第2話・プロローグ
蛍はまず自分が置かれている状況を整理するところから始めた。
突然眩しい光に包まれ、
気が付いたら服が変わっており、
髪が伸びたし何か色も明るくなり、
喋る飛ぶぬいぐるみに話しかけられ、
ついて来たら魔法使いと怪物と悪魔が戦っており、
現在に至る。
うん、わからない。
もしかしたら、映画か何かの撮影現場に偶然迷い込んだのかもしれない。
あるいは、あの喋るぬいぐるみは遠隔操作出来る新型の玩具なのかも。
いや、実はこれは全部夢でありレム睡眠状態であるだけだ。
等々、様々な思考が働いたが、考えれば考えるほど頭の中は混乱していき、どこまでが現実で、どこまでが幻なのかわからなくなってきた。
そしてそんな蛍を待ってくれるほど、この非現実的な現実は優しくなかった。
「まさかこの世界にもプリキュアがいたとはね。
いいわ。キュアブレイズ諸共、堕としてあげる。」
「え?」
悪魔がそう囁くと同時に、怪物が蛍の目の前に降り立った。
蛍の10倍以上は軽くあろう巨体は、真っ赤に輝く双眸で蛍を睨み付ける。
「ひっ。」
一瞬で現実に引き戻された蛍だが、今度は怪物の恐ろしさを前に足が竦んでしまう。
「ガアアアアアアアアアア!!」
そして怪物は、耳をつんざくような甲高い奇声を上げ、蛍めがけて拳を振り下ろした。
「きゃあああ!!」
絶叫をあげ、頭を抱えながらその場を立ち退く蛍。
目を瞑りながらも、怪物の拳を寸でのところで避けることが出来たが、直後凄まじい地鳴りが起き、同時に粉塵が巻き上がり、蛍の元へと飛び交った。
粉塵が収まり、蛍が恐る恐る目を開けてみると、先ほどまで自分がいたところに巨大な拳が振り下ろされていた。
それはアスファルトで舗装されている地面を抉りめり込んでいた。
余りにも恐ろしい光景を前に、蛍は涙ぐみ再び現実逃避したくなったが、鳴り響く轟音も、巻き起こる粉塵も、全てありのままの現実として蛍に襲い掛かった。
現実離れした恐ろしい光景の数々を前に、蛍は限界などあっという間に振り切り、パニック状態に陥り、この場を逃げ出そうと走り出した。
「もういや!いったいなにがどうなってるの~!!」
だがそんな蛍のことなどお構いなしに、再び怪物の双眸が蛍を捉えた。
「ちょっと!キュアシャイン!!」
敵を前にして逃げ出す蛍を、喋るぬいぐるみが注意するが、無我夢中で走り出す蛍に、その声は届かなかった。
「逃がすな、ソルダーク。」
だが悪魔もまた、蛍を逃がそうとしなかった。
悪魔の命令を聞いた怪物は、再び蛍へ襲い掛かってきた。