総合23位、二次創作15位を頂きました!
日頃のご愛顧、誠にありがとうございます!!
「はあああああああああああッ!!!」
瞬きの間に展開される、七つの障壁。
最初は凌ぐつもりだったらしいサンジェルマンさんだけど、三枚目を破られたところで方針転換したみたい。
障壁を上空へ傾けて、何とかいなすことが出来た。
すごい。
でも、辛そうに呼吸しているあたり全然余裕はないんだろうな。
いや、それはわたしも同じだけど。
突破口が全然見当たらなくて、緊張しっぱなしだ。
・・・・・ところで、今上空に弾いたゴン太ビーム。
何にも当たってないよな?
いや、それこそ気にしてもしゃーないか。
「・・・・ッ」
サンジェルマンさんと同じタイミングで見上げて、息を呑む。
わたし達の頭上を陣取るのは、随分イメチェンしたティキ。
イメチェンっていうか・・・・トランスフォームというか・・・・・。
でっか・・・・。
四肢が無い、だけど女性的だとはっきり分かるシルエットは。
どこか、ミロのヴィーナスを思わせる美しさを思わせた。
さっきのビームを見せられたら、みんな手のひら返すと思うけど・・・・。
おっと、感心してる場合じゃねぇや。
「はあああああああッ!!!」
サンジェルマンさんが、様子見でまずは一発仕掛けるみたいだ。
「くれるかなぁ!?触れずにね!!」
「ダメと言われるとやりたくなるのが人間!!」
当然阻止しようとするアダムは、わたしが抑える。
アダムはもがれてしまった自分の左腕に、魔力が何かを流したようだ。
だらっとしていた腕が指先までピンと張って、振り回せば鈍器になった。
そんな使い方もあるのね!?普通に感心しちまったや!!
振り下ろされた『左腕』をぶん殴る。
一瞬迫り合った後、上に弾いてボディに叩き込む。
びっくりしたけど、片腕な分動きにくいらしい。
怯んだ横顔へさらに一蹴りぶち込むと、アダムの体が大きく傾いた。
その横で、大きな音。
『サンジェルマンさんいい一撃を叩き込んだな?』とそっちに目をやると、離脱するサンジェルマンさんと、頭を大きくえぐられたティキが見える。
だけど、次の瞬間。
映画のフィルムのようなものが展開したと思ったら、瞬きの間に破損が治っていた。
・・・・・いや、なんだそりゃ!?
「溢れているよ!隙がね!!」
「お、っと・・・・!!」
お返しとばかりに蹴りを撃ち込まれたので、わたしも距離を取ることになった。
背中合わせに着地して、再び一緒に空を見上げる。
「並行世界の運用・・・・腐っても神の力ということか」
・・・・んっ?
サンジェルマンさん、今めっちゃ聞き捨てならないこと言ったな?
「並行世界が神の力・・・・?」
「・・・・お前はまだ知らなかったのか」
別に責めるでもなく、情報の共有として話してくれるに曰く。
この世界における『神の力』とは、『並行世界の運用』にあるらしい。
例えば今みたいにダメージを受けると、並行世界の自分に押し付けることでなかったことにしてしまったりとか。
他にも、並行世界を燃料にしてごっつい攻撃を放てたりとか出来てしまうらしい。
なるほど、無限に近い残機を持っていて、それを燃料にすることも可能と・・・・。
っていうか、並行世界の運用って、それ何て『カレ〇ド・ス〇ープ』?
「どういうわけだか、お前はそれを無視出来るらしいがな・・・・」
「わたしもびっくりなんですけどね。あれじゃないですか?ガングニールって、投げたら当たるって言い伝えがありますし」
「・・・・必中の逸話、理屈は通りそうだが」
サンジェルマンさんは、なんだか腑に落ちない感じだ。
顔が『違う、そうじゃない』って言ってるもん。
「まみれているじゃないか!余裕にね!」
話してる間に、アダムが左腕に魔力を纏わせてぶっ放してきた!
勝利を約束する剣かよ!?
なんて言うとる暇はないな!!
散開して直撃は免れたけど、余波に煽られた挙句、飛んできた石でほっぺが切れる。
顔の傷くらいは別にいいんだけど。
未だ決定打が見えないのはよろしくない。
S.O.N.G.のみんなも頑張ってくれてるんだろうけど。
ちょっときついぞ・・・・。
いや、ひとまず攻撃を続けよう。
相手の手札をなるべく引き出すんだ。
銃後のみんなは無能じゃない。
ほんの少しでも手掛かりがあれば、すぐにでも答えを導き出せる・・・・!
「障るんだよ!!ボクの目に!!」
「お"っら"ぁ"!!!」
もう一度ぶっ放してきたので、こっちも神砂嵐をぶっ放して迎え撃てば。
一瞬耳が聞こえなくなるほどの衝撃波。
相殺することは出来たけど、反動はこっちの方がデカい。
くっそ、アダムの野郎ニヤニヤしやがって。
腹立つ・・・・!
「行くぞ立花響!原理は未だ不明だが、ティキを破壊できるのはお前だけだ!!」
「了ォー解!!ちょっとかわいそうなくらいスクラップにしてやりましょーよォ!!」
アダムとティキの力に充てられてか、瓦礫が浮かびあがって足場になっている。
なんかゲームとかのボス戦みたい。
好都合だから、遠慮なく使うけど!!
相手の攻撃を避けながら、サンジェルマンさんの援護を受けながら。
岩場をびゅんびゅん飛び回って接近していく。
途中アダムが立ちはだかってきたけど、横合いからサンジェルマンさんが飛び掛かって妨害をさらに妨害する。
わたしは順調にティキへ接近出来る、あざっす!!
時折後ろから錬金術で攻撃されながらも、目の鼻の先までたどり着いた。
狙うは一点、まずは一発!!
核らしい水晶の中にいるティキへ、拳を打ち込もうとして。
「ティキィ!今だッ!!!やるんだ!消し飛ばしてえェッ!!!!」
間近で、あの映画フィルムのようなものが展開されて。
その内の一枚がキラッと消えていく。
――――あ、そうやって攻撃に使うのね?
びっくりして、呑気な感想を抱いた直後。
極光に飲み込まれて。
「ならぬ」
「此方へ来ること、未だ許されぬ」
「が・・・・ぁ・・・・」
――――ぃ、きてる?
生きてる、よな?わたし・・・・。
指、動く。
呼吸、出来てる。
目、見えてきた。
五体満足。
でも、でも。
全身痛ぇ・・・・!!
「立花響!!!」
サンジェルマンさん、駆け寄ってくる。
手を借りて、何とか起き上がる。
いででで・・・・あんな上空から落とされて、よく生きてたなぁ。
我ながらびっくり・・・・。
でも痛い・・・・。
怪我が酷いところは応急処置してもらえたけど、大ダメージに変わりはない。
えっ、なんで生きてるのわたし?(二回目)
「・・・・生きているのか、何故!?」
「こっちが聞きたいくらいだよ・・・・」
どうやら敵も味方もびっくらぽんらしい。
自分でも死んだと思ったもん・・・・。
え、なんで?(三回目)
「・・・・・炎、蒼の・・・・否・・・・決まっている、幻に」
アダムが何かぶつぶつ言いながら考え事してるのは助かるかも。
呼吸整える暇が出来るし・・・・。
とはいえ、ほんとにどうやって攻めましょうかねぇ。
わたしの攻撃なら通りそうなのはいいけど、だからと言ってわたしが強くなったわけじゃないし。
アダムもティキも油断ならねぇ・・・・。
「ボスにはボスたる所以があるんだなって・・・・」
「だが折れたわけではあるまい」
「もちのロンっすよ」
すぱん、と手のひらに拳を打ち合わせた時だった。
『――――響君、待たせたな』
◆ ◆ ◆
S.O.N.G.本部、司令室。
緒川に匿名で接触を図ってきたというその人物は、大らかに語る。
『バルベルデで、皆さんが離陸を手助けした旅客機。あれの積み荷には、第二次大戦の際に亡命した将校が持ち込んだ、聖遺物に関する情報もありました』
調の顔が、目に見えて明るくなった。
LiNKERが不足していたあの時、切歌と一緒に選択した行動が。
こうやって良い結果を招いた。
現在切歌が重傷を負ってしまっていることもあり、感極まってしまう調。
目じりからは、こらえきれなかった涙が零れて落ちた。
『先史文明時代から続く、永い永い人類史の中で。記憶に残る聖遺物もあれば、忘れられる聖遺物もありました』
調にマリアが寄り添う中で、『彼』は語り続ける。
『有体に言えば、人々の信仰により、権能を上書きされる聖遺物も現れる様になったんです』
「・・・・」
何かに気付いたらしい了子の眉が、ぴくりと動いた。
『世界で一番有名な奇跡に、それとは知られず関わったことで、《神殺し》の権能を手にした聖遺物。その名こそ』
「――――まさか」
エルフナイン始め、目を見開く面々の前で。
モニターに表示されたのは、
「――――ガングニールだとォッ!?」
◆ ◆ ◆
まぁじでぇッ!?
おま、おまえッ。
ガングニールあんた!!
そんなにすごいやつだったんか!?
あ、いや!!
人類史って意外と長かったりするし。
あの『世界一有名な奇跡』も、了子さんレベルの人達からすれば割と最近の出来事なんだろうから。
そりゃ、某基督さんなんぞより年上な聖遺物なら、また別の属性がついてもおかしくないんだろうけどさ!!?
『なぜ、それを俺達に教えてくれたんだ?』
通信の向こう、教えてくれた『親切な人』へ。
司令さんが問いかける。
そりゃそうだ。
教えてくれたのはうれしいと言えばうれしいんだけど、なんで・・・・?
『――――歌が』
瞬間、『親切な人』の声が明らかに弾んだ。
『歌が、聞こえたんです。燃え尽きそうな空に、散って消えてしまいそうな空に・・・・!!』
・・・・・この言い回し。
もしかして。
『だから、今度は僕の番なんです。ただ、それだけの話なんです』
・・・・いや、何も言うまい。
今の彼は、『匿名希望の親切な人』だ。
新たなOTONAに、こっしょり乾杯!
「立花響」
「ええ、こうなりゃやるだけですよ!」
拳同士を打ち合わせる。
体はボロボロで、万全とは言い難いけれど。
力が湧いて、目の前がはっきり見えてくる。
憂いはない、あとはもう突っ込むだけだ!!
「援護する!」
「お願いします!」
サンジェルマンさんが打ち出した突風に乗って、一気に接近する。
「いるのか!?思って!!させるとでも!!」
「お前が許さなくてもやるんだよォッ!!!」
やっぱり邪魔してきたアダムの顔を殴り飛ばして、どんどん先へ進む。
踏み込みの爆発をダイレクトに推進力に変えて、ひたすらに爆進、爆進、爆進ッ!!!
「――――あだむ、ジャないノニ」
とはいえ、ティキもただじゃやられないよな。
「サワらないデエエエエエェェッ!!!!」
来たな『並行世界ビーム』!!
でもなめんなよ!こちとら『神殺し』なんじゃい!!!!
「う"あ"あ"ッ!!!!」
自分でもびっくりするくらい野太い声が出たけど、気にしない!
全力で神砂嵐をぶっ放せば、相手のビームが相殺された。
え、すご。
ガングニール君急にやる気出すやん?
「おおおおおおおおおおおおおおッッ!!!」
でもお陰で道が開いた!!
最速で、最短で!まっすぐに、一直線に!
この拳を、叩き込む!!
「ッハグだよ!ティキ!」
「ウン!あだむ!」
核が分離した!!
腰のブラスターを吹かせて、ダメ押しの加速!!
アダムの下へ辿り着く前に、拳をぶち当てるッッッ!!!
「逃がすかああああああああああああああああああああああああああッッッッ!!!!!!」
◆ ◆ ◆
「――――ああ」
呆然とするアダムの目の前。
彼の悲願が、文字通り打ち砕かれる。
見るも無残に破砕され、地に落ちていくティキ。
束の間放心していた彼は、刹那。
烈火のごとく怒髪天を衝き、響を睨みつけた。
「よくも!小娘!人如きが!ッ矮小なくせにィ!!」
牙を剥くような剣幕で怒鳴り建てるアダムを、響は真っ向から見つめ返す。
そんな両者の睨み合いを区切らせたのは、ティキから零れた光の粒子だった。
「――――え」
それらは明らかな目的を以て響を取り囲むと、全身に取り付いて入り込む。
「ぐ、ううぅ・・・・!」
他人の家へ、不躾に上がり込む様な強引さに、響は苦悶の表情を浮かべて。
「ああああああああああああああああああああああああッッ!!!」
せめてもの抵抗にうずくまっても、無駄だった。
閃光。
アダムも、サンジェルマンも、同じように顔を庇う。
「――――?」
光が収まった時、彼らの前に鎮座していたのは。
赤黒い光の筋を浮かべた、巨大な繭。
「馬鹿な」
サンジェルマンの口から零れたのは、驚愕。
「原罪を背負った人類が、神の力を宿すなど。不可能なはずなのに・・・・!?」
愕然としたところで、何かが変わるわけでもなく。
『それが事実なのだ』とばかりに、巨大な繭は胎動を続けていた。
「――――そうだ、許されぬ」
「お前の責は、果たされておらぬ」