チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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様々なご反応ありがとうございます。
返信も追っつかないほどのご感想に、ただただ恐縮するばかりですが。
思ったよりも好意的なお声をいただけて、ほっとしております。

何分『コナン物』を書くのは、これが初回なので。
細かな呼び間違いや解釈違い等々は、寛大な御心でご容赦くださいますと幸いです。
なるべく両作品の良いところを引き出せますよう、誠心誠意努めてまいります。


クロスオーバーが苦手な皆様は、改めて申し訳ありません。
この『アレクサンドリア号事件』だけですので・・・・終わったらいつものチョイワル時空が戻ってきますので・・・・。
何卒・・・・何卒・・・・。


推理物での人物紹介は基本

「――――展覧会?」

「うん」

 

工藤新一が扮する江戸川コナンは、同居人にして幼馴染の毛利蘭に告げられたことをオウム返しした。

 

「ほら、この間、飛行船で大変なことになったでしょう?そのお詫びに、次郎吉さんが招待してくれるって」

「へぇー」

 

頷いてから説明した蘭が、『園子が教えてくれたの』と付け加えるのを聞きながら。

コナンは少し前の、『赤いシャムネコ』を騙ったハイジャック犯達や怪盗キッドとの騒動を思い出して、納得。

 

「今度やる展覧会の、公開前の会場だってさ。お仕事で来ている人もいるから、午後になったら帰らなきゃいけないらしいけど」

「邪魔になったら、迷惑だもんね」

「そうだねぇ」

 

えらいえらい、と頭を撫でられながら、ふと。

せっかくだから、これを機に自由研究を片づけてしまおうと思い立った。

どうせ『小嶋元太』や『吉田歩美』、『円谷光彦』などの『少年探偵団』も呼ばれるのだろうし。

彼らとしても、面倒な宿題の一つを終わらせられるのなら、意欲的に取り組むであろう。

ついでに、会場の調整を行っているスタッフの邪魔にもなりにくい。

 

 

 

 

かくして、蘭の父親である『毛利小五郎』にも付き添ってもらった。

一足早い展覧会見学が始まったのだったが。

 

 

 

 

「――――あれっ、平次お兄さん?」

「本当だ、久しぶり服部君」

「よお、こないだぶりやな」

 

来たる日の、いざ港。

今回の目的地である『アレクサンドリア号』にやってきてみれば、見慣れた顔が。

タラップ前に、出迎えるようにたたずむのは『服部平次』。

工藤新一と同じく高校生探偵であり、自他ともに認める好敵手(ライバル)でもある。

さらに付け加えると、コナンの秘密を知る数少ない人物の一人だ。

蘭や少年探偵団を始めとした知己達が、再会を喜ぶ傍らで。

同じくコナンの秘密を知る少女、『灰原哀』が近寄った。

 

「彼、なんでここにいるのかしらね」

「オレはなんも聞いてねぇな・・・・っと」

 

船内のロビー部分に入ると、今回の招待主である『鈴木次郎吉』と、その親戚であり、蘭の幼馴染で親友である『鈴木園子』。

そして、見慣れない優男風の中年男性が座っていた。

 

「園子!」

「あっ、みんないらっしゃーい!」

 

気付いた園子がこちらに手を振り、溌剌とした声と笑顔を向けてくる。

蘭もまた、年相応の嬉しそうな笑顔で駆け寄っていった。

親友同士、ハイタッチを交わしてから。

はっとなって、次郎吉に頭を下げる。

 

「次郎吉さん、今日はお招きいただいてありがとうございます」

「構わん構わん!先だっては、むしろ迷惑をかけた側じゃからな。このくらいやらねば、鈴木の恥じゃ!」

 

そう言って、次郎吉は豪快に笑った。

 

「どうも、鈴木相談役」

「おう、毛利先生にも、苦労を掛けてしまったの」

「いやぁそんな!私だって寝てさえいなければ、犯人達をバッタバッタと・・・・!」

「はははっ、相変わらず頼もしいことだ!」

 

小五郎の強がりすらも笑い飛ばしてから、ともにいた中年男性を手で指して。

 

「紹介しよう、こちら、今回我が鈴木財閥と組んで展覧会を企画してくれた。龍臣造船所社長の・・・・」

龍臣義彦(たつおみよしひこ)と言います。よろしく」

 

メガネの奥で柔和に微笑んだ彼は、丁寧にお辞儀をした。

文面は標準語だが、ところどころのイントネーションが西日本っぽい。

だから平次がいるのかと、コナンはほんのり納得する。

 

「今回の見学は、みなさんの社会勉強も兼ねたものだと伺っております。残念ながら、始まってからでないと展示されないものもありますが、どうぞ楽しんでいってください」

「「「「「はーい!」」」」」

 

コナン含めた子ども達が、元気に挨拶をすれば。

義彦は、微笑ましそうに頷いたのだった。

 

「――――それで、何で服部君がここに?」

「それなんやけど・・・・話してええですか?」

「あまり、子ども達を怖がらせたくはないのですが・・・・」

 

自分たちの自己紹介も済ませた後、蘭が改めて平次に質問する。

対する平次が龍臣に問いかけると、彼は渋い顔をしたのちに。

『やむを得ません』と、口火を切った。

 

「実は情けない話なのですが、大阪で襲われまして」

「襲われた!?」

 

龍臣が語るところによれば。

龍臣造船所の総本部がある大阪にて、社長である彼が襲撃を受けたらしい。

幸い怪我は擦り傷程度の軽いもので済んだものの、大企業のトップが襲われたとあっては、警察も動かざるを得なかった。

ところがだ。

 

「この間、こっちでもごっつい騒ぎが起こりよったろ?」

「ああ、都庁のあたりが吹っ飛びやがった」

 

小五郎の言う通り、東京でも都庁周辺が吹き飛ぶ大事件が起こった。

その影響で、大阪府警も人を抜かれたり。

事態解決にあたったS.O.N.G.からの調査依頼が、日本政府を通じてやってきたりとてんてこまいで。

人員を裂く余裕がなかったのだそう。

 

「そこで、西の高校生探偵であるこのオレに、白羽の矢が立ったっちゅうわけや」

「まだまだ学生と言えども、数々の事件を解決した活躍は、私の耳にも届いておりましたから」

「それにオレやったら、大阪府警本部長である親父に、直接連絡出来るからな。なんかあったら、すぐ対応できるって寸法やねん」

「だから平次兄ちゃんがここにいるんだね!」

 

コナンが納得した旨を伝えると、平次は胸を張り。

龍臣はどこか恐縮した様子で頭を下げた。

 

「社長さん、大変だったんだね」

「でも大丈夫ですよ!ここには平次さんに加えて、眠りの小五郎までいるんですから!」

「そーだそーだ!だから元気だせよな!」

「ははは、ありがとう」

 

幼いなりの慰めに、義彦はほっとした顔。

重くなりかけた空気は、すっかり軽くなっていた。

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

さて、そこからさらに移動して。

展覧会の主要なスタッフと人員を紹介してもらえることに。

特に、元太、歩美、光彦の三人は。

その内の一人の名前を聞いてから、うっきうきを隠しきれていない。

豪華客船らしい、荘厳な扉が開かれると。

三人の女性と大柄な体躯の男性が、親し気に話しているのが見えた。

こちらに気付いて、振り向いた顔。

歩美が、目に見えて明るくなった。

 

「わぁ!ほんとに歌手のマリアさんだぁー!」

 

蘭や小五郎などの保護者組が止める間もなく、一気に駆け寄ってしまう歩美。

それに続いて元太や光彦も行ってしまい。

三人で件の人物を。

世界的な歌姫にして、ノイズを根絶した英雄の片割れ。

『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』を囲んでしまうのだった。

 

「ほら、そんなにいっぺんに話しかけちゃ、さすがの歌姫も困っちゃうわよ」

「おいお前ら!遊びにきたんじゃねぇんだからな!」

 

コナンだって、ホームズを目の前にすれば、同じ行動をとってしまう自覚はあるので。

三人の気持ちはよくわかる。

だが、やはり一気に詰め寄るのはよくないことなので、哀と一緒にたしなめにかかった。

 

「す、すみません、子ども達が」

「いいのよ、みんな元気ね」

 

謝る蘭に対して、首を横に振ったマリアは。

しゃがんで目線を合わせながら、微笑まし気に三人を見る。

ひとまず不快な思いはさせていないようだと、コナンは内心でほっとした。

 

「紹介しよう、こちら、ご存知『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』殿。今回の展覧会にて、トークショーを行ってもらう」

「よろしくね」

 

次郎吉に紹介され、立ち上がって改めて微笑むマリア。

 

「それから、同じくトークショーを行ってくれる考古学者の、『櫻井了子』『井出譲二』両教授」

「どうも」

「よろしくぅ!!」

 

続いて眼鏡と白衣が印象的な女性と、筋骨隆々の男性が紹介され。

了子と譲二の二人は、それぞれに挨拶をする。

それから了子は、少し距離を置いていた、茶髪の少女の手を取って。

 

「それで、こっちは私の内弟子の『立花響』ちゃん、今回みんなの案内をやってくれるわ」

「あはは、よろしくねー」

 

自分も紹介されると思わなかったのか、やや乾いた笑みで、それでも快活に手を振った。

 

「・・・・?」

 

コナンはこの時、やたらと締まった彼女の腕が気になったが。

蘭の腕と似ているので、同じく格闘技をやっているのかもしれないと見当をつける。

 

「そして・・・・」

 

気を取り直して、次郎吉にならって目をやれば。

こちらに歩み寄ってきた、二人の男女。

 

「女性の方は、香港の博物館から来てもらった『リュウ・シャンファ』さん。学芸員じゃ」

「どうモ、よろしク」

「隣の男性は、ルポライターの『卜部良太(うらべりょうた)』殿。今回の展示を、記事にしてくれる」

 

シャンファは若い中国美人。

日本語はまだ不慣れなのか、語尾に中国訛りが見られる。

一方の卜部は黙って顎を引いて一礼。

口元に浮かんだ笑みが、申し訳ないが軽薄な印象だ。

と、思っていたら。

 

「いやぁー、今回はこんな大仕事を任せてもらえて光栄ですなぁ」

 

次の瞬間、イメージ通りの、どこかいやぁな言い方で。

 

「ところで、『かの歌姫マリアはペドフィリアだった』って記事、世間はどう騒ぐと思います?」

「・・・・ッ」

 

一瞬で大人達や、そこそこ知識のある少年少女は凍り付き。

分からない子ども達も、首をかしげていたが、鋭い空気は察していた。

 

「――――なーんてね!ジョークっすよ、ジョーク!さすがに俺の身も滅びますって!」

 

すぐにおどけた卜部だが、マリアの渋い顔は戻らない。

というか、さすがに我慢がならなかったのか。

口を開こうとして、

 

「――――だとしたらへったくそなジョークですね、一瞬で場が凍り付きましたよ」

 

響の声が、それを遮った。

呆ける卜部を不敵な笑みで見据えながら、こちらも両手を広げて。

 

「品も無ぇ、微塵のTPOも無ぇ、誰も笑えねぇ、ここまで来たら一種の才能ですわ。ベガスにでもいってみたらどうです?どこでも珍獣扱いですよ」

 

そう、煽りを叩きつければ。

今度は卜部が忌々しそうに舌を打った。

 

「け、けんかはあまリ・・・・」

 

見かねたシャンファは、そんな二人の間に割り込み。

何とかとりなそうとしていた。

微妙な空気になったところへ、救世主の様に現れたのは。

 

「遅れてすみません、社長」

「皆さん、おそろいでしたか」

 

階級の高い船員服に身を包んだ男性と、スーツを着こなした同じく男性。

 

「展示品の固定を確認しておりました、乾船長とは途中で合流を」

「停泊しているとはいえ、船の上ですから。万が一があっては大変ですので・・・・しかし、少し熱中してしまったようですな」

「乾、滝本、いえ、ちょうどよかったです」

 

龍臣は、これ幸いと言わんばかりに二人を並ばせて。

 

「こちら、私の秘書の『滝本敦(たきもとあつし)』、隣はこのアレクサンドリア号船長の『乾達城(いぬいたつき)』です」

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします、どうぞ、快適な滞在を」

 

秘書と紹介された滝本はお辞儀。

乾はそれに加えて一言添えた。

空気が回復したわけではないが、切り替えることは出来たようだ。

 

「・・・・それじゃあ、挨拶もすんだところで、早速打ち合わせと行きましょうか」

「そうですね」

「ですな、響ちゃんは子ども達と行くんだろ?」

「うん」

 

譲二と親しいのか、気安い態度で一言二言交わした響。

マリアや了子とも別れて、コナン達の方へ歩いてくる。

 

「平次君も、よかったら見学してくるといい」

「ええんです?」

「ここには、鈴木財閥が雇った警備員達もいるからね。せっかくはるばるやってきたんだ、ツタンカーメンは見ておかないと損だよ?」

「ほな、遠慮なく」

 

どうやら平次も参加する様だ。

少し遅れて合流する彼を見ていると。

 

「・・・・彼女、いい人がいるみたいね」

「はぁ?」

 

急に哀がそんなことをいいだすので、思わず怪訝な顔をするコナン。

 

「ほら、右手の薬指」

 

促されるまま、蘭や園子とあいさつを交わす響を見ると。

確かに、右手の薬指に指輪が光っていた。

 

「ああ、『左手の薬指』ってやつか」

「ええ、ロシアだと逆になる」

 

意外と純情なのかもしれないと思いながら、なお響を見つめ続けるコナンと哀。

ふと、視線に気づいた彼女は、柔和に笑って見せたのだった。




事件が起こるまで書きたかったのですが、人物紹介だけで長くなってしまった・・・・。
推理作品って、いろんな人物を、辻褄が合うように動かしてるんですよね。
改めて数々の探偵ものを書く(あるいは描く)皆様には、尊敬の念を抱くばかりです・・・・。

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