ホープライトプリキュア   作:SnowWind

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第14話
第14話・プロローグ


 城下街を覆う闇は徐々に晴れていき、大地に差す光が輝きを増していく。

 先ほどまでは大広間周辺のみに輝きを放っていたその光は、気が付けば城下街の全てを明るく照らしている。

 そして光差す空を見上げてみると、雲が映り、鳥が飛び交い、太陽がはっきりと見えていた。

 地平線に見える空はまだ黒く覆われているが、世界から感じる闇の力は急速に衰えているのが感じられる。

 

「姫様!」

 

 街の人々がキュアブレイズの元へ集まってくる。

 眠りから目覚めた彼らはみんな瞳に輝きが戻っていた。

 

「みんな・・・無事で・・・無事で良かった・・・。」

 

 堪えきれない涙を隠すことなく、キュアブレイズは喜びを露わにした。

 半年もの間続いた悪夢が、ようやく終わりを告げたのだ。

 今日まで自分の希望として支えてくれたこの国の人たちに、そして力を貸してくれた蛍たちには感謝しきれなかった。

 

「姫様、私たちの身を案じて頂けて光栄ですが、一度お城まで戻ってみてはいかがですか?」

 

 すると1人の女性がキュアブレイズにそんな提案を持ち掛けてきた。

 その言葉にキュアブレイズの脳裏に、城にいるであろう2人の人が思い浮かぶ。

 

「お父様とお母様。」

 

 闇の牢獄の影響が消えた今、2人の意識が戻っていてもおかしくないだろう。

 だがこの世界に光が戻っても人々の悩みまでが消えるわけではない。

 広間にいる人々は目を覚ましているが、まだ絶望の内にいる人が街のどこかにいるかもしれないのだ。

 

「きっと国王様とお妃さまも目を覚めておられでいます。

 行ってお2人を安心させてあげてください。」

 

「この街にいる人たちなら、我々が顔を引っ叩いてでも起こして見せますよ。」

 

 だが同時に、父と母の安否が気がかりなのも事実だ。

 キュアブレイズは力強く協力してくれる人々の厚意に甘えることにした。

 

「ありがとうございます。みんな、行きましょう。」

 

「ああっ。」

 

「キュアシャインを休ませてあげる場所も欲しいしね。」

 

 言いながらキュアプリズムは蛍を抱え直す。

 闇の牢獄を撃ち破るために力を使い果たした彼女は今、健やかな寝息を立てていた。

 

「あなたたちにも、また日を改めてお礼をさせてください。」

 

「別にいいって、困ったときはお互いさまって。」

 

「キュアスパーク、こうゆうときは素直に厚意を受け取るの。」

 

 すっかりいつもの調子で軽快なやり取りを交わす2人を見て、キュアブレイズは改めて戦いが終わったことに安堵しながら城へと向かっていった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 城へ辿りついたキュアブレイズたちは急ぎ玉座の間へと向かった。

 フェアリーキングダムの初代国王の絵画が飾られた広大な空間には、まだ何人かの近衛兵と召使たちが絶望の闇に覆われ倒れている。

 そして赤い絨毯の敷かれた先にある、金属製の玉座の裏に、キュアブレイズの探す人たちがいた。

 

 

「お父様!お母様!」

 

 キュアブレイズはアップルと共に2人の元へと駆け寄る。

 2人もまた、絶望の闇に覆われていたが、そこから感じられる闇はとても微弱だ。

 闇の影響力が非常に弱まっている今ならすぐに助けることが出来る。

 キュアブレイズは希望を強く持ち2人に手を添えて話しかける。

 

「お父様!お母様!しっかりしてください!!」

 

 

 ・・・その声は・・・まさか。

 

 

 荘厳だが、同時にどこか穏やかな声がキュアブレイズの脳に届く。

 久しく聞いていなかった父の声を聞き、キュアブレイズの両目から再び涙が流れだした。

 

「はい!私です!チトセです!!

 お父様!やっと世界に光が戻ったのですよ!」

 

 キュアブレイズは自分の『本当の名前』で必死に呼びかける。

 すると父と母の身体から沸き立つ闇が衰え始めた。

 やがて闇は完全に気配を消し、父と母はゆっくりと立ち上がり、キュアブレイズの顔を見据えた。

 

「おおっ・・・チトセ。よく、よくぞ無事で。」

 

「本当に、あなたなのね。チトセ。

 ああ、まるで夢でも見ているみたい・・・。」

 

「っ、お父様!!お母様!!」

 

 外恥も気にせず、キュアブレイズは父の胸に飛び込み大声で泣いた。

 そんな自分に父と母は優しく頭を撫でてくれた。

 もう二度と2人に会うことができないのではないかと言う恐怖することもあった。

 だけど今、この手にははっきりと父と母の温もりが感じられる。

 2人の声もちゃんと聞こえる。

 自分の願いがようやく叶ったのだ。他ならぬ彼女たちのおかげで。

 

「・・・ところでチトセ、彼女たちはどちらの方だ?」

 

「あの子たち・・・もしかしてプリキュアなの?」

 

 するとキュアスパークたちに気づいた2人が質問をしてきた。

 キュアブレイズも振り向くと、キュアスパークとキュアプリズムは口を大きく開けたまま目をパチパチさせてこちらを凝視している。

 そう言えば先ほど、自分の『本名』を名乗ってしまったか。

 そして2人の反応からして、自分の正体を気づかれたようだ。

 キュアブレイズは半ば予想通りの2人の反応を見て微笑む。

 もう隠すことはない。元々隠す必要さえなかったのだ。

 ただ自分が意地っ張りで、素直になれなかったから話すタイミングを見失っていただけだ。

 だけど今は、感謝の気持ちを素直に伝えることができる。

 だからここではっきりと、自分の正体を2人に明かそう。

 

「はい、私がダークネスから逃げ延びた先の世界で覚醒したプリキュアたちです。

 彼女たちの協力があったから、私はこの世界を取り戻すことができました・・・。

 キュアスパーク、キュアプリズム。・・・いいえ、要!雛子!」

 

 本当の名前で呼ばれ、2人は表情をさらに硬くする。

 

「2人とも、本当にありがとう!」

 

 そしてキュアブレイズは、2人の前で変身を解除した。

 


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