◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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御坂美琴は?

 翌日、御坂美琴は未だなんの情報も手に入らず、調査は難航していた。珱嗄達のチームに食蜂がいた事もあり、黒幕が食蜂ではない可能性の方が大きいので、他の黒幕の影がまったく掴めないのだ。

 そうしている内に、一時的にタッグを組んだ婚后光子は敵に満身創痍になるまで半殺しにされ、白井黒子や初春飾利、佐天涙子らの記憶もおそらく食蜂によって消された。

 頼れるものは誰もおらず、情報も少ないこの状況は、彼女にとってどこまでも最悪だった。誰が婚后光子を襲ったのか、何故珱嗄達の仲間だった筈の食蜂が白井黒子達の御坂美琴に関する記憶を消したのか、分からない事だらけだ。

 

「どうすればいいの……!」

 

 既に御坂妹は襲撃され、珱嗄達の手によって保護されている。彼女自身、その居所は分からない。元々、食蜂も一方通行も珱嗄も、彼女にとっては信用ならない相手だ。食蜂とは反りが合わないし、一方通行は実験関係で許せない相手だし、珱嗄に至っては暗部と来たものだ。いざという時放置している友人も奪われ、護ると決めた妹は病に伏せられ、迷った末に頼った友人は半殺しにされた。怒りも感じているが、それ以上に自分自身の無力さが悔しかった。

 

 学園都市の闇。それは何も彼女が知っているあの実験が最も深い闇というわけではない。あんなもの、どす黒い闇の極表面的な部分でしかないのだ。それに触れて、闇を知った気でいる御坂美琴は、やはり幸福な頭をしているのだろう

 故に、あの実験を踏まえてのこの事件に翻弄される。今度は本当に暗部が関わってきているのだ。

 

「……そもそも、あの子が襲撃された理由ってなんなの……?」

 

 御坂美琴は考える。そして、事態は動きだした。

 

 

 

「チョチョチョーっといいかな? お姉さん」

 

 

 

 あからさまに怪しいフード付きの衣をまとった少女が現れた。そして、その手にはナイフを、その傍らには御坂美琴の友人であり、仲間である、正義感溢れる少女―――初春飾利が気を失った状態でそこにいた。

 

「初春さん!?」

「聞きたいことがあるの。話、付き合ってくれるよねっ?」

 

 圧倒的に不利な状況とまではいかないが、やはり人質がいる時点で御坂美琴は不利だった。原作の様に白井黒子達が助けてくれる訳もない。彼女達はまだ御坂美琴の事を思い出していないし、なにより病院に運ばれた婚后光子の様子を見に行っている。期待は出来ない。

 

「……初春さん一人だけなら、アンタを倒して助ける事は出来るわよ……」

「アハハ、マァそうだね。でもね、保険を掛けておくことに越したことは無いよね?」

 

 少女がナイフで指した方向、そこにはもう一人フードを纏った少女がいた。そして、その傍らには―――もう一人の人質、御坂美琴の母である御坂美鈴が気絶していた。

 

「ママ!?」

「流石の御坂美琴でも、二人いっぺんには助けられないでしょ?」

「くっ……!」

 

 絶体絶命。どちらかを助ければ、どちらかが死ぬ。このままでは何の尻尾も掴めずに終わってしまうと思った。

 

「さぁて、それじゃあ大人しく―――」

 

 

 

 刹那だった。

 

 

 

 御坂美琴の上空を一つの影が通る。彼女はまず、鳥か何かだろうと気にも留めなかった。そしてそれは相手の少女も同じこと。だが、それは全くの思い違いだ。

 彼女達の頭上を飛び越え、御坂美琴の母親の場所まで影は移動し―――――その前に影を押し潰す様に何かが着地する。割れる地面、超重量級の物体が落ちて来たかのような衝撃が地面を走った。

 

 砂煙が舞う。母親の近くにいたフードの少女も、母親も、その物体も、その砂煙に隠れた。そしてその中で、唯一着地したものだけが精確に動いていた。白く色素の薄い腕がフードの少女を掴んだ。

 

「!?」

「悪ィな―――邪魔だから死ンでろ」

 

 そんな言葉と共に、フードの中にいた少女が内側から弾け跳んだ。いや、少女というよりは金属の様な色の何かが弾け跳んだ。だが、それを気にせず白い腕は少女だった物を放し、晴れていく砂煙の中で立ち上がった。

 

「よォ第三位。ちょっとばかし助けに来たぞォ」

 

 御坂美琴の窮地に現れたのは、一方通行。

 

 

 

 学園都市が誇る、七人しかいない最強のレベル5の頂点。第一位『一方通行(アクセラレータ)』だった。

 

 

 


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