チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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返信がおっつかない程のご感想、誠に感謝感謝です。
筆が乗りました故、短いですが投下。

追記:感想見て気付きました。
ビッキーおめでとうございました!!
ここではえらい目に合わせてるけど、大好きだよ!!


心臓って弱点としては弱いイメージ

ほら見ろおまいら!きりしらちゃんやぞ!

なんて盛り上がれる状況だったらいーんでしょーけどねー!

鎌を引っつかんで、迫ってきた丸鋸にぶち当てる。

ぎりぎり嫌な音を立てて火花を散らす刃。

傍から見てる分には絵になるんだろうけど、当事者としては危なっかしくてしょうがない。

 

「お前だけは・・・・お前だけでもォッ!!」

「許さないッ!絶対に、絶対にッ!!」

 

アニメ何かで見せてくれる、かわゆい顔はどこへやら。

殺る気満々の殺意マシマシな表情は、言いようの無い凄みを見せていた。

 

「ッ仇がどうのとか言うけど・・・・!」

 

・・・・とぼけようがないので、どうにか口を開く。

 

「先に手を出してきたのはあの人だかんね?わたしはただ迎え撃っただけ、正当防衛を主張するよ!」

「ッ言い訳をおおおおおおおおお!!」

 

切歌ちゃんが、手首を捻って拘束を解く。

翻る刃から逃げれば、つい今まで立っていた場所に食い込む丸鋸。

うっへぇ、これ受けたらひとたまりもないべよ。

 

「ッ立花!待ってろ、すぐに・・・・!」

「調と切歌も!落ち着きなさい!」

 

この状況を見かねたのか、ギアを纏った翼さんとマリアさんが加勢しようとしてくれる。

だけど、この場合は・・・・!

 

「いや、やらせてやれ」

「雪音!?」

 

わたしが言う前に、クリスちゃんが止めてくれた。

 

「ああいう感情ってのは、口で言ったところじゃ止まらねぇ」

「黙ってみていろというのか!?」

 

マリアさんは立ち止まったけど、翼さんはなお食って掛かる。

 

「・・・・理屈じゃねぇんだよ、『憎い』って感情は」

 

鬼気迫る翼さんに怯むことなく、クリスちゃんが断言すれば。

やっと踏みとどまってくれた。

・・・・すみません、ありがとうございます。

 

「ああああああああああッ!」

「よっ、と」

 

ばら撒かれる丸鋸を弾き飛ばして、まずは調ちゃんに接近。

おっきな鋸に切り替えた隙をついて背後に回り、手刀で意識を刈り取ろうとする。

 

「させないデスッ!」

「お、とと」

 

だけど手を振り上げたところで、左からの攻撃に気付いて後退。

『当たるかな?危ないかな?』と思ったので、ついでに調ちゃんも突き飛ばして逃がす。

それにしてもやべーな、慣れたと思っていたけど全然そうじゃないや。

左側が完全に死角になっている。

お二人も何度も打ち合えば流石に気付くのか、わたしの左側に回って攻撃してくるようになった。

一方がひきつけている間に、もう一方が死角から襲ってくる。

うん、割と脅威。

 

「正当だろうがッ!なんだろうがッ!」

 

何とか打開策を考えていると、調ちゃんがさっきのお返しとばかりに肉薄してくる。

鋸を何度も避け続ける、攻撃しようにも切歌ちゃんがネックだ。

瞳に映った自分が見えるくらい近づいた調ちゃんは、牙を剥くように怒鳴り上げる。

 

「貴女が!わたし達の家族を傷つけたことに!変わりはないッ!!!!」

 

――――多分、それがスイッチ。

頭の中、砂嵐みたいな雑音と共に。

忘れそうになっていた地獄を、思い出しかけて。

 

「はああああああッ!!」

 

その一瞬を突かれた。

右側が軽くなる。

目を向ければ、切り株からぶしゃぶしゃ零れる鮮血。

刎ね飛ばされた腕は、無残に遠くへ転がった。

 

「ッ立花ァ!!」

 

血を失って、一気に重くなる体。

何とか飛びのいたけど、頭の痛みは治まらない。

呼吸を整えようとすればするほど、足元に転がる死体を幻視してしまう。

 

「――――マストォ!」

 

こんな大きな隙。

誰だって見逃さない。

 

「ダアアアアアアアアアアアアアアアアアイッッ!!」

 

我に返れば、翡翠の刃が迫ってきて。

 

「―――――ぁ、が」

 

――――苦しいのは。

肺にも刃が刺さって、息がしにくいから。

さらに込み上げる血が喉を塞いで、息苦しさを助長させる。

 

「ぎ、ぅ・・・・ぐうぅ・・・・!」

 

背後が固い、多分壁に押し当てられてる。

どれほど強い力を込めているのか、貫通した後もなお、体へ侵入して。

空気を求めた喉が、細かく痙攣している。

だけどそれも束の間、血の塊を吐き出すだけに終わった。

ほどなく意識が遠のく、視界が段々暗くなる。

・・・・・ああ、やばい。

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

「――――はあ、はぁっ・・・・は・・・・!」

 

鎌を突き立てられ、壁に磔られた響。

束の間小刻みに動いていたが、やがて抵抗を試みていた腕が力なく垂れる。

決定打を刻み込んだ切歌は、荒く呼吸を繰り返して。

深く突き刺した鎌を、引き抜いた。

心臓というある種の『タンク』に当たった所為か、思ったより多くの血が零れる。

解放された響は抵抗することなく、膝から崩れ落ちるように地面に倒れこんだ。

隣に降り立った調と共に、響を注意深く観察する切歌。

五秒、十秒と待って。

完全に、事切れたと判断して。

 

「・・・・や、た?」

「・・・・やった」

 

一歩、二歩と、後ずさる。

血溜まりに沈んだ仇敵は、ぴくりとも動かない。

積年の恨みを、晴らすことが出来た。

 

「やった、やった・・・・はは、勝てたデス」

「仇、取れた・・・・はは、は・・・・」

 

どこか虚ろな目で、乾いた笑いを上げたときだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――気はすんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予想だにしなかった声に、そろってぎょっとする。

目の前、血溜まりに沈んだ死体が。

いや、死んだはずの仇敵が。

どこか気だるげに、いっそリラックスしているような雰囲気で。

ごろんと寝転がったまま、見上げてきていた。

 

「な、な・・・・!?」

「―――――ッ!?」

 

流石の二人も肩を跳ね上げ、大きく飛びのく。

戦いを見守っていた翼にクリス、マリアも驚愕を隠せないようで。

三者三様に目を見開いたり、口をぱくぱくさせたりしていた。

こともなげに上体を起こした響は、切り株になった右腕を上げる。

すぐにメリメリと音がしたと思えば、直後に腕が()()()()()

またぎょっとなる調と切歌。

ここで調が、先ほど斬り飛ばした右腕に目をやれば。

今まさに塵となり、風に乗って消えていくところだった。

 

「・・・・・バケモノ」

「そのバケモノに喧嘩を売ったのは、どこの誰だっけ?」

 

じろりとねめつければ、二人は思わずたじろいだ。

 

「まあ、もろもろ言いたいこととかあるかもだけど」

 

生え変わった右腕の調子を確かめた響は、その手でがしがしと頭をかく。

 

「まずは話でも聞かせてよ、取って食いはしないから」

 

にかっと浮かんだその笑みに、逆らおうだなんて思いつきもしなかった。




気はすんだ?>_(:3 ∠ )_ ゴロゴロ

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