第24話・プロローグ
ラスト・レクイエムの胸部から強烈な光が解き放たれる。
突然の出来事に要たちは困惑し、身を起こして様子を見守っていると、放たれた光の中から2人の人影が飛び出してきた。
その影は背に片翼の翼を羽ばたかせており、まるで天使のように思えた。
だけど要は、すぐにその天使の正体を知る。
その身から放たれるのは希望の光だ。
そしてその希望の光は、要の良く知る力だった。
助けたいと心から願っていたあの子。
無事でいて欲しいと心から祈っていたあの子。
その子はもう1人の天使と手を繋ぎ、自分たちの目の前に舞い降りる。
「かなめちゃん、ひなこちゃん、ちとせちゃん。」
その子は、蛍は、自分たちの名前を笑顔で呼んでくれた。
「蛍・・・。」
要は目を潤ませて蛍の姿を見る。
身に纏うドレスはこれまでのピンク色と違い、純白に染まっており、右肩には白い翼が現れている。
これまでの蛍の、キュアシャインの姿とは大きく異なっているが、もう一度見たかったあの天使のような笑顔を見ることが出来た。
それだけで今は十分だった。
だが少しばかり感傷に浸った後、要はすぐに現実へと戻る。
蛍が無事であったことには安堵するが、まだリリンの姿が見当たらない。
彼女がただの心ない行動隊長でないのならば、要だってリリンのことを助けてあげたい。
それに、蛍の隣にいる見慣れない少女のことも気がかりだ。
だけどそのエメラルド色の髪には見覚えがある。
あれがまるでリリスを彷彿させるものであり・・・
「あれ?・・・あんた、まさか。」
と、ここで要は目の前にいる少女の正体を悟る。
「リリン・・・ちゃん?」
隣にいる雛子が、恐る恐ると言った様子で尋ねて。
「ええ、そうよ。」
その少女は笑顔で肯定した。
「「・・・え~!!?」」
要と雛子が驚愕な声をあげ、千歳も声こそあげないものの、表情から驚きが見て取れる。
それは、リリンがこれまで見たことのない姿に変身していたからだが、最大の原因はその容姿にあった。
漆黒のドレスに、左肩には黒い翼を持つその姿は、蛍の対となっており、そのドレスはレースとリボンで可愛らしく飾られ、パクトを入れる小物入れが腰部に付けられている。
それはまるで、『プリキュア』と同じようなドレスなのだ。
そして、彼女から希望の光の力が感じられる。
自分たちと同系統のドレスを身に纏い、希望の光を発している。
ここから導き出される結論は1つしかないが、それはこれまでの前提を覆すことになる。
「どっ、どうゆうこと?
プリキュアは全部で4人だけのはずじゃないの・・・?」
誰もが抱いたであろう疑問を、千歳が震えながら口にする。
伝説では、4つの光が大地に降りると伝えられている。
だからプリキュアの人数は、自分たち4人までだと思っていたのだ。
「5人目じゃないよ。」
そんな困惑を極める自分たちに、蛍が答える。
「もともと、わたしのきぼうのひかりは、リリンちゃんからもらった勇気のおまじないから生まれたものなの。
わたしはそれを、リリンちゃんに返しただけ。」
蛍の告白にリリンが続く。
「ほたるは、あたしが与えたおまじないを、本物の勇気へと育ててくれた。
そして蛍が返してくれた勇気が、あたしの希望となった。」
リリンが蛍に与えた勇気が希望へと変わり、蛍がリリンへ返した勇気が、同じく希望へと変わった。
そこまでの意を読み、要はリリンの力の正体を悟る。
目の前にいるのは『2人の』プリキュアではない。
「リリンちゃんの勇気が、わたしの勇気!」
「ほたるの希望が、あたしの希望!」
「そう、わたしは、」
「あたしたちは!」
「「ふたりでひとりのプリキュア!!」」
1つのプリキュアの力を2つに分けた、『一心ニ体』のプリキュアなのだと。
黒と白、天使と悪魔、対となる2人のキュアシャインが、ここに舞い降りたのだった。