チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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誠にありがとうございます。
コナン編の小ネタです。


閑話:小ネタ10

『大人モード』

 

「・・・・ん?」

「何かなぁ?あれ・・・・」

 

アレクサンドリア号の事件が終わってから、一週間と少し。

展覧会に沸き立つ世間の大騒ぎを、どこか遠くに感じながら。

未来の訓練に付き合った響が、休憩に入ろうとしたところ。

休憩スペースが賑やかなことに気付く。

 

「――――なんつーか、ギリシャ神話の神様って人間臭いとこあるよな」

「オリオンも命知らずね・・・・」

 

そっと歩み寄って覗いてみると。

神話についての資料を広げて話し合う、見慣れない青年と美女二人。

首を傾げそうになった響だったが、青年の横顔に見覚えがあったので。

すぐに理解する。

 

「もしかして工藤君?へぇーっ、本当の姿ってそんな感じなんだ!」

「哀ちゃんも、元の姿に戻れたの?」

「おうッ!って言いたいけど、ちょっと違うな」

 

彼さえ分かってしまえば、ほかの二人もおのずと誰か分かる。

未来と一緒に話しかけると、コナン改め新一はにっと笑って返事した。

 

「臨床試験よ、『APTX(アポトキシン)4869』の解毒剤の手がかりとして、エルフナインに薬を作ってもらえてね」

「それで、ボクもお付き合いしている形です」

「薬効は夕方までなんで、その間異端技術に欠かせないオカルト知識についてあれこれな」

「ああやって明るみに出てきている以上、私達も他人事じゃなくなるだろうしね」

 

落ち着いた女性になった哀に続いて、ファウストローブ時のキャロルに似たエルフナインも一緒になって解説。

ちなみに今回服用したのは、『自身の老化をある程度促進させる薬(仮)』らしい。

子どもに戻ってしまう過程も観察して、解毒剤への手掛かりを掴もうとしているとか。

事情を把握した二人が、納得して頷いると。

新一が、資料を見せながら身を乗り出してくる。

 

「立花と小日向も詳しいんだろ?よかったら、二人も色々教えてくれると助かるよ」

「おぉっ、そういう話ならいいよ。乗っちゃう乗っちゃう!」

「わたしもいいよ、楽しそう」

 

新一の頼みに、断る理由など見出せなかった二人。

ノリノリで卓に着くと、さっそく広げた資料について話し出す。

 

「――――む?」

 

――――それから、少しして。

廊下で立ちん坊になっている了子を見つけた弦十郎。

首を傾げつつ、こちらに気付いた彼女に歩み寄っていく。

 

「何かあるのか?」

「弦十郎君、ええ、微笑ましいのがね」

 

促されて、その先の休憩スペースを覗いてみれば。

 

「――――それ、お后様とばっちりじゃない」

「神様相手でも、約束は守りましょうってことだな」

「そういうことなのよー」

「いや、神様じゃなくても守ろうね?」

 

盛り上がりながら、神話を勉強しているらしい若者たち。

その微笑ましい様に、弦十郎も思わず笑みをこぼして。

彼らを見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『遥か過去(うしろ)の話』

 

「――――あなたが、心配よ」

 

黒檀のような髪を床に波打たせながら、彼女はそう言ってくれた。

夕暮れに目を潜めた顔は、言う通りの表情をしている。

 

「誰かの事ばかりで、自分の事は後回し、何度貴女を癒そうとも、目を離せばすぐに傷を作る・・・・まるで罰を受けている様だわ」

「・・・・お気遣い、痛み入ります」

 

首を垂れれば、彼女の悲痛な顔がますます深まった気がした。

 

「・・・・言ったところで止まらないのも、その想いが尋常ならざるものなのも分かっている(みえている)。こんなところにまで飛んできてしまう娘だもの」

 

だからこそ、と。

差し出された手が、頬を撫でてくれた。

 

「どうか、自分を、孤独にしないで・・・・幸せになることを、許してあげて」

 

・・・・差し出してくれた手を、そっと握る。

奇しくも、あの人がよく差し出してくれた方の手だった。

 

「それが、あなたへの・・・・最期の教えよ・・・・」

 

手が、力を失う。

ゆっくり、ゆっくりすり抜けていく。

・・・・また。

大切な人を、失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、コナン編オリキャラ解説

 

龍臣義彦(59)

『龍臣造船所』の社長さん。

大阪産まれ大阪育ちの中年優男。

標準語は頑張って覚えたそうな。

 

滝本敦(59)

『龍臣造船所』の社長秘書。

『綾部造船』時代は、船の設計も担当していた。

事件では犯人一味の一人だったが、被害者と言ってもいいかもしれない。

 

乾達城(36)

アレクサンドリア号の船長、旧姓『綾部』。

『お父さん達が作った船の船長をする』という夢を見事叶えた人。

多分『情熱〇陸』とか『プロ〇ェッ〇ョナル』とかで特集されてる。

父の会社倒産後、家族を支えてくれた滝本には、並々ならぬ恩を抱いている。

 

井出譲二(44)

響の父、洸の同級生。

高校時代に、いじめられていた洸を助けたことで交流が始まったとか。

自分の名前に似ているインディ・ジョーンズに憧れて、考古学の道を歩む。

 

卜部良太(37)

20年前のデマをきっかけに、文章には人を動かす力があることを知り。

報道の道へ。

人に伝えるための文章力は確かだったものの、やっぱりゴシップ系のデマばかり書いていた。

実はライブの生存者について書いたのも彼。

コナン編の事件後は、いよいよ信用を失ったものの。

その脚色・逓増能力に目を付けたS.O.N.G.に、一般向けの誤魔化し要員として雇われる。

職を失いかけていた彼に、選択肢はなかった。

今はさすがに反省して、S.O.N.G.のためにペンを走らせている。

 

(リュウ)響花(シャンファ)(???)

自称『香港から来た博物館学芸員』。

その正体は、船の聖遺物を狙ってやってきた錬金術師。

ただ、本人は錬金術よりも占いやまじないのような、呪術の方が得意らしい。

どうしても成し遂げたい目的があるようで・・・・?

また、年齢は四桁を超えるとか、何とか・・・・。




次回、『ギャラルホルン編』。
始動・・・・!

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