誠にありがとうございます。
本編お待たせしましたー!
まあ、特筆することもなく。
二課でおいたしたおじさん達は無事制圧。
強いて言うなら、駆けつける途中で気絶した弓美ちゃん拾ったくらいかなぁ。
いや、リディアン側の入り口の前で、ころんって倒れてたもんだから。
頭から血ぃ出てたし、ほっとくわけにもいかずテイクアウト。
騒ぎが一段落した今、簡単な手当てを受けているところだった。
ちなみに今いるのは、二課本部から少し離れたシェルター群。
司令室も大分ボロボロだし、連中の親玉がまだとっ捕まってないしで。
負傷者が多い中留まるのは危ないよねってことで移動した次第だ。
「――――ぁ、れ?」
「弓美ちゃん!よかった・・・・!」
で、今。
捕まえたおじさん達を、当座の留置所に運び終えて戻ってみれば。
弓美ちゃんが目覚めたところだった。
付き添っていた未来が覗き込んで、無事を喜んでいる。
うむうむ。
まだ油断は出来ないけど、死ななくて良かった。
「あたし・・・・そだ、未来大丈夫なの!?へんな外人に連れてかれてたじゃん!!」
「だいじょーぶじゃなきゃここにいないよ」
わたしが未来の後ろからひょっこり覗けば、ちょっと驚いていた。
あ、その顔面白い。
「未来を心配してくれたのは嬉しいけど、それで自分が怪我しちゃ世話ないよね」
「う、ぐ・・・・!」
単純な自分勝手とかじゃなくて、純粋に友達を思っての行動だろうから。
そこは幼馴染として嬉しいし、ありがたい。
でも危ないことは危ないことなので、ちょっと棘のある言い方をする。
案の定、弓美ちゃんは苦い顔で気まずそうに黙り込んだ。
「もう、響」
たしなめてくる未来に、ぺろっと舌を出して誤魔化したところで。
「きゃ!?」
「おっと」
突然地面が、っていうか部屋全体が揺れだした。
倒れそうになった未来を支えて、じっと我慢。
揺れがある程度収まったところで、ノーパソ片手にアレコレしてた藤尭さんのとこへ行ってみる。
「繋がりそうです?」
「もうちょっと・・・・よしッ」
ッターン!とエンターが押されて、画面が切り替わる。
生き残っている外の監視カメラと繋げたらしい。
すっかり日が暮れて夜になった、リディアン校舎の映像が映し出された。
ただ、建物自体は見る影もないくらいぶっ壊れてたけど。
で、そんな瓦礫の山をぼんやり照らすのは、
「なん、だ・・・・これは・・・・!?」
・・・・ステンドグラスのような幾何学模様で彩られた、巨大な塔。
いんや、『砲塔』が正しいのかな?
「・・・・響くん、何か心当たりは?」
「んー、ないですね」
いや、一応
特に情報は出ていないので、ノーを答える。
同じ質問をされて首を横に振るクリスちゃんを横目に、改めて画面を観察する。
――――アレはもしかしなくても『カ=ディンギル』だろう。
二課のエレベーターシャフトに偽装して建設され、そして今、デュランダルを動力源に起動している。
仕組みだけなら理解してるし、何も知らないままで聞かされても何となく分かるんだけど。
問題は、どうやって保管場所にたどり着いたか。
二課に入るだけなら未来の端末でも出来たろうけど、そんなディープなところにまで入れる権限はないはず。
次に思い浮かぶのは了子さんの端末。
でもこっちも持ち主が死んでるの分かってるから、機能やら権限やらが止められているはずだ。
普通なら、これで『望みは絶たれたー』的な感じになるけど。
わたしはちゃんと覚えている。
了子さんの館。
襲撃後の調査で、データがいくつも運び出されているのが判明していることを。
手に入れた宝の山をほっとく人なんてゼロに近い。
きっと解析したデータを基に、ハッキングやらなんやらでちょちょいのちょいしたってところだろう。
「どっちにしろほっとけないのは事実か・・・・」
「響?」
「んにゃ、なんでもないよぅ」
未来が見ているのが分かる。
立ち上がりつつ、笑いかける。
「翼さん、呼んでくる」
短く告げて、走り出した。
「立花!さきほどの揺れは・・・・!?」
出てすぐのところで、翼さんと鉢合わせる。
わたしは
「詳細は仮司令部で!わたし別任務なのでー!」
「立花!?」
引き止める声に、努めて明るく手を振っておいた。
◆ ◆ ◆
「――――素晴らしい」
夜闇に浮かび上がるそれを見上げて、男は恍惚と笑う。
人類の言語を引き裂いた悪しき月。
その邪悪な光を打ち抜くに相応しい、荘厳な出で立ち。
既にその一撃を充填し始めており、輝きは刻一刻と増し始めている。
照準は完璧。
全人類の呪いからの解放が、目前に迫ったところで。
「――――ッ!?」
「ありゃ、避けたか」
咄嗟に飛びのけば、元いた場所が陥没した。
その中心にいたのは、報告にもあった融合症例。
穿った拳から砂埃を零しながら、ゆっくり立ち上がる。
「正義感は結構だけど、後先考えないのはどうかと思うよ?」
真っ直ぐこちらを見据えながら、やや低い声で威嚇してくる。
「月の破壊に伴う重力変動はどーすんのさ。USA万歳だけじゃどうにもならないじゃん」
「だから、止めると?」
「あたぼうよ」
再び、肉薄。
鋭く力強い一撃が、体を貫こうとして。
自然と、笑みが浮かんだ。
「・・・・ッ」
「くく・・・・!」
思ったよりも『硬い』手ごたえだったのか、殴ったほうの手を何度も握ったり開いたりしている。
眉間に皺を寄せたしかめっ面で、まさかと言いたげに睨みつけてきた。
面白い顔を見せてくれた礼に、種明かしをしてやる。
「おおおおおおおお・・・・・・!」
自らの内、取り込んだ物を意識する。
途端に感じるのは痛み。
しかし今の自分にとって、これは十分耐えられる感覚だった。
衣服が裂け、替わりに纏うのは『鎧』。
「・・・・盗品で戦うとか、どうよ?」
一度目を見開いた彼女は、先ほどよりも鋭く睨んでくる。
「使えるものを使っているだけさ」
ネフシュタンの鞭を構えながら、嗤ってやった。