チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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誠にありがとうございます。


ペンギンっておいしくないらしい

みーなさーん!!

突然ですが、わたし達はどこにいるでしょーか!?

せぇーかいはぁー?

こっこでーっす!!こっここっこーッ!!

なぁんとッ!南極にぃー!きちゃいましたーッッ!!!!

・・・・・と、まぁ。

某珍獣ハンターにあやかってハイテンションにお送りしたところで、寒さがどうにかなるわけじゃないんだけども。

それくらいハイにならないとやっていけないんだよ・・・・・いや、クッソ寒い・・・・。

こりゃあ、ロシアやらの極寒地域で、『脳まで凍るから頭も保護しろ』と言われるのがよく分かる・・・・。

――――少し前の爆破事故。

あれは豪華客船じゃなくて、それにカモフラージュした実験施設だったらしい。

当時そこで調べられていたのは、ティキの残骸だった。

異端技術の研究はもちろん、アダムが口走っていた『アヌンナキ降臨』の手掛かりを探すために色々いじくっていたら。

秘匿機能の一つである自爆が起動したそうで。

わたしと未来が、観覧車で見た爆発はそれだった。

ただ、何の成果も得られなかったというわけではなく。

残骸からサルベージ出来たデータの中に、古ーい古ーい時代のサソリの画像があったそうな。

五千年前に生息していたというサソリが、氷漬けにされた様。

添付されていた座標から、『南極になんかあるらしい』という結論を出した司令さん達。

根拠こそだいぶふわっとしてはいるんだけど、我らが大賢者こと了子(フィーネ)さんがとりわけハチャメチャに気にしたこともあり。

『行くだけ行ってみるかぁ?』と、やってきてみれば。

 

「めっちゃ元気に暴れてるのがいますねー!!あれなーんだッ!?」

「なんだろーなァーッ!?めんどくせぇにおいでむせ返るぜ!!」

 

目的座標近くの、ロシアの南極観測基地。

向かっている最中にSOSを拾ったので、ヘリの速度を上げることで駆け足になってみれば。

見えてきたのは、なんか暴れ回ってる何か。

いや、なんだろアレ。

強いて言うなら亀っぽいナニか・・・・?

 

「狼狽えるなッ!想定外など想定内!我々のやることは変わらないわよ!!」

「うぃーっす」

 

何はともあれ、まずはお仕事ですな。

実際逃げまどってる人々がいるわけだし、ほっとくわけにもいくめぇよ。

 

「はいはーい!S.O.N.G.が来ましたよーっと!!」

 

装者みんなで、ギアを纏いつつフリーフォール。

逃げていく職員の流れに逆らって、亀もどきに突撃していく。

って、あいつよく見たら小鳥っぽい何かも引き連れてる?

あ、いや!近づいて分かった、ファンネルだ!

かわいくねー見た目だな!!けっ!!

 

「オッ!!ラアァッ!!」

 

何はともあれ、まずは一番槍突貫。

発生させたインパクトを余さず叩き込んだつもりだったけど、亀もどきはびくともしていない。

硬ッッッッッたぁ・・・・!?

攻撃を回避ついでに退いている横で、クリスちゃんの銃火器を背負った翼さんが斬りかかっているけど。

軽く火花が散るのが見えるくらいで、わたしの拳と同じく大したダメージは与えられてなかった。

うーん、タフだなぁ。

調ちゃん、切歌ちゃんは、飛び回っているファンネル(仮称)を片付けているけど。

やっぱり数が多すぎるみたいで、何十匹も防衛ラインを突破して観測基地の方へ向かっていた。

くっそ、まずいな。

これ以上はキャパオーバーだ。

でも、退くわけにもいかないし・・・・。

うーん!なんとかなれーッッ!!

 

「響!合わせて!」

「はいッ!!」

 

左腕を砲身に変えたマリアさんと一緒に、再突撃。

わたしは暴風を、マリアさんは砲撃を。

いつもなら放つそれを、直接亀もどきに叩き込んだ。

轟音と衝撃、手ごたえも十分。

現に、亀もどきは目の前で大きくのけ反っている。

ついでに、喉元のパーツが破損したのが見えた!

だからといって、『よっしゃ!』と気を緩めたのがいけなかったようだ。

ガンでもつける様に、ぐわんと体勢を立て直した亀もどき。

マリアさん共々回避の用意はしたけれども、向こうの腕降りの方が早かった。

 

「ぐあッ!!」

「あああッ!!」

 

派手に吹っ飛ばされて、仲良く積雪に顔面をこすり付ける。

ぶえぇ・・・・鼻が痛ぇ・・・・!

 

――――!!

 

吠え声の様なものをあげた亀もどきは、緑のビームを吐き出す。

当たった軌跡には、星を木にしたらこんな感じだろうなというオブジェが乱立した。

・・・・うん、直撃は避けた方がよさそう!

再び放たれるビームを、マリアさんを担いで今度こそ回避。

樹状のオブジェを横目に、みんなと合流。

 

『埒外物理学による世界法則への、干渉・・・・!?』

『やっぱり、あそこに眠っているのは・・・・!』

 

銃後のみんなもだいぶ動揺しているのが見て取れる。

特に了子さんは、混乱もひとしおのようだ。

 

『ッ気を付けて!そいつが放つ砲撃は、マイナス5100度、絶対零度の遥か下よ!!ギアのリフレクターでは防ぎきれない!!』

 

だけど、さすがは五千年物の大賢者。

すぐに気を取り直した。

っていうか、絶対零度って。

やっぱり直撃したら大変なことになるヤツー!!

亀もどきはまだ健在。

観測基地の避難も済んでないみたいだし、やるっきゃないっしょ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

「おーおー、苦戦してるナァ」

 

交戦地点から、遠く離れた場所。

白銀に紛れて、戦闘を覗き見ている者たちがいる。

 

がでヴおか(勝てるのか)?」

「あぁん?勝ってもらわにゃ困るだろ、クライアントもご所望してんだからよ」

 

一人は人間というには大きすぎる体、もう一人は、同じく人間というには耳も手も大きすぎる。

両者共々、白い布でしっかり雪国迷彩を施していた。

 

「だが、マァ・・・・」

 

双眼鏡を覗き込みながら、やっぱり人間にしては大きすぎる犬歯をちらつかせて。

レンズの中に、響を収める。

 

「ざまぁみろって感じだよナァ」

「ぐぶぐぶ、ざばびろ(ざまみろ)ざばびろ(ざまみろ)

 

響く、嗤い声が。

他人の不幸を、心底喜ぶ声が。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ッ」

 

無意識に、暖を取ろうとして。

鈍く息を吐き出す。

あれからほどなくして、あっという間に絶対零度の冷気に囲まれてしまった。

みんな直撃こそ受けていないけれど、只で寒い中をさらに冷やされたことで動きが鈍くなってきている。

まずいな、有効だは未だ見つかっていない。

どうする・・・・どうする・・・・?

鈍ってきた頭で、だとしてもと打開策を考えようとした。

その時だった。

 

「・・・・?」

 

何か、上空で光ったのが見えた。

目をやると、照明弾らしきもの。

あれは何だと、ぽかんとしてしまっているところに。

また新たな照明弾が撃ち上がる。

弾かれるように、振り向いた。

 

「おい!何をやっているんだ!!」

「女の子がこんなところで!お腹を冷やしたら大変だろ!!」

 

何か揉み合っている職員さん達。

本当は避難してほしいんだけど・・・・亀もどきの注意が逸れた今は、それがありがたい・・・・!

 

「うおおおおおおおおおッッ!!!」

 

雄叫びを上げて、自分を奮い立たせる。

そうだ、こんなところで。

負けてられるか!!

 

「戦場に立つのは、立花一人ではない!」

 

みんなもまだまだやれる!

そうだ、わたし達はまだ。

負けてない!!

亀もどきが向かってくる。

相変わらず腕を振り上げて、まるで殴るように先端を向けてくる!

殴打でわたしに挑もうってか!!相手にとって不足なし!!

 

「おあ"あッ!!」

 

ぶん殴り返すと、さっきとは打って変わって十分な手ごたえ。

よろめく姿は、心なしか動揺しているように見えた。

間髪入れずに、両腕が振り下ろされる。

足元があっという間に割れて、水が迸った。

 

「うわっ!?」

 

そういえばここ湖の上って言ってたね!?

あえなくぼちゃんと落ちてしまう。

亀もどきもこっちを追いかけて、猛然と突き進んで来る。

普通なら、空気を求めて浮上するところだけど。

 

「――――ッ!!」

 

脳内に降臨したイギリス紳士の『あげちゃってもいいさと考えるんだ』という啓示に従って、深く、深く。

潜っていく!

水底に足が付く。

踏ん張れる場所があるなら、十分!!

 

がぼぼ(おおお)ッ!!!」

 

咆哮と一緒に、神砂嵐!!

亀もどきを吹っ飛ばしてやるついでに、生まれた激流に乗って地上に戻る!

 

「立花!」

「無事です!」

 

翼さんに返事している横で、こりない亀もどきが『ぜったいれいど』を放ってきた。

避け、れる。

でも、観測基地に当たる!

 

『大丈夫、響ちゃん!!』

『そのままぶん殴ってください!!』

「ッらアァ!!!!!」

 

通信に導かれるままに、固く握ってぶん殴る!!

あ、意外と大丈夫だ!?

 

『拳の防御フィールドアジャスト!!』

『即席だけど、間に合わせたわよ!!』

『解析からの再構成は、錬金術の原理原則!これがボク達の戦いです!!』

 

なるほど、銃後のみんなのおかげ!頼もしい!!

 

「いい加減にッーーーー!!!」

 

フォニックゲインを高める。

両腕のアーマーが、うなりを上げて回転する。

 

「くたばれえええええええええええええええッッッ!!!!」

 

引き裂くように『ぜったいれいど』を振り払って、亀もどきへ突貫。

ほんのり蒼炎が混じるまで高まった拳を、思いっきり打ち付けて。

上空へ吹っ飛ばした。

標的は自由落下している。

仕留めるなら、身動きを取れない今しかない!

 

「こちらも長時間は持たない。狙うは喉元の破損個所、ギアの全エネルギーを集中してケリをつけるしかない!」

 

確かに、強力な冷気に晒され続けたせいで。

みんなの消耗は激しい。

いい加減ここらで決めるべきだろうけど・・・・。

 

「でもそれ、外したら・・・・!」

「あとがないデス!」

 

決戦機能を、動く標的に。

調ちゃんと切歌ちゃんが心配する通り、外したら後がない。

破損っつったって、ここから見れば豆みたいに小さなものだ。

さらに相手はフリーフォール状態でぐるんぐるん回っているから、当てる難易度は跳ね上がっている。

だけど、

 

「狙いをつけるのはスナイパーの仕事だ!タイミングはあたしが計る!」

 

うちには頼れる狙撃手がいるんだよなー!!

 

「よし、行くぞみんな!」

 

翼さんの合図で、アームドギアをエネルギーに変換。

そろってインナー姿になる。

・・・・・そういえば、わたしこれ初めてでは?

みんなはわたしにエネルギーをくれる形でパージしたことあるけど・・・・。

いや、今はひとまず置いておこう。

集中、集中・・・・!

 

『距離1500!!1200!!』

 

あ、亀もどきがファンネル展開した!

リフレクターのつもりかよ!せこいぞ!!

 

「まだデスか・・・・まだデスか・・・・!?」

「このままだと、わたし達までぺしゃんこに・・・・!」

 

クリスちゃんの合図はないまま、相手は刻々と迫ってきている。

きりしらちゃんの焦る気持ちは分かるけど。

今はただ、肩を並べる仲間を信じるのみ。

証拠に、ほら。

 

「今だ!!」

 

その時は、来た!!

 

――――G3FA!!ヘキサリボルバーッッッ!!!

 

クリスちゃんの声を引き金に、全員でありったけを解き放てば。

ドンピシャで破損個所を撃ち抜く。

エネルギーの逃げ場が無かったようで、亀もどきは内部から爆散した。

よーっしゃ!!勝ったぜ!!

思わず拳を手のひらに打ち付けて、ガッツポーズ!

クリスちゃんの誕生日会も無事に開催できそうだし、何とかなってよかった。

 

「お疲れ様クリスちゃん、ナイス狙い撃ち」

「おう、そっちこそ信じてくれてありがとな」

「それこそいーってことよ!」

 

まだまだ被害状況の確認とか、亀もどきの片付けとか。

色々あるんだけども。

まずはひと段落してよかった。

 

「・・・・ふぅ」

 

ほっと安堵する傍らで、ふと考える。

そういえば、ずっと『亀もどき』って呼んでたけど。

事前情報によると、実は棺桶らしい。

――――世界各地の、貴族や王族の墓に参照される通り。

中にあるものを守るために攻撃手段を持っていると言えば、聞こえはいいんだけど。

それにしたって、アグレッシブ過ぎませんかね・・・・。

 

(まるで、何をやってでも開けてほしくないみたい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「了子君、大丈夫か?」

 

S.O.N.G.、司令室。

一際険しい顔をしている了子へ、見かねた弦十郎が声をかける。

 

「・・・・ええ、何とか」

 

問いかけられた了子は、束の間沈黙を保ってから。

正常な思考を保っていることを伝えた。

 

「・・・・あれが、カストディアン。神と呼ばれた、アヌンナキの遺体」

「まさしく、聖骸と呼ばれるものですね」

 

モニターの向こう、大破した『棺桶』の中に眠るミイラは。

果たして、何をもたらすのか。




みなさんの考察をニコニコしながら見ている反面、誰か正解に辿り着いてしまわないかと戦々恐々としています(笑)

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