通の黒色だが、目がブルーのつり目。それだけだ。特に変わったことはない。

 強いて言うならば、つり目が少し攻撃的と捉えられることがあるくらい。

 勉強も中の上くらいなので、心配することはないだろう。そう信じたいものだ。

 

「東雲君は向こうの席に座ってくれ」

 

 遠山先生が指した場所は、中央列の最後。中々いい場所だとは思う。

 静かにその席に歩を進め、座ろうとした時。

 

 隣の白色の髪が、視界の端で見えた。

 

 そちらの方を向くと、その髪の持ち主の少女に、目を奪われた。魅了された。

 

 さらさらとした白髪が肩まで伸びていて、春服で隠れるきめ細やかな白肌を、さらに隠している。

 つり目気味なブルーの瞳はどこまでも澄んでいて、どこか清流を想起させる。

 華奢な体つきは、抱き締めたら折れてしまうかと思うほどだ。

 

 俺が彼女に抱いた第一印象は――()()()()()

 決して弱々しいわけではない。むしろ、彼女がそこにいるだけで絵になる程に美しく、確立した存在。

 しかし、どこか儚い。夢の中の世界の住人のような気がしてならない。

 彼女の優美さは、この世の者が持つべきなのか……?

 

 そう思わせる程に、美しく、儚い夢のようだった。

 彼女が俺の目線に気づき、数瞬目が合ったが、すぐに逸らされた。

 まぁ、初対面の異性からじっと見つめられるのは、誰だって不審がるし、良い気はしないだろう。

 

 見惚れるのも程々にしよう、と自分に折り合いをつけ、席に着く。

 

「何かわからないことがあったら、取り敢えずは隣の、クラス委員の綾瀬(あやせ)に聞いてくれ」

 

 と、取り敢えずって……さっき皆でって言ったのはどこの誰でしたかね?

 

 そう頭で疑問符を浮かべていると、先程の少女がこちらを向く。

 どうやら、この子がその『綾瀬』という人物らしい。

 

「……どうも」

「え? あ、あぁ、どうぞよろしく」

 

 鈴が鳴ったような透き通った声が、一瞬自分に向けられたものだとわからなかった。

 戸惑いながらも返事をしたが、すぐに顔は前を向いた。

 ……え? 俺ってこんなに短時間で嫌われる要素があるのか? 凹むぞ。

 

 

 そこから十分ほどして、SHR(ショートホームルーム)を終えて、休み時間に入る。

 もう入学式から一ヶ月が経過していて、既にある程度の友人関係が形成されている時期だ。

 

 そんな中、俺が輪に入ることができるだろうか。いや、できないだろう。

 できないのかよ。もっと自分に可能性を、希望を持てよ。

 反語でより強調されているあたり、自信のなさが露呈してしまっている。

 俺は別にどうってことはない。普通に過ごす上では。

 

 ただ、よくある『アレ』が回避できないのが難点だ。

 「はい、じゃあ好きな奴で二人組作れ~」というアレだ。

 隣の奴でいいじゃん。なんでわざわざ好きな奴とで組ませるかねぇ。ぼっちとしては、不満しかない。

 

 廊下へ駆け出す者、準備を早々に済ませる者、ペアやグループで話す者、ただ一人でぼーっとしている者。

 同じ人でも、こうやって行動に大きな差があるのは、見ていて飽きない。

 

 しかし、当然の如く、俺に話しかける者はいない。自分で思っておいてなんだが、悲しくなってくる。

 

 隣の綾瀬……だったかな? 彼女の姿が目に入った。

 彼女は、誰とも話さずに読書をしている。あの容姿だと、軽く人だかりが出来てもおかしくないだろうに。

 まぁ、これはチャンスだろう。この子とはこれからなにかと交流があるだろうし、今の内に仲良くなっておこう。

 

「な、なぁ、綾瀬?」

「…………」

 

 無言。無視。完璧に。目線が本からピクリとも動かされていない。

 き、気付いていないのだろうか……?

 

「あ、綾瀬さ~ん……?」

「……はぁ~っ。聞こえてるわよ。で、何?」

 

 溜め息を吐きながら、本に視線を向けたまま応える。

 

「え、え~っと……俺は東雲 蒼夜だ。よろ――」

「それはさっき聞いたわ」

 

 俺の言葉を途中で遮りながら、澄まし顔のままページを(めく)る。

 続く言葉に詰まってしまう。

 

「あ、あぁ~……綾瀬さんは、名前はなんて言うんだ?」

「……七海(ななみ)。綾瀬 七海。まぁ、よろしく」

「あ、あぁ、改めてよろしく」

 

 どうにも話しづらい。慣れていないだけなんだろうが。少しずつ慣れていくか。

 頭でそう結論付けて、滞った会話と言えるかどうかも怪しい会話を切り上げ、教室を出る。

 廊下の生徒が、見慣れない顔を見てこちらを凝視する。

 が、話しかけようとする者はいない。

 

 どこか人の少ない場所に移動しようとした時。

 

「おい、え~っと……東雲!」

 

 俺の名前を叫ぶ声が後ろから飛ばされ、声の主を探るため、後ろを振り向く。

 

 瞳は黄色に染まっていて、明るい茶髪の、これまた笑顔も明るい好青年。

 かっこいい顔立ちで、モテそうな見た目だ。

 

「よ、よう。あの綾瀬に話しかけるたぁ、随分と変わり者だな」

「え、っと……貴方は?」

「あぁ、すまない。俺は駿河(するが) 遥斗(はると)だ。よろしく、東雲!」

 

 そう言って手を差し出され、握手を促される。

 

「改めて、東雲 蒼夜だ。こちらこそ、よろしく頼む」

 

 しっかりと彼の手を握りしめて、笑顔になる。

 記念すべきこの学校での友達第一号、というわけだ。

 

「よっし、これからは名前で呼ぼうぜ! 堅苦しいのは無しでな、蒼夜?」

「お、おう、わかった。遥斗」

 

 俺が戸惑いを隠せずに返事をすると、遥斗は爽やかな笑みを浮かべた。

 この笑顔に惚れてしまう女の子は、きっと多いだろう。

 俺もそうであればよかったんだがな。恋愛? 何それ美味しいの? 状態である。

 

 誰だよ、年齢=彼女いない歴とか、童貞歴とか言った奴は。

 

「で、その綾瀬がどうかしたのか?」

「あ、そ~そ~。この学校一の美少女ってことなんだが、入学日から被告白数が二桁を悠々と超えた。そして、全部全部、片っ端から玉砕したっていう伝説を残してんだよ。中には、言い終わる前にフラれた生徒もいるんだとか」

 

 は……!? 入学早々に、告白? しかも、二桁?

 ありえない。そう思ったが、彼女の容姿を思い出す限りでは、きっぱりと否定できない。

 ……ありえてしまう。俺の考えが一瞬で覆った。

 

「お、いい感じに驚いてんな。ま、当たり前だわな。だけど、ああやって静かってか……冷たい感じの態度とるから、周りが避け気味になってるってわけだ」

 

 なるほど。確かに、当たりが冷たい感じはしていた。

 あの人当たりと、ばっさりとした言い方が相乗効果、といったところだろうか。

 まだ交流が浅すぎるので、なんとも言えないが。

 

「で、そんな綾瀬に転入生がいきなり話しかけて、俺含む皆が驚いたっつ~わけさ。それが珍しくて声をかけたんだよ」

「へぇ、そこまで言うんだな」

 

 さぞかし……その、個性的な人なのだろう。

 

 そこまで会話して、次の授業の予鈴が鳴る。

 

「お、そろそろ戻るか」

 

 遥斗に頷き、二人で一緒に教室に戻る。

 俺の席の隣では依然に読書を続ける、美しい綾瀬。

 しかし、彼女に近づこうとする者は全くいない。

 その姿と表情は、どこか悲しそうで、寂しそうにも見えた。

 

 

 

 今日の授業が終わり、もう放課後になった。

 教科書は綾瀬に見せてもらい、学校の施設は綾瀬に教えてもらう等など――

 綾瀬と絡むことが、なにかと多かった。

 

 一方の綾瀬も、少し面倒がりながらも、遠山先生から言われたからか、全て教えてくれた。

 ありがたいの一言に尽きる。

 

 帰りの準備を済ませ、教室を出て廊下へ。

 が……校門までの道のりを覚えていない。

 いや、嘘じゃなく、本当に。方向音痴とかでもなく。

 

 この学校、色々と複雑な構造をして建っている。

 職員室と下駄箱の距離は遠いので、職員室からここまで来たように辿って戻ることも意味がない。

 じゃあ、どうやって職員室に行ったり、教室へ行ったかって?

 先生についていったに決まっているじゃないか!

 

「え、えぇ、と……」

「……何してんの」

 

 声をかけられ、驚きながら声を辿る。

 そこには、綾瀬がいた。こちらをジト目で見ている。

 そんな顔をしていても、容姿は非常に整っていて、とても綺麗である。

 

「あ、いや、校門までの道がわからないんだ」

「あんた、一体どうやって……はぁ、私が先に行くから、ついてくればいいわ」

 

 またも少し面倒そうな顔を浮かべて、俺が返事をする前に廊下を通っていく。

 再び綾瀬に頼ることとなり、少し悪い気がするが、本当にわからないのでついていくしかない。ついていくだけだし、いいよな。

 

 お互いに立ってわかったが、綾瀬の身長が思いの外低い。

 俺は170cmくらい。それから考えると綾瀬の身長は……155cm前後といったところだろうか?

 

 そう思って歩を進めようとした時、遥斗に肩を組まれる。

 遥斗から肩を組まれるくらいなので、俺と同じくらいの身長か。

 

「お、おい蒼夜! おま、綾瀬から話しかけられたのか!?」

「は? あ、あぁ、そうだが……」

 

 言葉を返すと、話しかけた時の驚き顔が、一層鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。

 見ていて、とても面白い顔だ。心の中で笑ってしまう。

 

「い、いやいや、綾瀬から声かけるって、え? ……すげぇな。今までそんな奴は数人しか見たことねぇぞ」

「え? 一ヶ月間あったでしょ? そんなわけが――」

「あるんだよ、それが。相手から話しかけることがあっても、綾瀬からってのは殆どなかったんだよ」

 

 ほう、それは嬉しいものだな。

 ただ良心で話しかけられただけかもしれないが。

 友達は少ない方なのだろうか。

 

「あ、じゃあ俺は行くよ。また明日な、遥斗」

「おう、またな、蒼夜」

 

 遥斗と別れの言葉を交わし、見えなくなりそうになった綾瀬の背を追う。

 少しついてくるのが遅かったせいか、後ろを確認された。

 彼女はなんやかんや言って、心は優しいと思うんだよなぁ。

 

「ごめん、遅れちゃって」

「そう思うなら、早く道を覚えることね」

 

 や、優しいと思うんだよなぁ……。

 

 

 

 俺の家までの道のりは覚えてるので、問題はない。

 のだが……

 

「で、いつまでついてくるの?」

「いや、俺もこっちなんだよ。ついてきてるわけじゃね~よ」

「……そ」

 

 方向が同じでした。ついてくるとまで言われているし、今日一日で本格的に嫌われたのか?

 綾瀬の家と思わしきところについた。俺の家はもう少し先にある。

 

「じゃ、また明日な」

「はぁ、わかったわ。明日ね」

 

 綾瀬に戸惑われながら別れ、自宅へ。

 一人で歩くことに静謐(せいひつ)感を覚える。

 

 初日で友達が、少なくとも一人できた。順調な滑り出しだと言えるだろう。

 当分の目的は、友達作りってところかな?

 

 ……ぼっちだな、これ。




ありがとうございました!

さすがに1話目でデレは出しません。
後方確認がそれっぽいですが、あれはセーフなはずです。
七海ちゃんには、徐々に心を開いてもらおうと思っています。
途中、ツンデレの要素が入る……かもしれません。

これから、この作品と私をよろしくお願いします!

ではでは!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。