うーん、さっきの未来は一体何がしたかったんだ?
・・・・なんてとぼけられたらどんだけよかったか。
アレって、アレですよね?
つまりはそういうことですよね?
にこにこするサイトや某ちゃんねるだったら『えんだあああああ』の弾幕が流れるような事案ですよね。
あ、そういえば元ネタである歌と映画って、どっちも男女が別れているらしい。
それを恋愛成就シーンで使用する日本人ェ。
話がそれた。
っていうか、ここはあれかな。
『ひびみくだぜ、喜べおまいら』なんて言うべきかなー、って・・・・・。
「『おまいら』って誰やね、あったぁ!?」
自分に突っ込みいれようとしたら、打撃がもろに当たって。
分かるかな、この。
痛くないけど反射で『いたい』って言っちゃう感じ。
すぐに相手の手を引っつかんで、ぽいっ。
ガタイのいいおじちゃんは、仲間を巻き込んで植え込みに突っ込んだ。
「立花どうした?動きが鈍いぞ」
「すみません、すぐ戻りますから」
戦闘が一段落したのを見て、翼さんが話しかけてくる。
その背中には、ぐったりしたクリスちゃん。
二課がノイズの反応と一緒に、第二号聖遺物『イチイバル』の反応を拾ったのがついさっき。
未来とのアレでまだ動揺が残ったまま、翼さんと一緒に駆けつけてみれば。
既に満身創痍の彼女がいたというわけだ。
さすがにプロの人海戦術には敵わなかったらしく。
あちこちに銃創をこさえたクリスちゃんは、わたし達を見るなり『年貢の納め時』といわんばかりに意識を失った。
で、その直後に『ムキムキマッチョなおじさん部隊~サブマシンガンを沿えて~』に囲まれてしまい。
こうやって交戦している次第。
ちなみに翼さんが背負っているのは、手が塞がっても剣飛ばして攻撃できるから。
暴れるわたしを援護してもらって、少しでも手数を増やそうって魂胆だ。
とにかく、留まる理由はないので移動する。
「しかし、何が起こっているんだ?ノイズの群れに、鉛玉の雨あられ・・・・穏やかではないぞ」
「多分ですけど、その子の雇い主が裏切られたとか、そんな感じじゃないですかね」
原作でも協力とか言いつつ互いを利用しあっていた両者だ。
この世界でも『ルナアタック』と呼ばれるであろう騒動が終息した後も、ちゃっかりおいしいとこ持ってったし。
うん、割とやりかねない。
「翼さん!響さん!」
「こちらへ!早く!」
と、話している間にも進んでいたお陰で、味方との合流ポイントについた。
見れば緒川さんや、手配された医療スタッフが手を振っている。
「呼吸はありますが出血が多いです、意識もありません」
「ご苦労様です、後はおまかせを」
手短にやりとりを済ませた彼らは、救急車に乗り込んで去っていった。
ん、ひとまずクリスちゃんはこれでいいかな。
「それじゃあ、っと」
「立花、どこへ?」
聞かれたので、振り返る。
「特に指示も出ていませんし、自主的に『後片付け』でもと。一般人に被害が出たら目も当てられませんから」
仮にもお役所側なわけだし、やっぱり人命は優先すべきだよね。
ん?相手?
街中で銃火器ぶっぱだなんてやんちゃしてるわけだし、ぶちのめすくらいいいんじゃないかな?
大丈夫、死なないから。
死ぬほど痛いだけだから。
「・・・・心配だな、私も行こう」
何でだろう。
絶対わたしの心配してないよね翼さん。
◆ ◆ ◆
「雄おおおおおおおお―――――ッ!!!!!!」
轟、と音。
拳が唸りを上げて迫る。
敵意に気付いた
新手の登場に驚いていたようだが、相手の力量を悟り苦い顔で撤退する。
新たに現れた彼は、束の間気配を尖らせていたが。
やがて周囲に誰もいないのを感じて、こちらにしゃがみこむ。
「随分やられたな、了子君」
追い詰められたこちらを気遣ってか、弦十郎はいつもの調子で語りかけてくる。
いや、助けてくれたのは大変ありがたいのだが。
彼がここにいるということは、自分がやってきた諸々も当然知れているわけで。
だからこそ、分からない。
「・・・・ど、ぅ・・・・し・・・・・?」
固まりかけた口をどうにか動かして、問いかける。
発音はままならなかったが、言わんとすることは伝わったらしい。
間を置かず、答えは来た。
「俺は上司だしなぁ、部下を守るのも仕事のうちだ」
「――――」
・・・・呆れると同時に、思い出す。
そうだ、こいつはそういう男だった。
司令官と言う、冷徹な判断が要求される立場にいる癖して。
ちょっと心配になるくらいに甘っちょろい。
だがそれ故に、人類最後の砦たる二課を纏め上げ、部下からの信頼も厚い。
『フィーネ』から見ても悪くないと思える、久方ぶりの人種。
それがこの、『風鳴弦十郎』という男。
「君が連れていた少女は、響君達が無事保護したそうだ。後は俺達に任せるといい」
ああ、そうさせてもらうとしよう。
少なくとも、あの連中よりはよっぽど信頼できる。
・・・・一安心したら、眠気が襲ってきた。
逆らうことなく目蓋を閉じて、意識を手放した。