筆が乗りました故、短いですが投下。
追記:感想見て気付きました。
ビッキーおめでとうございました!!
ここではえらい目に合わせてるけど、大好きだよ!!
ほら見ろおまいら!きりしらちゃんやぞ!
なんて盛り上がれる状況だったらいーんでしょーけどねー!
鎌を引っつかんで、迫ってきた丸鋸にぶち当てる。
ぎりぎり嫌な音を立てて火花を散らす刃。
傍から見てる分には絵になるんだろうけど、当事者としては危なっかしくてしょうがない。
「お前だけは・・・・お前だけでもォッ!!」
「許さないッ!絶対に、絶対にッ!!」
アニメ何かで見せてくれる、かわゆい顔はどこへやら。
殺る気満々の殺意マシマシな表情は、言いようの無い凄みを見せていた。
「ッ仇がどうのとか言うけど・・・・!」
・・・・とぼけようがないので、どうにか口を開く。
「先に手を出してきたのはあの人だかんね?わたしはただ迎え撃っただけ、正当防衛を主張するよ!」
「ッ言い訳をおおおおおおおおお!!」
切歌ちゃんが、手首を捻って拘束を解く。
翻る刃から逃げれば、つい今まで立っていた場所に食い込む丸鋸。
うっへぇ、これ受けたらひとたまりもないべよ。
「ッ立花!待ってろ、すぐに・・・・!」
「調と切歌も!落ち着きなさい!」
この状況を見かねたのか、ギアを纏った翼さんとマリアさんが加勢しようとしてくれる。
だけど、この場合は・・・・!
「いや、やらせてやれ」
「雪音!?」
わたしが言う前に、クリスちゃんが止めてくれた。
「ああいう感情ってのは、口で言ったところじゃ止まらねぇ」
「黙ってみていろというのか!?」
マリアさんは立ち止まったけど、翼さんはなお食って掛かる。
「・・・・理屈じゃねぇんだよ、『憎い』って感情は」
鬼気迫る翼さんに怯むことなく、クリスちゃんが断言すれば。
やっと踏みとどまってくれた。
・・・・すみません、ありがとうございます。
「ああああああああああッ!」
「よっ、と」
ばら撒かれる丸鋸を弾き飛ばして、まずは調ちゃんに接近。
おっきな鋸に切り替えた隙をついて背後に回り、手刀で意識を刈り取ろうとする。
「させないデスッ!」
「お、とと」
だけど手を振り上げたところで、左からの攻撃に気付いて後退。
『当たるかな?危ないかな?』と思ったので、ついでに調ちゃんも突き飛ばして逃がす。
それにしてもやべーな、慣れたと思っていたけど全然そうじゃないや。
左側が完全に死角になっている。
お二人も何度も打ち合えば流石に気付くのか、わたしの左側に回って攻撃してくるようになった。
一方がひきつけている間に、もう一方が死角から襲ってくる。
うん、割と脅威。
「正当だろうがッ!なんだろうがッ!」
何とか打開策を考えていると、調ちゃんがさっきのお返しとばかりに肉薄してくる。
鋸を何度も避け続ける、攻撃しようにも切歌ちゃんがネックだ。
瞳に映った自分が見えるくらい近づいた調ちゃんは、牙を剥くように怒鳴り上げる。
「貴女が!わたし達の家族を傷つけたことに!変わりはないッ!!!!」
――――多分、それがスイッチ。
頭の中、砂嵐みたいな雑音と共に。
忘れそうになっていた地獄を、思い出しかけて。
「はああああああッ!!」
その一瞬を突かれた。
右側が軽くなる。
目を向ければ、切り株からぶしゃぶしゃ零れる鮮血。
刎ね飛ばされた腕は、無残に遠くへ転がった。
「ッ立花ァ!!」
血を失って、一気に重くなる体。
何とか飛びのいたけど、頭の痛みは治まらない。
呼吸を整えようとすればするほど、足元に転がる死体を幻視してしまう。
「――――マストォ!」
こんな大きな隙。
誰だって見逃さない。
「ダアアアアアアアアアアアアアアアアアイッッ!!」
我に返れば、翡翠の刃が迫ってきて。
「―――――ぁ、が」
――――苦しいのは。
肺にも刃が刺さって、息がしにくいから。
さらに込み上げる血が喉を塞いで、息苦しさを助長させる。
「ぎ、ぅ・・・・ぐうぅ・・・・!」
背後が固い、多分壁に押し当てられてる。
どれほど強い力を込めているのか、貫通した後もなお、体へ侵入して。
空気を求めた喉が、細かく痙攣している。
だけどそれも束の間、血の塊を吐き出すだけに終わった。
ほどなく意識が遠のく、視界が段々暗くなる。
・・・・・ああ、やばい。
◆ ◆ ◆
「――――はあ、はぁっ・・・・は・・・・!」
鎌を突き立てられ、壁に磔られた響。
束の間小刻みに動いていたが、やがて抵抗を試みていた腕が力なく垂れる。
決定打を刻み込んだ切歌は、荒く呼吸を繰り返して。
深く突き刺した鎌を、引き抜いた。
心臓というある種の『タンク』に当たった所為か、思ったより多くの血が零れる。
解放された響は抵抗することなく、膝から崩れ落ちるように地面に倒れこんだ。
隣に降り立った調と共に、響を注意深く観察する切歌。
五秒、十秒と待って。
完全に、事切れたと判断して。
「・・・・や、た?」
「・・・・やった」
一歩、二歩と、後ずさる。
血溜まりに沈んだ仇敵は、ぴくりとも動かない。
積年の恨みを、晴らすことが出来た。
「やった、やった・・・・はは、勝てたデス」
「仇、取れた・・・・はは、は・・・・」
どこか虚ろな目で、乾いた笑いを上げたときだった。
「―――――気はすんだ?」
予想だにしなかった声に、そろってぎょっとする。
目の前、血溜まりに沈んだ死体が。
いや、死んだはずの仇敵が。
どこか気だるげに、いっそリラックスしているような雰囲気で。
ごろんと寝転がったまま、見上げてきていた。
「な、な・・・・!?」
「―――――ッ!?」
流石の二人も肩を跳ね上げ、大きく飛びのく。
戦いを見守っていた翼にクリス、マリアも驚愕を隠せないようで。
三者三様に目を見開いたり、口をぱくぱくさせたりしていた。
こともなげに上体を起こした響は、切り株になった右腕を上げる。
すぐにメリメリと音がしたと思えば、直後に腕が
またぎょっとなる調と切歌。
ここで調が、先ほど斬り飛ばした右腕に目をやれば。
今まさに塵となり、風に乗って消えていくところだった。
「・・・・・バケモノ」
「そのバケモノに喧嘩を売ったのは、どこの誰だっけ?」
じろりとねめつければ、二人は思わずたじろいだ。
「まあ、もろもろ言いたいこととかあるかもだけど」
生え変わった右腕の調子を確かめた響は、その手でがしがしと頭をかく。
「まずは話でも聞かせてよ、取って食いはしないから」
にかっと浮かんだその笑みに、逆らおうだなんて思いつきもしなかった。
気はすんだ?>_(:3 ∠ )_ ゴロゴロ