誠にありがとうございます。
みーなさーん!!
突然ですが、わたし達はどこにいるでしょーか!?
せぇーかいはぁー?
こっこでーっす!!こっここっこーッ!!
なぁんとッ!南極にぃー!きちゃいましたーッッ!!!!
・・・・・と、まぁ。
某珍獣ハンターにあやかってハイテンションにお送りしたところで、寒さがどうにかなるわけじゃないんだけども。
それくらいハイにならないとやっていけないんだよ・・・・・いや、クッソ寒い・・・・。
こりゃあ、ロシアやらの極寒地域で、『脳まで凍るから頭も保護しろ』と言われるのがよく分かる・・・・。
――――少し前の爆破事故。
あれは豪華客船じゃなくて、それにカモフラージュした実験施設だったらしい。
当時そこで調べられていたのは、ティキの残骸だった。
異端技術の研究はもちろん、アダムが口走っていた『アヌンナキ降臨』の手掛かりを探すために色々いじくっていたら。
秘匿機能の一つである自爆が起動したそうで。
わたしと未来が、観覧車で見た爆発はそれだった。
ただ、何の成果も得られなかったというわけではなく。
残骸からサルベージ出来たデータの中に、古ーい古ーい時代のサソリの画像があったそうな。
五千年前に生息していたというサソリが、氷漬けにされた様。
添付されていた座標から、『南極になんかあるらしい』という結論を出した司令さん達。
根拠こそだいぶふわっとしてはいるんだけど、我らが大賢者こと
『行くだけ行ってみるかぁ?』と、やってきてみれば。
「めっちゃ元気に暴れてるのがいますねー!!あれなーんだッ!?」
「なんだろーなァーッ!?めんどくせぇにおいでむせ返るぜ!!」
目的座標近くの、ロシアの南極観測基地。
向かっている最中にSOSを拾ったので、ヘリの速度を上げることで駆け足になってみれば。
見えてきたのは、なんか暴れ回ってる何か。
いや、なんだろアレ。
強いて言うなら亀っぽいナニか・・・・?
「狼狽えるなッ!想定外など想定内!我々のやることは変わらないわよ!!」
「うぃーっす」
何はともあれ、まずはお仕事ですな。
実際逃げまどってる人々がいるわけだし、ほっとくわけにもいくめぇよ。
「はいはーい!S.O.N.G.が来ましたよーっと!!」
装者みんなで、ギアを纏いつつフリーフォール。
逃げていく職員の流れに逆らって、亀もどきに突撃していく。
って、あいつよく見たら小鳥っぽい何かも引き連れてる?
あ、いや!近づいて分かった、ファンネルだ!
かわいくねー見た目だな!!けっ!!
「オッ!!ラアァッ!!」
何はともあれ、まずは一番槍突貫。
発生させたインパクトを余さず叩き込んだつもりだったけど、亀もどきはびくともしていない。
硬ッッッッッたぁ・・・・!?
攻撃を回避ついでに退いている横で、クリスちゃんの銃火器を背負った翼さんが斬りかかっているけど。
軽く火花が散るのが見えるくらいで、わたしの拳と同じく大したダメージは与えられてなかった。
うーん、タフだなぁ。
調ちゃん、切歌ちゃんは、飛び回っているファンネル(仮称)を片付けているけど。
やっぱり数が多すぎるみたいで、何十匹も防衛ラインを突破して観測基地の方へ向かっていた。
くっそ、まずいな。
これ以上はキャパオーバーだ。
でも、退くわけにもいかないし・・・・。
うーん!なんとかなれーッッ!!
「響!合わせて!」
「はいッ!!」
左腕を砲身に変えたマリアさんと一緒に、再突撃。
わたしは暴風を、マリアさんは砲撃を。
いつもなら放つそれを、直接亀もどきに叩き込んだ。
轟音と衝撃、手ごたえも十分。
現に、亀もどきは目の前で大きくのけ反っている。
ついでに、喉元のパーツが破損したのが見えた!
だからといって、『よっしゃ!』と気を緩めたのがいけなかったようだ。
ガンでもつける様に、ぐわんと体勢を立て直した亀もどき。
マリアさん共々回避の用意はしたけれども、向こうの腕降りの方が早かった。
「ぐあッ!!」
「あああッ!!」
派手に吹っ飛ばされて、仲良く積雪に顔面をこすり付ける。
ぶえぇ・・・・鼻が痛ぇ・・・・!
――――!!
吠え声の様なものをあげた亀もどきは、緑のビームを吐き出す。
当たった軌跡には、星を木にしたらこんな感じだろうなというオブジェが乱立した。
・・・・うん、直撃は避けた方がよさそう!
再び放たれるビームを、マリアさんを担いで今度こそ回避。
樹状のオブジェを横目に、みんなと合流。
『埒外物理学による世界法則への、干渉・・・・!?』
『やっぱり、あそこに眠っているのは・・・・!』
銃後のみんなもだいぶ動揺しているのが見て取れる。
特に了子さんは、混乱もひとしおのようだ。
『ッ気を付けて!そいつが放つ砲撃は、マイナス5100度、絶対零度の遥か下よ!!ギアのリフレクターでは防ぎきれない!!』
だけど、さすがは五千年物の大賢者。
すぐに気を取り直した。
っていうか、絶対零度って。
やっぱり直撃したら大変なことになるヤツー!!
亀もどきはまだ健在。
観測基地の避難も済んでないみたいだし、やるっきゃないっしょ!!
◆ ◆ ◆
「おーおー、苦戦してるナァ」
交戦地点から、遠く離れた場所。
白銀に紛れて、戦闘を覗き見ている者たちがいる。
「
「あぁん?勝ってもらわにゃ困るだろ、クライアントもご所望してんだからよ」
一人は人間というには大きすぎる体、もう一人は、同じく人間というには耳も手も大きすぎる。
両者共々、白い布でしっかり雪国迷彩を施していた。
「だが、マァ・・・・」
双眼鏡を覗き込みながら、やっぱり人間にしては大きすぎる犬歯をちらつかせて。
レンズの中に、響を収める。
「ざまぁみろって感じだよナァ」
「ぐぶぐぶ、
響く、嗤い声が。
他人の不幸を、心底喜ぶ声が。
◆ ◆ ◆
「――――ッ」
無意識に、暖を取ろうとして。
鈍く息を吐き出す。
あれからほどなくして、あっという間に絶対零度の冷気に囲まれてしまった。
みんな直撃こそ受けていないけれど、只で寒い中をさらに冷やされたことで動きが鈍くなってきている。
まずいな、有効だは未だ見つかっていない。
どうする・・・・どうする・・・・?
鈍ってきた頭で、だとしてもと打開策を考えようとした。
その時だった。
「・・・・?」
何か、上空で光ったのが見えた。
目をやると、照明弾らしきもの。
あれは何だと、ぽかんとしてしまっているところに。
また新たな照明弾が撃ち上がる。
弾かれるように、振り向いた。
「おい!何をやっているんだ!!」
「女の子がこんなところで!お腹を冷やしたら大変だろ!!」
何か揉み合っている職員さん達。
本当は避難してほしいんだけど・・・・亀もどきの注意が逸れた今は、それがありがたい・・・・!
「うおおおおおおおおおッッ!!!」
雄叫びを上げて、自分を奮い立たせる。
そうだ、こんなところで。
負けてられるか!!
「戦場に立つのは、立花一人ではない!」
みんなもまだまだやれる!
そうだ、わたし達はまだ。
負けてない!!
亀もどきが向かってくる。
相変わらず腕を振り上げて、まるで殴るように先端を向けてくる!
殴打でわたしに挑もうってか!!相手にとって不足なし!!
「おあ"あッ!!」
ぶん殴り返すと、さっきとは打って変わって十分な手ごたえ。
よろめく姿は、心なしか動揺しているように見えた。
間髪入れずに、両腕が振り下ろされる。
足元があっという間に割れて、水が迸った。
「うわっ!?」
そういえばここ湖の上って言ってたね!?
あえなくぼちゃんと落ちてしまう。
亀もどきもこっちを追いかけて、猛然と突き進んで来る。
普通なら、空気を求めて浮上するところだけど。
「――――ッ!!」
脳内に降臨したイギリス紳士の『あげちゃってもいいさと考えるんだ』という啓示に従って、深く、深く。
潜っていく!
水底に足が付く。
踏ん張れる場所があるなら、十分!!
「
咆哮と一緒に、神砂嵐!!
亀もどきを吹っ飛ばしてやるついでに、生まれた激流に乗って地上に戻る!
「立花!」
「無事です!」
翼さんに返事している横で、こりない亀もどきが『ぜったいれいど』を放ってきた。
避け、れる。
でも、観測基地に当たる!
『大丈夫、響ちゃん!!』
『そのままぶん殴ってください!!』
「ッらアァ!!!!!」
通信に導かれるままに、固く握ってぶん殴る!!
あ、意外と大丈夫だ!?
『拳の防御フィールドアジャスト!!』
『即席だけど、間に合わせたわよ!!』
『解析からの再構成は、錬金術の原理原則!これがボク達の戦いです!!』
なるほど、銃後のみんなのおかげ!頼もしい!!
「いい加減にッーーーー!!!」
フォニックゲインを高める。
両腕のアーマーが、うなりを上げて回転する。
「くたばれえええええええええええええええッッッ!!!!」
引き裂くように『ぜったいれいど』を振り払って、亀もどきへ突貫。
ほんのり蒼炎が混じるまで高まった拳を、思いっきり打ち付けて。
上空へ吹っ飛ばした。
標的は自由落下している。
仕留めるなら、身動きを取れない今しかない!
「こちらも長時間は持たない。狙うは喉元の破損個所、ギアの全エネルギーを集中してケリをつけるしかない!」
確かに、強力な冷気に晒され続けたせいで。
みんなの消耗は激しい。
いい加減ここらで決めるべきだろうけど・・・・。
「でもそれ、外したら・・・・!」
「あとがないデス!」
決戦機能を、動く標的に。
調ちゃんと切歌ちゃんが心配する通り、外したら後がない。
破損っつったって、ここから見れば豆みたいに小さなものだ。
さらに相手はフリーフォール状態でぐるんぐるん回っているから、当てる難易度は跳ね上がっている。
だけど、
「狙いをつけるのはスナイパーの仕事だ!タイミングはあたしが計る!」
うちには頼れる狙撃手がいるんだよなー!!
「よし、行くぞみんな!」
翼さんの合図で、アームドギアをエネルギーに変換。
そろってインナー姿になる。
・・・・・そういえば、わたしこれ初めてでは?
みんなはわたしにエネルギーをくれる形でパージしたことあるけど・・・・。
いや、今はひとまず置いておこう。
集中、集中・・・・!
『距離1500!!1200!!』
あ、亀もどきがファンネル展開した!
リフレクターのつもりかよ!せこいぞ!!
「まだデスか・・・・まだデスか・・・・!?」
「このままだと、わたし達までぺしゃんこに・・・・!」
クリスちゃんの合図はないまま、相手は刻々と迫ってきている。
きりしらちゃんの焦る気持ちは分かるけど。
今はただ、肩を並べる仲間を信じるのみ。
証拠に、ほら。
「今だ!!」
その時は、来た!!
――――G3FA!!ヘキサリボルバーッッッ!!!
クリスちゃんの声を引き金に、全員でありったけを解き放てば。
ドンピシャで破損個所を撃ち抜く。
エネルギーの逃げ場が無かったようで、亀もどきは内部から爆散した。
よーっしゃ!!勝ったぜ!!
思わず拳を手のひらに打ち付けて、ガッツポーズ!
クリスちゃんの誕生日会も無事に開催できそうだし、何とかなってよかった。
「お疲れ様クリスちゃん、ナイス狙い撃ち」
「おう、そっちこそ信じてくれてありがとな」
「それこそいーってことよ!」
まだまだ被害状況の確認とか、亀もどきの片付けとか。
色々あるんだけども。
まずはひと段落してよかった。
「・・・・ふぅ」
ほっと安堵する傍らで、ふと考える。
そういえば、ずっと『亀もどき』って呼んでたけど。
事前情報によると、実は棺桶らしい。
――――世界各地の、貴族や王族の墓に参照される通り。
中にあるものを守るために攻撃手段を持っていると言えば、聞こえはいいんだけど。
それにしたって、アグレッシブ過ぎませんかね・・・・。
(まるで、何をやってでも開けてほしくないみたい)
◆ ◆ ◆
「了子君、大丈夫か?」
S.O.N.G.、司令室。
一際険しい顔をしている了子へ、見かねた弦十郎が声をかける。
「・・・・ええ、何とか」
問いかけられた了子は、束の間沈黙を保ってから。
正常な思考を保っていることを伝えた。
「・・・・あれが、カストディアン。神と呼ばれた、アヌンナキの遺体」
「まさしく、聖骸と呼ばれるものですね」
モニターの向こう、大破した『棺桶』の中に眠るミイラは。
果たして、何をもたらすのか。
みなさんの考察をニコニコしながら見ている反面、誰か正解に辿り着いてしまわないかと戦々恐々としています(笑)