ホープライトプリキュア   作:SnowWind

15 / 82
第5話・Aパート

 チーム結成!ホープライトプリキュア!

 

 

 雛子がキュアプリズムへと変身し、初めてダークネスと戦った日。

 あの後、行方のわからなかった最後の妖精、レモンを雛子が保護していたことが判明したのだ。

 本来ならばすぐにでも雛子の家に訪れたかったところだが、既に夕刻を過ぎた時間に大勢でお邪魔するわけにもいかず、蛍は夕食の支度に取りかかっている最中だった。

 結局、その日は逸るパートナー2人を宥めて帰ることになり、翌日の放課後に雛子の家に集まることになった。

 そして妖精たちの再会を無事見届けることが出来たのがつい昨日のこと。

 つまりキュアプリズム誕生から2日が経過していた今日の昼休み、蛍はいつ胸に秘めた思いを打ち明けようかを考えながら、要と雛子に連れられ夢ノ宮中学校の学食へと初めて訪れたのだ。

 夢ノ宮中学校の学食は安く美味しくそして広いと評判である。

 その評判通り、備え付けられたテーブルとイスは室内だけに留まらず、外のバルコニーにまでズラリと並んでいた。

 そして学年問わず多くの生徒たちの食事と談笑で賑わっていた。

 初めて図書館を訪れた時も思ったが、この中学校の校内施設の広さには驚かされてばかりである。

 これで私立ではなく市立なのだから恐れ入る。

 学食のお品書きを一瞥すると、これまた評判に違わず中学生にとってリーズナブルな価格で、定食、カレー、ラーメン等の定番のメニューが並んでいた。

 そして隣に立つ購買には様々な種類のパンとお弁当が陳列している。

 多くの生徒が学食または購買から昼食を購入しているが、蛍のように持参したお弁当を持ち込んでいる生徒も何人かいた。

 蛍たちは一番奥の角に面した席を取り、各々椅子に腰掛ける。

 蛍は自前の、雛子は学食で購入したお弁当を、要はパンをそれぞれ食べ始めた。

 そして食べながら要は、蛍を学食へ誘った理由を話し始めたのだ。

 

「つうわけで、今週末ウチの家に集まって作戦会議するよ。」

 

「・・・。」

 

 だが何の脈絡もなく口に出された作戦会議という言葉に、蛍は混乱してしまう。

 すると横に座る雛子から大きなため息が漏れた。

 

「あのね要、いきなり作戦会議をするって言われても、わけがわからないに決まってるでしょ。」

 

「察し悪いな~。プリキュアのことに決まってるやん。」

 

 そう、蛍たちがこの学食に集まったのは他でもない。

 プリキュアとしてのこれからの活動について話し合う為に集まったのだ。

 今後はこの3人で戦っていくことになるのだが、プリキュアであることを公言してはならない以上、教室内で話すわけにはいかず、かといって放課後は要は部活、蛍は家事の為に早めに帰らなければならない為、集まれる日は自然と休日、しかも3人の内誰かの家に場所が限られてくる。

 そこで校内でもある程度話せる場所はないかと探した末、この学食を見つけたのだ。

 ここならば大勢の生徒たちのお喋りで喧騒としているため、蛍たちの話し声は目立たずにかき消されてしまうし、角際ならば向かい側に席もない。

 木の葉を隠すなら森の中である。

 

「行方がわからないキュアブレイズを除けば、ウチらでプリキュア全員集合ってことやろ。

 だから今後のプリキュア活動について話し合わんかなって思って。

 学校だとさすがにベリィたちは連れていけんからね。」

 

 喋るぬいぐるみを人前に晒すリスクが当然あるわけだが、それ以前に一般常識として校内にぬいぐるみを持ち込むわけにはいかないだろう。

 

「そうね。それに妖精たちから聞いた話も、一度全員でまとめてみたいし。」

 

 雛子がそう続く。そう言えばここにいる全員が、各々のパートナーから話を聞いていただけだ。

 チェリーやベリィが言うには、妖精たちの間で知っていることの差はほとんど無いため、話す内容に大きな違いが表れることはないと言っていたが、雛子の言うように一度全員が知っている情報をまとめた方がいいだろう。

 

「蛍は土日どっちが都合良い?」

 

「えと・・・わたしはどっちでもだいじょうぶだよ。」

 

「私もよ。」

 

 蛍と雛子はそれぞれ週末に予定がないことを要に伝える。

 

「じゃっ明日、土曜日にウチに集合な。蛍、これ。」

 

 要は、蛍に紙切れを渡した。見ると電話番号と住所、簡単な手書きの地図が描かれていた。

 

「昼食べ終わったらここに集合な。」

 

「わっわかった。」

 

「よ~し、第一回プリキュア作戦会議、開催決定ってね!」

 

「要、周りがうるさいからって大声出さない。」

 

「あはは、ごめんごめん。」

 

 こうして明日、要の言う第一回プリキュア作戦会議が開かれることが決定した。

 蛍は昨日、内に秘めた決意を思い出す。臆病な蛍は心が揺らぐのも早い。善は急げ、決意が鈍る前に思い切って勝負を付けよう。

 

(あした・・・つたえるんだ・・・。)

 

 要と雛子に、友達になってくださいと。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 翌日の土曜日、昼食を終えた蛍は、母親に夕ご飯の支度前には帰ると約束し、チェリーを連れて家を出た。

 他人の家に私服で尋ねるのは初めてのことなので、どのような格好なら失礼でないかを昨日一晩中悩んだが、結局普段から着慣れている、襟付きのピンクのトレーナーに白のミニスカート、膝まで届く紺のハイソックスと言うお気に入りの服装で出かけることにした。

 スカートの丈が少し短いかもしれないが、門前払いを受けるほど失礼な格好でもないだろう。

 紙切れに書かれた住所と地図を頼りに進むと、しばらくして一軒家にたどり着いた。

 ネームプレートには森久保の性。間違いないこの家だ。

 蛍は玄関前まで足を運び呼び鈴を鳴らそうとしたが、直前で手を止めてしまう。

 

「・・・。」

 

 徐々に表情を強張らせていく蛍に、チェリーが声をかける。

 

「蛍?どうしたの?」

 

(どうしよう・・・いまさらになって緊張してきた・・・。)

 

 これまで友達がいなかった蛍には当然、クラスメートの家を尋ねた経験はない。

 一昨日、雛子の家に立ち寄った時は要も一緒だったし、そもそも妖精たちの再会が目的であり、しかもその後すぐにお暇したので、クラスメートの家を尋ねたという実感が沸いてこなかったのだ。

 だが今回は違う。

 第一回プリキュア作戦会議を行うこと目的だが、前日にちゃんと約束し招待され、こうして1人(正確にはチェリーも一緒にいるが)で来たのだ。今になって余計な思考が働き始める。

 

(このまま、よびりんをならしても、もりくぼさんじゃない人がきたらどうしよう・・・。

 わたし、ちゃんとあいさつできるかな・・・

 できなかったから、もりくぼさんのごかぞくにしつれいだよね・・・。いんしょうわるくならないかな・・・。

 そもそもこうゆうときって、つまらないものでもいいから、お茶菓子とかもってくるべきじゃなかったっけ?

 ああどうしよう・・・このまま、おうちにあがってもいいのかな・・・。)

 

 そしていつもの悪い癖が始まる。考えれば考えるほど後ろ向きな思考に陥っていく。

 だが、このままでは何時まで経っても家に上がることが出来ない。

 

(だっだいじょうぶ、もりくぼさんとはもうちゃんとおはなしできる仲だもん。

 それに今日は、がんばって、ともだちになってくださいって、つたえにきたんだから!)

 

 ずっと抱き続けてきた夢を、今日叶えるのだ。

 蛍はその思いを胸に勇気のおまじないをし、意を決して呼び鈴を鳴らそうとする。

 その時、

 

「・・・蛍?」

 

「!?ひゃあああっ!!」

 

 不意に後ろから声をかけられ、驚いて振り返ると、

 

「・・・人ん家の前で、何固まってんの?」

 

 薄手の橙色の長袖に、ブルーのスキニーデニムという動きやすさを重視したスポーティな私服姿の要が、両手にお菓子とジュースの入ったビニール袋を持ちながら、呆れた口調で話しかけてきたのだった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 頑張る間もなく、要本人から家にあげてもらった蛍は、素っ頓狂な叫び声を要に聞かれたことの恥ずかしさからまともに顔をあげられなかった。

 やがて部屋の前まで案内されると、要が蛍を部屋へ招き入れるためにドアを開ける。

 

「はいどうぞ、ウチの部屋にごしょうた~い」

 

 部屋に入ると、要のベッドの上で読書をしている雛子の姿があった。

 ライラック色のロングワンピースに白のカーディガンという私服姿の雛子は、彼女が要と並んで同世代の中でも背が高めであること、メガネをかけて読書に励むと言う文学少女特有の知的なイメージ、そして同世代どころか大人さえ羨むであろう彼女のスタイルの良さも合わさって、中学生とは思えない大人びた雰囲気を漂わせていた。

 そんな雛子の隣には、レモンが昼寝をしている。

 

「あっ蛍ちゃん、チェリーちゃん。いらっしゃい。」

 

「こっこんにちは。」

 

「いらっしゃい蛍ちゃん。って俺が言うのも変だけどな。」

 

 勉強机の上にはベリィの姿があった。部屋に上がった蛍は、一度全体を見渡してみる。

 本棚に置かれている少年詩の漫画本、机に置かれているゲーム機、壁に貼られているバスケット選手のポスター。

 要の人となりを知る人が見れば、一見して彼女のものだと分かるような部屋だった。

 部屋と言うのはここまで人の個性を反映させるものなのかと、蛍は不思議な気持ちで見渡す。

 

「男子っぽいでしょ?要の部屋。」

 

 すると雛子がそんなことを言ってきた。

 確かにそう思ったが、さすがに失礼だと思って言葉に出すつもりはなかった。

 だが雛子はそれをあっさり言ってのけたのだ。蛍は無遠慮な雛子の物言いに少し戸惑う。

 

「こら~、男子っぽいって言うな。せめてウチらしいって言え~。」

 

 要がそう抗議するも、雛子は涼しい顔で流して本を畳むのだった。

 

「まあいいや、よ~し、さっそく準備を始めるで!」

 

 すると特に気にしてはいなかったのか、要は話を切り上げ、先ほどまで手に持っていたビニール袋からポテチを取り出した。

 袋を破り、それをシートの代わりにしてポテチを床の上に広げ、さらにポッキーを取り出してその隣に並べる。

 それが終わると再びビニール袋に手を入れ、今度は紙コップを取り出した。

 そして机の上に人数分並べジュースを注ぎ、蛍と雛子に手渡す。

 一体何の準備なのだろうかと蛍が疑問に思った矢先、

 

「それでは、第一回プリキュア作戦会議!開始~!」

 

「・・・。」

 

 それは作戦会議の準備であったことが判明したのだ。

 だが会議どころかパーティーが始まりそうなノリで高らかに開幕宣言をする要を前に、蛍は硬直してしまう。

 ちなみに雛子はいつものように涼しい顔で肩を落としていた。

 

「かんぱーい!」

 

 要はそんな蛍と雛子の様子には目もくれず、乾杯宣言をしながらジュースを掲げた。

 蛍は唖然としながらも、要に倣ってとりあえず形だけ乾杯をする。

 雛子はそんな要のノリをいつも通りスルーし、乾杯せずに1人でジュースを飲み始める。

 

「・・・やれやれ、それじゃあ、まずは何から話し始めればいい?」

 

 するとその場を呆れた表情で見守っていたベリィが、任せてられないと言わんばかりに話を切り出した。

 

「とりあえず、あなた達が知っていることを、今一度振り返ってもいいかしら?」

 

 雛子がそれに乗る形で、ようやく話が進み始める。

 

「わかったわ。とは言っても、特に真新しい情報はないと思うけどね。」

 

「それでもいいわよ。

 一旦この場にいるみんなの中で、意識を一つに合わせることが目的だから。」

 

 これから共にダークネスと戦っていく以上、全員が同じ情報と目的を共有するべきだろう。

 それは蛍だけでなく、この場にいる誰もが同じ見解だった。

 

「それじゃあ、もう一度最初から説明するわね。

 フェアリーキングダムのこと、プリキュア伝説のこと、そしてダークネスのこと。」

 

 チェリーとベリィが3人の顔を見渡す。

 そしていつの間にか起きていたレモンを交えて、このパーティーとしか思えない第一回プリキュア作戦会議がスタートするのだった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

「黒き闇、空を覆わんと拡がりし時、4つの光、闇を照らすべく大地に降りる。」

 

 要がポテチを頬張りながら伝説を復唱する。

 

「其の名はプリキュア。汝は世界の希望なり。」

 

 雛子がポッキーをかじりながらそれに続く。

 

「そして4つのひかりがつどいし時、おおいなる奇跡がおとずれん・・・。」

 

 最後の一文を復唱した蛍は、ジュースを飲んで一息つく。

 何とも緩い空気の作戦会議だが、ちゃんと進行しているようだ。

 

「このジュースおいしい・・・。」

 

 と思われていた矢先、蛍が思わずジュースの味について簡潔な感想を口にする。

 

「でしょ?ちょっと高いけど、ウチのお気に入りなんよ。」

 

 それを皮切りに、話が少しずつ傾き始めた。

 

「要、ポテチ食べ過ぎ、私たちの分も残しておいてよ。」

 

「雛子こそ、ポッキー食べ過ぎ。」

 

「食べ過ぎてなんかないわよ。まだ開封していない箱がこんなにあるから・・・」

 

「おーい!脱線するなあ!」

 

 そして徐々に脱線し始めた空気に耐え切れず、ベリィがついに一喝した。

 

「わっ、ごっごめんなさい・・・。」

 

 蛍が慌てて謝罪し、軽く咳払いをしてから話を戻す。

 

「コホン、おおいなる奇跡ってなんのことだろうね?」

 

「きっと、黒き闇を世界から追い払えるってことよ。

 つまり、4人のプリキュアが力を合わせれば、必ずダークネスを打ち破ることが出来る!」

 

 チェリーはそう力説する。

 伝説では4つの光、プリキュアが闇を照らすとあったので、蛍自身もそう思っていたところではある。

 

「ダークネスね。

 今んとこ戦った行動隊長は、サブナックっておっさんと、ダンタリアって優男だったっけ?」

 

 要が指を折りながら、これまで戦った行動隊長の数を数える。

 

「それから、リリスだっけ?蛍ちゃんが倒したって言う。」

 

「たおせた、わけじゃないとおもう。にげられちゃったし。」

 

 リリス、サブナック、ダンタリア。ダークネスの行動隊長たちはいずれも強敵だ。

 伝説では光が闇を照らすとあるが、行動隊長とソルダークの強さを目の当たりにしている蛍は、現実では本当に伝説の通り行くのだろうかと不安に思う。

 

「少し気になっていたのだけれど、この世界で活動している行動隊長達が、ベリィ君たちの世界を襲ったの?」

 

 すると少し考え事をしていた雛子が、妖精たちに1つの疑問を投げかけた。

 

「いや、俺たちの世界を侵略してきたのは、別の行動隊長たちだったよ。」

 

 ベリィから返ってきた答えは、蛍と要を驚かせるには十分なものだった。

 

「え?そうだったの?」

 

「あいつら、あんたらを追ってこの世界に来たわけじゃなかったんだ。」

 

 チェリーたちに責任を押し付けるつもりはないのだが、蛍はてっきりフェアリーキングダムから逃げたチェリーたちを追って、ダークネスがこの世界へ侵略してきたと思っていたのだ。

 だが実際にはそこに何の関連はなく、ダークネスがこの世界を侵略したのとチェリーたちがこの世界へ逃げ込んで来たのは、全くの偶然だったのだ。

 

「俺たちの世界で活動していた行動隊長は、ハルファスとマルファスという2人1組の悪魔たちだった。」

 

 新しく出てきた行動隊長の名前に蛍は体を強張らせるが、

 

「安心して、2人ともキュアブレイズが倒してくれたのよ。」

 

 続くチェリーの言葉に、蛍たちはさらに驚いた。

 

「倒した?行動隊長を2人も?」

 

 だが要と雛子は、キュアブレイズが行動隊長を倒したことに驚いたようだが、この3人の中で唯一キュアブレイズの実力を目の当たりにした蛍だけは驚かなかった。

 ソルダークさえ容易く倒してしまう彼女ならば、行動隊長を倒すことが出来ても不思議ではないだろう。

 すると少し考え込んだ要が、ハッと顔を上げて1つの疑問を口にした。

 

「でもちょっと待って。

 それって行動隊長を倒しても、絶望の闇を止められなかったってことにならん?」

 

「あっ・・・。」

 

 要の言葉に蛍は声をあげる。

 チェリーたち妖精から聞いた話では、行動隊長がソルダークを作り、闇の牢獄を世界に広げ、ソルダークから放たれる絶望の闇が、牢獄の強度を高めるという話だったはずだ。つまり行動隊長がいなければ、

 闇の牢獄もソルダークも生まれないはず。

 それなのに行動隊長を失っても尚、フェアリーキングダムに広がる絶望の闇は止まらなかったというのだろうか?

 

「・・・そうゆうことになるな。最もハルファスとマルファス以外の行動隊長がいたの

 かもしれない。現に俺たちがこの世界へ逃げる直前に、リリスが姿を現したからな。」

 

「リリスがフェアリーキングダムにも?」

 

「ああ。

 ひょっとしたら、サブナックとダンタリアも、俺たちが遭遇しなかっただけで、フェアリーキングダムにもいたのかもしれないな。」

 

 そう語るベリィだが、言葉にはあまり自信が感じられなかった。

 そんなベリィに要は質問を重ねる。

 

「行動隊長を全員倒せば、ダークネスは壊滅するんかな?」

 

「・・・わからないな。もしかしたら行動隊長よりも上の立場のものがいるかもしれない。」

 

 ダークネスに関する会話が行われていく中、蛍はある疑問を抱き始めた。

 そしてその疑問に答えてくれるかのように、雛子が口を開く。

 

「・・・やっぱり、そうよね。」

 

「雛子?」

 

「私たち、敵であるダークネスについて、わからないことが多すぎるのよ。」

 

 故郷を侵略された妖精を含め、この場にいる全員がダークネスについてほとんど知らないのだ。

 どれだけの戦力があるのか、行動隊長は何人いるのか、行動隊長以外の構成員がいるのか、トップは誰か、そもそも組織だって行動するものたちなのか?

 その疑問に答えられる人がこの場にはいないのだ。これまでは姿を見せた行動隊長と戦うだけであったが、こうして見返してみると、敵の存在はあまりにも未知数だ。

 蛍は今になって、未知の部分が多いダークネスと戦うことに対して不安を抱く。

 

「・・・すまない。ダークネスについては、俺たちもほとんど知らない事ばかりなんだ。」

 

「ベリィ君が謝ることじゃないよ。ベリィ君たちにとっても、突然現れた侵略者なんだし、

 これまで教えてもらった情報だけでも十分よ。」

 

 落ちこむベリィを優しく励ます雛子。

 

「まっ、当面は姿を現した行動隊長を片っ端から撃退するしかなさそうやな。」

 

 すると要がそう簡潔に結論付けてきた。

 

「そうね。幸い敵の目的ははっきりしてるんだし、私たちはそれを防ぐことに注力しましょう。」

 

 雛子もそれに賛同した。蛍もその言葉に異論はなかった。

 敵の戦力どころか拠点さえわからない今の状態では、こちらからは仕掛けようがない。

 だがダークネスの目的が世界を闇で覆うことであれば、これまでのように向こうから必ず仕掛けて来るはずだ。

 それを迎え撃つことは出来る。

 結局のところ、今の蛍たちに出来ることはと言えば、向かってきたダークネスを退治すること以外にないのだ。

 

「うっうん、ソルダークをたおして、ぜつぼうのやみがひろがるのをくいとめなきゃ。」

 

 今はまだ、後手に回ることしか出来ない。

 それでもダークネスに襲われた人たちを助ける為に、蛍は戦うことを決意したのだ。

 

「ただし、これだけは守りなさい!」

 

 すると、チェリーが突然声を荒げ、険しい表情で蛍を睨み付けてきた。

 

「絶対に無茶な戦いはしないこと!特に蛍!」

 

「はっ、はい!」

 

 チェリーの剣幕に蛍はつい萎縮してしまう。

 

「前にも言ったけど、1人でダークネスに戦うなんて無茶、もう絶対にやっちゃダメだからね!」

 

 どうやらチェリーは、まだ蛍が1人で戦ったことを根に持っているようだ。

 一度ならず二度も1人で戦おうとした挙句、手も足も出ずに打ちのめされたのだから、チェリーも気が気でならないのだろう。

 蛍はチェリーに2度も同じ心配をさせてしまったことを反省する。

 

「安心しい、チェリー。もう蛍を1人で戦わせるなんてことはしない。

 ウチはもう絶対に迷わんから。」

 

「そうよ。これからは私も一緒に戦うのだから。蛍ちゃんの事も、私が必ず守るわ。」

 

「だから蛍。もう無茶はしなくていいからね。」

 

「そうさせない為に、私たちがいるんだから。」

 

 要と雛子は共に強い決心を語る。2人とも蛍のことを大切に思ってくれている。

 それはとても嬉しいことだが、同時に蛍は1の懸念を抱いていた。

 要ことキュアスパークは、行動隊長のサブナックとさえ渡り合えるパワーと、何者にも捉えることのできないスピードを兼ね備えたプリキュアだ。

 個人の戦闘力ならば、3人の中で最も優れているだろう。

 雛子ことキュアプリズムは、あらゆる攻撃を遮断する強固な盾と、どんな傷でも瞬時に治療する癒しの術を扱うプリキュアだ。

 そして2人はコンビネーションも抜群だ。

 お互いの性格を知り尽くしているからこそ、雛子は状況に応じた最適なバックアップを行い、元々強力だった要の攻撃性能は、限界以上にまで引き出される。

 2人さえいればダークネスと戦う上での戦力は十分なのだ。

 そのうえで行動隊長を2人も倒した実績を持つキュアブレイズの存在もある。

 だが自分はどうだろうか?未だにプリキュアの力、希望の光の扱い方を知らず、浄化技を自分の意思で放つことも出来ない。

 身体能力もキュアスパークは勿論、キュアプリズムにも遥かに劣っている。

 かといって、キュアプリズムのようなサポートに面した力も持っていない。

 もしかしなくても、自分はいなくても問題ないのではないだろうか?

 むしろいると、かえって2人の足を引っ張ってしまうのではないだろうか?

 

「・・・蛍?」

 

 すると、要が自分を呼ぶ声が聞こえた。

 

「なっなに?」

 

「いや、なんか不安げな表情してたから。」

 

 どうやら不安が顔に出ていたようだ。蛍は慌てて場を取り繕う。

 

「ううん、なんでもないよ。ふたりとも、ありがとう・・・。」

 

 だがその声は、自分でもわかるほどか細かった。

 自分を見る2人の心配そうな視線が胸に突き刺さる。

 

「それから、繰り返しお願いすることになるけど、プリキュアであることの正体は、誰にも知られては駄目よ。友達にも家族にも、勿論、ダークネスにもね。」

 

 そんな不安な空気を感じ取ったのか、チェリーがやや強引に話題を変えてきた。

 

「せやな。もしもダークネスに正体がバレたら、何してくるかわからんし。」

 

「ダークネスは目的の為なら手段を選ばない。

 あなた達の友達や家族を平気で巻き込みかねないから、みんな変身するときは周りに気を付けてね。」

 

 チェリーからの忠告を噛みしめる蛍たち。

 すると雛子が一つ間を置いてから、蛍と要に話しかけてきた。

 

「ねえ?1つ聞いてもいいかしら?」

 

「なに改まって?」

 

「蛍ちゃんと要は、どうしてプリキュアとして戦おうって思ったの?」

 

 突然の質問に蛍と要は顔を合わせるが、雛子の表情は真剣だった。

 

「初めて変身して戦った時からずっと考えてたの。

 これから先もあんな恐ろしい怪物たちと戦うことになるのだと思うと、私は一体何のためなら戦えるのだろうなって。

 でも、考えてもどこかモヤモヤして、でも中途半端な気持ちで戦っちゃいけないと思って。

 だから、あなた達の思いを聞かせて。

 蛍ちゃんと要は何のためにダークネスと戦う決意をしたの?」

 

 雛子の心髄な思いを受け止める蛍。

 ふと要を見ると、彼女もいつになく真剣な表情を浮かべていた。

 要も雛子の強い思いを受け止めたのだろう。

 蛍は雛子の思いに応えるために、自分の決意を伝える。

 

「わたしは、ダークネスにくるしめられてるひとたちを、みんなたすけたいから、だよ。」

 

 闇の牢獄に囚われた人々。フェアリーキングダムから逃れてきたチェリーたち。

 そして、今も1人で戦い続けるキュアブレイズ。全てが、蛍にとって助けたい人たちだ。

 

「ウチは、この街を守る為だよ。この街の人々、平和な生活、ウチがウチでいられる場所。

 それを奪われたくないって思うから戦える。」

 

 蛍も以前、要の決意を聞いたことがある。

 その決意は以前にも増して強まっているように見えた。

 雛子はそんな2人の思いを受け止め、逡巡し、

 

「・・・ありがとう。おかげで私の戦う決意を決められたわ。」

 

 そう宣言した。蛍と要は驚いた顔を見せる。この僅かな間で一体どんな決意をしたのだろうか?

 

「ずっとかかっていたモヤモヤが、やっとわかったの。

 プリキュアは、ダークネスと戦い、世界を覆う闇を照らす戦士。

 でも私には、蛍ちゃんや要みたいに知らない人たちの為に戦うことはできない。

 きっと、こんな私は、本来プリキュアになるべきではなかったんだわ。」

 

 そんなことない。蛍はそう言おうとしたが、雛子が先に言葉を述べてきた。

 

「でも、そんな私でも、私の知る人たちの為になら、戦える。」

 

「え?」

 

「私は、蛍ちゃんと要を守る為に戦うよ。

 皆を守るために戦うあなた達を、私は、私の全てを賭けて守って見せる。」

 

 強い意思が込められた言葉だった。

 決して大きな声を出したわけではないが、彼女の決意が込められた言葉は、部屋中に響き渡り反響したかのようだった。

 そして、その決意は蛍にとって嬉しいものだった。

 蛍は雛子の包み込んでくれるかのような優しさが大好きだった。

 その優しさが、プリキュアとなっても自分のことを守ってくれる。

 蛍にとってこれほど心強く、温かいものはない。

 

「ありがとう。ふじたさん。」

 

「雛子がそう言ってくれると、ウチらも安心して戦えるよ。」

 

「雛子、君は優しいな。その優しさがあるからこそ、君はプリキュアになれたのだろう。」

 

「あなたの力は守りの力。大切な人を守りたいって思いはきっと、

 あなたの力にも応えてくれるわ。」

 

「へへ~ん。やっぱり雛子は凄いのだ~。さすがレモンのパ~トナ~。」

 

 決意を固めた雛子に対して、それぞれが思い思いの言葉を伝える。

 雛子は少し恥ずかしそうに頬をかいた。

 

「うっし、これからはどんな時でも、3人チームで行動しような。」

 

「ええ、1人では無理なことでも、3人なら必ず乗り越えられる。」

 

 1人で無茶はせず、正体がバレないよう気を付け、常に3人チームで行動する。

 それぞれが戦う決意を胸に、プリキュアとして活動していく上での方針を定めていく。

 

「うまい具合に3つ揃ったな。プリキュア3か条ってやつ?」

 

 そして要が冗談交じりで3か条と名を付けた。

 

「プリキュア3か条。いいわねそれ。はい、じゃあ1人ずつ復唱して。」

 

「ひとつ、ひとりでむちゃなたたかいはしない。」

 

「2つ、プリキュアの正体は誰にも喋ったらあかん。」

 

「3つ、どんな時でもチームで行動。」

 

 最初の1か条は半ば蛍の為にあるようなものだが、こうしてプリキュア3か条が定められることになった。

 それは今回の作戦会議の成果の1つと言えるだろう。

 

「オッケー。3人とも、必ず守りなさいね。」

 

 チェリーがそう念を押すと、

 

 

 コンコン

 

 

 扉をノック音が聞こえた。3人の妖精は慌てて要の机の下に隠れる。

 

「は~い。」

 

 要が返事すると同時に、部屋のドアが開けられ、高校生くらいの男性が姿を見せた。

 身長はおよそ180cm。

 半袖のワイシャツにジーンズというラフな格好で、短く切られた髪の色は、要と同じオレンジ色だった。

 もしかしてこの人は・・・。

 

「お兄、どうしたん?」

 

 蛍の想像通り、要の兄のようだ。

 

「要、この前お前に貸したゲーム返し・・・おっ、雛子ちゃん来とったんか。」

 

「瞬さん。お邪魔してます。」

 

 瞬と呼ばれた要の兄は、雛子と親し気に挨拶を交わす。すると蛍に気が付き、

 こちらを向いてきた。

 

「んっ?新しい顔やな。」

 

「クラスメートの、一之瀬 蛍って言うの。」

 

「クラスメート?」

 

 瞬はクラスメートという言葉を聞いて一瞬驚いた表情を見せたが、

 特に深い意味はないのだろうと信じることにした。

 

「へ~可愛い子やん。ひょっとして雛子ちゃんが誘ったん?」

 

 するとなぜか雛子の名が呼ばれた。

 

「なっ、なんで私なんですか!?」

 

 その言葉を聞いた雛子が、慌てふためく。こんな雛子の姿を見るのは初めてだ。

 

「え?だって、どう見たって雛子ちゃんの好きそう・・・」

 

「わ~っ!!瞬さん!!それ以上言っちゃダメです!!!」

 

 どう見たって雛子ちゃんの・・・、の後の言葉が雛子の叫び声によってかき消される。

 それにしてもこの雛子の慌てぶりは一体何なのだろう。

 聞こえなかったが、瞬はそこまで雛子を狼狽させることを言ったのだろうか。

 

「蛍ちゃん!今の言葉絶対に気にしちゃダメだからね!!」

 

 今度はこちらを見て顔を真っ赤にしながら訴えてきた。

 今の言葉、とは一体どの言葉のことを指しているのかさっぱりわからない蛍であったが、とりあえず雛子にとっては蒸し返してほしくない話題のようなので、頷き忘れることにした。

 

「蛍ちゃんだっけ?オレは森久保 瞬。要の兄で高校3年。よろしゅうな。」

 

「えっえと・・・その・・・」

 

 瞬の自己紹介に答えようとするが、つい言葉に詰まってしまう。

 同性でさえ要と雛子を相手にようやく緊張せずに話せるようになったばかりだと言うのに、家族以外の異性で、しかも学年すら違う人となれば、蛍にとってそれはもはや、未知の生物と言っても過言ではない。

 

「お兄、この子人見知りが強いんよ。せやからあんまし怖がらせんといて。」

 

「っと、すまんすまん。いきなりこんな高校男子に声かけられちゃびっくりするわな。」

 

 特に悪びれた様子もなく、明るい調子で謝る瞬。

 

「蛍、バカ兄のことなんていちいち覚えんでええからな。

 あそこのポスターの隅に映ってる観客程度の存在やと思ってええよ?」

 

 要の指差す先を見ると、確かに隅の方に偶然観客席が映りこんでいたが、躍動感ある選手の動きをそのまま納めたかったのか、ポスターの隅はピントがブレており、映っている観客は顔はおろか性別すら判別できないものだった。

 

「せめてパス受けとるチームメイトにせや!」

 

 そんな要のあんまりな例えに大声で反論する瞬。

 だがそんな賑やかな森久保兄妹のやり取りは、蛍の緊張を和らぐには十分だった。

 ひょっとして要と瞬は、蛍が話しやすい雰囲気を作るために、あえて軽い調子で話してくれているのだろうか?

 そう思った蛍は、心の中で2人に感謝しながら、瞬に挨拶をする。

 

「いっいちのせ、ほたるです・・・。はるに、この街に引っ越してきました・・・。」

 

「おう、いつも要がお世話になってます。

 女っ気の欠片もないバカ妹の相手は疲れるやろけど、これからも仲良うしてってや。」

 

「バカ兄のくせしてエラそうにすんな。ほら、はよゲーム持ってどっかいき。」

 

「んじゃっ、2人ともごゆっくり~。」

 

 要からゲームソフトを受け取った瞬は、そのまま部屋を後にした。

 

「瞬さんの賑やかなところ、要にそっくりでしょ?」

 

 すると落ち着きを取り戻した雛子がそんなことを口にした。

 確かに性別の違いこそあれど、雰囲気は要にそっくりだった。

 それに口喧嘩のような漫才をしたりゲームを貸し合ったりするところ見ると、兄妹の仲の良さが伺える。

 

「お兄にそっくりなんて言われても、嬉しくないっての。」

 

 口を尖らせる要であったが、言葉にはそこまでの不快感は感じられなかった。

 単なる照れ隠しなのだろうが、それを口にすれば要の機嫌を損ねてしまいそう

 

「照れ隠ししちゃって。」

 

 ・・・どうして雛子は蛍が言わないでおこうと思ったことを、躊躇わず口に出来るのだろうか。

 

「こら~、余計なこと言わんの。」

 

 だが機嫌を損ねるかと思った要は、いつも通りの軽い口調で返すだけだった。

 もしかして相手の顔色を窺い過ぎなのだろうか、と蛍は自分自身に疑問を抱く。

 言葉を選ぶのに慎重になり過ぎている自分と、遠慮なく言葉を投げ合う2人。

 ひょっとして友達と、ただのクラスメートの差は、自分自身が作っているのかもしれない。

 遠慮なく言葉を言い合える2人の輪の中に早く入りたい。

 そう願う蛍は、今一度ここに来た目的を心の中で反芻するのだった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 モノクロの世界、サブナックとダンタリアが対談していた。

 

「貴様も無様に敗戦してきたというわけか。」

 

 開口一番、サブナックがダンタリアを侮蔑する。だがダンタリアは涼しい顔だ。

 

「4人目のプリキュアが現れるという不測の事態が起きたからね。

 今回の敗戦は次に勝つための布石さ。」

 

 4人目のプリキュア、キュアプリズム。

 本人の実力はそこまで警戒するものではないが、あの支援能力は厄介極まりない。戦力の中核を成すキュアスパークの力を高めてしまうからだ。

 

「つまらん言い訳だな。」

 

 サブナックはそんなダンタリアの言葉を一刀両断するが、ダンタリアは眉1つ動かさず反論する。

 

「では君ならば上手くやれたとでも?」

 

「言い訳をするなと言っている。敗北した理由など、貴様が弱い以外に必要ない。」

 

 売り言葉に買い言葉が続く2人だが、両者の間に火花が散っているわけでもなく、2人とも無表情で言葉を返しているだけだった。

 やがてサブナックは片手を鳴らし、寄りかかっていた壁から離れる。

 

「次は俺が行かせてもらう。」

 

「4人目のプリキュアに関する情報、聞くかい?」

 

「必要ない。この目で確かめれば済むだけの話だからな。」

 

 ダンタリアにとっては予想できていた答えだ。

 この脳まで筋肉で出来ているとしか思えないバカは、行動隊長にあるまじき非効率な行動を好む傾向がある。

 敵の情報を前もって知り得ておけば、それだけで戦いにおけるアドバンテージとなるというのに。

 だが拒否されたところで特に思うことはない。無様に敗北するのはサブナックなのだから。

 

「そうかい。せいぜい頑張るがいいさ。」

 

「ふん、言われるまでもないわ。」

 

 そんなやり取りを終えた2人だが、ダンタリアはしばし間を空けてから、再びサブナックに問いかけた。

 

「ところで、君はキュアシャインとは対峙したかい?」

 

「それがどうした?」

 

「彼女のこと、君はどう見る?」

 

 ダンタリアの問いかけに、サブナックは闇の中に視線を送り、珍しく困惑の色を見せた表情で答えた。

 

「・・・脆弱な戦士だ。ソルダークの相手すら出来ないほどのな。

 なぜあのような小娘がプリキュアなのか、不思議で仕方がないな。」

 

「僕も同じ意見だよ。あんな弱虫にリリスが敗北したなんて、未だに信じられないね。」

 

 さすがにこればかりは、サブナックと見解が一致したようだ。

 ダンタリアも彼に倣い、闇の中に視線を向けた。

 あの闇の先にいるリリスは、そのキュアシャインに重傷を負わされ、未だに戦線に復帰できずにいるのだ。

 彼女はキュアシャインが自分に傷を負わせたと語り、今もしきりにキュアシャインの名を呼び続けている。

 あの様子では、嘘をついているようには見えないし、何より嘘をつくメリットがない。

 だがダンタリアが対峙した時、キュアシャインから大きな力は感じられなかったのだ。

 恐らくサブナックも同様だろう。

 

「まっ、それでも油断はしないことだな。」

 

 それでも念を入れて警戒しておくに越したことはない。

 行動隊長の能力には、多少の個人差はあれど、総合的な部分では大きな差がない。

 リリスが敗北したということは即ち、サブナックも、そしてダンタリア自身も敗北する恐れがあるということだ。

 

「油断などあるものか。弱者であろうと強者であろうと全力で潰す。それだけだ。」

 

 どうやらこの脳筋には不要な心配だったようだ。

 ダンタリアはサブナックを見送った後、自身も闇へと姿をくらますのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。