チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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元男性・・・・自分で『取った』のか(AXS公式を見ながら)


ドンパチ二か所

うーん、さっきの未来は一体何がしたかったんだ?

・・・・なんてとぼけられたらどんだけよかったか。

アレって、アレですよね?

つまりはそういうことですよね?

にこにこするサイトや某ちゃんねるだったら『えんだあああああ』の弾幕が流れるような事案ですよね。

あ、そういえば元ネタである歌と映画って、どっちも男女が別れているらしい。

それを恋愛成就シーンで使用する日本人ェ。

話がそれた。

っていうか、ここはあれかな。

『ひびみくだぜ、喜べおまいら』なんて言うべきかなー、って・・・・・。

 

「『おまいら』って誰やね、あったぁ!?」

 

自分に突っ込みいれようとしたら、打撃がもろに当たって。

分かるかな、この。

痛くないけど反射で『いたい』って言っちゃう感じ。

すぐに相手の手を引っつかんで、ぽいっ。

ガタイのいいおじちゃんは、仲間を巻き込んで植え込みに突っ込んだ。

 

「立花どうした?動きが鈍いぞ」

「すみません、すぐ戻りますから」

 

戦闘が一段落したのを見て、翼さんが話しかけてくる。

その背中には、ぐったりしたクリスちゃん。

二課がノイズの反応と一緒に、第二号聖遺物『イチイバル』の反応を拾ったのがついさっき。

未来とのアレでまだ動揺が残ったまま、翼さんと一緒に駆けつけてみれば。

既に満身創痍の彼女がいたというわけだ。

さすがにプロの人海戦術には敵わなかったらしく。

あちこちに銃創をこさえたクリスちゃんは、わたし達を見るなり『年貢の納め時』といわんばかりに意識を失った。

で、その直後に『ムキムキマッチョなおじさん部隊~サブマシンガンを沿えて~』に囲まれてしまい。

こうやって交戦している次第。

ちなみに翼さんが背負っているのは、手が塞がっても剣飛ばして攻撃できるから。

暴れるわたしを援護してもらって、少しでも手数を増やそうって魂胆だ。

とにかく、留まる理由はないので移動する。

 

「しかし、何が起こっているんだ?ノイズの群れに、鉛玉の雨あられ・・・・穏やかではないぞ」

「多分ですけど、その子の雇い主が裏切られたとか、そんな感じじゃないですかね」

 

原作でも協力とか言いつつ互いを利用しあっていた両者だ。

この世界でも『ルナアタック』と呼ばれるであろう騒動が終息した後も、ちゃっかりおいしいとこ持ってったし。

うん、割とやりかねない。

 

「翼さん!響さん!」

「こちらへ!早く!」

 

と、話している間にも進んでいたお陰で、味方との合流ポイントについた。

見れば緒川さんや、手配された医療スタッフが手を振っている。

 

「呼吸はありますが出血が多いです、意識もありません」

「ご苦労様です、後はおまかせを」

 

手短にやりとりを済ませた彼らは、救急車に乗り込んで去っていった。

ん、ひとまずクリスちゃんはこれでいいかな。

 

「それじゃあ、っと」

「立花、どこへ?」

 

聞かれたので、振り返る。

 

「特に指示も出ていませんし、自主的に『後片付け』でもと。一般人に被害が出たら目も当てられませんから」

 

仮にもお役所側なわけだし、やっぱり人命は優先すべきだよね。

ん?相手?

街中で銃火器ぶっぱだなんてやんちゃしてるわけだし、ぶちのめすくらいいいんじゃないかな?

大丈夫、死なないから。

死ぬほど痛いだけだから。

 

「・・・・心配だな、私も行こう」

 

何でだろう。

絶対わたしの心配してないよね翼さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雄おおおおおおおお―――――ッ!!!!!!」

 

轟、と音。

拳が唸りを上げて迫る。

敵意に気付いた青二才(アンクルサム)はすぐにその場を飛びのいた。

新手の登場に驚いていたようだが、相手の力量を悟り苦い顔で撤退する。

新たに現れた彼は、束の間気配を尖らせていたが。

やがて周囲に誰もいないのを感じて、こちらにしゃがみこむ。

 

「随分やられたな、了子君」

 

追い詰められたこちらを気遣ってか、弦十郎はいつもの調子で語りかけてくる。

いや、助けてくれたのは大変ありがたいのだが。

彼がここにいるということは、自分がやってきた諸々も当然知れているわけで。

だからこそ、分からない。

 

「・・・・ど、ぅ・・・・し・・・・・?」

 

固まりかけた口をどうにか動かして、問いかける。

発音はままならなかったが、言わんとすることは伝わったらしい。

間を置かず、答えは来た。

 

「俺は上司だしなぁ、部下を守るのも仕事のうちだ」

「――――」

 

・・・・呆れると同時に、思い出す。

そうだ、こいつはそういう男だった。

司令官と言う、冷徹な判断が要求される立場にいる癖して。

ちょっと心配になるくらいに甘っちょろい。

だがそれ故に、人類最後の砦たる二課を纏め上げ、部下からの信頼も厚い。

『フィーネ』から見ても悪くないと思える、久方ぶりの人種。

それがこの、『風鳴弦十郎』という男。

 

「君が連れていた少女は、響君達が無事保護したそうだ。後は俺達に任せるといい」

 

ああ、そうさせてもらうとしよう。

少なくとも、あの連中よりはよっぽど信頼できる。

・・・・一安心したら、眠気が襲ってきた。

逆らうことなく目蓋を閉じて、意識を手放した。


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