◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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7月18日改稿。ISについての文章を削除しました。


妹達編
好み満載なスタート


「やぁ神様」

「ん、珱嗄。おかえり」

「問題児の世界、中々楽しかったよ」

「それは良かった」

 

 珱嗄は基本、死ねば神様の下へ戻ってくる。そして、次の世界へと転生するのだ。

 

「また転生するんだよね?」

「うん。この際だからとことん楽しんでやろうと思って」

「なるほど……ま、それじゃ問題児世界の力は没収ね」

 

 神様はそう言って珱嗄の胸に手を当て、ギフトを没収した。そして、神様は少し思わせぶりな表情を浮かべて珱嗄に言う。

 

「次の世界では俺が与えた力の他に、もう一つ別の力が手に入るかもね」

「どういうことだ? 行く世界はランダムだろ?」

「俺がくじで決めてるからね。俺は行く世界を知ってるのさ」

「初めて知ったよそのルール」

 

 珱嗄と神様はとても気が合う性格をしている。

 

「それじゃ、行ってくるよ」

「もう行くのか? 全く、少し位ゆっくりしてけばいいものを」

「神様の話し相手より、次の世界を楽しんだ方が面白い」

「言ってくれるじゃないか。それじゃ今度は少し与える力をあまり強いものにしないでおくよ」

「お、神様も分かってるじゃないか。その方が、面白い」

 

 珱嗄と神様は鏡映しの様に、ゆらりと笑った。そして、珱嗄はひらひらと手を振って、真っ白な空間から、その姿を消したのだった。

 

「次の世界はとある魔術の世界か……念能力、魔法、スキル、ギフトと来て……お次は超能力と来たか。全く、珱嗄の適応力には驚かされるねぇ……さて、与える力はどうしようかな? 攻撃的な能力は避けておこう………ああ、これがいい。なんの攻撃力も持たず、ほとんど防御力も持たない、クソみたいな超能力……ああ、この場合は人工的に開発される超能力じゃなくて……天然モノの、原石……かな?」

 

 

 どちらにせよ楽しみだ。

 

 神様はそう言って、楽しげに笑った。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 珱嗄が転生後にまず確認したのは、自身の身に宿る力の確認だった。身体能力はこれまで通り、使用できる能力はなんとなく、使い方と効果位は理解出来た。服装は着物では無く、青黒いタンクトップの上に黒いパーカーを着て、下は七分丈のズボンで靴はサンダルだった。とりあえずパーカーの袖を適当に捲って肘程まで腕を露出した。気温が暖かい事から恐らく季節は夏頃なのだろう。

 そして次に珱嗄は周囲の確認をする。場所はどうやら路地裏で、時刻は既に夜も更ける頃合いだった。ふむ、と短く頷いて、最後に珱嗄を挟む様に現れた二人の人物に視線を向けた。

 

「で、お前ら誰?」

 

 珱嗄の視線の先で、ポケットに手を突っ込みながらめんどくさそうに視線を送ってくる白髪の少年。赤い瞳がぎらりと生温い殺気を向けてくる。そして、対面には軍用ゴーグルを装着し、無骨な銃を構えて満身創痍な茶髪の少女が息を切らして立っていた。どうやら珱嗄はこの二人の戦闘の合間に転生してきたらしい。とはいえ、珱嗄がパーカーの袖をまくった辺りで現れたから、転生時の姿は見られていないのだろう。

 

「はァ……ったくなンなンですかァ? 折角人がノって来た所に茶を濁す様な登場しやがってよォ」

「子供が随分と吠えるじゃないか。ところでその話し方疲れない?」

「うるせェ、こちとら生まれつきだっつゥの。ま、とにかく……目撃者は始末しろってのが定番だし、とりあえず死ねよ、オマエ」

 

 白髪の少年は呆然とする茶髪の少女を無視して珱嗄に突っ込んできた。その両手を広げて、一歩で珱嗄との間にあった5,6m程の距離を詰める。地面を軽く蹴っただけでありえない速度だった。しかも、跳躍の様に放射線を描く一歩ではなく、まさしく直進する弾丸の様な一歩。珱嗄であっても、その様な動きをするのは軽く蹴った程度では無理だ。前に蹴りだせば出来ないわけではないが、それほど白髪の少年の動きは物理法則を無視していた。

 

「へぇ……」

 

 が、所詮弾丸より劣る程度の速度。今まで亜光速で動く生徒会長や、第三宇宙速度で動く快楽主義者なんかを相手してきた珱嗄だ。その動きは随分と鈍く見えた。

 

「とりあえず、俺はお前とあの女の子の過激なプレイを邪魔するつもりは一切無い訳で……面倒だからそこ通してね」

「んなっ………!?」

 

 珱嗄は白髪の少年の腕を『掴み』、一瞬で投げ飛ばした。そして、彼が呆然としている間にゆらゆらと歩いて去って行ったのだった。

 

「なンだ……アイツ……俺の『反射』が効かなかった……?」

 

 白髪の少年はそう言って、暗闇に姿が見えなくなった珱嗄の去った方向を見続ける。だが、そこに、茶髪の少女が隙アリとばかりに引き金を引いて打った。背後を捉える弾丸は、少年の後頭部にぶつかり――――

 

 

 

 ――――少女の胸を撃ち貫いた。

 

 

 

「あァ? ワリィな、いたのか。オマエ」

 

 白髪の少年は無傷。少女はそんな少年の言葉を最後まで聞きとる事が出来ずに、その命を落とした。

 

 

 少女の名前は―――――『ミサカ9983号』

 

 

 とある少女からクローン技術を用いて作りだされた、2万もの個体の内の……一人だった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 珱嗄は白髪の少年を投げ飛ばした時、能力を使っていた。神様に与えられた能力。珱嗄の持つこの能力は、人工的に開発された能力では無く、神から与えられた天然モノで、この世界ではそんな能力者の事を『原石』と呼ぶ。また逆に、人工的に薬物投与や電極なんかで創り出された能力者を『超能力者』と呼ぶのだ。珱嗄は前者、原石だ。

 

「成程……こういう力か。ふむ、限界時間は……今の所5秒って所かな?」

 

 珱嗄は右手を握ったり開いたりと繰り返しつつ、そう呟く。とはいえ、今は金はあっても住居はない状況。一応ポケットに財布と中身の金があったので、生活には困らないが、住処は必要だろう。

 

「どうしたものかな………一応カードとパスワードのメモはあったから俺の口座はあるんだろうけど……住居はなぁ」

 

 珱嗄はとりあえず、ご飯を食べる事にした。どうやら神様は弱い能力の他に、珱嗄の身体を少し弄ったようだ。これまでは生理的欲求が必要無かったのだが、今では食事や睡眠が必要な身体になっているらしい。珱嗄は久しぶりに感じる空腹感に、そう確信していた。

 外食なので、適当なファミレスに入る珱嗄。一人なのが少し寂しいが、早めに座れるだろうとポジティブに行く事にした。だが、何故か夜中なのに席は満席。柄の悪い不良っぽい輩が大量に居て、席を占領していた。

 

「………うわ、めんどくせ」

「あの、お客様。お一人様ですか?」

「あーはい、そうでーす」

「相席でもよろしいでしょうか?」

 

 相席。見ず知らずの他人の座っている所に座って気不味い雰囲気の中食事をする行為。この場合はこの不良陣の中に入るのかと珱嗄は少し思案し、まぁいいかと頷いた。

 

「それでは此方へどうぞ」

「あいよー……なるべく怖くなさそうな所にしてね」

「あはは……大丈夫ですよ。女性の方ばかりだったので」

 

 店員がそう言って珱嗄を連れて行ったのは、ファミレスの端。4人の女子がいる席だった。

 

「相席よろしいでしょうか?」

「え? んー、まぁいいか……ええいいですよ」

 

 店員が話し掛けると、ウェーブの掛かった茶髪の長髪の女性が答えた。見れば、中々の美人でスタイルも見た感じ良かった。珱嗄はこれまで見てきた女性陣の容姿の順位を脳内で作って、彼女は上の下辺りに食い込むかなと感想を抱いた。

 

「よろしくー」

「ええ、よろしくね」

 

 珱嗄はガタッと椅子を持って来て所謂お誕生日席に座った。そしてついでとばかりに自身を連れてきた店員に注文する。

 

「えーと、ここからここまで全部持って来て下さい」

「え」

「嘘でーす。とりあえずこのオムライス下さい。あとDrink bar(ドリンクバー)

「あはは……roger(ラジャー)、です」

 

 無駄にノリの良い店員だった。

 

「何というか……超フレンドリーな性格してますね。貴方」

 

 店員が去った後、橙色のフード付きジャケットを着た小柄な少女が珱嗄にそう言った。珱嗄はその少女に向かって若干苦笑する。

 

「初対面で年上の男に気軽に話しかけられるお嬢ちゃんも中々フレンドリーだと思うけど?」

「超嫌な揚げ足の取り方しますね……」

「まぁいいじゃないか。自己紹介しておこう、俺の名前は泉ヶ仙珱嗄だ。よろしく」

「……ま、名前位なら良いか……私は麦野沈利よ。よろしく」

 

 茶髪の長髪の女性、麦野沈利はそう言って自己紹介する。そして、他の三人も続く様に自己紹介をした。まず、橙色のフード付きジャケットを着た小柄な少女が言う。

 

「私の名前は絹旗最愛です。超よろしくしてあげなくもないですよ」

「よろしくもあい……最愛ちゃん」

「………まぁ超見逃してあげます」

 

 次に、金髪でベレー帽をかぶった元気そうな少女

 

「私はフレンダっていうの。よろしくね」

「め、メアリー……だと……!?」

 

 珱嗄は彼女の容姿がかつて救った絵画の世界の少女、メアリーに似ていたことから少し驚愕した。金髪で、目の色も一緒だったので、一瞬成長したメアリーかと思った位だ。だが、良く見ると違ったので普通に挨拶した。

 

「よろしく」

「結局、メアリーって誰なわけよ?」

「気にしなくて良いよ」

 

 そう言う珱嗄に首を傾げるフレンダだが、割り込む様に黒髪を肩ほどまで伸ばしてジャージを着た少女が自己紹介した。

 

「………滝壺理后、よろしく」

「眠そうだね。よろしく」

 

 少女はそう言うと、頭をテーブルに突っ伏して寝の体勢に入ったのだった。こうして自己紹介を終えた珱嗄は四人の前で空になっているコップを見て少し気を聞かせる事にした。

 

「何か汲んで来よう。何が良い?」

「あ、悪いわね。それじゃ私はアイスティー」

「私は超オレンジジュースで」

「私メロンソーダ!」

「……なにか適当に」

 

 珱嗄は4人のコップを持ってドリンクバーの前に歩いていく。そして、今日の寝床は何処にしようか考えるのだった。

 

 

 


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