商店街へと訪れた蛍たちは、おやつを買うためにスーパーへと向かう。
すると、
「ほたる。」
自分の名を呼ぶ声が聞こえ、振り向くとそこにはリリンの姿があった。
蛍は笑顔を浮かべて彼女の元へ駆け寄る。
「あっ!リリンちゃん!!」
「ほたる、偶然ね。こんなところで。」
「うん!」
リリンは偶然と言うが、蛍は心のどこかでリリンと会えるのではないかと思っていた。
休日この時間に会うことが多かったし、会うときは噴水広場を暗黙の待ち合わせ場所としているのだ。
そしてこの商店街は噴水広場への通り道である。
「ねえほたる、今日も一緒にお話ししない?」
いつものようにリリンから誘いを受ける。
だがリリンとこの場で会えたことは、蛍にとっては嬉しくも悲しい誤算である。
来週にはテストが控えているのだから他の事に時間を割ける余裕はないのだし、今日は自分の願いを聞いてくれ、わざわざ私室を勉強会の会場としてくれた雛子の厚意を無駄にするわけにはいかない。
蛍は惜しみながらも、今回はリリンからの誘いを断ることにした。
「えとね・・・今日はちょっと、ようじがあってね。」
浮かない顔でリリンから視線を外しながら、蛍は彼女の誘いを断る。
「え・・・?」
だがリリンから困惑の声が漏れ、蛍は思わず彼女の方を見なおす。
リリンは口元を微かに震わせ声を詰まらせていた。
「・・・リリンちゃん?」
恐る恐る尋ねてみるが、リリンから言葉が返ってこない。
「・・・用事って・・・どんな?」
そしてようやく出た彼女の声は擦れていた。
初めて見る彼女の困惑する姿に、蛍は戸惑いながらも理由を話す。
「えと・・・来週から学校でテストがはじまるんだ。
だから今日はね、みんなであつまって、おべんきょうをしなきゃいけないの。」
「・・・。」
だが理由を話しても、リリスは押し黙ったままだった。
蛍が気まずさを感じたその時、雛子から声がかかる。
「蛍ちゃん、買い物は私と要でやっておくから。それまでリリンちゃんと一緒にいたら?」
「え?でも。」
確かに買い物のために使う時間をリリンと過ごすための時間として使うのであれば、勉強時間を割く必要はない。
雛子の提案は蛍にとってありがたいものであるが、そのために2人に自分の買い物まで押し付けてしまうのには申し訳なく思う。
「別に大した量買うわけやないし、ウチら2人いれば十分だよ。
せっかくリリンが誘ってくれたんだし、ウチらが買い物している間だけなら、一緒にいてもええよ?」
だが要も雛子の提案に賛同してくれた。
こうなると2人の厚意を無駄にする方がよっぽど申し訳ないと言うものだ。
「かなめちゃん、ひなこちゃん。うん、ありがとう!」
「蛍ちゃん。何か買っておいて欲しいお菓子はある?」
すると雛子は欲しいおやつのリクエストまで聞いてくれた。
2人に内心深く感謝しながらも、ここまで来たらとことんまで厚意に甘えよう。
「ありがと!えっとね、板のチョコレートがいいな!」
「わかったわ。」
「それじゃ、リリンちゃん。いつもの場所にいこ?」
「ええ・・・。」
そして蛍はリリンの手を引き、いつもの場所で通じるほど2人で過ごした、噴水広場へ向かうのだった。
…
噴水広場にあるベンチに腰掛けたリリンは、蛍とお喋りをしながら昂る気持ちを落ち着かせる。
蛍と商店街で会えたのは当然、偶然なんて行き当たりばったりなものではない。
普段蛍が、自分との待ち合わせの場所にしている噴水広場を訪れる時、決まって商店街の方角から来ていた。
だからもし彼女が今日、自分を尋ねることがあるのならば、商店街を徘徊していれば遭遇するだろうと睨んだのだ。
最もあのバカ(サブナック)が余計なことをしなければ、いつも通り噴水広場のベンチで待っているだけで良かったのだが、結果として目的を果たすことができた。
だがこれまで蛍は自分からの誘いを断ったことはないのに、今日初めて、テストに向けた勉強会があるから無理だと、拒否の意を示されたのだ。
あの時、キュアシャインの時と同じ衝動がリリンから沸きあがってきた。
(あたしよりもテストの方が大事だと言うの・・・?)
あの一瞬、リリンの思考をよぎったのはそんな言葉だった。
学校のテスト。学校と言うのが教育施設の名であったはずだから、学力を測るために行うものなのだろう。
だからトモダチである要と雛子と共に試験に備えるための集会へ参加すると言う理由はわかるし、わざわざ施設で学力を測定する以上、その成績は記録され蛍の評価に繋がるところも予想がつく。
であれば、蛍が自分の用事よりも学校のテストに纏わる作業を優先するのも理解できているはずなのに、湧き上がる黒い衝動を抑えることができなかったのだ。
雛子と要が自分にとって都合のいい提案をしてくれたことで事なきを得たが、危うく湧き上がる衝動が決壊しかけるところだった。
もしそれに身を委ねていれば、彼女の恩人である『リリン』でいられなくなっていたかもしれない。
「リリンちゃん。」
すると蛍が怪訝な表情を浮かべながらこちらの顔を覗き込んできた。
「なに?ほたる?」
「えと・・・なんだかむずかしそうな顔をしていたから、ちょっと心配で・・・。」
そうさせた本人が何を言う、とリリンは心中で毒づく。
「ひょっとして、つかれてる?」
「え?」
「なんだか、顔色わるそうなきがして、だいじょうぶ?」
だが蛍は、思いの外深刻そうに自分の様子を伺ってきた。
肌色が変わるなんて現象は行動隊長に起こりえないが、であれば、彼女に顔色が悪いと思わせるほどの雰囲気の変化が今の自分にあったと言うのか?
(・・・疲れている。あたしが・・・?)
肉体的な疲れは起こり得ないし闇の力の補充も十分だ。
それでも疲れていると思わせるのであれば、この身の内に拡がる黒い衝動のせいだろう。
以前キュアシャインと戦った後、アモンに指摘された『何を怒っている?』と言う言葉がリリンの頭から離れない。
そんなはずはないと思いながらもこの衝動を表す言葉が他に思い当たらなかった。
それはキュアシャインにのみ抱くものだと思っていたのに、先ほど蛍にも同じ衝動を抱いてしまった。
それも自分でも訳の分からないことが原因だ。
なぜあのような思考で蛍に対して同じ衝動を抱いてしまったのだろうか?
自分自身のことであるのに理解できないししたくもない。
何もかも思い通りにいかない現状が、リリンを大いに混乱させている。
「あっ、もしかしてリリンちゃんの学校もテストが近かったりするの?」
すると蛍が的外れな予想を口にしてきた。
だが本心を語るわけにはいかないリリンは、その話に便乗する。
「えと、そうなの。」
「やっぱり、リリンちゃん、勉強のしすぎでつかれてたんだね。」
的外れも甚だしい言葉で勝手に納得してくれた蛍。
だがこれで一先ず疑惑の目を持たれる心配はないとリリンが思うと、
「リリンちゃん。」
蛍が自分の手を両手で覆うように握った。
そしてこちらを覗き込むようにしっかりと目を合わせる。
「あんまりがんばりすぎて、ムリをしちゃダメだよ?」
「ほたる?」
「つかれたらちゃんとやすんで、からだをたいせつにして?
リリンちゃんにもしなにかあったら、わたし、イヤだからね。」
どこか不安気で、それでいて自分に対して精いっぱいの笑顔で話しかけてくる蛍。
どこまでも真っ直ぐで疑いのない蛍の気持ち。
騙されているとも知らずにバカみたいと、今までなら嘲笑してきただろうが、蛍の両手から伝わる熱がリリンの手を包み込んでいった。
彼女の瞳と笑顔が、リリンの脳裏に焼き付いていく。
そして気が付けば、自分の内に渦巻く黒い衝動が収まっていた。
(なんで・・・?)
代わりに蛍から伝わる熱がリリンの身さえも包み込んでいき、熱を帯びた衝動へと変わっていった。
だがそれは、以前のような身を焦がす業火ではなく、凍えた氷を少しずつ溶かしていくような、微弱な熱量だが、確かに感じられる温かさだった。
「・・・ありがとう。」
そしてリリンは、無意識の内に蛍へ感謝の言葉を口にしていた。
「えへへ、どういたしまして。」
どういたしまして。感謝の気持ちを伝えられたときに返す定型文だが、その言葉を聞いて、リリンは自分が蛍に感謝の言葉を述べたことを自覚した。
蛍と接したことで生まれた新たな衝動。
そして感謝の言葉を口走ってしまった理由。
相も変わらず自分のことがわからないリリンだが、今回新たに生まれたそれは、これまでのように不快なものではなく、むしろずっと触れていたいと思えるほどに安堵できるものだった。
「・・・。」
そしてはにかみ答える蛍の顔をまともに見ることができず、リリンは視線を反らしてしまう。
「蛍ちゃん、買い物終わったわよ。」
「あっ、ひなこちゃん、かなめちゃん!わかった!
リリンちゃん、それじゃ、わたしそろそろいくね。」
「うん・・・また、今度はゆっくりおはなししようね?」
「うん!約束する!」
次に会う約束をしリリンは蛍と別れる。
別れ際、遠ざかる蛍の背を見送りながら、リリンは蛍との間に生まれた新たな『感情』に包まれながら、胸に手を当てるのだった。
…
噴水広場から少し離れた路地の裏から、グリモアはベンチに座るリリンの様子を観察していた。
彼女の隣に座るピンクの髪の少女。
あの子が以前、話に聞いた情報収集源としてアテにしている少女か。
「まさかあの子だったとはね・・・。」
あの少女には身に覚えがある。
以前ショッピングモールであの子を一瞥した時、あの子の内側に見えた闇がとても興味深かったのだ。
強い光の中に僅かに存在する黒い焦点。
決してソルダークの素材とは成り得ないはずだが、あれほど強烈な光を持つはずなのに僅かに隠し切れない闇を抱えている。
そのようなタイプの素材を見るのは初めてだった。
「リリンも目を付けていたとは、さすがと言うべきか。」
リリンはあの『筋肉バカ』と違ってそれなりに思慮は深い。
特に今のように、一般人に扮して人間と接触すると言うスキルだけなら、自分よりも遥かに優れているだろう。
そして人とコミュニケーションを取るスキルに優れている分、人心の掌握と扇動もお手の物だ。
あの少女と仲良くできているのも、あの子の心を手中に収めたからだろうが、故にグリモアは目の前に見える光景に疑問を抱いていた。
(あれでは、まるで逆ではないか。)
あの少女を懐柔するように見えて、その実リリンの方が振り回されているように見られる。
それをここ最近おかしいリリンの様子を照らし合わせてみる。
行動隊長でありながら『感情的』としか思えないような言動を見せている。
その原因はキュアシャインにあるかと思っていたが、目の前の光景を見るにそれだけではないのだろうか?
「もう少し、観察する必要がありそうだね。」
少女と別れたリリンは立ち上がり、街の中へと姿を消した。恐らく人目のつかないところへ行き、闇の世界へ帰還するつもりだろう。
そんなリリスの姿を見ながらグリモアは疑問を抱く。
もしも自分が危惧していることが現実に起こったらどうなるかと。
そんなことはあり得ないと思いながらも、懸念が払拭されるまでリリンの観察を続けることにするのだった。
…
『交番』と呼ばれるところへ連れてこられたサブローは、警察から質問の嵐を受けていた。
「だから、君は一体どこの国から来たのかと聞いているんだ。」
「知らぬと言っている。」
「ここに来た目的は?」
「散歩だ。」
「・・・怪し過ぎる。」
一体何が怪しいと言うのだ。
確かに散歩と言うのは真実ではないが、希望の光や絶望の闇に関する知識のないこの世界の常識で言えば、本来の目的の方がよっぽど嘘みたいなことだ。
であれば実質、何1つ嘘をついていないと言える。
それなのに怪しむとはこいつらの目は節穴か。
これがこの世界の行政機関の質だと言うのなら愚かとしか言いようがない。
「身分を証明できるものはなく、名前もどう考えても偽名だし。それにしても今時サブローね。」
なぜ偽名だとバレた?それにこいつも『サブロー』と言う名前をバカするのか。
あの2人と言いプリキュアたちと言い、なぜこうも自分をバカにする連中しかいないのか。
別段バカにされたからと言って何か思うことがあるわけではないが、こうも同じ反応ばかりが続いては面白くないと言うものだ。
「ちょっと一回署まで同行願おうか?」
まだどこかへ連れまわすつもりでいるのか。であればこれ以上は時間の無駄だ。
「ええい、めんどくさい。」
サブローは右手を前に伸ばし指をスナップする。
「ターンオーバー、希望から絶望へ。」
そして肌の色が褐色から黒色へ変わり、髪は色が落ち、両肩と両肘に鋭利な突起が現れ、全身に赤い文様が広がる。
そして両腕が鋼鉄のガントレットと同化した。
「なっ!?なんだ貴様は!!」
サブローはサブナックへと姿を変え、足元から闇の牢獄を展開する。
「ぐっ、うわああああ!!!」
すると目の前に立つ警察官が苦悶の声をあげた。
当初の予定では闇の牢獄を展開し、目の前にいる目障りな警察を外の世界へと追いやろうと思ったが、まさか囚われの身となるとは。
しかも発する絶望の闇の純度も高い。これは思わぬ収穫だ。
「ほう、なかなか良い絶望ではないか。」
叫び続ける警察官から絶望の闇を吸い取り、サブナックは交番を後にするのだった。
…
捜索を再開したサクラは再び街の中を見て回るも、キュアブレイズらしき姿は見当たらなかった。
「サクラ、どうだった?」
「ううん、キュアブレイズもそうだけど、アップルさんも見かけないわ。」
サクラだけはキュアブレイズだけでなく、アップルの捜索も行っていた。
『職業柄』、サクラだけがアップルの人間の姿を知っているからだ。
「すまないな。サクラだけ2重の負担をかけてしまって。」
「大丈夫、これくらい負担にはならないわよ。」
話ながらサクラは一息つき、空を見上げる。
今日は快晴、空を泳ぐ雲たちも気持ちが良さそうだ。
この青空の下、どこかにキュアブレイズがいるはずなのに、未だにその姿を見かけない。
「・・・ねえベル。」
そしてサクラはかねてより思っていたことをベルに聞くことにした。
「なんだ?」
「キュアブレイズたちは、今どこでどんな生活を送っているのかしら?」
この世界に流れ着いて半年以上が経過している。
一カ月前に再会した時は気に留める余裕がなかったが、蛍と一緒に暮らすようになってから少しずつその疑問が沸いて来た。
彼女とアップルはこの世界でどのような生活を送っているのだろうか?
当たり前だがフェアリーキングダムという異世界から来た自分たちには、この世界でアテに出来る人なんていない。
そしてこれはまた当たり前のことだが、人間が生きていくための食料1つ、住む場所1つ得るにもお金が必要なのだ。
だが自分たちはこの世界の通貨は持ち合わせていない。
妖精である自分たちは食事の必要がないし、元の世界でも、人と一緒に暮らしている妖精以外は野で生活しているのだ。
だから自分たちは野宿にも特に困ることはなかったが、人間であるキュアブレイズは話が別だ。
蛍たちがそうであるようにキュアブレイズもまた、変身する前の姿は自分よりも『幼い』人間の少女だ。
だがこの世界の通貨を持たないはずのキュアブレイズは、一体どうやって生活しているのだろうか?
「元々キュアブレイズは、君も一緒に連れていくつもりだったんだろ?
だとしたら少なくとも、この世界でちゃんと生活できているってことじゃないのか?」
「・・・それもそっか。」
「どこでどんな生活をしているのかはわからないけど、アップルさんも一緒にいるんだ。
そこはそんなに気にしなくてもいいと思うぞ。」
確かにベルの言う通りだ。
アップルが一緒ならば、少なくともキュアブレイズが日々の生活で困ることはないだろう。
「でもそうだな。
これまでのようにがむしゃらに探すんじゃなくて、多少は的を絞った方がいいかもな。」
「的を絞るって、例えば?」
「もしこの世界に住居を構えているとしたら、一軒家よりも共同住宅の可能性が高いだろう。
民家を当たるよりもマンションやアパートを中心に探した方がいい。」
「あっ、そっか。」
「あとは、キュアブレイズとアップルさんが普段どうしているかだな。
この世界で暮らしていくには当然この世界の通貨が必要だから、アップルさんはどこかで職を見つけて働いているかもしれない。
それからキュアブレイズはもしかしたら学校に通っているんじゃないか?」
どんな生活を送っているのかの1つからここまでのことを連想できる当たりさすがベルだ。
自分たちの中で一番、この世界に馴染んでいるだけのことはある。
「なるほど、アパートにマンション、学校を重点的に当たっていくのね。」
「もう少し早くにそのことを気にかけておくべきだった。ごめんよ。」
申し訳なさそうに言うベルだが、勿論何も非はない。
自分たちを取り巻く環境もこの半年で劇的に変わったのだ。
人の目を忍んで生きていくのに精いっぱいだった日々から、僅かな力の反応を頼りに何も知らないこの世界を旅して周り、1か月前に蛍と出会いようやく落ち着ける場所を得たのだ。
そしてベルもレミンも同じ思いでここまで来た。生きること探すことで精いっぱいだったので、他の事を気にかける余裕を得たのはつい最近だ。
誰が悪いわけでもない。悪いとすれば、全ての元凶たるダークネスである。
そしてそのダークネスの勢力は日々拡大している。蛍の話によれば以前戦ったソルダークは、要ことキュアスパークの浄化技を防いだというのだ。
この先ダークネスとの戦いはさらに激化していく可能性がある。
一緒に戦ってくれる3人のためにも、キュアブレイズの力はこの先必要不可欠となるだろう。
「一刻も早くキュアブレイズを見つけなきゃ。蛍たちのためにも。」
「そうだな。」
2人が決意を新たにしたその時、
「っ!?闇の波動だ!」
「ダークネス!?」
商店街を包み込むように広がる不穏な空気とともに、街ゆく人々が姿を消していく。
ダークネスが現れたのだ。サクラとベルは余計な体力を消耗しないように妖精の姿へと戻る。
「2人とも!ダークネスが出たよ!」
すると同じく妖精の姿へ戻ったレモンが駆け付けて来た。
そして3人が集った時を同じくして、3つの光の波動を探知する。
蛍たちがプリキュアへと変身したようだ。
プリキュアの反応を掴んだ3人は合流すべくその方へ向かうのだった。
…
「「「プリキュア!ホープ・イン・マイハート!」」」
「世界を照らす、希望の光!キュアシャイン!」
「世界を駆ける、蒼き雷光!キュアスパーク!」
「世界を包む、水晶の輝き!キュアプリズム!」
「「「3つの光が伝説を紡ぐ!!!ホープライトプリキュア!!!」」」
闇の波動を感知した要たちはすぐさま変身し、ダークネスの元へと向かう。
「プリキュア!」
「チェリーちゃん!みんな!」
途中、キュアブレイズの捜索をしに街を訪れていた妖精たちと合流した。
そして闇の波動を感知した場所へ辿りつくと、ダークネスの行動隊長サブナックが待ち構えていた。
「現れたな、プリキュア。」
「サブナック、凝りもせずにまたノコノコと現れたな。」
要はサブナックの姿を確認するなり挑発する。
「ふっ、減らず口を叩いてられるのも今のうちだ。
ダークネスが行動隊長、サブナックの名に置いて命ずる。ソルダークよ!世界を闇で食い尽くせ!」
だがサブナックは挑発に意を介さず、ソルダークを生み出した。
耳障りな産声とともに、ソルダークは大きく跳躍する。
「みんな!行くよ!」
「ええ!」
「はい!」
要の号令とともに、3人は一斉にソルダークへと挑みかかる。
宙を舞うソルダークを囲い、3方向から同時に攻撃を仕掛けた。だが、
「グッ・・・ガアアアアア!!!」
僅かに怯んだ様子を見せたかと思いきや、ソルダークが雄叫びとともに体を旋回させる。
その衝撃に要たちは吹き飛ばされるが、空中で姿勢を整えて着地する。
直後ソルダークも地上へ降りた。
だがプリキュア3人の同時攻撃が直撃したのにも関わらず、ダメージを受けた様子がない。
「効いてない?ウチらの攻撃が?」
「それなりに上質な絶望から創り出したソルダークだ。これまでと同じようにはいかんぞ。」
素材、上質、熟成。
これまでやつらが発した言葉の数々から、やつら行動隊長にとって人の絶望とは、ソルダークを作り出すための材料以外の何物でもないのだ。
現実から目を背けたくなるほどの、辛くて苦しい悩みや不安を、やつらは平気で自分たちの目的のために利用する。
そのことを改めて目の前に突き付けられた要の心に怒りの火が灯された。
電光石火の速度でソルダークの懐まで詰め寄り、雷を纏った正拳を繰り出す。
「はっ!」
だがソルダークも拳を振り正面から応戦する。
衝撃が地を払い雷光が走る中、両者は一歩も後退せず、ぶつかり合う拳が鍔迫り合いのようにせめぎ合う。
やがてソルダークの膝が震え始めると、ソルダークはもう片方の拳を握り、要の元へ振り降ろす。
「たああっ!」
だが寸でのところでキュアシャインが体当たりをし、ソルダークが後方へとよろける。
その隙にキュアプリズムが飛び掛かり、ソルダークの巨体を蹴り飛ばした。
このソルダーク、力はかなりのものだが、3人で協力すれば勝てない相手ではない。
「よし、このまま一気に。」
「やはり貴様が戦力の中枢だな。キュアスパーク!」
するとサブナックが空中を蹴り、こちらに向かって飛んできた。
突然の奇襲を回避した要だが、サブナックはちょうど自分とキュアシャインたちの間に立つ。
「しまった!」
「ソルダーク!」
そしてサブナックの呼びかけに答え、ソルダークがキュアシャインとキュアプリズムの元へと
飛び掛かった。
サブナックの思惑を悟った要だが、既にサブナックが追撃をすべく目前まで迫り来る。
「くそっ!キュアシャイン!キュアプリズム!」
分断されてしまった要たちは、各々目の前に迫る敵と応戦せざるを得なかった。
…
サブナックの攻撃を受け止めた要は、彼の背後からキュアプリズムたちの戦況を見る。
一時とは言え、自分のパワーとも渡り合えるほど強力な力を持つソルダークだ。
キュアプリズムとキュアシャインの2人だけでは分が悪い。
だが加勢しようにも目の前に行動隊長であるサブナックに立たれては無視することも出来ない。
プリキュアの速度ならば一度飛べば加勢できる程度の距離しか開いていないと言うのに、手を伸ばすことすらできない状況に要は歯噛みする。
「視線が泳いでいるぞ。」
サブナックの声に正面を向き直ると、サブナックが拳を振り降ろしてきた。
要もまた拳を振るい正面から迎撃するが、サブナックの力に押されてしまう。
「どうしたキュアスパーク?貴様の力は程度ではないはずだ。」
「この・・・なめるな!」
だが押しかかる腕力を跳ね除けることができず、要は一度拳を引き距離を置く。
そしてキュアプリズムたちの方を一瞥するが、2人はソルダークの攻撃を受けて空中に飛ばされていた。
「っ!?キュアプリズム!キュアシャイン!」
その光景に気を取られていたキュアスパークは、サブナックの接近を許してしまう。
「仲間を気にしている場合か?」
「くっ!」
そしてサブナックの攻撃に対して防御姿勢を取ろうとするが間に合わず、直撃を受けて後方まで飛ばされてしまう。
「ああっ!」
背後に立つ電柱を砕き、石垣に叩き付けられた要は、そのまま地に倒れる。
「ホープライトプリキュアの中で貴様が一番戦闘に長けている。
貴様さえ引き離せばあとの2人はソルダークでも十分にやれると思ったが、まさかこうも上手くいくとはな。」
「くっ・・・そ・・・・。」
行動隊長の中でも特に力に長けたサブナックの一撃だ。
直撃のダメージが大きく足がフラつくが、立てないほどではない。
要は気合を入れてその場に立ち上がり、サブナックを前に身構える。
「無様なものだ。
このオレと渡り合えるだけの力を持ちながら、仲間の身を案ずるあまり本気を出せないとは。
貴様にとって仲間とは、力を削ぐだけのただの足枷でしかないと言うことだ。」
「っ!?」
「貴様らの言うチームワークなど所詮、貴様個人の力をアテにしていたに過ぎない。
あとの2人など浄化技と盾以外に取り柄のないただの弱者ではないか。」
サブナックの言葉に要は怒り震える。
ダークネスとの戦いの中で、キュアプリズムとキュアシャインの力を欠いて勝てたものなど1つもなかった。
キュアプリズムがバリアと回復術でアシストしてくれ、キュアシャインは危険を顧みず囮となって浄化技を放つ機会を作ってくれる。
いつも2人が力を貸してくれたから、要は今日まで戦ってこれたのだ。
その大切な仲間を、友達を侮辱されたことが許せなかった。
「ウチの仲間を・・・バカにするなよ!」
上空から雷を呼び、自身の身に当てた要は電撃を纏った状態でサブナックと対峙する。
「いいぞ、もっとオレを相手に闘志を燃やせ。
もっとオレを楽しませてみせろ。キュアスパーク。」
そして雷の如くスピードで真っ向からサブナックとぶつかるのだった。
…
キュアスパークと分断された蛍とキュアプリズムは窮地に立たされていた。
目の前に立つソルダークは、キュアスパークと一時渡り合えるほどの強さを持っている。
自分の力ではキュアプリズムのサポートがあっても対抗できない相手だ。
「きゃああ!」
ソルダークの振り降ろした拳を回避するが、その拳は地面を抉り粉塵を巻き起こす。
粉塵に目を眩まされた蛍は、ソルダークがもう片方の拳を振るってきたことに気が付かなかった。
「キュアシャイン!」
寸でのところでキュアプリズムがバリアを展開してくれたおかげで助かったが、
ソルダークは次にキュアプリズムを睨み付ける。
振るった拳が闇の力を乗せた鎌鼬を引き起こしてキュアプリズムへと迫るが、前方に展開された盾がその攻撃を遮断する。
だがその攻撃と同時にソルダークが跳躍し、キュアプリズムの頭上から急降下した。
キュアプリズムは気づくも、目の前の攻撃を防ぐことに気を取られてしまい、防御が遅れる。
慌てて蛍は駆け付けようとするが遅く、ソルダークが大地に降りる衝撃に巻き込まれ、キュアプリズムは吹き飛ばされてしまった。
「キュアプリズム!」
その光景に気を取られていた蛍は、ソルダークが自分に狙いを定めたことに気が付かなかった。
ソルダークは腕を振るい、巨大な手のひらで自分を掴んだ。
「きゃああ!」
ソルダークが手を握る力を強め、蛍は苦悶の声をあげる。
プリキュアに変身しているため骨が軋むようなことはないが、全身を締め付けられるような痛みは耐え難いものだった。
「キュアシャイン!!」
立ち上がったキュアプリズムがこちらを確認して叫び声をあげるが、ソルダークは再びキュアプリズムに拳を振るう。
自分のことに気を取られていたのか、キュアプリズムは盾を展開することすらできず、衝撃波に飲まれて再び飛ばされてしまった。
やがてソルダークは握撃ではこれ以上のダメージは望めないと判断したのか、握った掌を開いた。
だが解放された蛍に対して間髪入れずソルダークは拳を振るう。
蛍にはその攻撃を回避する術はなく、直撃を受けてしまいキュアプリズムと同じ位置まで飛ばされてしまった。
「うっ・・・。」
「キュアシャイン・・・大丈夫・・・?」
肩を抱えながらキュアプリズムがこちらの身を案じながら駆け寄る。
2対1なのに未だにソルダークに満足のいく攻撃ができず、2人ともボロボロの状態だ。
蛍はその現状を招いたのが自分にあるのだと思い、情けなくて泣きたくなった。
自分にキュアスパークほどの力があれば、今のように一方的にやられることはなかったはずだ。
だがソルダークとまともに戦えないばかりが、キュアプリズムが自分の身を守ることに手いっぱいであるあまり、自身に対しての守りを疎かにする状況さえも作り出してしまった。
もっと強ければ、もっとスピードがあれば、キュアプリズムへの負担は減っていただろうし、救援にも迅速に駆け付けられたはずだ。
自分の力が足りないあまりに、彼女の力まで潰してしまっている。
(せめて・・・このまえみたいに浄化技がつかえたら・・・なんでつかえないの・・・?)
行動隊長であるリリスでさえ退けるほどの力が自分にあるのだ。
この状況を打開することができるはずなのに、力の使い方がわからない。
キュアプリズムだってピンチで助けたいと思っているのに、あの時の想いも力も沸いてこない。
(どうして・・・。)
情けなくて、悔しくて、でも蛍は自分を卑下する思いをギリギリのところで塞き止めていた。
今それをこの場でぶちまけたところで何も状況は変わらないと言う理性が、蛍の負の思考を瀬戸際で食い止めている。
でも今のままではあの時の浄化技を使えない限り勝つことはできない。だがそれも望めない。
すると蛍は逆の結論に辿りついた。
「そうだ・・・こっちじゃなくて、あっちを先にたおしちゃえばいいんだ。」
「キュアシャイン?」
「キュアプリズム!今すぐキュアスパークのたすけにいって!!」
「えっ!?」
「キュアスパークと協力して、サブナックを先にやっつけて!
それから3人でソルダークを浄化しよう!」
そう、これまでの逆をすればいいのだ。
ソルダークを足止めする囮役を自分が担い、キュアスパークとキュアプリズムで行動隊長を先に退治する。
恐らくそれがこの状況を打開できる唯一の方法だ。
「でも!それってキュアシャインが1人でこのソルダークを相手にするってことでしょ!
そんなの無茶よ!!」
「うん・・・だから、なるべく早くもどってきてね?」
自分の身を案じてくれるキュアプリズムに、蛍は少しだけ本音を言って甘える。
雛子に甘えることで蛍は自分の中に残ったほんの少しの躊躇いを振り払う。
そして、
「はああああっ!!」
蛍はたった1人でソルダークへと立ち向かっていった。
…
ソルダークへと立ち向かっていったキュアシャインから視線を反らし、雛子はキュアスパークの方へと向けた。
彼女の表情から、ソルダークを倒せないのは自身の力が足りていないせいだと思い詰めているように見えたがそれは間違いだ。
あのソルダークは強敵だ。自分が戦ったとしても敵う相手ではない。
あれに勝つためにはキュアスパークの力が必要なのだ。
(待ってて蛍ちゃん!すぐに行くから!)
あれほどの力を持ったソルダークにキュアシャイン1人を残していくのが心配でならなかった。
自分にもっと力があれば彼女を守りながらでも戦えたのに。
雛子は力が及ばないことの悔しさから唇を噛み締める
「どうしたキュアスパーク?力が衰えてきているぞ。」
「このっ・・・。」
目を向けた先に繰り広げられているサブナックとキュアスパークの戦いは、サブナックの優勢だった。
「そうか、プリキュアとはいえ所詮は人間。体力が消耗しては満足に戦えないか。」
サブナックの答えに雛子は驚愕する。
希望の光の行使は体力と気力を消耗させる。
そして行動隊長と渡り合えるには相応の希望の光が必要なはずだ。
それを行使すれば体力と気力の消耗度合も比例する。
だが行動隊長は闇の力を扱うことへの対価がないようだ。少なくとも疲労することはない。
現にキュアスパークの表情には疲労の色が見られるのに対して、サブナックは疲れの色を一切見せていなかった。
人間と怪人という覆しようのない差異が、サブナックとキュアスパークの戦いの中で露呈する。
「まあいい、もう十分に楽しませてもらった。
これで終わりとしよう、キュアスパーク。」
そしてサブナックが膨大な絶望の闇を纏った拳を上げ、キュアスパーク目掛けて振り下ろした。
「はあっ!」
雛子は寸でのところで盾を展開し、サブナックの攻撃からキュアスパークを守る。
「キュアプリズム!」
突然の援護に驚いたキュアスパークがこちらを振り向く。
「ふん。」
だがサブナックもまたこちらへと振り向き、両手に絶望の闇を込めながら襲い掛かってきた。
「弱者の分際で。」
雛子は前方に盾を展開するが、サブナックは両手に纏う絶望の闇で、雛子の希望の光に干渉し、盾を掴み、力任せに遠方へ投げ飛ばした。
「えっ!?」
「強者の戦いに割って入るな。」
そして丸腰になった雛子へ正拳を繰り出した。
咄嗟の判断で身体にバリアの光を纏うも威力を相殺するには至らず、そのまま正拳を受けて後方まで殴り飛ばされてしまう。
「キュアプリズム!」
キュアスパークが叫びながらサブナックへと詰め寄るが、サブナックはキュアスパークの方へと向き直り、彼女の胸倉を掴んだ。
「言ったはずだ。貴様の仲間など、貴様の力を削ぐだけの足枷でしかないと。
弱者と群れたばかりに己が牙を失うとは、愚かだな、キュアスパーク。」
キュアスパークはそのまま雛子の方へと投げ飛ばされた。
「キュアスパーク!しっかり!」
雛子はキュアスパークの元へと駆け寄る。
だがサブナックとの戦いで消耗している彼女は、上半身を起こすだけで精いっぱいのようだ。
「きゃあああっ!」
すると後方からキュアシャインの叫び声が聞こえた。
振り向くとソルダークの攻撃を受け、地面に叩き付けられる彼女の姿が映る。
「キュアシャイン!」
キュアシャインはその場から立ち上がらなかった。
指が僅かに動いているので気を失っているわけではないようだが、受けたダメージが大きく体を満足に動かせないでいる。
そんなキュアシャインの痛々しい様子に雛子は悲痛の表情を浮かべる。
「終わりだな、ホープライトプリキュア。」
そして雛子たちの元へ、サブナックが詰め寄って来た。
…
これまで戦ってきたどの個体よりも強力な力を持ったソルダークと、行動隊長であるサブナックの猛攻を前に、3人のプリキュアたちが絶体絶命の窮地に立たされていた。
チェリーは自分の目の前に広がるその光景を前に言葉を失う。
「そんな・・・プリキュアが・・・。」
隣に並ぶベリィとレモンも一言も発することができず、ただみんなが傷つくところを見ることしか
出来ないでいた。
このまま攻撃が続けば、思いつく限りの最悪の事態が訪れてしまう。
(お願い・・・助けにきて・・・。)
それでも自分たちには戦う力がない。
戦う力のない自分たちはただ願うことしか出来ない。
それがどんなに自分勝手な行いだとわかっていても、チェリーは大切な蛍たちを失いたくない
一心でひたすら『彼女』に助けを求めた。
この街のどこかにいるはずの『彼女』に。
「お願いだからみんなを助けて!キュアブレイズ!!」
視線の先、キュアシャインが傷ついた体を無理やり起こし引きずりながらソルダークへと立ち向かおうとする。
だがその時、どこからともなく飛んできた火の玉が、振り降ろされたソルダークの腕に着弾し爆発を起こした。
「なに!?」
「え・・・?」
チェリーだけでなく、サブナックを含めたこの場にいる一同が、火の玉の飛んできた方向へと目を向ける。
「あ・・・。」
その姿を見た瞬間、チェリーの口から安堵の息か零れた。
そこには赤色のツインテールを風になびかせ、赤を基調としたドレスを身に纏い、手のひらに陽炎を揺らがせる少女が宙を浮いていた。
「あの服・・・ウチらと同じ・・・?」
「赤色の・・・プリキュア。まさか!」
彼女の姿を初めて見るキュアスパークとキュアプリズムが驚きの表情を浮かべる。
「キュア・・・ブレイズ・・・。」
そしてキュアシャインが、消え入りそうな声で彼女の名を呟いた。
「キュアブレイズ!キュアブレイズだ!!」
ずっと探し求めていたキュアブレイズを見つけたことを、レモンが目に涙を浮かべはしゃぎながら喜ぶ。
するとキュアブレイズは宙を蹴り、ソルダークの元へと距離を詰めた。
キュアシャインをかばうようにその前に立ち、ソルダークと睨みあう。
「ガアアアアアアッ!!」
そしてソルダークの方から先に攻撃を仕掛けて来た。
キュアブレイズに目掛けてパンチを繰り出す。
だがキュアブレイズは一切の無駄のない動きでそれを回避し、裏拳でカウンターの一撃をお見舞いした。
重い打撃音が鳴り響き、ソルダークの巨体が後退するが、ソルダークは空いた距離を利用して、その場で拳を振るい鎌鼬を引き起こす。
だがキュアブレイズが円を描くように腕を回すと、そこから渦巻き状の炎が発生した。
渦巻く炎はキュアブレイズの身を守るように、鎌鼬を遠心上に吸い込みそのまま爆発四散する。
その爆発を目くらましとして利用し、今度は手のひらから陽炎を生み出し火の玉へと形を変えた。そして火の玉をソルダーク目掛けて投げつけると、それはソルダークに着弾と同時に爆発する。
「凄い・・・。」
「一方的やないか・・・。」
キュアスパークとキュアプリズムは、ソルダークを一方的に手玉に取るキュアブレイズの力に感嘆する。
するとソルダークは絶望の闇を体中から噴出させ、なりふり構わず鎌鼬を撒き散らした。
攻撃の範囲内にはキュアシャインの姿もある。
危ない、チェリーがそう思った時、キュアブレイズが前方に手を払い炎の壁を発生させた。
炎の壁はソルダークの放った鎌鼬を全て受け止め焼き尽くす。
それはまるで、身動きの取れないキュアシャインを守っているかのようだった。
そしてキュアブレイズはそのまま炎の壁の中へと飛び込んでいった。
「さすがにキュアブレイズが相手では分が悪いか。」
するとサブナックがソルダークの元へ加勢しようと動き出す。
だがその前方をキュアスパークとキュアプリズムが遮った。
「ちっ、まだ動けたか。」
キュアスパークたちとサブナックが睨みあう。
だがサブナックは既に勝敗が決しているのを悟ってか、その場を強行突破しようとはしなかった。
「ガアアアアアアアッ!!!」
やがて炎の壁が収まると、炎柱に身を焼かれ断末魔をあげるソルダークの姿が映る。
「ふっ、とうとうキュアブレイズまで出て来たか。ますます面白くなってきた。」
そして消滅していくソルダークの姿を一瞥し、サブナックはその場から姿を消していった。
「キュアブレイズ・・・キュアブレイズ!!」
戦いが終わり、チェリーを含めた3人の妖精はキュアブレイズの元へと駆け寄る。
「・・・。」
だがキュアブレイズは険しい表情のまま、一言も言葉を発さなかった。
そんな彼女の様子にチェリーは言いようもない不安を抱くのだった。
…
次回予告
「一緒に戦えないって、どうしてよキュアブレイズ!」
「私1人の力で十分だからよ。あんな弱い人たち、私には必要ない。」
「昔のあなたならそんなこと言わなかったわ!
「私に仲間なんていらない。ダークネスは私1人で倒してみせるわ。」
「待ってキュアブレイズ!一体あなたに何があったと言うの?お願いだから答えて!!」
次回!ホープライトプリキュア第11話!
仲間になれない!?プリキュアの苦悩と1つの決意!
希望を胸に、がんばれ!わたし!