チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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n番目の書きたかったシーンですが、私にしては珍しく筆が慎重でした。
まあ、大事な場面ですもんネ!


わたしのせい

「響さんッ!!」

 

魔力の弾丸が、弾くように響の頭を掠めた。

割り込んだ切歌が、鎌を高速で回転させて続けざまに襲い来る銃弾の群れを弾き飛ばす。

ふらつきを立て直した響が、弾幕が終わると同時に突貫。

韋駄天もかくやという速度で迫る響を前にして、サンジェルマンは冷静にエネルギー切れを起こしたマガジンを破毀。

慌てず騒がず、肩のアーマーから新たなマガジンを装填し。

響に向けて引き金を引く。

 

「・・・・ッ」

 

放たれた弾丸を、響は避けることが出来た。

しかし、背後には切歌がいる。

響自身が遮蔽物となっているので、反応が遅れて当たってしまうだろう。

結論として、取った行動は。

 

「ぐッ!うううううううううう・・・・!!!!」

 

弾丸を手刀で受け止めて、腕の中を通して受け流すことだった。

手のひらから肘まで撃ち抜かれる形になり、右腕は完全に使えなくなった。

 

「響さん!」

「大丈夫」

 

案ずる切歌を手短に宥めて、サンジェルマンを視線で射貫く。

対する彼女も、肩を大きく上下させて息を吐いていた。

胸、それも心臓に重たい一撃を受け、顔を殴られたことで脳も揺さぶられたのだ。

その上でここまでの反撃を行う相手に、響も切歌も険しい顔をする。

 

(やっぱり、一筋縄ではいかないか)

 

まるで太鼓を叩いているように鈍く響く痛みを、必死に無視しながら。

頭から垂れてきた血を、まぶたを閉じることで目への侵入を防いだ。

 

(胸と頭を叩いてもすぐに復帰される。なら、腕と足を最低一本折る)

「――――切歌ちゃん、あのね」

「はい!」

 

そうすることで、今度こその無力化を企む。

小声で切歌に方針を伝えて、連携の準備をする。

 

(――――やはり、一筋縄ではいかんか)

 

一方のサンジェルマンも、険しい顔で考え始めていた。

 

(右腕をつぶせたのは僥倖だが、『それだけ』。相手は何の対策もないイグナイトでラピスに善戦した強者、加えて)

 

響の隣、依然構えている切歌を見る。

 

(此度、彼女は一人ではない)

 

眉間にしわが寄るのを押さえられないサンジェルマン。

 

(錬金術で回復できるとは言え、油断はならない・・・・!)

 

無意識、引き金にかけた指に力が入る。

かちりと音がして、濁った頭がリセットされた。

 

「――――ッ」

 

再び飛び出す三者。

響の拳と、切歌の斬撃がサンジェルマンを襲う。

切歌の二連撃が、サンジェルマンの左右を塞ぐ。

そこへ響が飛び込んで、回し蹴りを叩き込む。

顔を背ける形で回避したサンジェルマンは、勢いを利用して体を上下反転。

体操選手さながらに手をついて飛びのいて距離を取り、体勢を立て直すどさくさに紛れて錬成した結晶を放つ。

放たれた一矢に、切歌は太股を穿たれたが。

怯むことなく、地べたにしゃがんだまま『呪りeッTぉ』を複数放つ。

響は後輩の攻撃を背負い、自らも『刃』をばら撒いてさらに相手の逃げ場をなくす。

殺意の包囲網に捉えられながらもなお、サンジェルマンは落ち着くことなく銃口を向けた。

両雄ならぬ両雌、共に被弾を免れぬ状況で激突しかけ。

――――突如として、まばゆい閃光が降り注ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

――――響が死んだ(じごくをみた)

 

 

――――背負っているものを知った(じごくをみた)

 

 

――――血を吐くような告解を読んだ(じごくをみた)

 

 

――――何もかもが、手遅れだった(いつかたどった、じごくをみた)

 

 

 

 

 

――――理解を、強制される。

ノイズ(クリーチャーの方ではない)まみれで、内容なんてまともに読み取れないのに。

目の前の紙切れの文章の意味が、否応なく頭に叩き込まれていく。

 

(痛い!!)

 

(痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!!)

 

何の変哲もないどころか、賞賛さえ受けるような内容なのに。

一文字一文字には、海より深い愛が刻まれているのに。

最初の書き出しから、最後の書き終わりまで。

その全てが、内側から蝕んで、抉って、穿っていく。

湧きあがった罪悪感が、留まることを忘れた自責の念が。

自分の心と体を、容赦なく攻撃していく。

やめたいのに、痛くてたまらないのに。

目が、頭が、言うことを聞かない。

遺書(それ)を読むのを、やめてくれない・・・・!!

 

『――――幸せでありますように』

「――――ぁあ」

 

零れて、落ちたのは。

誰の声だったか。

 

『これからの君の人生が、幸福に満ち満ちていますように』

「――――ああああ」

 

――――同じだけの絶望に、身も心も塗りつぶされてしまった未来には。

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッ!!!!!!!」

 

もはや、理解出来ぬことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――どうしたらよかったの。

 

「さあ?どうしたらよかったんでしょうね」

 

――――どうすればよかったの。

 

「さあ?どうすればよかったんでしょうね」

 

――――何が、正しかったの。

 

「さあ?私にもさっぱりだわ」

 

 

背中に問いかけても、返ってくるのはのは同じ疑問(くるしみ)

 

 

「ああ、でも。一つだけ」

 

 

 

 

「確かに間違えたことがある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――■」

 

「よかっ■■、■れ。一緒に■■ない?」

 

 

 

――――一番最初に、その地獄を見た(すべては、わたしのせいだった)

 

 

 

 

 

 

 

 

剥いでも剥いでも無くならない張り紙。

『人殺し』『税金ドロボー』『お前だけ生き残った』。

気が滅入るような言葉の濁流に晒されるが。

爪が割れても、指先が擦り切れても。

剥がすことをやめることは出来なかった。

やめる自由など、存在しなかった。

 

「――――何をしているの?」

 

声を、かけられる。

 

「これを、剥がしているの。そうしないといけないの」

「どうして?」

「だって、わたしのせいだから」

 

話しながら、手を止めない。

ビリビリ、バリバリ。

足元に山と積まれた紙ごみ。

もう、壁の向こうまで掘り抜いてしまうんじゃないかとばかりに剥がし続けているが。

一向に無くなる気配はなかった。

 

「・・・・怪我してるよ」

「うん」

「爪だって割れてる」

「うん」

「血だって止まってない」

「うん」

 

声は、真っ当に心配してくれている。

それでも手は止めない。

 

「やめたら?」

「できない」

「なんで?」

「許されないから」

「誰に?」

「響に」

「・・・・なんで」

 

手が、止まる。

心の底から、悲しそうな声。

指に滲んだ血が、紙に染みこむのを見てから。

恐る、恐る。

振り返った。

 

「なんで、そんな話になっちゃったのさ」

 

泣きそうな顔の、誰かがいた。

 

「わたし、恨んでないんだよ。本当だよ」

 

胸に風穴を開けて、片腕もなくしたその人は。

やっぱりほろほろ涙を流しながら、しゃくり上げる。

 

「あの、二年の旅の中。何度も何度も道を外しそうになって」

 

「衝動のままに、暴れるだけ暴れて、壊れてしまおうとも考えてッ・・・・!」

 

判別出来ない顔を押さえた片手の指の間から、嗚咽も零れていた。

 

「だけど・・・・その、たびッ・・・・その度、ひぎ、引きっ止めて、くれたのが・・・・・未来の手だった」

 

「みぐ、の、声がき、聞こ、え、てっ・・・・こたえることが、でっき、るだけっ・・・・わたしは、まだ・・・・人間、なんだって・・・・思え、てっ・・・・!」

 

手がほどかれて、こちらへ伸ばされる。

涙を受け止めて、びしょびしょになった片手は。

みっともなくぼろぼろな未来の手を、優しく包み込んでくれて。

 

「だから、守りたかったし、幸せになってほしかった」

 

「だって、未来の優しさは、暴力なんかに頼らない強さは・・・・きっと、たくさんの人を助けるから・・・・!」

 

言葉が途切れる。

呼吸が響く。

 

「・・・・ずっと、ずっと、ずっと、悔やんでいる」

 

やがて吐き出されたのは、懺悔。

 

「君が禁忌を犯したことも、世界が薪とくべられたことも」

 

「優しい君を、堕としてしまったことを、ずっと、悔やんでいる」

 

 

 

 

 

 

暗転。

温もりが消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

降り積もっている。

怒りが、悲しみが、後悔が。

雪の様に積もって、融けて、水を吸った体が重くなる。

・・・・自分の罪を突き付けられるなんて、何度もあったはずなのに。

何回目の当たりにしても、痛みに慣れることはない。

進歩の欠片も見当たらない己に、並々ならぬ嫌悪を覚えながら。

動けないまま倒れ伏して、一体どれほどの時間が経っただろう。

ただ一つ分かることは、響に比べたらなんでもないにも程がある苦しみなのだろうということだけだった。

 

「何を、やっているんだろう」

 

自虐が、零れる。

 

「何を、したかったんだろう」

 

自嘲が、零れる。

 

「何が、望みなんだろう」

 

無意味な自問が、零れる。

手足の感覚は既に希薄で、このまま消えてしまいそうだ。

 

(・・・・・それも、いいかもしれないな)

 

彼女(みらい)の記憶を、垣間見てしまった今。

喪失への恐怖は非常に薄くなっていた。

このまま生き延びても、結局は響をこれ以上苦しめてしまうことになる。

・・・・最初は罪悪感から始まった恋でも、今は心からの愛だと断言できる。

自分の罪も、罰も、大真面目に背負っているあの人を、追い詰めてしまうくらいなら。

今以上に、背負わせてしまうくらいなら。

いっそ、ここで。

 

「――――だいじょーぶ?いたいの?」

 

そんな幼い声が降ってきたのは、そんな時だった。

気怠く顔を上げると、くりくりとした琥珀色の目が見降ろしてきている。

 

「わたし、たちばなひびき!いっしょにあそぼ!」

 

――――涙が、溢れた。

覚えている、忘れるわけがない。

初めて出会った時の光景だ。

あの日、幼稚園の初日。

お母さんと離れたのが怖くて、不安で、みっともなく泣いていたところへ。

こうやって手を差し出してくれたのだ。

・・・・今、この手を取れば。

自分は救われるだろう。

死の淵から帰還して、強敵相手に何とか逃げ切れるだろう。

でも、響はどうなる?

 

(これから苦しむことになる響は、どうなるの・・・・)

 

紅葉、あるいはクリームパンのような、ふくふくした手のひら。

こんなに無垢な五指に触れたばかりに、重荷を押し付けることになるなど。

どうして想像出来ただろうか。

 

(やっぱり、いいや)

 

顔を、伏せる。

 

(響を傷つけるくらいなら)

 

嗚咽を殺す。

 

(救われなくても、いいや)

 

そうやって、差し出された手を拒絶する。

だって、これ以外に響を救う方法は思い当たらない。

・・・・迫ってくる。

死の気配が、刻々と濃くなってくる。

けれど。

今は恐怖よりも、達成感の方が勝っている。

他の子供に呼ばれて、去っていく背中を見送っていると。

自然と浮かぶ笑顔。

 

(これでいい、これでいい)

 

再び顔を伏せながら、暗闇に従って意識を手放そうとして。

 

「――――ちょっと待った!」

 

手を、掴まれた。

 

「もー!妹的には婦々(ふうふ)似た者同士がっつり両思いで万々歳だけどさ!?ここまで似なくていいじゃない!」

 

顔は、見えない。

だけど、酷く見覚えがある気がした。

 

「そりゃあ、わたしも悲しかったよ!お姉ちゃん死んでさ、なんで生きててくれなかったかって何度も何度も思ったよ!」

 

だけど!

叫んだ声が、闇を討つ。

 

「お姉ちゃんが、それこそ死ぬほど悩んで選んだ結果だったから!それを理由に立ち止まるなんて、それこそお姉ちゃんへの裏切りだから!!」

 

「だからわたしは、前を見た」

 

琥珀色の目が、潤む。

 

「・・・・でもそれしかやってなかったから、『あなた』の凶行を止められなかったんだろうね」

 

そうして寂しそうな声を、零したのだった。

 

「って、これあなたに言ってもしょうがないか。よかったら忘れて!」

 

次の瞬間には、何でもないような笑みが浮かんだのだが。

 

「それよりもほら!早くしないと戻れなくなるよ!よーいしょっ!!」

「わ・・・・!」

 

引っ張り上げられ、彼女よりも上空に飛ばされる。

ほぼ真っ逆さまになった視界のはるか下方。

 

「ま、待って!わたし・・・・!」

「――――これで、あなたが生還するのはわたしの所為!!」

 

明るく告げられた言葉に、息を呑む。

 

「だから、これからの苦難と不幸も、わたしの所為!」

 

こちらの動揺を知ってか知らずか、笑顔が陰ることはなく。

 

「どうか、独りで背負わないで。そして、どうか・・・・」

 

だけど、別れ際の顔はどこか愁いを帯びて。

 

「・・・・どうか、あなたの道行は、幸福でありますように」

 

絞り出された願いには、言葉以上の祈りが込められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ッ!?」

 

振り向く。

仕留めたはずの未来が、起き上がっている。

『何が起こった』と、思う前に。

杖の切っ先が突き付けられた。

 

(・・・・・キョウ、ちゃ)

 

精悍な眼差しが、霞の様に消えたその向こうで。

未来の懐から、真っ二つになった響のぬいぐるみが落ちたのが見えた。

 

「・・・・わた、しの、せいで」

 

ふらふら、立ち上がる。

口元からは、うわごとのような声。

 

「わたしの、所為で。響が死ぬのなら、ここで死ぬ方がいいかもしれない」

 

だけど、と。

落とした視線の先には、無残ながらも誇らしく壊れたぬいぐるみ。

あの暗闇の中、『自分も背負う』と言ってくれた。

どうか、幸福であってくれと願ってくれた、声。

 

「そんなわたしでも、生きてて喜んでくれる人が、幸せを願ってくれる人が、少なくとも二人いる。何より」

 

顔が上がった。

切り傷、擦り傷、打撲、骨折。

全身満遍なく大けがを負っている、何なら肺は依然傷ついたままで、ロクに歌うことすらままならない。

 

「自分に負けている様じゃ・・・・響を支えるなんて、夢のまた夢だ・・・・!」

 

なのに。

向けてくる目は、あの人と同じ。

最速で、最短で、まっすぐに、一直線に。

折れてやるものかと、伝えてくる眼差し。

 

「あーあ、分かりきっていただろうに」

 

――――声が、聞こえる。

 

「何ネン響の隣にタッてきタと思ウの?」

「――――黙れ」

 

雑音(ノイズ)と共に、虫唾が走る。

 

「コノ程度で折れルワケないジャナイ」

「黙れ・・・・!」

 

結晶を次々錬成。

突っ込んでくる未来を取り囲むように配置する。

 

「モウ、ミトメタラ?」

「黙れ・・・・ッ!!」

 

――――そうだ。

本当は、気付いていた。

知っていたとも言う。

 

「――――こんなことしたって、意味はない」

 

ずっと、ずっと、ずっと。

妄想が生み出した(まぼろし)のふりをして、耳元で罵り続けていたのは。

 

「――――『あなた』(イヨ)に響は救えない」

 

他でもない、自分自身だったのだ。

 

「黙れええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッッッッ!!!!!!!!!!!」

 

結晶達にレーザーを放ち、巨大な檻を作り上げる。

未来は横目で見やっただけ。

重そうに鉄扇を握りしめ、口元から気炎を吐きながら。

駆け足を止めなかった。

はっきり言って、光の檻はフェイクだ。

本命は、この光を全て収束させて放つ破魔の極光。

 

「結局はただの八つ当たりじゃない。幾千、幾万経っても、あなたは結局弱いままじゃない」

(うるさい!!うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!)

 

嘲笑を必死に否定しながら、手を振り下ろす。

放たれる閃光が、未来の頭上から直撃。

しかし、未来が鉄扇で防ぎにかかったのが一瞬見えた。

一瞬、爆発。

コンマ程の沈黙ののち、土煙から飛び出してくる未来。

 

「~~~消えろォッ!!」

 

手を掲げて、再び結晶を錬成。

巨大な二つで逃げ場を塞いだところに、細かい弾幕を雨あられと浴びせてやる。

これも防いだらしい、甲高い音が響き渡った。

 

「――――ッ!?」

 

『防いだ』と思っていたが、どうやらそれだけではなかったらしい。

巨大な結晶それぞれから、レーザーが奔る。

奔ったレーザーは、いつの間にか射出されていたシャトルと、イヨの結晶に反射して。

収束していく。

どうやら、生意気に同じ攻撃を企んでいる様だ。

 

(一歩下がる、それだけで回避は出来る)

 

たった一歩、たった一歩だ。

下がれば死に体の相手は勝手に転ぶから、そこを叩けばいい。

それで終わる、はず。

なのに。

 

(どうして、体が動かない・・・・!)

 

足が、地面に縫い付けられた様な感覚。

威圧されているわけでもない、恐怖を感じているわけでもない。

だというのに、体が動かない・・・・!

 

「――――そんなことも分からなくなったの?」

「・・・・ッ!」

 

まごついている間にも、未来は迫ってくる。

嘲りを聞きながら、せめてもの抵抗に『獣殺し』を突き刺そうとする。

相手はすっとろいくらい、十分に心臓を貫ける。

 

――――わたしのは、結局のところ暴力でしかないよ

 

記憶が、蘇った。

 

――――叩いたり蹴ったりする以外でも、救う手段を持っている

 

――――それが人間の強さだと思っている

 

雑音(ノイズ)が強い、よく分からない。

それでも。

 

――――未来は、未来が思っている以上にすごいんだよ

 

焼き付いたこの愛は、千年経っても忘れることはないのだ。

 

(本当は、分かっていた)

 

とうとう未来に肉薄される。

胴体に思い切り飛びつかれる。

 

未来(わたし)を殺しても、願った未来(みらい)は帰ってこない・・・・分かっていた・・・・!)

 

慣性に押されるがまま見上げれば、夜を昼にせんばかりの極光が輝いていて。

 

(だけど、だけどッ・・・・・ねぇ、響・・・・!)

 

飽和状態になった、神獣鏡の光が。

振り落ちる。

 

(あなたが何者でもよかったの)

 

(あなたが何を背負っていてもよかったの)

 

閉じた目元、水の軌跡が描かれて。

 

(あなたと笑って、夜明け(みらい)が見たかった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――未来さん!」

 

緒川が駆けつけた時には、すでに決着がついていた。

ズタボロで倒れ、虫の息になっている未来に。

そんな彼女を膝に乗せて座り込んだまま、茫然と夜空を見上げているイヨ。

 

「――――御覧の通りよ。誤判の仕様はないでしょう」

 

素早く銃口を構えながら、連れてきた部下へ未来を救出するよう指示を出しかけたところへ。

イヨが、不意に口を開く。

 

「敗者は敗者らしく、従うわ」

「・・・・投降する、ということですか?」

 

注意深く問いかける緒川に、イヨは気怠く瞳を閉じて。

 

「好きになさい」

 

心底、疲れた声を返した。




ぬいぐるみ(CV玄〇哲章)「グッドラック!( ´∀`)b」デデンデンデデン!!


以上、頭の中にあったイメージでした(笑)

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