ホープライトプリキュア   作:SnowWind

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第11話
第11話・プロローグ


 炎のように真っ赤な髪とドレス、強い意思を宿すかのような鋭い眼差し。

 約1か月ぶりに見たキュアブレイズの姿は記憶と変わらない姿のままだった。

 するとキュアブレイズは蛍の方を振り向いた。

 その眼光に気圧された蛍は声を飲み込んでしまうが、あの時と同じように、彼女に窮地を助けてもらったのだ。

 今度こそお礼を言おうと思ったその時、

 

「本当に話にならないわね、あなた。

 未だに満足に力を扱えないなんて。」

 

「え・・・?」

 

 キュアブレイズから自分の不甲斐なさを指摘され、蛍は言葉を失ってしまう。

 

「逃げずに戦う覚悟ができても、力が使えないのであればただの足手まといよ。

 先の戦いだって、あなたが浄化技を使えていれば、ソルダークを簡単に倒せていたはずじゃない。」

 

「・・・。」

 

 先ほど全く同じことを悔やんでいた蛍は、何も言い返すことができなかった。

 

「ちょっとあんた、いくら助けてくれた恩人やからて、今の言葉は聞きずてならんわ。」

 

「キュアシャインが足手まといですって?

 これまで一度も表に出てこなかったあなたが、偉そうに言わないで。」

 

 するとキュアスパークとキュアプリズムが、声に怒りを滲ませキュアブレイズを糾弾する。

 2人とも自分をかばうように、キュアブレイズとの間に割って入る。

 

「仲間同士で馴れ合い?バカバカしい。

 あなた達だって本当は、その子のことを邪魔だと思ってるのでしょう?」

 

 その言葉に蛍は一瞬、不安な表情を浮かべるが、

 

「バカにしないでよね。誰がそんなこと思うもんですか。」

 

「キュアシャインはウチらにとって重要な戦力や。

 キュアシャインがいなければ、ウチらは今まで戦ってこれんかった。」

 

 キュアブレイズの言葉を2人は真っ向から否定した。

 そこには僅かな迷いも感じられず、2人は本心から自分を思ってくれている。

 そのことに蛍は安堵するが、それでもキュアブレイズの言葉は頭から離れなかった。

 

「・・・まあいいわ。あなたたちなんてどうせ、いてもいなくてもどちらでもいい。

 今回の戦いであなたたちの力がアテにならないことはわかったもの。」

 

 するとキュアブレイズは自分のだけでなく、2人のことも冷たく切り捨てる。

 そんな彼女の態度に、チェリーがとうとう、涙声で叫んできた。

 

「キュアブレイズ!もうやめて!!」

 

 チェリーの叫びを聞き、キュアブレイズは妖精たちの方へと向く。

 

「キュアブレイズ。一体どうしてしまったんだ?

 以前の君なら、こんな酷いことは言わなかったはずだ。」

 

 ベリィも落ち着きながらも困惑を滲ませた声でキュアブレイズに疑問を投げる。

 その隣に立つレモンは、目にいっぱいの涙を溜めていた。

 

「以前の私?

 あなたは以前の私を語れるほど、私の何を知っていると言うの?」

 

 だがキュアブレイズの答えは、この場にいる全員を凍り付かせる。

 かつての大切な仲間であったはずのベリィに対しても、彼女は冷たい態度を崩さなかった。

 それは半年以上もキュアブレイズを探して、この世界を彷徨い続けて来た妖精たちには、あまりにも残酷な言葉だった。

 

「キュア・・・ブレイズ・・・?」

 

「おいキュアブレイズ!

 ベリィたちはずっとあんたのことを探してたんやぞ!」

 

「あなたたちは仲間ではなかったの!?」

 

 絶句するベリィをかばうように、キュアスパークとキュアプリズムが声を荒げる。

 だがキュアブレイズは涼しい顔のまま、妖精たちから視線を反らした。

 

「この子たちと一緒にいるのであれば、あなたたちはもう、仲間でも何でもないわ。」

 

「え・・・?」

 

 ベリィに続きチェリーも言葉を失う。

 そしてキュアブレイズは一歩また一歩と、妖精たちから距離を開けていった。

 

「私は、1人でダークネスと戦うわ。

 フェアリーキングダムにいた時からずっとそうだったように。」

 

「待ってキュアブレイズ!キュアブレイズ!」

 

 レモンが泣きながらキュアブレイズのことを呼び止めるが、彼女はほんの少し、レモンに顔を向けただけですぐに目を反らした。

 そしてまるで別れを告げるように、その場を飛び去っていった。

 

「キュアブレイズ・・・うぅ・・・。」

 

 キュアブレイズの姿が見えなくなると、レモンは大声をあげて泣き出した。

 チェリーとベリィは悲痛な表情を浮かべながらも、レモンをあやすように優しく頭を撫でるのだった。


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