第10話・プロローグ
ゴールデンウィークが明け、チェリーは一週間ぶりに学校へ通う蛍とともに玄関を出る。
「それじゃ、チェリーちゃん。いってくるね。」
「いってらっしゃい、蛍。楽しんできてね。」
学校へ行くのが楽しみと言わんばかりの、蛍の明るい笑顔を久しぶりに見たチェリーは、蛍を見送った後に天を仰ぐ。
今日は雲一つない晴天、絶好の外出日和だ。
キュアブレイズとアップルを探すにはもってこいの天気である。
「さてと、私も頑張らないと。」
周辺に人がいないことを確認したチェリーは、サクラへと変身して噴水広場へと向かうのだった。
蛍がリリンに会うために良く訪れるこの噴水広場は、中央に立つ大時計が良く目立つ。
それを目印に集まるようになってから、気が付けば妖精たちにとっても集合場所となっていた。
到着したサクラは、時計の前でベルとレミンの姿を見つける。
「お~い、サクラ~。」
「2人ともお待たせ。」
「いや、俺たちもさっき来たばかりさ。」
3人集合した後、サクラは改めて周囲を見渡した。
蛍と一緒によく見るテレビに映る、この国の首都と比べれば、夢ノ宮市は決して大きな都市ではないはずだ。
それでも僅か3人で回るには十分すぎる広さであり、商店街とその周囲の住宅街より外へはまだ出たことがない。
この都市全域を探して回るものなら、とてもじゃないが徒歩では無理だ。
以前ショッピングモールまで訪れたようにバスを使う必要がある。
そろそろ行動範囲を広めて、隣町にもいかなければならないかなと思いながらも、サクラはこの街にキュアブレイズたちがいるように思えてならないのだ。
それは漠然とした直感でしかなく根拠もないが、それ故に否定できる材料も持っていない。
だからサクラはベルたちにも事情を話し、気が済むまでこの街を何度も探して回るようにしていた。
「必ず、見つけてみせましょう。私たちの大切なあの人を・・・。」
「・・・ああ。」
「もちろんだよ。」
キュアブレイズはサクラたち3人にとって、否、フェアリーキングダムに住まう人たちにとってとても大切な人だ。
だから知りたい。なぜ姿を隠しているのか。
そして不安なのだ。フェアリーキングダムでの出来事を1人で抱え込んでいないのかと。
アップルが一緒にいることはわかっているので、その心配は杞憂だとは思うが、サクラもベルもレミンも、指をくわえて待つだけのことは出来なかった。
自分たちにとって大切な人である、キュアブレイズの力になりたいから。
「・・・必ず、見つけ出してみせますからね。」
この街のどこかにいるはずのキュアブレイズに、サクラは強く誓うのだった。