ホープライトプリキュア   作:SnowWind

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第20話・Aパート

 たのしいってなに?揺れ動くリリスの心!

 

 

 

 リリンの正体がリリスである可能性が高い。

 蛍とチェリーが不在の場で、千歳からもたらされた情報は要たちに大きな衝撃を与えた。

 だがここで脳裏を過ったのは当然、この場にいない蛍のことだ。

 千歳がわざわざ蛍とチェリーを外した上でこの話を振ってきたと言うことは、まだ2人は知らず、そして知らされていないと言うことなのだろう。

 

「でも、どうするん?

 蛍を呼び止めなかったってことは、まだ蛍に話すつもりはないんやろ?

 ・・・ううん、蛍に話せるわけないやん。こんな話・・・。」

 

「それは・・・。」

 

 その言葉に、今度は千歳が黙って俯いてしまう。

 当たり前だ。いくら事実である可能性が高いとはいえ、リリンの正体がリリスだなんて、リリンのことを大切に想っている蛍に話せるはずがない。

 リリンがリリスだと言うことは、これまでの戦いで多くの人を傷つけ、絶望させてきたと言うこと。

 そして何よりも、リリンは心底では蛍に深い憎しみを抱いていたと言うことになるのだ。

 要はこれまでリリスがキュアシャインにぶつけてきた言葉の数々を思い出す。

 あの全てが、リリンが蛍に向けていたものだなんて、そんな残酷な話を蛍は受け止めることができるだろうか?

 信じてもらえないならまだ良い方だ。

 だが最悪の場合、立ち直れないほどのショックを負わせかねない。

 一体どうすれば良いのかと各々が考えているのか、一度会話の流れが途切れてしまった中、雛子が千歳の様子を伺うように口を開いた。

 

「・・・ねえ、千歳ちゃん。

 こんなことを言うのも変かもしれないけど、もう少しだけ、リリンちゃんの様子を見てみない?」

 

「え・・・?」

 

 雛子の言葉に千歳は驚いて目を見開く。

 

「あなた、何を言ってるの?

 確かにまだあの子がリリスであると言う確証はないかもしれないけど、あなただって、ほとんど間違いないことだってわかるでしょ?」

 

「でも・・・。」

 

 互いの言葉が互いの声を打ち消し、話は一向に進む様子を見せない中、千歳は一呼吸おいて雛子を見据える。

 

「それに蛍の正体が知られた今、やつらは蛍の家族のことも知ることができるかもしれない。

 ううん、家族だけじゃない。

 蛍の周りにいる人たち全てに危険が及ぶかもしれないのよ。

 この戦いでやつらは変身する前の蛍に攻撃を仕掛けたでしょ?

 やつらには心がないから、人間だって躊躇わず平気で攻撃できるのよ。

 このまま悠長に様子見なんてしていたら、蛍を傷つけてしまうどころの話じゃなくなってしまうわ。」

 

「っ・・・!?」

 

 千歳の言葉に、雛子は声を詰まらせるが、その言葉には要も同意する。

 もしもリリンの正体がリリスで、蛍の情報が全てダークネスに伝えられているとすれば、蛍の家族や交友関係だって知れ渡っている可能性がある。

 なぜそんな情報が必要なのかと言えば当然、絶望させるためだ。

 やつらは人を絶望させるためならどんな手段も厭わない。

 やつらにとって最も厄介な敵である蛍を止めるために、蛍の周りの人たちを傷つけて絶望させる、と言う手段に出てもおかしくはないのだ。

 それにもし、蛍の知人として自分たちの情報さえ知れ渡っているとしたら、自分たちの正体にさえ辿りついている可能性もある。

 そうなれば、同じ手段を取るためにこちらの家族にも危害が及ぶかもしれない。

 キュアシャインの正体がバレてしまったことに、蛍に責任を問うつもりは毛頭ない。

 だが現実的な問題として、蛍1人が危険に晒されると言うものでもなくなっているのだ。

 

「私にはまだ・・・リリンちゃんがリリスだとは思えない。

 ううん、仮に本当だとしても、リリンちゃんの全てが演技だとは思わない。」

 

「何ですって・・・?」

 

 だが尚も雛子は、リリンのことを割り切れずにいるようだ。

 キュアシャインの正体がバレたことのリスクを、雛子が想像できないはずはない。

 それでも雛子がこんな風に反論するのは、蛍のことを思っていると言うのもあるが、雛子自身迷っているからだろう。

 リリンは本当に心を持っていないのかと。

 確かにリリンはまだしも、リリスのキュアシャインに対する態度は感情がないとは思えないほど苛烈だ。

 だからと言ってあれが演技でないと言い切れるだろうか?

 リリンに心があるのか、ないのか、それを判断することは自分にはできない。

 だからせめてと、2人の様子を見た要は1つの提案をする。

 

「だったらさ、こういうのはどう?

 蛍がリリンに会いに行くとき、ウチらの内、誰かが必ずついていく。

 蛍を守るためと、リリンの監視のためにね。」

 

「要?」

 

「千歳、ごめんな。でもウチだって雛子と一緒。

 蛍の大切な友達であるリリンを、まだ切って捨てることなんて出来ない。

 でも、あんたの言う通りこのまま放っておいていい問題とも思わない。

 だからせめて、ウチらだけでも警戒しておこって話。

 何もなければ万々歳。

 もしもリリンが少しでも怪しい行動を見せたら、そんときは遠慮なしで行こ。」

 

「・・・でも、そんな悠長な。」

 

「千歳だって、今すぐに蛍の幸せを奪いたくなんてないやろ?

 だからウチらにしか話さなかった。」

 

「・・・。」

 

 千歳の無言を要は肯定として受け取った。

 もし本当に蛍の身を案ずるなら、今の話を全てを包み隠さずに蛍に伝えて、2度とリリンに近づくなと言えばいいのだ。

 だけど千歳は蛍のことを気遣い、自分たちだけに思いを打ち明けた。

 きっと、千歳だってまだ確信があるわけではないのだ。

 そして千歳も、蛍の幸せを奪いたくないと思っている。

 ただ最悪な事態を想定して、蛍を守るために冷徹に構えているだけなのだ。

 そんな千歳の覚悟を、要も無駄にしたくない。

 

「街中で怪しい人がいないかは、ベリィたちが毎日パトロールしてくれている。

 街のことはベリィたちに任せれば問題ない。

 だからあとはリリンをウチらで見張っていけば、何があっても蛍のことを守れるよ。」

 

「ああ、任せてくれ。」

 

「レモンも精いっぱい頑張るからね~。」

 

 ベリィだけでなく普段面倒くさがりのレモンも気合十分に答えてくれた。

 蛍のことを心配してくれたことに要は内心、お礼を言う。

 

「・・・でも、私たちの情報だってやつらに漏れている可能性があるのよ?

 急に私たちの誰かが蛍に付き添うようになったら、それは私たちがプリキュアだってことを確証させるものじゃない?」

 

 そんな千歳の最もな疑問に要はニヤリと笑う。

 

「上等やん。蛍のことを守るんやろ?全面衝突のつもりで行こうや?」

 

 リリンがリリスであるかどうかをさておいても、今回の戦いで、蛍がダークネスに直接狙われたのは確かだ。

 その原因として考えられるのは、蛍の正体が知られてしまったからの可能性が高い。

 蛍を通じてこちらの正体に行きつくのもきっと時間の問題だろう。

 だが、どうせいつかバレるのであれば、逆に細かいことは考えなくて済むと言うものだ。

 蛍を守るために、そしてリリンの真実を知るために、要はダークネスと真っ向からぶつかる決意を固めるのだった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 週明けの月曜日。

 学校へ登校した千歳たちは、先週実施された期末試験の結果をみるために全校掲示板を訪れた。

 

「おっ千歳、相変わらず学年1位をキープですか~。」

 

 未来がそう言いながら、自分の肩をポンポンと叩く。

 

「ふふっ、まあね。」

 

 からかい交じりの言葉とは言え、未来に褒められることに悪い気はしない。

 千歳が少し得意げに鼻を鳴らすと、優花が不思議そうな表情で自分の顔を覗き込む。

 

「千歳、試験の順位褒められて得意げになるの、初めてだね。」

 

「え?」

 

「うんうん、今まではちょっと掲示板見てすぐにスーッて帰っていったもんね~。」

 

 優花に続き未来が同じ意見を重ねる。

 千歳からしてみれば、元々こういった競争ごとは大好きだったはずなので、その中で1位の成績を収めることができたのは嬉しいし、誇りたいものである。

 だが、確かにこれまで試験の順位なんて特に意識したことはなかった。

 ほんの2か月ほど前のことのはずなのに、千歳はあの頃の荒んでいた自分の記憶があっという間に風化していたことに驚く。

 

「・・・ふふっ、そうだったかしら?」

 

 少し照れくさそうに微笑む千歳を、未来と優花はどこか安堵した表情で見ていた。

 荒んでいた当時を思い出せなくなるほど、今の楽しいひと時を与えてくれている未来たちに、千歳は改めて内心、感謝する。

 

「雛子!あなたの順位上がってるわよ!」

 

 すると愛子が本人よりも先に順位を見つけ、雛子を手招きしていた。

 

「え?本当に!?」

 

 雛子が普段よりも高いトーンで反応し、愛子に招かれるままに順位を確認する。

 千歳もその方を見てみると、掲示板に張られた順位表の2学年、9位の位置に『藤田 雛子』の名前が書かれていた。

 

「やったね!初の学年9位よ!」

 

 愛子がまるで自分のことのようにはしゃいで喜び、雛子に抱きつく。

 そんな愛子とは対照的に、雛子は無言のままだった。

 だがその表情からは隠し切れない喜びが伝わってくる。

 余りの嬉しさに呆然としているだけのようだ。

 

「千歳ちゃん。」

 

 すると雛子がこちらを振り向いてきた。

 

「ありがとう、千歳ちゃんが勉強を見てくれたおかげよ。」

 

 そして微笑みながら勉強会のときのお礼をしてきたのだ。

 

「・・・ううん、どういたしまして。」

 

 だけどそんな雛子の言葉を聞いて、千歳は少し返答に困る様子を見せてしまった。

 愛子の言葉から察するに、雛子が一桁の順位に入ったのは初めてのことなのだろう。

 あの勉強会で自分が雛子に教えたことがどれほどその順位に影響しているかはわからないが、言葉を失うほどに喜んでいる雛子の力になれたのであれば、こちらとしても嬉しいことだ。

 だけどつい、先週の出来事が頭をかすめてしまう。

 リリンを巡って雛子と意見が真っ向から対立してしまったものだから、千歳は今日、雛子とどう接すればいいのか悩んでいたのだ。

 それでも雛子は普段と変わらぬ様子で話してくれた。

 あの時のことを気にしていない・・・と言うよりは割り切っているのだろう。

 あの件と、自分との仲は別問題だと。

 実際、蛍のことを大切に思い、彼女の幸せを奪いたくないと言う気持ちは一緒なのだから、仲が悪くなるようなことなんてないはずだ。

 それでも後ろめたさを感じてしまうのは、友達を相手にあそこまで正反対の意見をぶつけ合ってしまったのは初めてだからかもしれない。

 雛子はそんなこちらの考えを表情から悟ったのか、少し苦笑した様子を見せた。

 理性的な雛子らしい態度に対して、どこまでも感情的な自分がどこか子供っぽく思えてしまい、千歳は少しバツの悪そうに視線を反らす。

 そんなこちらの様子を愛子が不思議そうな目で見ていた。

 

「はあ~・・・。」

 

「もうダメかも・・・。」

 

 そんな中、要と真がまるでこの世の終わりと言わんばかりの重苦しい雰囲気でこちらに来た。

 要と真の様子に、雛子と愛子が揃って大きくため息を吐くが、雛子との間に少し重苦しい雰囲気となっていた千歳にとっては、そんな空気を吹き飛ばしてくれたものだからつい感謝してしまった。

 最も、当の本人たちはそれ以上に重たい空気を纏っているが・・・。

 

「2人とも・・・またダメだったの?」

 

「ダメだった・・・・。」

 

「要、あれだけしっかりと勉強してきたじゃない。」

 

「朝起きたら全部忘れてた・・・。」

 

 大きく肩を落としながら要がポツリと呟く。

 先週、蛍の家で行われた勉強会では、文句こそ言えど最後まで参加していたし、サボる様子も見せずにちゃんと勉強に励んでいた。

 そして少なくともあの時は、学んだことをしっかりと記憶していたように見えたのだが、たった一夜で全てを忘れてしまうとは・・・。

 バスケットボールについての知識なら、細かな専門用語まで全て網羅出来ているほどに深いのに、どうも要は興味のあることとないことに関する記憶力に大きな差があるようだ。

 それがこの試験の結果と、彼女の部活動の成果の両方に繋がっているのだと思うと、長所なのか短所なのか、わからないところである。

 

「ひなこちゃん!ちとせちゃん!」

 

 すると蛍が目を輝かせながらこちらの方へと駆け足で来た。

 

「わっ、わたし!ほんのすこしだけだけど、順位あがってたよ!」

 

 そして嬉しそうに両手をパタパタさせながら報告してきたのだ。

 

「ふふっ、おめでとう蛍ちゃん。」

 

「良かったじゃない、勉強会の成果が出たみたいで。」

 

 隣で要の空気が一層重くなっているのを感じたので多少申し訳ないと思いながらも、喜ぶ蛍を褒めないわけにもいかない。

 

「わかんないところをおしえてくれた、ふたりのおかげだよ!

 ありがとうひなこちゃん!ちとせちゃん!」

 

 少し頬を赤くしながらも、満面の笑みで喜ぶ蛍のことを、雛子と千歳は優しく見守る。

 だけどその笑顔を見る度に、千歳は自分の決心が揺らいでいくのを感じるのだった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 放課後、蛍が日直の仕事で席を離れているときに、雛子と要は1組の教室にきた千歳と3人で、今後のことを話し合っていた。

 

「今日蛍ちゃん、リリンちゃんに会いに行くって言ってたわ。」

 

「そう・・・。」

 

「それなら、今日から行動開始やな。」

 

 要の言葉に、雛子は意を決した表情で千歳たちを見る。

 

「今日は私が蛍ちゃんについていくわ。」

 

「雛子?」

 

「千歳ちゃんには悪いけど、私はまだ、リリンちゃんのことを信じていたいから。」

 

「そう・・・。」

 

 千歳が複雑そうな表情を浮かべる。

 千歳がリリンを敵視するのは、あくまで蛍を守りたいからだ。

 その思いは自分と同じなのだから、彼女と衝突してしまうことはこちらとしても悲しく、そして申し訳ない気持ちでいっぱいだが、どうしても拭いきれない違和感があるのだ。

 それはフェアリーキングダムでの戦い以降、リリスのキュアシャインに対する態度が明らかに変わっていることだ。

 今までのような怒りや憎しみの感情をぶつけるだけでなく、時折困惑した様子、そして悲しそうな表情も見せるようになってきた。

 結果として、リリスはこれまで以上に情緒不安定な様子を見せるようになったのだ。

 それと同じタイミングで、リリンの様子にも変化が見られている。

 蛍が一緒にいる時、リリンはどこか憂いを帯びた表情を見せるようになったのだ。

 この時点で雛子は既に、千歳の立てた仮説に半ば同意しているようなものだ。

 だからと言って、リリンとリリスに訪れた変化を無視していいとは思えない。

 これに目を背けたままリリンを、リリスを敵とみなして蛍の前から排除してしまうと、取り返しのつかないことになるのではないか?

 そんな漠然とした嫌な予感がするのだ。

 

「それなら、明日はウチが・・・。」

 

「ダメよ。要は明日部活でしょ?」

 

 すると要が明日の蛍の付き添いに申し出てきたので、雛子は人差し指を立てて遮る。

 

「あっ・・・そうだった。」

 

「あなたが部活の日を忘れるなんて、明日は霰でも降ってくるのかしらね?」

 

「むっ・・・。」

 

 少しばかり意地悪な冗談を飛ばしながらも、雛子は驚きを隠せずにいた。

 常に部活第一、バスケ第一のスポーツバカである要が部活の日を忘れるなんて異常事態である。

 

「いやでも、さすがに蛍のことが心配だし。」

 

 それでも要は、彼女にとって何よりも大切な部活の時間を削ってまで、蛍に付き添うつもりだ。

 それだけ要も蛍のことを大切に思う要の気持ちはわかるが、雛子は要が部活を休むことだけは看過できなかった。

 

「今は夏休みの試合に向けての特訓中でしょ?

 だから要は部活を優先させなさい。」

 

 要たちの所属している女子バスケ部は夏に大きな大会を控えている。

 今はその総仕上げの時期のはずだ。

 休日の部活動も活気だって行われている。

 そして蛍は休日にリリンと会うことが多いから当然、この先自分たちは休日も蛍を見守らなければならない。

 だが要にとって将来の夢に繋がる部活の時間を削るわけにはいかない。平日は勿論、休日もだ。

 

「・・・でもさ、言い出したのはウチからなんやし。」

 

 だけどこんな時、この悪友は驚くくらい律儀だ。

 今回の件、提案したのは確かに要であり、だから要は自分自身が一番に取り組まなければならないと思っているのだろう。

 そんな律儀で責任感のあるところは、この悪友の美徳だが、今回ばかりはこちらに譲ってもらう。

 

「蛍ちゃんに怪しまれたらダメなのに、あなたが部活を休んだら一番に怪しまれるわよ。

 それに、自分のために、あなたが部活動の時間を潰さなければならないことを、蛍ちゃんが望んでいると思う?」

 

「・・・。」

 

 勿論、蛍には内緒で決行するが、ずっと隠し続けていられる保証もない。

 もしも全てが明るみに出たときに要が部活の時間を削っていたことを知れば、蛍はきっと、傷つくだろう。

 それに元を辿ればこちらの我儘がきっかけとなったことだ。

 我儘に我儘を重ねるようだが、自分のせいで要の部活を潰したくはない。

 

「・・・雛子の言う通りよ。蛍の付き添いは私たちが主だってやるわ。

 だから要は、部活を大切にしなさい。要の夢に繋がることなのでしょ?」

 

「千歳ちゃん・・・ありがとう。」

 

 自分の言葉に同意してくれた千歳に、雛子は感謝する。

 

「・・・わかったよ。でも部活がない日はウチも加わるからな。」

 

 少し不貞腐れた様子を見せながらも、要は納得してくれたようだ。

 

「ただいま。」

 

 すると日直の仕事を終えた蛍が職員室から帰って来た。

 

「おかえり、ねえ蛍ちゃん。今日商店街まで行くのよね?」

 

「うん、そーだよ。」

 

「良かったら、私もついてっていいかしら?

 ちょうど商店街に用事があって。」

 

「んっ、わかった。」

 

 何も疑う様子もなく、蛍はその言葉に同意する。

 そんな彼女を騙して、大切な人であるリリンの監視をしなければならないことに雛子は心を痛めるが、蛍のため、そしてリリンの真実を知るために、その痛みを隠して蛍に付き添うのだった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 噴水の水面に映し出される自分の姿を見ながら、リリンは時間を潰していた。

 雲一つのない晴れ晴れとした青空の下、道行く人々は額の汗を拭いながら億劫な表情を浮かべており、それとは対照的にベンチに腰掛ける人々は、噴水の音に耳を澄ませ一時の涼しさに身を委ねている。

 そんな本格的に訪れ始めた夏の暑さも、清涼感のある噴水の音も感じることの出来ないリリンは、俯きながら数日前の出来事を思い出していた。

『あの子』がキュアシャインに変身するところを目の前で見てしまった。

 それを思い出す度に、リリンは胸の内を強く握られたような感覚を覚える。

 そして脳裏を過るのは、アモンが自分に課した任務だ。

 今日、ここに来たのは当然、『あの子』と会うため。『あの子』に会って、自分の使命を果たすために・・・。

 

「あっ、リリンちゃん!」

 

 やがて待ち望んでいた『あの子』、蛍が姿を見せた。

 こちらを見かけるや否や、蛍は自分に飛び付いてくる。

 

「よかった!ぶじだったんだね!

 あのあと急にいなくなっちゃったから、わたし心配してたんだよ!」

 

 もはや慣れてしまった彼女からの抱擁を受けながら、リリンは蛍の様子をみる。

 蛍は僅かに目を潤ませながら、蛍は自分の安否を気遣ってくれた。

 

「ほたる・・・。」

 

 だけどそれが、再びリリンの心を揺さぶっていく。

 すると視界の端に雛子の姿が映った。

 

「こんにちは、リリンちゃん。」

 

「こんにちは。」

 

 いつもは蛍だけがこの場に来ているものだから少し意外に思うが、ここは商店街の一角だ。

 雛子が何か用事があって一緒に来ただけかもしれないし、特に訝しむことではないだろう。

 それよりも考えなければならないことは、課せられた使命をどうするかだ。

 自分に与えられた使命の内1つは、不本意な形ながらも達成することができた。

 そしてもう1つの使命も、達成の瞬間が目の前まで訪れている。

 キュアシャインを絶望させる。つまり、目の前にいる蛍を・・・。

 

「リリンちゃん?」

 

 だが怪訝そうな蛍の表情を見た途端、リリンは鉛を括りつけられたかのような重苦しい感覚に見舞われた。

 自分は目の前の少女を、蛍を絶望させることを躊躇っているのだ。

 

(躊躇う必要なんてない・・・だってあたしは既に・・・。)

 

 既にこの子を一度、闇の牢獄へ閉じ込めたことがある。

 あの時と同じことをすればいいだけなのに、なぜ躊躇う必要がある?

 

(あたしは・・・行動隊長。

 この子を絶望させるために・・・あたしは・・・。)

 

 微かに身を震わせながら、リリンは蛍の顔を見据える。

 一点の疑いもない、自分を信じ切っている表情だ。

 この子からこれだけの信頼を得た今なら、それを裏切るだけで簡単に目的は達成できる。

 

「・・・なんでもないわ。心配をかけてごめんね。」

 

「ううん、げんきそうでよかった。」

 

「うん、またいつもみたいに、ふたりでここでお喋りしよ。」

 

 それでもリリンはまだ、いつもと変わらぬ日々を過ごすことを選んでしまった。

 キュアシャインの正体と知った今でも、リリンは踏み切ることができないでいる。

 

 

 本当にバカで、愚かな子。

 どうしてあたしのことを信じているの?どうして疑わないの?

 なんで躊躇っているの?あたしはこの子をどうしたいの?

 この子はキュアシャインよ。あたしをずっと傷つけてきた・・・。

 

 

 だけどリリンの内側は、これまで以上に不安定な感情が渦巻いているのだった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 モノクロの世界。

 研究室へと改造した王の寝室で、アモンはモニターに映し出されるリリンのデータを観察していた。

 

「まだ、躊躇っているようだね。君は。」

 

 リリンから見られる感情の波形は、今も大きく揺れ動いている。

 キュアシャインの正体を知りながらも尚、リリンは手にかけることを躊躇っているのだ。

 

「まさか君が、そこまでの影響を受けるとはね。」

 

 モニターの様子をどこか愉快そうに眺めながら、アモンは再びパネルを叩き始める。

 その時、別のモニターから女性の声だけが聞こえてきた。

 

「行動隊長か。」

 

「ん?」

 

 アモンは女性の言葉に耳を傾ける。

 

「かつてお前とアンドラスが共同で創り出した、心を持たぬ『人形』ども。

 ただ与えられた使命を果たすことのみを存在意義とするものたちを、お前たちはなぜ欲したのだ?」

 

 モニター越しにいるであろう彼女は、今になって行動隊長の必要性を問い始める。

 だがアモンとて、意味もなく創り出したわけではない。

 行動隊長を創る前は、アモンとアンドラスが世界を侵略するために前線へと赴いていた。

 その一方で、敵対者である『光の使者』を打ち破るべく、絶望の闇について研究する必要もあった。

 だが『光の使者』と戦いながら、ソルダークを率いて世界を侵略し、希望の光を破るべく絶望の闇の研究を並行して行うと言うのは、アモンたちの力を持ってしても難しいものだった。

 結果、戦いに敗れて侵略を放棄せざるを得なかった世界も多い。

 そして何より、『光の使者』との戦いは世代を超えるごとに激化していったのだ。

 

「我らダークネスが強くなればなるほど、『光の使者』たちもその力を増している。

 此度の使者など、これまでと比較しても遥かに厄介な部類だ。」

 

 たった1人でアンドラスの率いる部隊と渡り合ってきたキュアブレイズに始まり、キュアスパークとキュアプリズムもそれに比肩する実力の持ち主だ。

 そして何よりも計り知れない潜在能力を秘めているキュアシャイン。

 やつはこれまであり得ないことだと思われていた世界の解放をたった1人でやってのけた。

 

「それがどうした?

 どれほど強大な力を秘めていようと所詮は人の子。

 限りある時の中でしか存在できないやつらをなぜそこまで警戒する必要がある?」

 

 だが女性は取るに足らないと言わんばかりの様子だ。

 そんな慢心にアモンは釘を刺す。

 

「君は、この戦いが永遠に続くものだと思うのかい?」

 

「・・・やつらが我らの存在を終わらせると?」

 

 女性の声には僅かな怒りを宿っているが、アモンは気にせず言葉を続ける。

 

「物事に絶対はない。

 やつらとの戦いで『万が一』のことがあってからでは遅いのだ。

 だからやつらの誕生を待つことなく世界を侵略するための兵士が必要だったのだ。

 そのために私は、ソルダークにはない知性を持った兵士を創ったのだよ。」

 

 ダークネスの侵略手段は人を絶望させること。

 だがソルダークには知性がない。

 だから圧倒的な武力を以って人を恐怖に落とし込む手段しか講じることが出来ない、

 それも1つの手段だが、人の心の弱みに付け込み、内面的に追い込んでいくのも人を絶望させるために有効な手段だ。

 だからより効率よく、効果的に、力だけでなく知恵を駆使して人を絶望へと誘うために、自ら考え行動を起こせるだけの『知性』を持った兵士があれば、侵略の速度を飛躍的に高めることが出来る。

 そう思い、アモンとアンドラスは行動隊長を創り出したのだ。

 だが行動隊長を創り出すハードルは決して低くはなかった。

 こちらの指示を絶対としなければならないのに、言われるがままに行動するだけではソルダークとは変わらない。

 行動隊長には自分たちへの絶対服従と、自発的に行動できる自我を両立させなければならなかった。

 そして光の使者と渡り合えるだけの超人的な身体能力も必要となってくる。

 結果、行動隊長の素体となった被験者には、魔人の姿を与えるための強化実験に耐えられるだけの生命力と、徹底した洗脳(マインドコントロール)を施しても自我を保てる精神力が要求された。

 心身ともに優れた資質を持つ素体でなければこの条件を満たすことが出来なかったのだ。

 実験の中、ある被験体は肉が朽ち、ある被験体は精神に異常をきたして廃人となり、行動隊長を創り出すまでに一体どれだけの被験者が闇に葬られていっただろうか。

 そして長い時間を費やし、ようやく4人の行動隊長を創り出すことに成功したのだ。

 それがサブナックとダンタリア、そしてハルファスとマルファスだ。

 4人はこれまでに幾つもの世界を『光の使者』が誕生する間もなく闇へと落としていった。

 フェアリーキングダムではキュアブレイズの誕生を許してしまい、ハルファスとマルファスを失う痛手を負ったが、それでも侵攻を終えることが出来た。

 アモンたちが創り出した行動隊長は、確かに期待通りの戦果をあげたのだ。

 

「だが結局、光の使者の誕生を許すばかりか、その行動隊長とやらのために不測の事態を迎えているのではないか。」

 

 女性が皮肉を口にする。

 サブナックたちに遅れて完成し、行動隊長の中で最後にロールアウトされたリリスだけが、不可解な行動を取り始めている。

 だがアモンは不敵に笑い返す。

 

「『不測』の事態などではないさ。

 行動隊長たちに『知性』与えることの意味は、これまで何度も議論してきたことだからね。」

 

『知性』を持たせることは行動隊長のメリットであると同時にデメリットでもある。

 どれだけ強力なマインドコントロールを施したとしても、行動隊長が自我を持って動く以上、外部から知識を吸収してしまうリスクを避けることは出来なかった。

 無論、そのリスクは可能な限り抑えたつもりだ。

 行動隊長は常に絶望の闇を内包しているが、絶望の闇には時を止める性質がある。

 それは行動隊長の肉体に作用し、生命活動が停止させている。

 そう、行動隊長は『生きていない。』

 そして生命活動が停止している故に『五感』を持たないのだ。

 見て、嗅ぎ、聞き、味わい、触れることは『生きる』と言う行為そのものだが、行動隊長はそれができない。

 そんな『生きていない』やつらが普段活動できるのも、絶望の闇の力によるものだ。

 動かぬ身体を無理やり動かし、絶望の闇を通じて映像と音だけを情報として受け取っているだけ。

 だがそれは、操り人形を糸で動かすようなもの、ディスプレイに映し出された映像を見て、スピーカー越しで音を聞いているようなものだ。

 全てが与えられた仮初のものだから、行動隊長には『生』の実感がない。

 行動隊長から『生きる』ことそのものを奪うことで、アモンは『感情』を学ぶことを防いでいたのだ。

 それでも物事に絶対はない。

 現にリリスは今、少女と触れ合う中で『感情』を学び始めている。

 いずれ彼女が自分の中に芽生えた感情を自覚するのも、時間の問題だろう。

 

「それに、何もリリスだけが特別ではないのだよ。」

 

 だがアモンから言わせれば、サブナックとダンタリアも同じようなものだ。

 当初は2人とも淡々と任務をこなしていたが、いつの日か各々が思う効率の良い侵略手段を取るようになった。

 サブナックは力業を好み、ダンタリアは知略を好み、互いの趣向の違いで言い争い、手柄を奪い合い競い合ってまでいる。

 徹底して効率のみを重視するならば、協力して侵略に当たれば良いものを、彼らの行いは行動隊長として見れば、余りにも矛盾している。

 だがそれも全て、知性を持ってしまったため。

 知性を持ち、各々が学んだ先に、行動隊長は『個性』を得てしまったのだ。

 

「だがハルファスとマルファスは、今のような醜態を晒すことはなかったぞ?

 なぜ貴様の手駒だけが余計な行動を見せているのだ?」

 

 かつてアンドラスの配下であったハルファスとマルファスを引き合いに出すが、アモンは動じない。

 

「あの2人はアンドラスの『教育』が特に行き届いていたからね。

 確かに彼らはある意味、最も理想に近い行動隊長だったよ。

 でも『完璧』過ぎた。

 それが原因であの2人はキュアブレイズに敗北したのだよ。」

 

 ハルファスとマルファスは私情や趣向を一切挟まず、侵略するための最善の手段を常に講じていた。

 力と知恵の双方を駆使し、時には人に紛れて社会に溶け込んでいた。

 傍目から見れば、確かに行動隊長としての必要な能力を全て満たしていただろう。

 だけどあの2人は、確率の低い事象は全て切り捨てる傾向にあった。

 その結果、キュアブレイズに敵わぬと見て、逃亡すら困難と判断した2人は、一切の抵抗をせずに敗北を受け入れたのだ。

 反撃することも、逃亡に成功する可能性も決してゼロではなかったのに、徹底した効率主義を突き詰めた末に、自身等の価値にさえ希薄になった。

 抗おうともせずに無為に失われる兵士が、果たして完璧な兵士なのだろうか?

 アモンはそうは思わない。

 それならば多少の侵略の効率が落ちようとも、不利と見れば即座に撤退するこちらの配下の方が、よっぽど優秀だと言える自負がある。

 

「そこまで言うからには、今の事態を覆す手立ては既に考えているのだろうな?」

 

「言われるまでもないさ。」

 

 アモンにとって今の事態は十分に予期していたこと。

 そして予期していたと言うことは当然、対抗策も万全だ。

 だからこそ行動隊長の創造に踏み切ったのだから。

 

「ついに完成が近づいてきたからね。

 光の使者との戦いに終止符を打てる『切り札』を。」

 

 アモンは、モニターの近くにあるカプセルに目を向ける。

 自分が前線から離れ、希望の光を打ち破る研究に専念することが出来たのも、行動隊長を得たメリットの1つだ。

 伊達にこの研究室にずっと引き籠っていたわけではない。

 長い時間をかけてようやく、光を討つ闇の切り札が完成しようとしているのだ。

 

「後は、あの子に最後の仕上げを任せるだけだ。」

 

 不敵に笑うアモンの視線の先、カプセルの中で浮かぶ一枚のカードは怪しげな光と共に脈動を続けるのだった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 1週間が経った日の昼休み、要たちは4人で学食堂を訪れ、昼食を食べているところだった。

 

「要、今日は随分と上機嫌ね。」

 

 やや訝しむような表情を見せながら千歳が要に視線を向ける。

 

「今朝からずっとこんな感じよ。」

 

 そんな千歳に、要よりも先に雛子が言葉を返す。

 心なしか視線がジットリとしてるが、要は気にせず白い歯を見せてニヤリと笑う。

 

「にしし、なにせ今週が終われば夏休み入るからな!」

 

 そう、今週は要にとって念願の1学期最後の週だ。

 この一週間が終われば1か月にも及ぶ長い夏休みが始まる。

 毎日がホリデイ!遊び三昧、部活三昧、自分にとっての天国がもう少しで訪れるのだ!

 ・・・何か大事なことから目を背けているような気がしてならないが敢えて気にしない。

 とにかく楽園を目前に控えた要は、いつも以上に上機嫌かつ高いテンションで学校に登校し、隣の悪友の白けた視線を気にせずに1学期最後の週の暇を潰すことにしたのだ。

 

「夏休みか。

 でも1か月も休みがあると、どう過ごしたら良いか迷ってしまうわね。」

 

 そんな千歳のボヤキに要が大いに同意する。

 

「わかるわかる、ウチもやりたいことが多すぎてスケジュール組むの大変だよ。」

 

 大体スケジュール通りにならないがそこは敢えて言わない。

 

「いつもスケジュール通りになんていかないくせに。」

 

 と思ったら隣の悪友が余計な一言を挟んでくる。

 

「うぐっ・・・とっとにかく!夏休みが楽しみやな!」

 

 要は雛子の一言を無理やり吹き飛ばしながら機嫌を上げていくが、蛍がなぜかしょんぼりとした様子を見せ始めた。

 

「蛍?どうしたの?夏休み楽しみじゃないん?」

 

「ううん、そんなことないけど・・。・

 がっこうおわっちゃうと、みんなと会うことができないなっておもっちゃって・・・。」

 

 夏休みを楽しみにしている要に遠慮してか、どこか控えめな声色で、でも思ったことを正直に口にする蛍。

 蛍にとっての学校は、友達と毎日会うことができる特別な場所だから、自分たちと会う機会が減ってしまうことを残念に思っているのだろう。

 それにしても全くこの子は、言うのも聞くのも恥ずかしい言葉をそんなしんみりとした表情で言うなんて、相も変わらずのあざとさである。

 そして友達としてそこまで大切に思われているのは純粋に嬉しいものだから、こちらも頬を綻ばせざるを得ない。

 雛子も千歳も、そんな蛍を慈しむように微笑んでいた。

 

「な~に言ってんの?

 夏休みは長いんだし、いくらでも一緒に遊べる機会があるやない?」

 

 その言葉に蛍は少し惚けた顔をするが、その意味を知ってすぐに瞳をキラキラと輝かせる。

 

「ホッ、ホントに?

 なつやすみ、いっしょにあそんでメーワクにならない?」

 

「なるわけないやん。」

 

 そもそも初めて友達になった(と蛍は思っている)あの日、自分たちと一緒に叶えたい願いをマシンガンの如く放ったとき、ちゃっかり夏休みも一緒に遊びたいと言っていたではないか。

 

「じゃあねじゃあね!まいにち一緒にあそぼ!!」

 

 が、さっそく飛んできた爆弾発言に要は笑顔を強張らせる。

 テンションが上がるとわき目も振らなくなるのも、あの時から変わらない。

 そして普通ならばこの言葉、膨張表現の軽いジョークで済むだろうが、相手は加減のかの字も知らない上に冗談が一切通じない蛍だ。

 この子の言葉を迂闊に了承してしまうと、本当に毎日遊びに来かねないから困ったものである。

 

「いや、毎日はさすがに?

 ウチは部活あるし、蛍だって実家に帰省するとかって用事ないの?」

 

「あっ、そうだった!」

 

 要のやんわりとした否定に蛍は弾けるように答える。

 祖母の代からこの街に住む雛子と違い、蛍は春に引っ越してきたばかりだから、実家は別にあるのだろうと思ったが予想通りのようだ。

 ちなみに父母ともに関西出身である要も、お盆の期間は関西にある両親の実家を訪ねる予定である。

 ついでに横にいる異世界出身の千歳は故郷に帰るのだろうか少し気になるところである。

 

「まっ、とは言っても遊べる日の方が多いから、今の内に簡単な予定を組んでみるのもええかもな。」

 

 すると蛍の瞳がますます輝きを増して来た。

 本当にこの子の全力全開の感情表現は見ていて飽きないものである。

 

「じゃあねじゃあね!どこかでみんなと海にいきたいな!それからそれから!またお泊まり会を・・・。」

 

 しばらくの間要たちは、3カ月ぶりに蛍の口から発せられるマシンガンの如き夢想の数々をしっかりと記憶することになるのだった。

 


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