チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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パソコンに加えてエアコンも新調しなくちゃいけなくなって。
お金が・・・・お金が飛んでいく・・・・!

実はこれまでのお話もこっそり書き直したりしてるので、良ければ見返したりしてみてください(ダイマ)


始まる、決着

「わたしと切歌ちゃんってさ、割と似てるよね」

「デス?」

 

ある日のトレーニングで。

響はそんな話を振ってきた。

 

「あたしと響さんが、デスか?」

「うん」

 

響の手元で、ドリンクボトルの飲み口が開けたり閉めたりしてもて遊ばれるのを見ながら。

切歌は頭の中をはてなマークでいっぱいにした顔をする。

そんな後輩に、『もう知ってると思うけど』と切り出して。

 

「わたしはさ、もう手遅れなくらいの罪を犯してる。だから、汚れ役は率先して引き受ける様にしてるんだけど」

「未来さん達に怒られるデスよ・・・・」

「それは今触れんといて・・・・」

 

ふふふ、と遠い目で乾いた笑みをこぼしつつ。

続ける。

 

「で、まあ。皆が手を汚さないようにする為には、そういう場面になったとき飛び込めるよう観察する必要があるわけよ」

「ほほう」

「見てて思ったんだよね」

 

ここで、まっすぐ。

切歌を目を見据えながら、響は告げる。

 

「切歌ちゃんも、なんか、こう。誰かの負担を肩代わりする動きしてるでしょ」

 

・・・・切歌は、答えない。

どんな顔をしているのか、響にしか見えていない。

 

「・・・・だからわたし達、きっとうまくユニゾン出来るよ。適合者の中で、一番(いっちゃん)似た者同士なんだもの」

 

目の当たりにしたその顔を、特に追及するでもなく。

響はスポーツドリンクを煽った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プレラーティも無事撃破。

思い返せば、パヴァリアの連中と接触してまだ三週間くらいしか経ってないことに気付いた。

だいぶ濃密すぎひんか・・・・?

 

「あのッ」

 

はー、そろそろ進展ありそうだなと思いながら。

食堂でかつ丼をつつこうとしていると。

切歌ちゃんが近づいてきた。

 

「どうしたの?」

「素敵なことを聞いたのデスよ!響さん、明後日はお誕生日だそうデスね!」

「・・・・ああ、そういえば」

 

忙しすぎて普通に忘れてた。

こないだ九月になったばかりなのに、もうそんな時期?

『感覚が年寄り染みてきたのでは?』と困惑していると、切歌ちゃんは胸を張って。

 

「なので、誕生日パーティをやりませんかと、お誘いにきたのデス!」

「おおー!」

 

ジャジャーン!とばかりに両手を広げる切歌ちゃんの提案。

普通にありがたいので、歓声を上げていると。

一緒のテーブルにいたクリスちゃんが、片眉を吊り上げた。

 

「お気楽がすぎるぞ、パヴァリアの連中の脅威だってまだ無くなっちゃいないのに」

「雪音の言うとおりだ。生誕を祝うのは大事なことだが、パーティをやっている余裕があるかと言うと・・・・」

 

・・・・まあ、二人が言っていることが分からんでもない。

パヴァリア光明結社との戦いは、架橋を迎えている。

決戦の気配が近付く中で、『うぇーい!』って盛り上がっている余裕があるかと言えば・・・・。

・・・・ンまあまあまあ。

 

「わたしも今じゃなくてもいいと思うかな」

「そ、そうデスか・・・・」

「パーティやろうってのは普通にうれしいよ、ありがと」

 

にまっと笑って見せれば、肩を落とした切歌ちゃんもにっこり笑ってくれた。

 

「とはいえ、気を締めろ暁。幹部が二人も討ち取られたた今、パヴァリア光明結社の連中がどんな行動を取ってくるか分からん」

「それこそ、一般人巻き込んで暴れるかもね。対処出来るのはわたしと切歌ちゃんだけ、頑張ろう」

「任せるデスよー!」

 

形だけのマッスルポーズを決める切歌ちゃんに、微笑ましさと頼りがいを感じながら。

かつ丼を頬張ったのであった。

うむ、うまい!

 

 

 

 

 

閑話休題(丼って奥が深いよね)

 

 

 

 

 

 

「――――全員揃ったな」

 

さてさて。

お腹も満たされたとことで、ミーティングである。

寝こけないように気を付けないと・・・・。

議題はもちろん、パヴァリアの奴らの目的について。

調神社で見せてもらった古文書や、教えてもらった伝承から。

やっぱり連中は、神出門を利用した大規模錬成で、神の力を手に入れようとしているってのが濃厚になった。

エネルギー源はやっぱりレイラインだろうとのこと。

連中がキャロルちゃんの支援をしていた=アルカノイズのレシピや、、レイラインを始めとしたデータがあっちに行ってる可能性が高いからだ。

・・・・レイラインを、地上を使った大規模錬成に。

『門』を通じて神を手に入れようとする所業。

あの、某錬金術師の『フラスコの中の小人』を想像したわたし。

悪くない。

 

「いったいどれほどの怪物を創造するつもりなの・・・・」

「それこそ『神様』でしょう、ロクでもないのは明白だけど」

 

軽く食いしばりながらモニターを睨むマリアさんに、吐き捨てる了子さん。

美人が怒った顔って、どうしてこんなにこあいの・・・・?

 

「対抗策はないのか?」

 

気を取り直して、クリスちゃんが問いかけると。

重たーい雰囲気。

 

「・・・・神の力に対抗するなら、神殺しがセオリーだけど」

「実は、その手掛かりがあると目されていたのが、バルベルデ文書」

 

・・・・調査部が調べたところに寄れば。

時は第二次世界大戦末期。

バルベルデに亡命したドイツ軍将校がいて、その人が賄賂的なので聖遺物をいくつか持ち込んでいたらしい。

で、一部があのオペラハウスに安置されていたとか、なんとか。

さてはあのティキとかいうオートスコアラーもいたな?

まあ、とにかく。

それ以上の情報は、バルベルデ文書の解析待ちだったそうなんだけど。

ン燃えてますねぇ!!!(絶望)

あ、だからあの『全裸ーマン』、あんなバチバチド派手な大火力で跡形もなく消し炭にしたんか!?

となると、逆説的に『神殺し』、あるいはそこに確実に通じる手掛かりがあった可能性が高くなってきたな!?

まんまと燃やされたけど!!(白目)

 

「引き続き、全力で手掛かりを探してはみます」

「ああ、頼んだ」

 

緒川さん達も頑張ってくれるんだろうけどなぁ・・・・ちょっと後手後手感が否めないなぁ・・・・。

 

「桜井女史は、何か心当たりは?」

 

まだ眉間にしわを寄せてる了子さんに、翼さんが問いかける。

伊達に五千年生きてないし、何か手掛かりないかなと期待する気持ちは分かるんだけど。

 

「・・・・『神殺し』と聞いて真っ先に思い当たるのは、『ロンギヌスの槍』の逸話だけど」

 

『ロンギヌスの槍』。

某新世紀な凡庸人型決戦兵器のアニメでも有名な、世界的にもトップクラスの知名度な逸話の一つだ。

エルサレムにて、かの聖人にとどめを刺したとされるけど。

実際はその生死を確かめるべく使用された槍。

その時聖人の血を浴びたので、聖遺物に認定されたとか、なんとか。

あっ、思い出した。

担い手だったロンギヌスの、衰えていた両目に血しぶきがかかって。

視力が蘇るという奇跡が起こったんだっけか。

・・・・にしたって。

なんであの宗教、開祖に害を加えたものを持ち上げて大切にするんだろう。

ふしぎ(あたまのわるいかお)

そんなことを考えているうちに、了子さんは物憂げな仕草で頬に手を当てて。

 

「その時代、『エルサレムの奇跡』を目の当たりにする前に死んじゃってねぇ。世紀の瞬間見逃しちゃったのよ」

「そんな『気になってた番組見逃した』」みたいなノリで言うなよ・・・・」

 

あらら、なんてタイミングの悪い・・・・。

一応、後の世でそれとされている品物を見る機会はあったけど。

曰く、『味のしみ込んでいない煮物』。

世界一有名な奇跡なだけあって、集まった信仰でそれらしい力は得ていたらしいけど。

あのバルベルデでぶっ飛ばしたでっかい蛇や、これから対峙するであろう『神の力』に対抗できるかどうかと言えば。

期待しない方が賢明だという話だった。

 

「仮に持ち出そうとしても、歴史的にも宗教的にも貴重な文化財だから。許可を得るのに時間がかかるし・・・・」

「それまでにパヴァリアが大人しくしてくれる保証もない、か・・・・」

 

打てる手が少ねぇ・・・・。

まるきりないわけじゃないけど、絶望的なまでに打てる手が少ねぇ・・・・。

 

「また、相手の出方を伺うしかない、か・・・・」

 

司令さんが、顎髭をなでながら難しい顔をしたところで。

ひとまずお開きになったのであった。

・・・・うっすら聞いた話だと。

松代の敗北について、翼さんの『おじいちゃん』がめちゃくちゃ怒ってたらしい。

『前世の記憶』だと、その・・・・『血を濃く残す』為に翼さんを『産ませる』くらいには国防にお熱な方みたいだし。

国にとって重要な施設、しかも身内とくれば、怒りもひとしおだったろう。

大丈夫かな・・・・考えが『古臭そうなご老公』って、大体の作品で余計なことして事態を悪化させてんだよな・・・・。

頼むから大人しくしちくりー。

 

「――――響さん!響さん!」

 

悩ましいミーティング明け、ひとまず装者みんなは待機になったところ。

そんな感じでこっそりおててを合わせていると、切歌ちゃんが声をかけてくる。

 

「パーティは無理でも、プレゼントは渡したいデスよ!」

「・・・・あ、誕生日の話?」

「デース!!」

 

てっきり終わったとばかり思っていた誕生日の話だった。

 

「切ちゃん・・・・」

「お前なぁ!ンな余裕ねぇって話したばっかだろうがよ!」

「ふぉっ!?よよよよよよよよ!!!」

 

びっくりしている目の前で、クリスちゃんが切歌ちゃんのほっぺをつねり上げる。

 

「ちょっと、何の話?」

「いやぁ、その・・・・わたしが原因っていうか・・・・」

 

マリアさんの困惑も、仕方ないやつですよね・・・・。

ちょっと止めてキマース!!

 

「クリスちゃんクリスちゃん、落ち着いて」

「ったぁくよぉ・・・・」

 

幸いにもすぐに鎮まってくれたクリスちゃん。

ほっとする隣で、目だけ向けて切歌ちゃんを見てみる。

 

「・・・・それでも、誕生日は大事なのデス」

 

・・・・握りしめられた手に、微笑ましさを覚えた。

やっぱり似てるよ、わたし達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――こんなところで何してるの?何もかも鏖殺しておいて、随分呑気じゃない」

「――――いいえ、この子は疲弊を癒しているだけ」

 

――――あの方が隣にいるときは、不思議と静かだった。

 

「身も心も罅入ったままでは、砕けてしまうわ」

 

星そのものをくべて生まれたエネルギーは、想像以上だった。

この時代に来てしまったと気付いた時、抱いたのは茫然と虚無と、絶望。

 

「甘やかしてもらえて満足?被害者面出来てよかったじゃん」

「もはや手遅れでも、何も手を施せなくても」

 

那由多を犠牲にして得た結果に、全身の力を虚脱させていたところに出会ったのが。

今、頭を撫でてくれているお方だった。

 

「それでも私は、否定しない」

 

ふわり、ふわり。

度重ねてしまった無茶のせいで、すっかり色落ちした髪が撫でられている。

 

「誰にも許してもらえないのに、あなたにまで否定されてしまったら。一体誰がこの子を誉めてあげるの」

 

眠りと覚醒のはざまを行ったり来たりしながら、それでも何とか起き上がろうとする。

 

「――――いずれ、地獄に堕ちる癖に」

 

誰かが、吐き捨てた。

 

「あなたはきっと許されない、あなたはきっと救われない。それでも、あなたはとても頑張ってきた」

 

「選んだ手段が悪しきものでも、抱いた願いまでそうとは言わない。言わせない」

 

見/観/視()てしまった私に果たせる責任は、それくらいなのだから」

 

瞼を揺らしたところで、はっきりと聞こえた。

 

 

 

「――――よく、頑張ったね。イヨ」

 

「あなたの願いが、どうか報われますように」

 

 

 

――――目を開く。

黒曜石のような目が、優しく見下ろしている。

 

「おはよう、お寝坊さん」

「・・・・はい、おはようございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――心は、不思議と凪いでいた。

カリオストロもプレラーティも討たれ、サンジェルマンが背負う犠牲のカウントに加えられた。

神出門の準備は整い、後は発動させるのみ。

高揚もない、落胆もない。

ただただこの心の憎しみを、ひと段落させるだけ。

望んだ結果を、掴むだけ。

――――サンジェルマンが動き出した。

ここは現場から遠く離れた場所であるが、近年の特異災害による甚大な被害を受け。

異端技術が関わった事件においては、余分に避難区域が設定されることが決定し、施行されているはずだ。

証拠に、ほら。

守られた場所から、のこのこと出てきてくれた。

 

「ッ、逃げて!!」

「な、ぐあッ!!」

 

ずどん、と。

分かり易く轟音を上げて着地してやる。

土煙に紛れて、周りの護衛達を始末すれば。

後に残るのはただ一人。

 

「・・・・ッ!」

 

小娘が車いすから立ち上がる。

それだけでも消耗は激しいだろうに、ご苦労なことにギアまで取り出した。

・・・・蛮勇に苛立ちながら、こちらも息を吸う。

 

「――――Rei shen shou jing rei zizzl」

 

歌われる。

黄泉に堕ちようとも、光も闇も何もかもを。

愛し貫くと誓った、覚悟の歌が。




チョイワル時空におけるヒミコ様のイメージは、FGOよりも大神(CAPCOM)の方が近いです。
戦闘力はゼロですが、呪術と占術と千里眼はピカイチ。
しかも母性カンストしているので、143はしょっちゅう『ハイハイホーイ!』と膝枕され、なんならそのまま政務につくこともあったとか。
日本最古の女王は伊達じゃねぇ・・・・。
ただ、彼女の千里眼はオンオフが出来る代わりに常に出力最大な状態。
なので、143を『みた』だけでその人生の大体を把握していました。
だから肯定するような発言をしていたわけです。

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