チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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先日の日間ランキング入り。
誠にありがとうございました!!
感想も目を通しております、重ねてお礼申し上げます。


閑話:小ネタ13

『クリスちゃん』

 

「なあ」

「あ?」

 

ある日のS.O.N.G.。

こちらだけにとどまらず、並行世界からも調査人員が時折来ている。

そんな理由でこちらを訪ねていたクリス(ユキ)は、ふと。

クリスに話しかけた。

 

「お前は、どう思ってんだよ。フィーネのこと」

 

言いながら滑らせた視線の先には、エルフナインに膝枕されている了子の姿。

今日も今日とて発狂したので、居合わせたレイアに沈められた次第。

なお、ちょうどいいからと、エルフナインも休みをもらっている。

 

「・・・・まあ、多少感謝はしてる。そりゃあ、前はいろいろ、利用されてたりしたけどよ」

 

でも、と。

真面目な空気をぶち壊されない様、了子達からそっと目を逸らしたクリス(ユキ)に。

クリスは困ったように笑いかけて。

 

「そんなんでも、いざやられちまったら、それなりに怒るくらいにゃ気に入ってるよ」

「・・・・そう、なのか」

「ああ」

 

クリス(ユキ)は話を聞いている傍らで。

そもそもこちらの響は、当時のフィーネに与するほどのアウトローだったことを思い出した。

それが切っ掛けで、こちらとの差異が生まれているらしいことも。

 

「何より、あの時『また』失くしかけたからな」

「・・・・そう、か」

 

語るクリスの横顔、視線はここではないどこかを見つめている。

目つきの鋭さに、何を思い出しているかを察したクリス(ユキ)は。

それ以上、何も言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『漢の浪漫』

 

「もっとだ!君の実力はそんなもんじゃないだろうッッ!!」

「ゥゥゥウウウ!!アオーンッ!!!!!」

 

ある日のS.O.N.G.、訓練室。

格闘家の様な出で立ちの弦十郎が、熱く声援を送る先には。

何やら力んでいるクロの姿がある。

身体を激しく帯電させながら、何かを成そうとしているらしい。

 

「・・・・なんだ、あれ」

 

友人を訪ねる感覚でこちらに来ていた奏は。

入った途端に飛び込んできた光景に、困惑を隠しきれなかった。

 

「奏さん、こんにちは」

「おう、香子か・・・・あれ、何かわかるか?」

「ええっとですね・・・・」

 

事情を知っているらしい香子が、乾いた笑みを浮かべて言うには。

先日、未来と共に、弓美の家へ勉強会がてら遊びに行ったとき。

そこにあったゲーム機に、『懐かしのゲーム』というカテゴリで。

数十年前の名作が、ダウンロード版で入っていたらしい。

『人間に味方した悪魔』を父に持つ主人公が、その意思を継いで邪悪な悪魔を退治するというストーリーだったそうだが。

香子が試しにプレイしていたのを見ていたクロが、その中に出てきた、犬型の悪魔にすっかり憧れてしまったそうなのだ。

倒した後で、武器として主人公に力を貸すところが特に気に入ったようで。

その装備を使うときは、終始尻尾がちぎれんばかりだったとか。

 

「この前、皆さんのシンフォギアが、心の持ちようで変化できるって話を聞いたばっかりだったから、なおさらやる気満々になっちゃったみたいで」

「ははは、なるほどなぁ」

 

どちらかと言えば哲学兵装の方に近いと言えど、シンフォギア以上に『そうであれ』という願いに影響されやすいのも事実。

少しでも可能性があるのなら、それにかけたくなる気持ちを。

奏はよく知っていた。

少し昔を思い出しているところで、ふと疑問がわいたので。

香子に聞いてみる。

 

「ところで、武器になるのを目標にしてるってんなら、扱うのはお前になるんだよな?」

「はい、結構変わった形のヌンチャクだったから、わたしもいっぱい練習しないと」

 

『クロのやる気に応えたい』と笑う顔を見て、かわいいやつめと頭を撫でまわした奏だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『セレナの夏休み』

 

「あれ?セレナちゃん?」

 

ある日のこと。

香子が夏休みの登校日から帰宅してみれば、家の前に見知った顔が。

 

「あ、香子、さ・・・・ん?」

 

つばの広い帽子をかぶった彼女、セレナは。

こちらを見るなり、笑顔を向けたが。

すぐに困惑してしまったようだった。

まあ、無理もないだろう。

 

「あれ?知り合い?」

「女の子?しかも外人じゃん!」

「えっと、はろー?」

 

一緒に、友人たちもいるのだから。

 

「――――へーっ、姉ちゃん同士が友達なんだ」

「うん、会ったのはほんの最近だけど。ね?」

「う、うん」

 

セレナがここを訪ねた理由も、もっと仲良くなりたいからだという。

好ましく思ってもらえていることに、香子はなんだか照れくさい気分になった。

 

「でも、みんなこれから宿題をやるんだよね?お邪魔してごめんなさい」

「いいよいいよ、調べものだからそんなにきつくないし」

「そうそう!終わったらそのまま遊ぶつもりだったから、気にしないで!」

 

並行世界と言う事情があれど、突然訪ねてきたのは事実。

申し訳なさそうにするセレナに、友人の一人が身を乗り出して。

 

「っていうか、セレナさんも一緒にいこうよ」

「えっ?」

 

思ってもいなかった申し出に、今度は呆けてしまうセレナ。

 

「いいねいいね!せっかくだし、和を満喫してもらおうよ!」

「いや、どっちかって言うと古臭いというか、うらぶれてる感じだけど」

「ばっかおめー、そこは『のすたるじっく』言っとけよ!」

「一応、観光業で稼いでる町だから・・・・」

 

置いてけぼりにして盛り上がる友人達。

ついていけず、困った顔をするセレナに、香子は苦笑いを浮かべて。

 

「せっかく来てくれたんだし、わたしも一緒にいたいなぁ」

 

『ダメかなぁ?』と、首を傾げての問いに。

セレナは勢いよく首を振って、

 

「い、行きたい!私こそ、皆さんさえよかったら、一緒に・・・・!」

 

勢いが良かったのか、声が大きかったのか。

とにかく、注目されているのに気づいたのは、全員が黙り込んでからだった。

恥ずかしさで真っ赤になるセレナだったが、蔑まれているわけではないのは分かっていたので。

照れくさそうにはにかんだ。

 

 

 

 

閑話休題(書ききれん、許せ)

 

 

 

 

「それで、楽しかったの?」

「すっごく!」

 

並行世界のS.O.N.G.。

微笑ましく見守るマリアに、セレナは息を巻いて話す。

 

「神社で、お盆の話を聞いたの。迎え火って言って、海から帰って来るご先祖様をお迎えするんだって!」

 

普段から閉鎖的な生活をしているだけあって、今日の体験は相当衝撃だったようだ。

 

「それから、その後、『駄菓子屋さん』っていうところにいって、たまごアイスっていうのを食べてね!」

「たまごアイス・・・・聞いたことないわね。おいしかった?」

「うん!でも、ちょっと溶かしてからの方が食べやすかったかも」

 

『姉さんにも食べてほしいな』、と笑う顔は。

年相応の少女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『その奥底で』

 

「やはり、布石は整ってしまいつつある、か」

 

深く、深く、深く。

誰も気に留めようもないほど遠い場所。

 

「その為にこちらも施したとはいえ、叶うならば早々に片づけたいところ」

 

見上げていた視線を降ろして、閉じる。

 

「頼むから、蛇に足をつけてくれるなよ。(わっぱ)共」


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