◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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一方通行の推理

 さて、その頃一方通行はというと、珱嗄達とは別の方向でミサカ妹が襲撃された件について調べていた。珱嗄達との会話から、調べるべきなのは『実験を行っていた研究者』という事は分かっている。彼が情報源として選んだのは当時実験に協力していた研究者……芳川桔梗だ。

 あの実験以来、彼は打ち止めの件を経て、芳川の連絡先を手に入れていた。故に、簡単に辿り着くことが出来た。珱嗄達が辿り着いた結論であり、元凶、

 

 

 木原幻生に

 

 

 芳川が持てる限りの情報を語ってくれた。実験の提唱者が木原幻生であること、木原幻生の人となり、彼がどのような目的の下、どのようなことをしてきたのかを。

 

「……芳川の言ってたことを考慮すっと……やっぱ木原幻生ってクソジジイが怪しいなァ」

 

 一方通行は、とりあえず黒幕を木原幻生と仮定して考えてみることにした。

 もしも彼が黒幕だとするのなら、その目的は『SYSTEMの達成』……一番思い当たる事項としては『レベル6を造ること』だろう。だが、一度失敗した一方通行を再利用しようとは思っていない筈だ。一方通行はあの実験以降、バックにあった研究施設とのつながりが切れている。それなりに暗部に顔見知りはいるが、打ち止めが珱嗄と共にある限り一方通行をどうこう出来るとは思えないからだ。

 まして、今回襲われたのは御坂妹。つまりは御坂美琴のクローンだ。もしも黒幕の目的がクローンではなく、御坂美琴にあったとして、黒幕がレベル6を造ろうとしていると仮定すると、その素体は御坂美琴ということになる。

 具体的な方法は一方通行の頭脳を持ってしても想像は付かないが、この襲撃が御坂美琴をレベル6にする為にクローンを攫ったものだと考えれば、彼女達が抱えている他人にはないもので、一番利用されそうなものは『ミサカネットワーク』しかない。少なくとも、最悪散り散りになっている1万近くのクローン全てを巻き込む事態となるだろう。

 

 だが、そうなるとクローンである御坂妹を回収していない所が気になった。ミサカネットワークを利用するのだとしても、御坂美琴をどうこうするにしても、自分達が襲撃した存在を放置しておくなど愚の骨頂。

 状態を見た所、御坂妹は薬によって無力化されていた。調べれば証拠にすらなってしまう。どうしてそのようなことになったのか考えてみればおかしな話だ。

 

「襲撃した奴らにとって予想外の出来事が起こったってトコかァ? 例えば……俺らがクローンを保護しちまったこと……とか」

 

 御坂妹が敵によって回収される前に、珱嗄達がやってきてしまった。と考えるのなら、回収されていない理由としては理に適っている。だとすれば、その組織は今も御坂美琴かそのクローンを回収しようと動いているかもしれない。

 まぁ他の可能性が無い訳ではないが、最も最悪かつ高い可能性のケースを考えれば、この推理は一番妥当なところだろう。

 

「さて、そうなるとミサカネットワークに干渉する手段がある筈……考えられるのは高位の精神感応系能力か、クソガキの時と同様の専用の機材を使った……ウイルスかァ?」

 

 一方通行は考える。今のままではまだ情報が少なすぎると。

 現段階で、何かしらの大きな被害が起きたというわけではない。御坂妹だって、それなりの治療を施せば元の状態に戻すことは可能だろう。敵を手繰り寄せるには襲撃と敵組織の繋がりが細すぎる。

 

「……まァ木原幻生の情報が手に入っただけマシとするか……別段何かでけェことが起こった訳でもねェし……一旦珱嗄の奴と情報を共有するか」

 

 一方通行はそう呟いて、珱嗄に電話を掛けた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 珱嗄達と一方通行はその後、一つのファミレスのテーブル席に集合していた。この場にいるのは、珱嗄、打ち止め、一方通行、食蜂の4人だ。

 そして、各々手に入れた情報を共有していた。

 

「やっぱり、木原幻生が怪しいな」

「少なくとも、木原幻生が裏で手を引いてる組織が第三位かそのクローンを狙ってンのは明らかだなァ……俺としては、ミサカネットワークが狙いだと思う」

「しいたけ、ミニミサカを通して精神防壁的なモノを張れないか?」

「出来るわよぉ」

 

 食蜂は珱嗄に言われて張り切って能力を発動した。打ち止めに向かってリモコンを向けて、ボタンを押す。すると、ミサカネットワークを通して全てのミサカの精神にウイルス対策の能力防壁が張られた。とりあえずは大丈夫だろうと結論付ける。

 

「でも、この防壁だって『エクステリア』を使われたら簡単に突破されるわぁ……木原の目的がミサカネットワークだとすれば、確実にエクステリアを狙ってくる筈よぉ」

「でも場所は分かってんだろ?」

「ええ、あれは持ち出せる様な代物でもないし、利用するとしてもエクステリアに登録するには数日掛かるもの……幾ら木原が周到な奴だとしても……それは変えられないわぁ」

 

 食蜂は大丈夫だろうと思い、そう言ったが、一方通行はミサカネットワークの性質を考えて、その登録作業を効率的にする方法を思い付いた。

 自身の脳波をエクステリアという大きな脳に登録するのに時間が掛かるというのなら、その逆はどうだろうか? ミサカネットワークの様に、全ての脳波を同じものにしてしまえば……つまり、エクステリアの脳波を木原幻生と同じものに調律出来れば、登録など必要ないのではないだろうか?

 

「エクステリアの脳波を木原のものに調律しちまえば登録なンて必要ねェンじゃねェか?」

「なっ……!? まさか……でも、確かに……」

 

 此処に来て不味い事態が発覚した。そんな調律をされたらエクステリアは食蜂を除いて木原幻生しか使えなくなる。が、木原幻生ならばやるだろう。目的の為なら手段を選ばない人間なのだから。

 

「んー……つまり何? その木原幻生とかいうおじいちゃんをぶっ殺せば良いの?」

「考え方がバイオレンスだよ!? ってミサカはミサカは突っ込んでみたり!」

「それが駄目ならエクステリア自体を破壊してしまえば良い」

「……アレは私の能力を強化するブースター的な使い方も出来るのよぉ……だからエクステリアの破壊は最後の手段にしてほしいわねぇ」

 

 食蜂たちは、そこに来て行き詰まった。正直、今日この時何か出来るというわけではない。木原が現れるのは明日なのだから。

 

「ま、とりあえずは明日俺としいたけでその木原の訪れる施設に行こう。アセロラはミニミサカ連れてみこっちゃんの方を見張っててくれ」

「あァ……そンじゃまァ……解散と行きますか」

「ん、そうしよう。明日の昼頃ここに集合な」

 

 珱嗄達は取り敢えずの方針を決めて、解散となった。

 

 


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