第5話・プロローグ
ここは藤田家、雛子の私室。
部屋の面積の半分を占める大きな本棚に、隙間なく本が立ち並んだ如何にも文学少女の部屋とでも呼ぶべき場所で、ぬいぐるみに似た姿をした『3人』の妖精が顔を合わせていた。
1人は蛍のパートナーであるチェリー。1人は要のパートナーであるベリィ。
そしてもう1人は・・・。
「レモン・・・本当にレモンなのね。」
「わ~い、チェリーとベリィだ~。」
「レモン!心配したんだから!」
探し続けてきた仲間の中で最後まで行方が分からなかったレモンの姿を見たチェリーは、喜びの涙とともにレモンへと飛びつく。
ベリィも目を潤ませながらレモンの頭を優しく撫でる。
「も~苦しいよ~チェリー。」
言葉とは裏腹にレモンも笑顔を浮かべていた。そして僅かなだが涙ぐんでいる。
「1人でよく頑張ったな。偉いぞレモン。」
「へへ~ん、レモンは1人でも大丈夫だったのだ~。」
そう強がるレモンの声は、少し擦れていた。そんなレモンに雛子は優しく声をかける。
「良かったねレモンちゃん。お友達、見つかって。」
その言葉を受けたレモンは、涙を堪えきれなくなり、
「・・・うん!」
笑いながら涙を流すのだった。
故郷を逃れ、離ればなれになっていた妖精たちは、半年以上もの月日を経てついに再会することが出来たのだ。
「一先ずこれで、プリキュアも妖精も全員集合かな?」
隣にいる要が、蛍にしか聞こえないようにつぶやく。
「そうだね。」
蛍はこの場に集まった人たちを見渡す。
自分を始めプリキュアへと変身した3人の少女と、そのパートナーたる3人の妖精。だがここにいる人たちが全てではない。
フェアリーキングダム出身のプリキュア、キュアブレイズは最初に会った時以来、行方を眩ませており、そのパートナーであるアップルという名の妖精の姿はまだ見たことがないのだ。
それでも当初の目的であったプリキュアを4人見つけるというのは、ここでひと段落ついたと言っていいだろう。
それも、蛍のクラスメートである要と雛子が覚醒するという形で。
その事実に蛍の心は大きく動く。
キュアブレイズと合流するまではここにいる3人で協力して戦わなくてはならないのだ。
だが親友同士である2人と違って、自分だけが曖昧な距離にいる。
それではきっとダメだ。
もっと2人のことを良く知り理解しなければ、いざというときに連携が取れなくなる可能性がある。
何よりプリキュアとして共に戦うという使命を除いても、蛍は長年抱き続けた夢がついに手元まで来ているのを実感しているのだ。
あともう少しだけ勇気を出して手を伸ばせば、それはきっと届いてくれる。
(もりくぼさんと、ふじたさんと・・・ともだちになるんだ!)
蛍は勇気のおまじないを胸に、夢を叶えることを決断するのだった。