チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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実は諸事情によりネットが使えなくなってました。

ネカフェマジ便利(


ピンチなんてよくある話

――――モニターの向こうの響を見たとき。

未来が抱いた感想は『ああ、やっぱり』だった。

『翼を呼んでくる』と飛び出していったあの時、素直に帰ってくる気がしなかったからだ。

案の定少し困惑した様子の翼が一人で戻り、『立花はどこにいった』と聞いてきて。

皆の反応を見るなり、すぐ様クリスを伴って飛び出して行った。

合流が遅れたところを見るに、響が入り口を塞ぐなどして足止めしていたんだろうと推測できた。

・・・・響は昔から、どこか臆病なところがあった。

何かトラブルに見舞われたり、不安を抱えたりすると。

反撃したり立ち向かったりせず、逃げや受けの姿勢を取っていた。

ちょくちょく未来や家族を困らせた、『逃亡癖』がその代表だ。

自分には勇気なんて無いから、力なんて無いから。

いつも困った笑顔で、そんなことを零していた。

一見すれば悪いところに見えるけど、それはちょっと違う。

怖がりで臆病だけど、それ以上に他人思いだ。

『勇気が無い』『力が無い』と卑下するのは、自分より優れている人がいると自制しているから。

ふらっといなくなったり距離を取ったりするのは、抱えている困りごとを他の人に背負わせたくないから。

笑顔を取り繕うのは、大好きな人たちを心配させたくないから。

怖いことや辛いことは、全部自分が抱え込んでいれば。

誰も傷つかない。

そうやって不必要な『痛み』を余計に抱え込んでしまう。

そんな子だった。

その不器用でも優しいあの子に十字架を背負わせたのは、紛れもない自分だ。

 

(・・・・ああ、そうだ)

 

言われるまでも無く分かっていた。

生き残って、生きていることを否定されて。

それでも死にたくないと反抗した結果が、あの夜の家出。

自分なんて、見かけてついてきただけの『おまけ』みたいなものだ。

でも、響にとっては違った。

大好きな友達で、大切な幼馴染で、守りたいものの一つで。

失うなんてとんでもないもので。

だから、奪おうと向かってくる暴力へ、暴力で立ち向かった。

臆病な心に蓋をして、怖いと叫ぶ本音を押し殺して。

たまたまついてきただけの、見捨てたってよかった『おまけ』を。

その身の全てで、守ってくれた。

・・・・当然、その代償はとても大きかった。

血に塗れて、泥で汚れて、相手と同じだけの傷を負って。

限界以上にボロボロになって、それでもなお立ち止まることを許されなくて。

痛みから解放されないまま生きなければいけないという、『呪い』を背負い続けることになった。

 

(分かっている、分かっているから)

 

自分の短慮が原因なのも、自分の弱さが原因なのも。

それ故に、何があっても響の味方で()()()()()()()()ことも。

全部全部分かっている。

分かっているから、どうか。

優しいあの子に、勝利(あした)を。

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

巨大化は負けフラグ(笑)

なんて思っていた時期がわたしにもありました。

まず手足の動き一つが鈍器めいた威力だし、鳴き声がうるさいし。

何より時々撃ってくるブレスが厄介!

当たればダメージ受けるのはもちろん、距離によっては光で目が眩んだりするんだよー!

明るさ自体は大したことないけど、夜の今は目が暗がりになれちゃってるから。

むしろそれが余計に辛いいいぃー・・・・。

かといって後ろに回りこんでも、ごんぶとの尻尾が鞭みたいに襲ってくるし。

あの倒せない曲が流れてきそう。

ゲームと違うのは、チャレンジは一回こっきりで、失敗は許されないという点だろう。

ちきしょー。

誰だよ最初に『巨大化は以下略(笑)』なんて言い出したヤローは!?

いっぺんはたいてやるから、前に出なさい!

大丈夫!死にはしないから!

死ぬほど痛いだけだから!

 

「っとぉ!!」

 

叩きつけられた尻尾を避けて後退。

直撃は避けられたけど、飛び散った砂利が当たって鬱陶しい。

視点が高くなったことで、翼さんやクリスちゃんの様子が見える。

何度も斬りつけたり、鉛玉ぶち込んだりしてるけど。

奴さんってば硬ーい硬ーい皮膚を持っているらしく。

有効打っぽいものを叩き込めても、すぐに再生されるし。

あまり効果は出ていないようだった。

 

「くっそ!あの頑丈さ反則じゃねーかァ!?」

「斬っても斬っても再生される・・・・攻めあぐねるとはこのことか・・・・!」

 

一旦引いた二人と合流して、改めて相手を見る。

コモドドラゴンのお化けみたいなビジュアルで、中々強キャラじゃないか・・・・!

理屈はなんとなく分かる。

無限の再生能力を備えたネフシュタンの鎧はもちろんのこと、血肉であるノイズはソロモンの杖で補充し放題。

対してこっちは人間やめてる小娘と、SAKIMOlyshな小娘と、鉛玉ばらまく小娘の生身三人衆。

どうあがいても先にバテるのはわたし達だ。

んにゃーもう!こーいうときに限って役に立たないんだからわたしってば!!

 

――――ガアアアアアアアアアアアアッ!!!

 

ってアカン!またブレスが!

そろって三方に飛びのく。

もはや役に立たないからか、放たれたブレスはカ=ディンギルをぶち抜いていた。

うっへぇ、例え痛くなくても当たりたくないなぁ。

 

「ッ立花ァ!!!」

 

その時、翼さんの切羽詰った声。

反応する前に、体に衝撃。

わけも分からないまま、また衝撃を感じて。

下へ下へ落ちて行く。

・・・・・あ、これカ=ディンギルの中?

そういえば避けたとき、周りが見えにくくなっていたんだっけ。

まだぼんやり光ってたカ=ディンギルの所為で、明るいとこに目が慣れちゃってたんだろう。

なんて考えた直後。

三度目の衝撃で、今度こそ意識を手放す。


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