・・・・いえ、本当にお待たせしました。
Twitter等で、支援絵などの温かい声援を頂きながら仕上げた最新話。
どうぞお納めください・・・・!!
「――――ぁあ」
ずっと、ずっと、ずっと。
あなたを縛り上げていた。
「ぁぁあああああ・・・・」
その人生を、その鼓動を、その呼吸を。
「ああああ■■■■ああああ■■■■ああああ■■■■■あああ■■■あああ■■■ああああ■■■■■あああ■ああああ■■■■■あ■■ああああ■■■■■あああああ――――ッッッ!!!!!」
悪気無く、それ故に責め立てることを許さず。
「どうして、どぉしてッ・・・・どおしてぇよぉッ・・・・!!!!」
救われるべきだったあなたを、報われるべきだったあなたを。
命を落とす瞬間まで、捕らえ続けてしまっていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃぃ・・・・!!」
なんて残酷なことをしてしまったのだろう。
なんて非道な仕打ちをしてしまったのだろう。
「響、ひびき・・・・ぃ、いき・・・・ひびきぃ・・・・!!」
気づくのが遅すぎた。
『叫び』を目の当たりにしなければ気づかなかった。
もう、何もかもが。
手遅れだった。
「・・・・・・・ひびき」
――――だから。
正さなければならないと、思った。
「・・・・とりもどさなきゃ」
命を懸けて守り抜いてくれた人が。
死ぬ一瞬まで人を気遣える優しい人が。
「・・・・すくわなきゃ」
無惨に死んでしまうなんて。
「ひびき」
そんなこと、間違っている。
「ひびき」
取り戻さなければ、取り戻さなければ。
「ひびき」
だって、間違っているもの。
一番蔑ろにされた貴女が、どこにもいない世界なんて。
「――――っ」
病床に寝ころんだまま、腕で顔を覆った。
◆ ◆ ◆
さてさてさて。
相も変わらずユニゾン訓練の日々。
わたしは切歌ちゃん、マリアさんの二人とのユニゾンに成功した。
他の人達も似たような感じだけど、調ちゃんがなかなか組める人いないのが心配かな。
でも、切歌ちゃんとの組み合わせは相手にバレてるから、分断される可能性が大なんだよねぇ。
とはいえ、当の本人も悩んでいることだし。
うまいことを言えない外野は、そっと見守りに徹するとしましょうかね・・・・。
「響ちゃん、そろそろ時間じゃない?」
「はい?・・・・ああ、ステファン君!」
考え事がひと段落したところで、了子さんに声をかけられてから。
時計を見て気づく。
ステファン君の義足の手術が無事に終わって、経過も良好ってんで。
明日帰る前に、もう一度会って話がしたいってクリスちゃんに連絡が来てたんだっけか。
そういえばわたしも呼ばれてた。
「そーそ、はやく身支度済ませちゃいなさい」
「もーちょっとだけ!これがあとちょいで・・・・よし、おしまい!」
ちょっとカッコつけて、ッターン!とエンターキーを押す。
文書がちゃんと送られたのを確認してから、席を立って。
ふと、気になることが出来た。
「そういえば、了子さんは来ないんです?」
「復帰したばかりだし、今はこっちに集中してたいかしら。それに、あまり大勢でいくのもね」
「なるほど」
答えてくれた了子さんも、同じくお仕事がひと段落したのか立ち上がる。
・・・・片腕のままだから、ちょっとふらついた。
大丈夫かな。
――――国連の蓑を借りた世界各国(主にロシア、原作よりそこそこ仲が良いアメリカも四番手くらいにいる)が睨んで、義手の目途すら立ってない状況なんだよなぁ。
それこそ了子さんでないと調整が難しいような、細かい作業がいくらでもあるのに。
今更ルナアタックのことを持ち出されて『待った』をかけられた日にゃ。
S.O.N.G.(主に技術班)一同、『お"お"ん?』とガラの悪いニャ〇ちゅうみたいな声を出したのは、記憶に新しい。
そりゃあ、数千年単位で暗躍してたベテランの大悪党なのは否定しないけど。
今はもたらしてる利益の方が大きいんだから、ちょっとくらいよくない?
そもそも了子さんがシンフォギア作ってなきゃ、今頃まだノイズに悩まされていたのは明白。
っていうか、刑務所の囚人にすら医療を施してもらえる権利があるのに。
収監すらされてない了子さんがダメって、どういう了見なのかな?かな?
「まあ、マリアがついてくれるから、そっちに任せておくわ」
「ういっす、りょーこさんも無理しないでくださいよー?」
「はいはい」
都内某所にある、バルベルデ大使館。
そのカフェスペースが待ち合わせの場所だった。
わたし達が入ると、すでにステファン君ソーニャさんの御姉弟が。
「ステファン君おひさしー!足の調子はどう?」
「ああ、久しぶり。経過は良好だって」
しゃがんで目の当たりにしたステファン君の片足には、素人目でも新品だと分かる義足。
・・・・機械鎧みたいなごついものじゃないか、当たり前だけど。
もっとこう、しゅっとスタイリッシュな感じのやつだ。
「かぁっくいいねー、カルバリン砲は撃てるの?」
「そんな物騒なもんないってば、普通の足だよ」
「そっかぁ、ざーんねーん・・・・」
「何が残念なんだよ・・・・」
軽口を交わしながら、クリスちゃんをこっそり観察。
当の本人はわたし達を、というかステファン君を。
愁いを帯びた顔で見ていた。
「今日にはもう帰っちゃうんだっけ?」
「うん、この後の飛行機で」
立ち話もなんだからとテーブルに付き、向かい合う形で座る。
わたしの質問に、ステファン君はこっくり頷いてから。
窓の外へ、しみじみした視線を向けて。
「戦争のない国を、もう少し見ていたかったけれど・・・・」
「・・・・また来ればいいよ」
なんだか寂しそうだと思ってしまったからだろうか。
思わず、そんなことが口をついて出ていた。
「今回は治療がメインだったから、満足に見れたわけじゃないでしょ?そりゃ、今はちょっと大騒ぎしてるけど、そっちはすぐに終わるからさ」
びっくりした顔のステファン君が面白いので、にっこり笑いかけて。
「だから、またおいで。それが君のやりたいことなら、誰にも止める権利はないよ、政府にも、ゲリラにも、もちろんわたしにも」
「・・・・うん、ありがとう」
・・・・なんだかクサいこといっちゃったかな?
なんて、勝手に照れて自爆していると。
マリアさんが口を開く。
「そういえば、ソーニャさんは戦争難民の支援活動をしているそうね?」
「えっ?あ、ええ。物資も資金も乏しいから、出来ることは少ないけれども・・・・」
へぇー。
そういえば、クリスちゃんのご両親がいた頃は協力してたんだっけ。
で、テロをきっかけに疎遠になってしまったと・・・・。
・・・・そういえば。
爆破を仕掛けたのって、反乱軍だったんだろうか?それとも政府軍だったんだろうか?
わたしはてっきり反乱軍の方だと思っていたんだけど、クリスちゃんの両親の思想や、実際に目の当たりにしたバルベルデを鑑みるに。
どうも政府軍であってもおかしくなさそうだぞ、と。
いや、やめておこう。
これ以上は人類の闇をのぞき込んでしまう。
カット!!
カットったらカット!!
「――――」
クリスちゃんの様子をコッショリ伺ってみると、なんだか驚いた顔をしていた。
・・・・考えてみれば、無理もないのかも。
さすがに詳細までは分からないけど。
二人の様子を見るに、相当最悪な別れだったのは想像に難くない。
そんな苦い記憶を思い起こさせるようなこと、普通は避けたいはずだ。
だけど、ソーニャさんはそれをしなかった。
きっと彼女の中の、苦い記憶を越える何かが原動力になっているんだろう。
いや、何もかも想像でしかないんだけどね?
けれども事実として、ソーニャさんは人助けを続けている。
クリスちゃんの御両親が思い描いた、平和の願いを。
違う形ながらも受け継いでいると言っていいだろう。
(願いは同じはずなのに、同じ方向を向いていない・・・・いや、向き合えないでいる、か)
ままならないなぁ、と。
勝手に落ち込んだ時だった。
「――――ッ!?」
ズ、ズンと。
おなかに響くような音。
続けて、人の悲鳴がパラパラ聞こえてくる。
クリスちゃんやマリアさんはもちろん、ソーニャさんステファン君の姉弟も雰囲気が張り詰めた。
ご姉弟の反応がいいのは、まさに戦地で暮らしているからだろうか。
「な、なんだ?」
「分からないけど、なんとなく分かるねぇ」
「ええ、来るッ」
ステファン君達を後ろに庇いながら、睨みつける目の前で。
大使館の壁が、赤い塵と崩れていった。
「ハァーイ?お久しぶり」
「いぇーい、おひさしでーす!」
現われたのは、案の定カリオストロさん。
返事しながら時間を稼ぎ、ご姉弟含めた戦えない人達が逃げられるようにする。
視線を逸らして不意打ちされるのが怖いので、目視での確認が出来ないんだけど。
なんとか逃げてくれているように願いながら、カリオストロさんを見据える。
「あははは、元気なこと」
ファウストローブ装備でやる気満々の彼女は、そんなわたし達の気持ちを知ってか知らずか。
見せつけるように瞳をぎらつかせて。
「このまま消えてもらうわよ」
それが、開戦の合図だった。
◆ ◆ ◆
一番槍はやはり響だった。
あろうことか生身のまま肉薄した彼女は、握った拳を叩き込む。
展開され防いだ障壁ごと押し込み、カリオストロへ無視できない『圧』を与える響。
その後ろでは、狙い通り安全にギアを纏ったマリアとクリスが順次飛び出していた。
「まったくなんて子よッ!?」
生身での突撃と抜け目のなさ。
両方に悪態をついたカリオストロは、障壁もろとも響を吹き飛ばした。
放り出された空中で、臆することなく体勢を立て直した響。
着地する頃にはギアを纏い切り、構えを取っていた。
「あーも、つくづく厄介だこと!!」
カリオストロは地団太一つ。
打ち合わせた両手を広げ、指先から幾筋ものレーザーを放つ。
無数の鞭のように暴れまわるそれらを、ノイズ共々対処する戦姫達。
「ぃりゃッ!!」
「ッ・・・・!!」
響が相手の周囲に刃をばらまいて、爆発で外に吹き飛ばす。
民間人が避難出来ているのは確認済みだ。
大使館の風通りが良くなってしまったが、S.O.N.G.ではいつものことである。
「立花ッ!!」
「クリスさんッ、マリアッ!!」
「斬撃武器、到着デース!!」
踵を擦りつけながら着地したカリオストロ。
その視界の隅で、装者達が続々と到着していく。
一見追い込まれているように見える彼女だったが、その内心は意外にも凪いでいた。
(この程度。モチのロンで、承知の助!!)
むしろそうして油断してくれている彼女らに、ほくそ笑んだカリオストロ。
攻防の中、未だ逃げ切れていない姉弟に目をつけて。
「そこよーッ!!」
距離が開いた隙を狙い、一つのジェムを。
ノイズの召喚石を投げつけた。
「ッまず――――」
いの一番に気づいた響が、駆け出す。
続いてクリスが出したミサイルに掴まって、それからマリアが。
「早くッ!!手をッ!!」
三者三様。
ソーニャ達へ、肩が外れそうになるほど手を伸ばして。
瞬きの間に、虚空へ消えた。
※本編後のCM風に
プレラーティ「お互い手負いのまま半年が過ぎて、大変なワケだ」
未来「ええ、本当に。このまま響の誕生日を迎えられないんじゃないかとドキドキで・・・・」
プレラーティ「そうか、そちらは年越し以前にそんなイベントがあったな」
未来「プレゼント間に合うかしら」
プレゼント(そもそもそんな余裕があるかどうか・・・・)