ホープライトプリキュア   作:SnowWind

5 / 82
第2話
第2話・プロローグ


 蛍はまず自分が置かれている状況を整理するところから始めた。

 突然眩しい光に包まれ、

 気が付いたら服が変わっており、

 髪が伸びたし何か色も明るくなり、

 喋る飛ぶぬいぐるみに話しかけられ、

 ついて来たら魔法使いと怪物と悪魔が戦っており、

 現在に至る。

 うん、わからない。

 もしかしたら、映画か何かの撮影現場に偶然迷い込んだのかもしれない。

 あるいは、あの喋るぬいぐるみは遠隔操作出来る新型の玩具なのかも。

 いや、実はこれは全部夢でありレム睡眠状態であるだけだ。

 等々、様々な思考が働いたが、考えれば考えるほど頭の中は混乱していき、どこまでが現実で、どこまでが幻なのかわからなくなってきた。

 そしてそんな蛍を待ってくれるほど、この非現実的な現実は優しくなかった。

 

「まさかこの世界にもプリキュアがいたとはね。

 いいわ。キュアブレイズ諸共、堕としてあげる。」

 

「え?」

 

 悪魔がそう囁くと同時に、怪物が蛍の目の前に降り立った。

 蛍の10倍以上は軽くあろう巨体は、真っ赤に輝く双眸で蛍を睨み付ける。

 

「ひっ。」

 

 一瞬で現実に引き戻された蛍だが、今度は怪物の恐ろしさを前に足が竦んでしまう。

 

「ガアアアアアアアアアア!!」

 

 そして怪物は、耳をつんざくような甲高い奇声を上げ、蛍めがけて拳を振り下ろした。

 

「きゃあああ!!」

 

 絶叫をあげ、頭を抱えながらその場を立ち退く蛍。

 目を瞑りながらも、怪物の拳を寸でのところで避けることが出来たが、直後凄まじい地鳴りが起き、同時に粉塵が巻き上がり、蛍の元へと飛び交った。

 粉塵が収まり、蛍が恐る恐る目を開けてみると、先ほどまで自分がいたところに巨大な拳が振り下ろされていた。

 それはアスファルトで舗装されている地面を抉りめり込んでいた。

 余りにも恐ろしい光景を前に、蛍は涙ぐみ再び現実逃避したくなったが、鳴り響く轟音も、巻き起こる粉塵も、全てありのままの現実として蛍に襲い掛かった。

 現実離れした恐ろしい光景の数々を前に、蛍は限界などあっという間に振り切り、パニック状態に陥り、この場を逃げ出そうと走り出した。

 

「もういや!いったいなにがどうなってるの~!!」

 

 だがそんな蛍のことなどお構いなしに、再び怪物の双眸が蛍を捉えた。

 

「ちょっと!キュアシャイン!!」

 

 敵を前にして逃げ出す蛍を、喋るぬいぐるみが注意するが、無我夢中で走り出す蛍に、その声は届かなかった。

 

「逃がすな、ソルダーク。」

 

 だが悪魔もまた、蛍を逃がそうとしなかった。

 悪魔の命令を聞いた怪物は、再び蛍へ襲い掛かってきた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。