あまりお返事できずすみません。
いろんな懐かしいハガレンソングが出てきて、うれしいです。
「全員集まったな」
「装者勢ぞろい、とは、言い難いけれどね」
さて、騒動が一段落した数日後の午後。
学校を終えた子や、海外から戻ってきた二人を含めた。
総勢六名のシンフォギア装者が、S.O.N.G.本部に集まっている。
その表情はどれも芳しくない。
無理も無いか。
翼さんとクリスちゃん。
頼れる二人が、一晩で一気にやられたんだから。
「では了子くん、頼む」
「はいはーい」
弦十郎さんに言われて、了子さんがキーボードを操作。
大きなモニターに、シンフォギアのマイクユニットが表示された。
「これは?」
「先日破壊された、天ノ羽々斬とイチイバルよ」
了子さんの解説に寄れば、コアである聖異物は無事らしいけど。
装備を定着させる機能が失われている状態、とのことだった。
後ろでマリアさんが、『セレナのギアと同じ』とつぶやいたのが聞こえる。
「・・・・もちろん、直るんだな」
問いかけるクリスちゃん。
顔も声も不敵なんだけど、空元気なのが簡単に読み取れた。
まあでも、開発者がこうやって存命なわけだし。
割とワンチャン・・・・。
「当然、でも今はダメ」
「ッなんでだよ!?」
あら、ダメ?
クリスちゃんも断られると思わなかったのか、乗り出して食って掛かる。
「何の対策も講じないまま直したって、二の舞になるだけよ。壊して修理して、修理して壊して、キリがなくなるわ」
『直すのだってタダじゃない』と、世知辛い事情を漏らしながらため息つく了子さん。
「それに、あなたたち自身も、次こそは仕留められるかもしれないのよ」
何より、と。
了子さんは親指を立てて、
「うちのボスが、そんな神風特攻認めると思う?」
ないですね。
親指を向けられた弦十郎さんも、『当然』と言いたげに胸を張っていた。
「となると、現状戦えるのは響くんだけか・・・・」
ざっと、視線が集中する。
ひえぇ、結構プレッシャー来るねぇ・・・・。
「そんなことないデスよ!」
「私達だって・・・・!」
物申す!といわんばかりに、声を上げる調ちゃんと切歌ちゃん。
二人もギアを壊されてないわけだし、さらっとハブられるのは納得がいかないんだろう。
「ダメだ」
「どうしてデスか!?」
でもまあ、これも却下されてしまった。
「LiNKERで適合係数の不足を補わない運用が、どれほど体に負担をかけているか・・・・」
「LiNKERだって、現状では限りがある・・・・命を削らせかねない状況は、出来る限り作りたくない」
弦十郎さんと了子さんの代わりに、オペレーターコンビが説明してくれた。
――――二課がS.O.N.G.に再編成されるに辺り、いくつかの『制限』が課せられた。
その中には、LiNKERのことも含まれている。
『現存するものより薬害の少ないものが開発されない限り、新しく製造することを禁ずる』
そんな内容だったはずだ。
現在S.O.N.G.は、奏さんが使っていた『モデルK』と、マリアさん達F.I.S.が使っていた『モデルF』の二種類を保有している。
『原作』に比べれば数は揃っているけれど、無駄遣いできないのも確かだ。
「・・・・・どこまでも、私達は役に立たないお子様なのね」
「メディカルチェックの結果が、思った以上によくないことは知ってるデス、でも・・・・!」
けどまあ、納得できるはどうかは別問題だよね。
案の定、二人は悔しそうに顔をゆがめていた。
「こんなことで仲間を失うのは、二度とごめんだからな」
「今んところは、その気持ちだけで十分だからよ」
翼さんとクリスちゃんがフォローを入れていたけど、あんまり効果はないようだった。
「時に了子くん、彼らに関して知っていることはあるか?」
場の空気を切り替えるように、弦十郎さんが話を振る。
確かに、今回相手さん方が使った技術は、わたし達から見ればとんでも初見テクなんだけど。
ある種『長生き』な了子さんならあるいは、何かしらのヒントを持ちえているんじゃないかって思うよね。
「個人的には知らないけど、彼らが使っている技術なら」
「本当か!?」
モニターに表示された、昨日接触した連中を見つめて。
了子さんが頷けば、弦十郎さん始め、今度はみんながぎょっとなっていた。
「あれは『錬金術』の類よ」
「錬金術?」
「あの、漫画やゲームでよく見かける?」
「そう、それ」
オウム返しに聞いた友里さんや藤尭さんに、正解と指を向けて了子さんは続ける。
「万物に干渉し、物体を別のものに変化させる力。後に魔術と科学に分離した、異端技術の一つ」
ほぉー、さっすが了子さん。
なんかすごいこと言ってるのは分かるぞー。
「ノイズを作り出すなんて発想は流石に予想外だから、憶測でしか語れないけど・・・・錬金術における工程は、『理解』、『分解』、『再構築』の三つ。こいつらは二番目の分解の工程で止まるように調節されているようね」
・・・・・どうしよう。
『きーみのってっでー』な赤いちっちゃな錬金術師が、さっきから頭にちらついて・・・・。
「まあ、ここから先は、あの子に聞いてみるとしましょ?」
『誰が豆粒ドチビだぁーっ!!』と脳内で怒られたところで、了子さんのウィンクに引き戻された。
『あの子』っていうことは・・・・。
閑話休題。
「――――ボクの名前はエルフナイン。錬金術師キャロルの下で、とある装置の一部の建造に携わっていました」
本部の留置スペース。
装者みんなと、弦十郎さん、了子さんの八人で覗き込むのは、昨日保護された破廉恥ルックこと、エルフナインちゃん。
・・・・いや、このスペースに八人はぎっつぎつやでぇ。
「ですがある日、データにアクセスした際、自分が作っているものが、世界を滅ぼすものであるということを知ってしまったんです」
結構威圧を感じるはずなのに、エルフナインちゃんは特に臆することなく話し続ける。
「世界を分解して滅ぼすワールドデストラクター、『チフォージュ・シャトー』・・・・ボクはキャロルの蛮行を阻止するべく、飛び出してきたんです」
「ちっちゃな体で、ガッツのあることするわね」
了子さんのぼやきには、ちょっと恐縮しているようだったけど。
それにしても、『チフォージュ・シャトー』ねぇ。
『青髭』の物語に出てきたお城が、そんな名前だったっけ?
「みなさんに、キャロルに対抗しうる手段を、『ドヴェルグダインの遺産』を届けるために。ボクはここまで来たんです」
エルフナインちゃんと一緒に視線を落とせば、さっきから膝にちょこんと乗せている箱が。
何だか考古学的に価値のありそうな装飾だなぁ。
「ドヴェルグダイン・・・・まさか?」
「はい」
で、なんか心辺りのある了子さんに頷いたエルフナインちゃんは。
箱を開けて、古びた金属片を取り出す。
「魔剣・ダインスレイフの欠片です」
・・・・とうとう来たよ。
◆ ◆ ◆
話し合いが一段落し、エルフナインはこのまま本部に残ることに。
了子はもたらされたダインスレイフの欠片を解析すべく、早速技術班へ持ち込んで行った。
装者達は、学生組は明日も学校と言うことで半数以上が帰宅し。
現在は響、翼、マリアの三人だけである。
「・・・・それで」
休憩スペース。
手に入った情報で熱った頭を、それぞれ飲み物でクールダウンする中。
マリアが横目で響を見やった。
「あなたは、何が引っかかっているの?」
「引っかかる?どういうことだ?」
響が、一切そんな素振りを見せなかったからだろう。
疑問の声を上げた翼も、一緒になって響に目を向けた。
「・・・・上手く、出来過ぎている気がするんです」
特に隠すつもりもなかったのか、少し間を置いてから口を開く響。
「翼さんとクリスちゃんのギアが壊されたところに、相手側から逃げてきたというエルフナインちゃんと、ダインスレイフの存在・・・・・タイミングが良すぎます」
『むしろちょっと怪しいくらい』、と。
響はアイスカフェオレを一口。
「言われてみれば・・・・」
マリアははっとしたような顔で、翼も呟きながらマリアを見て。
互いに頷きあう。
「エルフナインがこちらへ協力することこそ、相手の狙いでは、ということか」
「だが、現状はそれに頼る他ない。懸念が生まれたからとはいえ、だからと言って他の手段を探す猶予があるかと言えば・・・・」
響の懸念も分かる。
しかし、もはや戦力が響一人しかいない中。
他の方法を模索するほどの時間も余裕も残されていない。
状況はそれほどまでに逼迫しているのだ。
「ですよね」
響自身も、それをよく分かっていたのだろう。
次の瞬間には、気の抜けた笑みで一気に脱力していた。
「けれど、あなたの気付きが無駄とも思えないわ」
「ああ、まずは司令達の耳に入れておこう・・・・雪音達に話すかどうかは、また後で」
何せ解決策が見えてきたところへの、敵の罠やもしれぬという可能性だ。
扱いが慎重になるのもまた、当然のことであった。
「ありがとうございます」
響は、クリス達への隠し事をする罪悪感半分、信じてくれた翼とマリアへの感謝半分の。
どこか乾いた笑みを浮かべた。