日本帝国 彼の地にて斯く戦えり   作:神倉棐

6 / 16
【Ⅳ】大陸発見

〈5〉

 

1週間後、執務室には漸く様になってきた内政作業(判子押し)をする俺とそれを補佐している深雪補佐官、そして報告に来た千冬補佐官の3人が揃っていた。勿論その報告とは1週間前に出航していた潜水艦隊からもたらされた『大陸発見』の急報についてである。

 

「『大陸が見つかった』ねぇ……」

「はい、西方に向け進行していた西方調査艦隊旗艦伊-401からの情報です。更に艦載機を持ってして上空調査も試み大陸沿岸に幾つか集落と規模は小さいですが港と軍船らしき船を発見したとの事です」

 

千冬補佐官の報告を聞きながら俺は考える。

 

「動かせる艦は?」

「入渠が完了もしくは近日完了します水上艦の内戦艦では『長門』『金剛』『榛名』、空母では『大鳳』『天城』『葛城』、重巡洋艦では『伊吹』『鈴谷』、軽巡洋艦では『夕張』『鬼怒』『北上』『大井』『木曽』『天龍』『龍田』『香取』『鹿島』、駆逐艦では『菫』『雪風』『島風』『陽炎』『不知火』『黒潮』『初風』『磯風』『浜風』『夕立』『江風』『雷』『電』『Z35』の計31隻です」

「やっぱり駆逐艦が少ないな……」

「はい、駆逐艦は先の戦争で配備艦の約66%が大破もしくは沈没していますし損傷率は98%を超えています。最優先で修復中ですが戦艦や空母などの超大型艦より被害が大きく時間が更に掛かるようです」

 

現在動かせる戦艦や空母達を頭に思い浮かべベストな編成を考える。

 

「なら……編成は金剛を旗艦とし空母2、重巡洋艦2、軽巡洋艦5、駆逐艦10、揚陸艦2、輸送艦3で編成。できるか?」

「すぐに、3日で完了させます」

「頼んだ。他の船は入渠が完了次第臨時艦隊を編成、国土防衛の哨戒任務につけろ」

「了解、失礼します」

 

俺の指示に千冬補佐官は力強く頷く。そのまま執務室を後にしそのあしで軍務省に向かって行った。

俺は一度延々と判子を押し続ける作業の手を止め溜め息を吐く。やっぱり書類めっちゃ多い……厚さにして残り5㎝位、しかしこれでも事前に深雪補佐官が俺が判子を押さ(決済し)ないといけないのと押さ()なくても良いやつとを仕分けしその上大半は彼女が片付けてくれているのだ。本当に深雪補佐官には頭が下がる、普通こういうのは偉い俺がやるべきなのでは?情けない……

 

「はあ……」

「どうしました陛下?」

「あ、いや、なんでもないですよ深雪補佐官」

「……少し休憩にしましょう。陛下もひたすら判子を押し続けていては気が滅入るでしょう」

「面目無い……深雪補佐官には迷惑ばかりを……」

「そんな事ありませんよ、陛下は陛下がせねばならない事は全てこなしていますし私はしたくてしているだけですから」

「しかし……」

 

うう……、この優しさが辛い。いや嬉しいんだよ?嬉しいんだけどさ同時に俺が情けなさ過ぎて辛いんだよなぁ……。

 

なんでやっぱりこんな子アッチに居なかったんだろう……いたら絶対告白してるのに」

「…………こほん、と、とにかくお茶にしましょうか」

 

深雪補佐官はガタンと椅子を勢い良く引いて立ち上がり早足で棚に向かう、ティーセットとポットを持って来た彼女の顔は僅かだかほんのりと赤かった。もしや風邪か?それなら至急休ませねば、さもなけれ俺が死ぬ。書類仕事の量で所為で、

 

「あ、陛下、私は風邪とかひいてないので大丈夫ですよ?」

 

何故分かったし

 

「それは……私と陛下の仲ですし」

 

そんなものだろうか?

 

「そんなものです。それに陛下はこう言った時は顔に出やすいですから」

「本気で?」

「本気です」

 

深雪補佐官の驚きのカミングアウトに文字通り驚きつつも感心する。よくこんな短時間(1週間)でそこまで把握したものだ……流石情報のスペシャリスト、『さすおに』じゃなくて『さすみゆ』と言った所だろうか?

そんな事を考えているといつの間にかお茶の準備ができたらしい、湯気立つ琥珀色の紅茶に満たされたカップが差し出された。

 

「ううん………この渋さと香りからすると今日は……ダージリンですか?」

「正解です。やはり陛下は凄いですね、私より淹れるのが上手いですし」

「妹が紅茶にうるさくてね……、付き合ってたらいつの間にかこうなってたんだよ。おかげでコーヒーはインスタントしか入れられないし」

 

息抜きの遊びとして紅茶当てをしつつ俺は紅茶を飲む。うん、美味しい。やっぱアッチで深雪補佐官がいたら俺絶対に告白してたわ。

 

「そう言えば例の『アレ』、どうなりましたか?」

「ああ、『織音会(しおんかい)』の事ですね。現在は2人程です、今後捜索は続けますが本当にいるとは思いませんでした」

「俺もだよ……まさか本当に『転移者』送り込んでくるとは思わなかった。しかもこんな始まったばっかり(序盤)で」

 

俺と深雪補佐官が話している『アレ』とはあの(駄)神が放り込むとか抜かしていた『転生者』とか『転移者』を集めた寄り合いみたいな会の事だ。俺みたいに(駄神)神から特典を貰ってこちら側にきた奴らは報告にも上がってきてはいるが基本チートである。まあこれについてはおいおい詳しく話そう、これだけで多分1話書けるからな。

……それにしても深雪補佐官マジで優秀過ぎません?頼んでからまだ1週間だよ?極東帝国(日本)って狭いようで案外広いよね?それを1週間で2人も見つけ出したんでしょ?情報網とか凄すぎね?

 

「私は陛下の補佐官ですから」

「あれ?って事はまた顔に出てた?」

「いいえ」

「え?じゃあなんで?」

「私、エスパーですから」

「…………」

 

……あり得そうで否定できねぇ。

 

なんだかんだで少しどころではない執務室での休憩時間だった。

 

 

♦︎ー♢-♦︎-♢ー♦︎

 

 

上陸派遣艦隊編成

 

【旗艦】戦艦 金剛

空母 天城、葛城

重巡 伊吹、鈴谷

軽巡 夕張、香取、鹿島、天龍、龍田

駆逐 菫、雪風、島風、陽炎、不知火、黒潮、磯風、浜風、雷、電

揚陸 秋津、冬津

補給 間宮、伊良湖、秋津洲

計.24隻

 

 

西方海域調査艦隊編成(現在大陸内部偵察中)

 

【旗艦】潜水空母 伊-401

潜水空母 伊-501、伊-502

潜水艦 呂-200

計.4隻

 

 

 




織音会の元ネタは紺碧の艦隊の紺碧会からですね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。