チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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ありがとうございます。

本当は昨日上げたかった最新話です(システム障害ならしゃーないけども)(運営様、いつもお疲れ様です)


風月ノ疾走

「アダム!アダム!」

 

――――時間を少し遡る。

パヴァリア光明結社が拠点としている、都内の高級ホテル。

一部の『選ばれたもの』にしか許されない、ラグジュアリーなプールスペース。

備え付けのバブルバスにて、相も変わらずアダムと戯れているティキが。

鈴の様な声を上げる。

 

「アタシね、人間になりたい!」

「突然だね、相変わらず」

 

アダムのどこか他人事のような反応を気にも留めず、ティキは続ける。

 

「それでね、アダムの子供を産んでね。ぽこぽこ産んでね!野球チームを作るの!」

「ははは。かかりそうだね、時間が」

 

興味があるんだかないんだか。

頑なに脱がないハットの下は、上手く読み取ることは出来ない。

 

「出来るよね?だってアダムは神様の力を手に入れるんだもの!」

「もちろんさ」

 

一見微笑ましく見えるものの。

どこか、うすら寒い雰囲気を感じる光景だった。

そこへ、

 

「アダム・ヴァイスハウプト!」

 

威圧的なオーラなどものともせず、憤然と歩いて来る者。

プレラーティだ。

トレードマークのカエルのぬいぐるみを、歪むほど握りしめた彼女の眼は。

味方に向けるそれではない。

 

「お前は、神の力を得て何をするつもりなワケだ!?サンジェルマンと同じ願いを、持っているんだろうな!?」

 

――――手負いで床に伏していた時、健在だったカリオストロがぽつりとこぼした懸念。

アダムは、サンジェルマンを切り捨てるつもりではないかという懸念。

少なくとも、同じ組織に置いているということは、サンジェルマンの目的と利害は一致しているはずなのだ。

しかし、『神の力』を固定するために、カリオストロやプレラーティのどちらかを生贄にするよう通告したこと。

アダムがトップであることを踏まえても、味方を切り捨てるような言動には不信感を抱かざるを得ない。

――――犠牲に、生贄になるくらいなら。

プレラーティもカリオストロも別に構わない(サンジェルマンが願った世界を見られないのは少し残念だが)。

だが、サンジェルマンの願いを蔑ろにされることだけは我慢ならなかった。

それぞれ利益や快楽を貪るしか出来なかった自分達に、それ以外の視点を。

『誰かのために尽くす』という価値観を与えて、世界を広げてくれたサンジェルマン。

見たことのない景色を、独りよがりでは見られない景色を。

共に目にしたいから、ずっと付いてきたのだ。

結社の、アダムの目的など。

二の次である。

それらもろもろの積み重ねも相まって。

サンジェルマンの夢が、悲願が。

無残に刈られ、踏みにじられる事を、許容できなかったのだ。

 

「・・・・は」

 

そして、案の定。

アダムは、プレラーティが抱いた不信を肯定する。

たった一言の笑い声をあげた。

 

「渡すものか、当たり前だろう。過ぎているからね、只人に。神の力は」

 

要するに、『幼子に刃物は渡せない』という。

なめくさった傲慢な視点からの物言いだった。

 

「ッお前!やっぱり!」

 

激昂したプレラーティは、即座に風や炎の陣を展開。

生み出したエレメントを叩き込もうとする。

敵意と殺意に満ちた行動を前にしてもなお、アダムは悠長に湯船に浸かり、ティキに至っては緊張感なく『きゃー!』なんてはしゃぐ始末。

余裕の態度にも構わず、解き放った攻撃は。

 

「ッ貴様!イヨ!!」

 

柱の陰から飛び出してきた、イヨによって阻まれた。

 

「・・・・ご無事で」

「ああ、ないよ。なんとも」

「ほめてつかわすー!」

 

鏡を展開し返して、攻撃を防いだイヨは。

アダムとティキを背に、プレラーティと対峙する。

 

「お前、自分が何をやっているのか分かっているワケか!?」

「お言葉、そっくり返させて頂きます」

 

怒鳴り声に固い声で返すイヨ。

 

「その行動が、サンジェルマン様の立場を悪くすると理解していらっしゃいます?」

「・・・・たとえサンジェルマンに嫌われたって構わない!今はッ!私のやりたいことを優先するワケだ!!」

 

プレラーティが何をやろうとしているのか、言うまでもなかった。

『儀式を邪魔するつもり』だ。

向けられたプレラーティの背中へ、丸鋸のように変化させた風を叩き込もうとした。

 

「――――ッ」

 

叩き込もうとして、一瞬だけ指が動かない感覚がした。

その所為かどうかは定かではないが、狙いがズレる。

最初は取るに足らない誤差であっても、距離が、時間が開けば大きくなる。

結果として、プレラーティ愛用のぬいぐるみを切断するだけに留まった。

プレラーティは無残に裂かれたぬいぐるみを、思わず一瞥したものの。

すぐさまこぼれ出たスペルキャスター(けん玉)をつかみ取り、ファウストローブをまとってホテルを飛び出していく。

 

「ッ追います」

「ないよ、構うことは」

 

追いかけようとしたイヨだったが、アダムの一声にたたらを踏んだ。

 

「・・・・よろしいので?」

「ああ、つけようじゃないか、押して。シンフォギアにね」

 

そういって、ゆっくりバブルバスに浸かりなおした。

 

「・・・・承知しました」

 

トップにそう言われては、イヨに逆らう理由はない。

静かに一礼して、先ほどまでのつかず離れずの場所で控えた。

――――傍らで、右手を見やる。

プレラーティを攻撃する直前に感じた、かすかなブレ。

あの時脳裏に過ぎったのは、『躊躇い』。

サンジェルマン共々、ただ邪魔されなければそれでいい存在のはずだった。

目的さえ達成すれ、『ハイ、サヨウナラ』で終わる関係のはずだった。

だというのに、あの時確かに攻撃を躊躇った。

 

(今更、仲間意識を持ったとでも・・・・?)

 

右手を握りしめる。

深くこうべを垂れて、目を強くつむる。

 

(腑抜けている場合ではない、うつつを抜かす暇はない・・・・!)

 

密かに苦悩するイヨを、横目で見ていたアダムは。

静かに嘲笑を湛えて、湯船にもたれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「見えたッ!!」

 

深夜の都市高速。

翼のバイクに、調がギアで追従する形で駆け抜けていると。

前方に目的の人物が見えてきた。

ファウストローブを纏っているプレラーティは、巨大化させたけん玉に跨って公道を爆走していた。

剣の部分に収まった玉を回転させて走っているらしい。

『そんな走り方あるんだ』と、どこか見当違いなことに感心しながら。

調は翼に合わせて速度を上げ、プレラーティに接近した。

 

「そこまでだパヴァリア光明結社!アダム・ヴァイスハウプトの好きにはさせん!!」

「ッそれはこちらも同じなワケだ!!」

「・・・・何?」

 

返答に疑問を持つ間もなく、展開された炎の陣を見て。

翼と調は、それぞれ車体や体幹を傾けて回避する。

バイクを引き寄せ、軽く飛んで一回転して。

体制を立て直した二人は、引き離そうとなお加速するプレラーティを見失うまいと。

エンジンを吹かし、回転を上げて同じく加速した。

 

「ッ待て!!」

 

疑問点はあるが、呆けている場合ではない。

彼女に追いつくまでの道で見かけた、潰された自動車の数々。

ここで止めなければ、被害はさらに増えるばかりだ。

 

「止まれッ!!」

 

翼が大剣を振るい、蒼ノ一閃を放つ。

高速移動の強風の中でも、はっきり分かるくらいに舌打ちしたプレラーティ。

後ろ手で障壁を張って弾く。

タイミングの悪いことに、飛んで行った反対車線には、対向車。

 

「任せて!」

 

敬語を省く程手短に叫んだ調が、ヨーヨーを放つことで斬撃を相殺。

危ういところを何とか回避してみせた。

 

「よくやった!」

 

翼が一言かけている隙をついて、プレラーティが更に加速。

ご丁寧に炎や氷、風などのつぶてを放ち、なお距離を取ろうとしてくる。

翼と調、それぞれ遠距離攻撃手段で再び相殺の上。

負けじと加速して追跡を続ける。

 

「ぢぃッ、しつこいワケだ!!」

「往生際が悪い・・・・!」

 

攻撃の手も、加速も緩めないプレラーティ。

相手をなかなか引き止められない状況に、奥歯を噛む調。

呟いたタイミングは、計らずともプレラーティの悪態と重なった。

耳元の通信機からは、周辺の交通規制は完了したこと。

このまま直進してしまえば、住宅街に差し掛かってしまうことが告げられていた。

 

(あまり、余裕はない・・・・!)

「月読!?待て!!」

 

翼は明らかに逸っている調の様子に気づくも、一歩遅かった。

大きく前に出た調は、『α式・百輪廻』のばら撒きで牽制の上、進路を制限した後。

『Υ式・卍火車』の大きな丸鋸二つで本命の攻撃を放つ。

しかし、対するプレラーティは風の錬金術で牽制を散らしたのち、本命も土をぶつけることで退けてしまう。

 

「お返しなワケだッ!!」

 

放たれる炎と水の錬金術。

始めはそれぞれ別方向から来ていたので、まずはダメージが大きい炎からと調が身構えたところで。

二つのエレメントは大きくカーブ。

 

「うわああッ!?」

 

調の目と鼻の先である着弾点で一つになると、激しい水蒸気爆発を引き起こした。

 

「月読ッ!」

 

木の葉のように吹き飛ばされた調の体を、翼は手を伸ばしつかみ取ることで受け止める。

手をつないだまま、片手でひょいと後ろに乗せると。

追跡を続行した。

 

「・・・・間違いなら、笑ってほしいのだが」

 

見失わないよう気を配る中、トンネルに差し掛かったタイミングで口を開く翼。

おとなしく掴まって二人乗りしている調が、目線を上げたことを知ってか知らずか。

とにかくちょうどよいところで続ける。

 

「気にしているのか?自分だけ、ユニゾンがうまくいかないことを」

「・・・・ッ」

 

図星を突かれたとは、このことだろう。

言葉に詰まってしまった調は、それでも何かを話そうと静かにぱくぱくして。

そして何も言えないことを恥じて、閉口する。

 

「いや、責めるつもりはない。ただ・・・・」

 

振り向けない状況でも、分かり易かったのだろう。

翼は前を見据えたまま、笑みを零す。

 

「お前は、かつての私に似ているな」

「翼さんに?」

 

・・・・思いもよらない言葉に、調は呆けるのを止められなかった。

 

「私も昔、今のお前のように。何をやろうともうまくいかないことがあったんだ」

 

相手はまだ視界内にいる。

後輩の疑問を促す視線を感じながら、翼はアクセルを吹かす。

 

「努めても努めても、思うような結果を出せず。取りこぼしたものだけを見つめては嘆き、今を生きるものへ目を向けていなかった」

 

かつてを思い出す翼の脳裏。

奏と一緒に色を失った周囲の景色と、自身へ向けた呪詛。

片翼がいなくなった痛みに悶えるあまり、塞がってしまった視界。

そして、その結果守れなかった、否、()()()()()()人の。

成れの果ての姿(ファフニールと呼ばれた少女)

あの時の、己の失態にやっと気付いた。

頭から冷や水をぶちまけられた様な感覚。

 

「だが、月読は一つだけ違うところがある」

「違うところ?」

「ああ、っと・・・・」

 

まだ追いすがってくるこちらに痺れを切らしたのか、プレラーティが飛ばしてきた錬金術を避けながら。

翼は言葉を重ねる。

 

「お前はまだ、諦めていない」

 

一言が、調の胸に波紋を呼ぶ。

 

「足掻いて、藻掻いて、その上で届かなくとも。決して折れない、そんな強さがある」

 

語りかける声は、穏やかで、優しくて。

そして、どこか羨ましそうだった。

暗い部分が伺えないのは、きっと。

見守ってくれていると分かり易いから。

 

「きっと、マリアやナスターシャ教授がいたからだろうな。君はきっと、優しいんだ。だから、誰かの為に頑張れるんだ」

「・・・・ッ」

 

違う、と否定しようとして。

再び飛んできた岩塊に遮られた。

調が気付かないうちに、プレラーティに追いついていたらしい。

 

「行くぞ月読!今度こそ食い止めるッ!」

「ッはい!」

 

――――違う。

調が努力をやめないのは、置いて行かれたくないからだ。

大好きなマリアや切歌と、まだまだ一緒にいたいからだ。

そもそも、自分とは違うと言っていたが。

前提からしてまず違う。

調の周りも、確かにいなくなってしまうレセプターチルドレンはいた。

だけど、マリア達を始めとした大好きな人は生き残っていた。

対して翼は、本当に独りぼっちだった。

弦十郎や緒川達も努力してくれたのだろうが、それでも。

奏と同じくらいに支えてくれる人が、いなかった。

そんな状態で、全てを守れだなんて。

土台無理に決まっているじゃないか。

取りこぼしがあっても、しょうがないじゃないか。

・・・・優しいというのなら、それは。

諦めない強さがあるというのなら、それは。

 

(あなたこそ言われるべきなんじゃないですか、翼さん・・・・!)

 

翼の後ろから飛び降り、再び禁月輪で走り出しながら。

調は口元を引き締める。

ヨーヨーを取り出し、プレラーティの側面スレスレを攻撃して牽制。

翼の本命を確実に叩き込めるように援護する。

 

(まだ、誰かに歩み寄るのは怖いけど、自分の内側に

触れられるのは怖いけど・・・・!)

 

例え未熟者であっても、分かるのだ。

ここで、躊躇してはいけない。

ここで、手を伸ばすことを怖がってはいけない。

もう二度と、この人を独りにしてはいけない・・・・!

その為にはどうすればいいのか。

分からないほどお子様のつもりは、調になかった。

 

「「イグナイトモジュール、抜剣!!」」

 

偶然か必然か。

翼と調、ほぼ同時にイグナイトモジュールを起動させる。

 

「本番に叩きつけるぞ!!行けるなッ!!」

「はいッ!!」

 

聖詠が、重なった。

 

「――――ッ!?」

 

悪寒に従うまま、弾かれたように振り向いたプレラーティ。

目に飛び込んできたのは、これまでのちゃちなバイクと自走するお子様ではない。

道路いっぱいのサイズの、二人乗りのチャリオットが。

こちらに肉薄せんと迫ってきているではないか。

 

「くそッ」

 

咄嗟に反対車線に飛びのき、背後からの衝突を避けたのち。

ラピスの浄化の波動をぶち当ててみるが、翼達のイグナイトは剝がれない。

 

(カリオストロを屠ったラピス対策か!!)

 

短く歯ぎしり。

イガリマとシュルシャガナ(ザババの二刃)のユニゾンばかり警戒して、他をノーマークにしていたことを後悔しながら。

その上で『ただでやられてなるものか』と、方針を転換。

道路脇に見えた市民運動場へ飛び込み。

先に、邪魔者の排除を徹底することにした。

土煙を上げてドリフトすれば、向かい合う両者。

 

「多少のズレは援護してやるッ、共に思い切りを出すぞ!」

「はいッ!」

 

合図なく、同時に疾り出した。

けん玉の柄と剣の切っ先が、火花を散らす。

背後を取らせまいと、ひっきりなしに車体を翻すので。

周囲はたちまち煙たくなる。

振り払うように速度を上げると、今度は車体同士がぶつかった。

 

「ッここだ!!」

 

衝撃で、装者側の車輪が跳ねて浮かぶ。

一瞬を見逃さなかったプレラーティは、始めに瀑布の如き水を浴びせ。

次に空いた片手を帯電させる。

相手の意図に気づいた翼は、慌ててハンドルを切るが。

一手遅かった。

 

「見舞ってやるワケだァッ!!」

「ぐあああああああッ!!」

「うああああああッ!!」

 

轟音とともに、稲光が降り落ちる。

もろに水をかぶった装者達は、悲鳴を上げて感電する。

痺れ、怯み、動けないところを。

見逃してやる義理もない。

――――水を電気分解すると、酸素と水素が生まれるのは有名な話だろう。

可燃性たっぷりのガスが充満した中に、火種を放り込めば。

どうなるのかも。

 

「こいつもくれてやるッ!!」

 

指に灯すは、ジッポレベルの火種。

ちゃっかり距離を取ってから、小石を放るように投げてやれば。

気付いた相手の間抜け面が見えた刹那、紅蓮の炎が天を衝いた。

 

「・・・・サンジェルマン!」

 

仮に死んでいなかったとしても、無事ではないだろう。

炎と水蒸気の高熱で、少なくとも要の喉はつぶせているはず。

邪魔者の排除は出来たと、車体を反転させようとした時だった。

――――歌が、聞こえた。

 

「何ッ!?」

 

驚愕のままに肩を跳ね上げれば、信じられないことに健在な装者達が。

黒煙を振り払って飛び出してきたところだった。

満遍なく煤けているものの、歌声も健在の様だ。

 

「おのれッ!!」

 

高らかに歌い上げる彼女達は、そのフォニックゲインを蒼炎と変えて全身に纏う。

慌てて発進して飛び掛かりを避けると、プレラーティ自身も風と雷を迸らせて対峙する。

 

「「おおおおおおおおおおおおおッ!!!」」

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ!!」

 

激突。

一瞬拮抗していた炎と雷だったが、やがてプレラーティが押されていく。

 

(負ける?ここで?負ける!?クソッ!クソッ!)

 

張っていた障壁に、剣が食い込む。

ゆっくり噛みついてくる切っ先が、両断せんと迫ってくる。

 

(ここでやられている場合じゃないのにッ!ここで負けている場合じゃないのにッ!)

 

ばぎり、と、嫌な音。

入ったヒビから、蒼炎が侵食していく。

 

「サンジェルマン・・・・!」

 

高熱に晒されながら考えるのは、駆けつけたかった人の背中。

慟哭するのは、世界を広げてくれた恩人の名前。

 

「サンジェルマンッ!!」

 

親とはぐれた子供のような断末魔が。

爆発と業火に飲み込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すっかり寝こけてる間に、調ちゃんと翼さんがプレラーティさんを撃破したらしい。

このところの心配要素だった、切歌ちゃん以外とのユニゾンもばっちり出来たので。

調ちゃん本人はもちろん、マリアさんもどこかほっとしていた。

・・・・ところでわたし、あんまり良いとこなしでは?

い、いや。

サンジェルマンさんに、イヨさんに、アダム・ヴァイスハウプトと。

油断ならない人達はまだまだ残っているから・・・・(震え声)

それに、反動汚染で動けない装者がまた増えたので、一概に喜んでもいられない。

わたしと切歌ちゃんしかいないこの現状、兜の緒を締めないと。

油断して足元掬われましたとか洒落にならんぜよ・・・・。

 

「お世話になりました」

「朝ごはんもおいしかったデス!」

 

夜も明けて、今は朝。

すっかりお世話になってしまった神主さんに挨拶して、装者のみんなが車に乗り込んでいく。

と、その横で切歌ちゃんが立ち止まっているのに気付いた。

 

「どうしたの?」

「およ?ああ・・・・それにしても変わった名前だったなと思いまして」

 

倣って見上げた先には、この神社の表札――いや、表柱かな?色んな神社でよく見る、名前が刻まれた石柱――が。

『調神社』、確かに変わってるよね。

これ、前世の方の現実でも実在しているのかしら。

 

(・・・・あれ)

 

というところで、ちょっと引っかかる。

・・・・そういえば調ちゃん、ちいちゃい頃の記憶が無いって言ってたよね。

で、持ち物から今の名前が付けられたって。

・・・・つきよみしらべ、『つき』と読む『しらべ』。

調ちゃんがF.I.S.に来たっぽい時期、事故に遭った神主さんの娘さん一家。

・・・・・・・いや。

 

「考えすぎか」

 

苦笑い一つ。

いつの間にか、わたしが最後になっていたので。

慌ててみんなと合流する。




今回の戦闘シーンを書いている時、クラッ〇ュギアが頭を過ぎっていました。
どのくらいの人が覚えているだろうか・・・・。
いや、当方も幼い頃おつまみ程度に見たアニメの記憶しかないけども。

それはそうと。
次回、ついにあの人が・・・・(予定は変わることがあります、ご了承下さいw)

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