◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
美紀side
それからしばらく、私は沙耶ちゃんとお兄さんと一緒に、大覇星祭を回った。沙耶ちゃんと私、というか平莱小学校の子供達の両親は、普段学園都市の外で暮らしていて、私達は平莱の寮にて生活している。起床や就寝は寮監が、料理は食堂で一斉に取り、登校や下校も寮監が送り出してくれる。
つまり私達は両親と穏やかに生活している筈の年頃である筈なのに、その温かさを殆ど知らない。そのせいか、お兄さんと共に遊んでいるというこの状況と、お兄さんの持つ温かさが合わさって、まるでお父さんと遊んでいる様な気分になれた。やっぱり楽しい。
「そういえば、美紀ちゃん達競技は出なくていいのか?」
ふと、歩いているとお兄さんがそう聞いてきた。確かに、私達は平莱小学校の児童であるから、競技には出なくてはならないけど、今日はもう出場競技はない。恋人繋ぎの子供役としてボランティアをした児童は、その分出場する競技を減らされるから、沙耶ちゃんはともかく私は5日目まで出場する競技はない。
「はい、今日はもう出場競技は無いんです」
「別にアンタに話す義理は無いわ」
「沙耶ちゃん?」
「ぁんっ……!?」
お兄さんに私が言うと、沙耶ちゃんがまた失礼なことを言った。あれほど言い聞かせたのに、まだこんな口が聞けるなんて、沙耶ちゃんってば本当に反省してるのかな?
とりあえずお兄さんに見えないように沙耶ちゃんのパンツの中に仕掛けた『とある物体』を振動させて、黙らせる。学校の理科の授業で『ミニカー』を作った時に手に入れたモーターとか基盤とかを使って作った、振動するだけの物体だけど、先生に協力してもらって結果、ソーラー発電が出来る優れ物になった。
私の能力を使えば半永久的に使える、とかなんとか先生が言っていたけど、良く分からなかったなぁ。
ともかく、最近誤って沙耶ちゃんのパンツの中に入っちゃって、その際慌てて振動させちゃった時があった。その時、沙耶ちゃんが口を閉じて黙ったので、それから良く使わせて貰ってる。なんで黙るのかは知らないけど、多分振動に吃驚してるんだと思う。
「言うことがあるよね?」
「わ、私もっ……んっ……きょ、今日はひゃっ……出場する競技はない……で、すっ……んんっ……!」
「はい、良く出来ました」
「っはぁ……はぁ……もう……なんなのよ」
とりあえずオシオキが終わったので、お兄さんの方を向き直ると、お兄さんは少し苦笑気味な反応をしていた。
「それならいいけど……で、ここはなんの店だ?」
「あ、はい。これはですね、学校を公開していない常盤台中学が代理で出展してる露店ですね。高位能力者を数多く育成している常盤台の能力と、周知のお嬢様性を生かした、お洒落な喫茶店ですよ! 少しお金が高いですが、お嬢様の生活を少しでも味わえるそうです!」
「へぇ……常盤台の、ねー」
お兄さんはじとっとした眼で、胡散臭そうに目の前にある常盤台出展の喫茶店を眺めていた。ああそうか、そういえば操祈お姉さんも常盤台だったなぁ……だから常盤台の内面にも少しは通じてるのかも、私達の知ってる完璧なお嬢様像の裏には何かあったりするのかもしれない。
「ま、いいか。入ろう」
「はい!」
「むぅ……お嬢様なんて、ばっかみたい」
沙耶ちゃんが何か言ってるけど、聞こえない聞こえない。
◇ ◇ ◇
珱嗄side
やって来たのは、常盤台主催の喫茶店。というか、最近喫茶店の使用頻度多過ぎな気がする。まぁここは常盤台主催だからきっと高級なモノが出てくるんだろうな。というか、さっき店外メニューを見たけどコーヒー一杯1200円は行き過ぎじゃないかね? まぁ、レベル4の俺の口座にはそこそこお金が振り込まれているみたいだし、お金には困らないけどさ。
とはいえ、どうやら美紀ちゃんはお嬢様というものに一種の尊敬というか、アイドルに向ける様な憧れを持っているらしい。島風ちゃんは違うみたいだけど、一応興味はあるようだね。
「いらっしゃいませ、何名様でございますか?」
「3名でごぜーます」
「かしこまりました、こちらへどうぞ」
店の中は案外空いていた。店の外には多くのギャラリーがいたのに中にはいないのか、多分この店のメニューの値段が高いことが原因だろうな。学生が手を出すには少し気が引けるのだろう。
「ご注文は如何しましょう?」
「何が良い?」
「えーとえーと……それじゃあ私はこのチョコレートパフェでお願いします!」
「私はシーザーサラダで」
「随分対照的だな。何? 島風ちゃんはあれか、お菓子は嫌いなのか?」
「沙耶ちゃんはシーザーサラダが大好物なんですよ」
「珍しいな、シーザーサラダが大好物って」
俺はとりあえず紅茶を頼んだ。高級な割には庶民的なメニューを準備してるな、ここ。
ま、しばらくはここで休憩するとしますか。