チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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シンフォギアライブ行きてぇなァーッ!


これもまたお約束

走るー走るー♪ふふーんふんふーん♪

ってなわけで、コナン君片手に船内を爆走中。

通信機をスピーカーモードにして。

友里さん達のナビゲーションが、コナン君にも聞こえる状態にしている。

だけど、状況はだいぶよろしくない。

というのも、

 

「ッ響さん、まただ!」

「見えてる見えてる!戻ろーッ!」

 

行く先々で待ち構える、あるいは『やあ』と現れる。

例の『脳みそアフロ』達。

ナビによれば、向こうからこっちに近づいてきているらしい。

おかげでじーわじーわと追い込まれている次第なんだけど・・・・。

片手にコナン君を抱えているこの状況では、ひっじょーによろしくない。

いや、抱えていなくても割とピンチなんだけどもね?

とはいえ、一人だったならシンフォギアで強行突破して潜り抜けることは出来るんだよ。

でも出来ないのが現状なのである。

ああ、ううん。

コナン君が悪いってわけじゃないのよ?わけじゃないんだけども。

むわああああああああん!!!!

あいつら、あの黒い煙を、こう、滲み出させながら迫ってきてるけど。

その煙、どうやら例の『王家の谷の呪い』が具現化したものらしい。

ちょっとくらいならまだしも、大量に浴びせられたり、長時間さらされたりすると。

案の定体に悪影響があるものということ。

うちの解析班は優秀だなぁー。

今、『知りたくなかった』って気持ちがじゅわじゅわ沸いてきてるんだけどもね!

 

「こっちも・・・・!」

 

コナン君の声で現実に戻れば、今度はノイズの団体様。

前門の虎、後門の狼とはまさにこのことッ!

うーん、いやーなパーティだ!!!

 

「・・・・響さん!」

 

煙にゲホゲホしながら、何とか間をすり抜けて包囲を飛び出した所で。

コナン君が意を決したように声を上げて、

 

「僕にかまわないで、シンフォギアに変身して!」

 

そんな爆弾発言を放り込んできた。

っていうか、えっ?何?

 

「なんで出来るって、おっと!」

 

お、思わず白状するような発言しちゃったけど。

いや、でも、待って。

確かに怪しまれるようなポジションにはいたけども!それは認めるけども!

ファフニールってこと以外は白状していないはずだよね!?

飛び込んできたノイズを、体を捻って避けて。

走りつつ聞いてみる。

 

「いくら情状酌量の余地があると言っても、『ファフニール』だなんて、名前だけで動揺が走るような犯罪者を、野放しにするなんてまずない!」

 

ぐっほ!初っ端からかましてくるねぇ・・・・!

 

「だけど、響さんを見る限り、特に行動制限が課されているとは思えない。ということは、そうするに足る理由があるってことだ!」

「それがシンフォギアだと?」

「そうだよ!!」

 

と、また前方に脳みそが現れたので、壁をやや走るようにして回避。

 

「危険人物扱いして、なんだけど・・・・!」

 

再三猛ダッシュする中、コナン君はそう前置きした。

 

「響さん達には、ただの仕事仲間じゃない、強い絆があるように感じた!」

 

ノイズや脳みその気配が遠のいてくのを感じながら、耳を傾ける。

 

「響さん自身だってそうだ!装飾の柱が倒れた時も、井出教授がトラップにひっかかった時も、響さんは真っ先に人命を優先していた・・・・誰かを助けるための行動を取っていた!」

 

と、目の前にまたノイズの群れ。

わたしがうまいこと逃げ回ったからか、今度は避けようが無い位にみっちり詰まっている。

これは、もう・・・・!

 

「だから、そんな響さんを、俺自身も信じたいッ!!」

 

――――目の前の光景と、コナン君の言葉が決定打だった。

 

「Balwisyall Nescell Gungnir tron!!」

 

装着フィールドを展開して、壷っぽいのが飛ばしてきた分解器官を弾く。

纏いきってからは、刃を飛ばして進路を確保。

降ろしていたコナン君を、もう一度片手で抱き上げて。

目を合わせる。

・・・・まったく、この子は。

 

「そう信頼してもらったからにゃあ、期待に応えて進ぜよう・・・・だけど」

 

不敵な笑みへ、得意げに笑い返す傍。

右手に複数刃を構えて、ちょっとした仕返しに問う。

 

「君こそなんなのさ?考え方と言い、明らかに小学生の範疇に収まらないよね?普通いないよ、そんな小1」

 

すると、コナン君は一度バツの悪そうな顔をしたけど。

やがて、さっきのわたしに負けないくらいの、得意げな顔をして。

 

「――――江戸川コナン、探偵さ」

 

そんな、お決まりのセリフを言ってくれたのだった。

 

「探偵かぁー」

「うん、探偵なんだ」

「だったらしょうがない・・・・ねッ!!」

 

のんびりした会話の後、刃を放って道を作る。

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

「はああああああああああッ!」

 

響と同じくシンフォギアを纏ったマリアが、眼前のノイズを一掃する。

そうやって出来た道を駆け抜けて、一行はやっと船の外に出た。

 

「おーい!こっちだぁ!!!」

「急いで!!みなさん!!」

 

一台残っていた、船員の通勤に使われるというマイクロバス。

そこから声をかけているのは、最後のトラップにかかった女性乗組員と、譲二だった。

 

「ここは引き受ける!あなたたちは速く!」

 

バスを背にマリアが叫べば、余裕のある者が頷きながら乗り込んでいく。

 

「お二人とも残っていたんですか!?」

「井出教授も、軽い怪我じゃないのに・・・・!」

「ご心配のとこ悪いが、子ども等置いていく性根は持ってないもんでね!」

 

乾の問いかけに、一度は得意げに返事をした譲二だったが。

すぐに怪訝な顔で乗り込んだメンバーを見渡して。

 

「お、おい。響ちゃんは!?」

「あの、ドアを破ってくれた坊やもいないわ!」

『――――二人は、まだ船の中よ』

 

そんな二人の疑問に答えたのは、いつの間にか運転席に座っていた了子だった。

 

『アルカノイズに進路を分断されてそれっきり、でも心配はいらないわ』

 

車内用マイクで告げられた事実に、ぎょっとなる譲二と乗組員だったが。

 

『マリア以外のシンフォギアが、もう駆けつけているから』

 

断言する了子の手元の通信機からは、戦況を知らせるオペレーターの声がひっきりなしに聞こえているようだった。

 

『というわけで、私達は脱出に専念しましょ。みんな、シートベルトをしっかり締めて!』

 

子ども達を安心させるためか、あえて軽く明るい声に切り替える。

かと思えば、どこか不敵な息遣いが聞こえて。

 

『――――あたしのドラテクは、凶暴よ』

 

全員が席について、シートベルトを締めた刹那。

車体がぐわんと揺さぶられた。

 

 

 

 

 

 

「こ、これ、警察としては止めるべき何だろうけど・・・・」

「ノイズもいる手前、どうも強く言えないわね・・・・」

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

「はいはいよっと!!」

 

取り出した刃をぽいぽい投擲。

接近してきた個体は、刺突刃やジャマダハル、ついでにマフラーで薙ぎ払い。

片手に抱いたコナン君が、酔わないよう気を付けつつ。

今のところはこの子を逃がすことを当面の目標にしているんだけど・・・・。

 

「響さん、気付いてる?」

「うん、さすがにネー」

 

蹴っ飛ばした脳みそが、バウンドして飛んでいくのを見送りながら。

コナン君に向けて頷く。

 

「奴さん方、こっちをがっつりロックオンしてる」

 

まるでわたし達を追い込むように、どこか整列しているような動きで迫ってくる連中。

ノイズだけだったならともかく、脳みそまで、と来れば。

ある程度の目的があることを、疑わざるを得ない。

 

「コナン君、大丈夫?」

 

・・・・懸念は、それだけじゃない。

 

「割とシャレにならん状況だから、不調は遠慮なく言いなよ」

「ありがとう・・・・実は少しふらふらするけど、まだ耐えられる」

 

呪いが具現化した黒い煙が、見渡す限りに充満している。

ギアを纏っているわたしですら、眠気のようなふらつきを覚えるんだ。

生身のコナン君は、なおさら影響を受けることくらい。

簡単に予想できた。

 

「ごめんね、とにかく人命優先で動くから」

「響さんこそ、無理はしないでね」

「マカセテー!」

 

言いながら、また刃をぽいっ!

脳みそをうまく避けながら、ノイズだけを何とか狙い打つ。

というのも、脳みそを迂闊に攻撃してしまうと。

敗れた水風船みたいに、あの黒い煙をブシューッと吐き出してしまうからだ。

わたし一人ならともかく、コナン君がいる状況でそれは悪手でしかない。

てなわけで、何とか脳みそを破裂させないよう。

気を付けながら進んでいる次第。

でも、あんまり長居はしていられない。

『死の呪い』だなんて不健康極まりない中にいちゃ、わたしもただじゃ済まないからね。

 

「――――」

 

と、またノイズの団体様。

脳みそは見当たらないので、遠慮なく刃を飛ばしまくる。

・・・・コナン君の顔色は、時間が経つにつれ悪くなっていっている。

『早くしないと』、だなんて、焦りがあったんだろう。

 

「・・・・ッ!」

 

廊下の曲がり角。

てっきりいないとばかり思っていた脳みそが、ひょっこり現れて。

最悪なことに、放った攻撃が直撃した。

 

「ぐっ・・・・!」

 

至近距離で炸裂する煙。

濃い呪いが、一瞬で意識を抉りに来る。

明滅する視界で、何とかコナン君だけは死守。

その隙を見逃さず、ノイズ達が突っ込んできて。

 

 

 

 

 

 

「――――響ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

閃光。

通り過ぎた破魔の輝きが、脳みそもノイズも一網打尽にしていく。

 

「ぶっは!」

「はっ!げほげほっ・・・・ふーっ!」

「二人とも、大丈夫!?」

 

一気に軽くなった空気を、コナン君とめいいっぱい吸い込む横から。

一番頼れる、愛しい人が来てくれていた。




コナン君って、抱えやすそうなサイズしてますよね(小並感)

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