返信も追っつかないほどのご感想に、ただただ恐縮するばかりですが。
思ったよりも好意的なお声をいただけて、ほっとしております。
何分『コナン物』を書くのは、これが初回なので。
細かな呼び間違いや解釈違い等々は、寛大な御心でご容赦くださいますと幸いです。
なるべく両作品の良いところを引き出せますよう、誠心誠意努めてまいります。
クロスオーバーが苦手な皆様は、改めて申し訳ありません。
この『アレクサンドリア号事件』だけですので・・・・終わったらいつものチョイワル時空が戻ってきますので・・・・。
何卒・・・・何卒・・・・。
「――――展覧会?」
「うん」
工藤新一が扮する江戸川コナンは、同居人にして幼馴染の毛利蘭に告げられたことをオウム返しした。
「ほら、この間、飛行船で大変なことになったでしょう?そのお詫びに、次郎吉さんが招待してくれるって」
「へぇー」
頷いてから説明した蘭が、『園子が教えてくれたの』と付け加えるのを聞きながら。
コナンは少し前の、『赤いシャムネコ』を騙ったハイジャック犯達や怪盗キッドとの騒動を思い出して、納得。
「今度やる展覧会の、公開前の会場だってさ。お仕事で来ている人もいるから、午後になったら帰らなきゃいけないらしいけど」
「邪魔になったら、迷惑だもんね」
「そうだねぇ」
えらいえらい、と頭を撫でられながら、ふと。
せっかくだから、これを機に自由研究を片づけてしまおうと思い立った。
どうせ『小嶋元太』や『吉田歩美』、『円谷光彦』などの『少年探偵団』も呼ばれるのだろうし。
彼らとしても、面倒な宿題の一つを終わらせられるのなら、意欲的に取り組むであろう。
ついでに、会場の調整を行っているスタッフの邪魔にもなりにくい。
かくして、蘭の父親である『毛利小五郎』にも付き添ってもらった。
一足早い展覧会見学が始まったのだったが。
「――――あれっ、平次お兄さん?」
「本当だ、久しぶり服部君」
「よお、こないだぶりやな」
来たる日の、いざ港。
今回の目的地である『アレクサンドリア号』にやってきてみれば、見慣れた顔が。
タラップ前に、出迎えるようにたたずむのは『服部平次』。
工藤新一と同じく高校生探偵であり、自他ともに認める
さらに付け加えると、コナンの秘密を知る数少ない人物の一人だ。
蘭や少年探偵団を始めとした知己達が、再会を喜ぶ傍らで。
同じくコナンの秘密を知る少女、『灰原哀』が近寄った。
「彼、なんでここにいるのかしらね」
「オレはなんも聞いてねぇな・・・・っと」
船内のロビー部分に入ると、今回の招待主である『鈴木次郎吉』と、その親戚であり、蘭の幼馴染で親友である『鈴木園子』。
そして、見慣れない優男風の中年男性が座っていた。
「園子!」
「あっ、みんないらっしゃーい!」
気付いた園子がこちらに手を振り、溌剌とした声と笑顔を向けてくる。
蘭もまた、年相応の嬉しそうな笑顔で駆け寄っていった。
親友同士、ハイタッチを交わしてから。
はっとなって、次郎吉に頭を下げる。
「次郎吉さん、今日はお招きいただいてありがとうございます」
「構わん構わん!先だっては、むしろ迷惑をかけた側じゃからな。このくらいやらねば、鈴木の恥じゃ!」
そう言って、次郎吉は豪快に笑った。
「どうも、鈴木相談役」
「おう、毛利先生にも、苦労を掛けてしまったの」
「いやぁそんな!私だって寝てさえいなければ、犯人達をバッタバッタと・・・・!」
「はははっ、相変わらず頼もしいことだ!」
小五郎の強がりすらも笑い飛ばしてから、ともにいた中年男性を手で指して。
「紹介しよう、こちら、今回我が鈴木財閥と組んで展覧会を企画してくれた。龍臣造船所社長の・・・・」
「
メガネの奥で柔和に微笑んだ彼は、丁寧にお辞儀をした。
文面は標準語だが、ところどころのイントネーションが西日本っぽい。
だから平次がいるのかと、コナンはほんのり納得する。
「今回の見学は、みなさんの社会勉強も兼ねたものだと伺っております。残念ながら、始まってからでないと展示されないものもありますが、どうぞ楽しんでいってください」
「「「「「はーい!」」」」」
コナン含めた子ども達が、元気に挨拶をすれば。
義彦は、微笑ましそうに頷いたのだった。
「――――それで、何で服部君がここに?」
「それなんやけど・・・・話してええですか?」
「あまり、子ども達を怖がらせたくはないのですが・・・・」
自分たちの自己紹介も済ませた後、蘭が改めて平次に質問する。
対する平次が龍臣に問いかけると、彼は渋い顔をしたのちに。
『やむを得ません』と、口火を切った。
「実は情けない話なのですが、大阪で襲われまして」
「襲われた!?」
龍臣が語るところによれば。
龍臣造船所の総本部がある大阪にて、社長である彼が襲撃を受けたらしい。
幸い怪我は擦り傷程度の軽いもので済んだものの、大企業のトップが襲われたとあっては、警察も動かざるを得なかった。
ところがだ。
「この間、こっちでもごっつい騒ぎが起こりよったろ?」
「ああ、都庁のあたりが吹っ飛びやがった」
小五郎の言う通り、東京でも都庁周辺が吹き飛ぶ大事件が起こった。
その影響で、大阪府警も人を抜かれたり。
事態解決にあたったS.O.N.G.からの調査依頼が、日本政府を通じてやってきたりとてんてこまいで。
人員を裂く余裕がなかったのだそう。
「そこで、西の高校生探偵であるこのオレに、白羽の矢が立ったっちゅうわけや」
「まだまだ学生と言えども、数々の事件を解決した活躍は、私の耳にも届いておりましたから」
「それにオレやったら、大阪府警本部長である親父に、直接連絡出来るからな。なんかあったら、すぐ対応できるって寸法やねん」
「だから平次兄ちゃんがここにいるんだね!」
コナンが納得した旨を伝えると、平次は胸を張り。
龍臣はどこか恐縮した様子で頭を下げた。
「社長さん、大変だったんだね」
「でも大丈夫ですよ!ここには平次さんに加えて、眠りの小五郎までいるんですから!」
「そーだそーだ!だから元気だせよな!」
「ははは、ありがとう」
幼いなりの慰めに、義彦はほっとした顔。
重くなりかけた空気は、すっかり軽くなっていた。
閑話休題。
さて、そこからさらに移動して。
展覧会の主要なスタッフと人員を紹介してもらえることに。
特に、元太、歩美、光彦の三人は。
その内の一人の名前を聞いてから、うっきうきを隠しきれていない。
豪華客船らしい、荘厳な扉が開かれると。
三人の女性と大柄な体躯の男性が、親し気に話しているのが見えた。
こちらに気付いて、振り向いた顔。
歩美が、目に見えて明るくなった。
「わぁ!ほんとに歌手のマリアさんだぁー!」
蘭や小五郎などの保護者組が止める間もなく、一気に駆け寄ってしまう歩美。
それに続いて元太や光彦も行ってしまい。
三人で件の人物を。
世界的な歌姫にして、ノイズを根絶した英雄の片割れ。
『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』を囲んでしまうのだった。
「ほら、そんなにいっぺんに話しかけちゃ、さすがの歌姫も困っちゃうわよ」
「おいお前ら!遊びにきたんじゃねぇんだからな!」
コナンだって、ホームズを目の前にすれば、同じ行動をとってしまう自覚はあるので。
三人の気持ちはよくわかる。
だが、やはり一気に詰め寄るのはよくないことなので、哀と一緒にたしなめにかかった。
「す、すみません、子ども達が」
「いいのよ、みんな元気ね」
謝る蘭に対して、首を横に振ったマリアは。
しゃがんで目線を合わせながら、微笑まし気に三人を見る。
ひとまず不快な思いはさせていないようだと、コナンは内心でほっとした。
「紹介しよう、こちら、ご存知『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』殿。今回の展覧会にて、トークショーを行ってもらう」
「よろしくね」
次郎吉に紹介され、立ち上がって改めて微笑むマリア。
「それから、同じくトークショーを行ってくれる考古学者の、『櫻井了子』『井出譲二』両教授」
「どうも」
「よろしくぅ!!」
続いて眼鏡と白衣が印象的な女性と、筋骨隆々の男性が紹介され。
了子と譲二の二人は、それぞれに挨拶をする。
それから了子は、少し距離を置いていた、茶髪の少女の手を取って。
「それで、こっちは私の内弟子の『立花響』ちゃん、今回みんなの案内をやってくれるわ」
「あはは、よろしくねー」
自分も紹介されると思わなかったのか、やや乾いた笑みで、それでも快活に手を振った。
「・・・・?」
コナンはこの時、やたらと締まった彼女の腕が気になったが。
蘭の腕と似ているので、同じく格闘技をやっているのかもしれないと見当をつける。
「そして・・・・」
気を取り直して、次郎吉にならって目をやれば。
こちらに歩み寄ってきた、二人の男女。
「女性の方は、香港の博物館から来てもらった『リュウ・シャンファ』さん。学芸員じゃ」
「どうモ、よろしク」
「隣の男性は、ルポライターの『
シャンファは若い中国美人。
日本語はまだ不慣れなのか、語尾に中国訛りが見られる。
一方の卜部は黙って顎を引いて一礼。
口元に浮かんだ笑みが、申し訳ないが軽薄な印象だ。
と、思っていたら。
「いやぁー、今回はこんな大仕事を任せてもらえて光栄ですなぁ」
次の瞬間、イメージ通りの、どこかいやぁな言い方で。
「ところで、『かの歌姫マリアはペドフィリアだった』って記事、世間はどう騒ぐと思います?」
「・・・・ッ」
一瞬で大人達や、そこそこ知識のある少年少女は凍り付き。
分からない子ども達も、首をかしげていたが、鋭い空気は察していた。
「――――なーんてね!ジョークっすよ、ジョーク!さすがに俺の身も滅びますって!」
すぐにおどけた卜部だが、マリアの渋い顔は戻らない。
というか、さすがに我慢がならなかったのか。
口を開こうとして、
「――――だとしたらへったくそなジョークですね、一瞬で場が凍り付きましたよ」
響の声が、それを遮った。
呆ける卜部を不敵な笑みで見据えながら、こちらも両手を広げて。
「品も無ぇ、微塵のTPOも無ぇ、誰も笑えねぇ、ここまで来たら一種の才能ですわ。ベガスにでもいってみたらどうです?どこでも珍獣扱いですよ」
そう、煽りを叩きつければ。
今度は卜部が忌々しそうに舌を打った。
「け、けんかはあまリ・・・・」
見かねたシャンファは、そんな二人の間に割り込み。
何とかとりなそうとしていた。
微妙な空気になったところへ、救世主の様に現れたのは。
「遅れてすみません、社長」
「皆さん、おそろいでしたか」
階級の高い船員服に身を包んだ男性と、スーツを着こなした同じく男性。
「展示品の固定を確認しておりました、乾船長とは途中で合流を」
「停泊しているとはいえ、船の上ですから。万が一があっては大変ですので・・・・しかし、少し熱中してしまったようですな」
「乾、滝本、いえ、ちょうどよかったです」
龍臣は、これ幸いと言わんばかりに二人を並ばせて。
「こちら、私の秘書の『
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします、どうぞ、快適な滞在を」
秘書と紹介された滝本はお辞儀。
乾はそれに加えて一言添えた。
空気が回復したわけではないが、切り替えることは出来たようだ。
「・・・・それじゃあ、挨拶もすんだところで、早速打ち合わせと行きましょうか」
「そうですね」
「ですな、響ちゃんは子ども達と行くんだろ?」
「うん」
譲二と親しいのか、気安い態度で一言二言交わした響。
マリアや了子とも別れて、コナン達の方へ歩いてくる。
「平次君も、よかったら見学してくるといい」
「ええんです?」
「ここには、鈴木財閥が雇った警備員達もいるからね。せっかくはるばるやってきたんだ、ツタンカーメンは見ておかないと損だよ?」
「ほな、遠慮なく」
どうやら平次も参加する様だ。
少し遅れて合流する彼を見ていると。
「・・・・彼女、いい人がいるみたいね」
「はぁ?」
急に哀がそんなことをいいだすので、思わず怪訝な顔をするコナン。
「ほら、右手の薬指」
促されるまま、蘭や園子とあいさつを交わす響を見ると。
確かに、右手の薬指に指輪が光っていた。
「ああ、『左手の薬指』ってやつか」
「ええ、ロシアだと逆になる」
意外と純情なのかもしれないと思いながら、なお響を見つめ続けるコナンと哀。
ふと、視線に気づいた彼女は、柔和に笑って見せたのだった。
事件が起こるまで書きたかったのですが、人物紹介だけで長くなってしまった・・・・。
推理作品って、いろんな人物を、辻褄が合うように動かしてるんですよね。
改めて数々の探偵ものを書く(あるいは描く)皆様には、尊敬の念を抱くばかりです・・・・。