日本帝国 彼の地にて斯く戦えり   作:神倉棐

4 / 16
【Ⅲ】方針決め

〈4〉

 

さて、救世主(メシア)たる秘書官2人。桐咲補佐官と神ヶ浜補佐官が来てくれたおかげで漸く俺の胃の危機は過ぎ去った。まあ、問題はまだ山積みであるのだが。

 

「ところで2人はどこまで現状を把握できているんだ?」

「私はこうなった経緯と私が担当している軍事に関してだけですね。神ヶ浜補佐官は?」

「私もそれくらいだな。強いて言うなら私がよく担当していた現在行動中の軍の指揮くらいだ。桐咲補佐官なら情報関連は私より多く把握しているだろう?」

 

初めから現状の説明をするのは大変なので先に2人がこうなった原因についてどこまで知っているのか確認する為にそう質問すると2人は経緯は理解していると答えた。良かった、正直俺自身もまともに説明できそうになかったので変な手間が省けて楽になる。

 

「それじゃあ2人は今この国がどうなっているか、簡単にだけど教えて欲しい」

「勿論です陛下、桐咲補佐官」

「はい、では現状をまとめるとですね。現在我が国は先の戦争の為海軍の艦隊、出撃した178隻の内50隻が大破、28隻が沈没し損害軽微等で現在艦隊として動かせるのは潜水艦のみです。

現在損傷している艦隊は横須賀、呉、佐世保、舞鶴の各軍港にて入渠、ドック入りしており小破や中波している物から順に少なくとも1週間前後で第一陣が終了します」

 

そう言って彼女はどこからか取り出した書類を俺に渡す。

 

「これは?」

「現在回収中の資材状況です。幸い領土北は樺太から南の与那国島まで全てが転移しているので、北樺太で産出される石油に関しては大規模な艦隊行動がない限り数年は持ちます。しかし他の鉄鋼や天然ゴム、希少金属についてはどうにも……」

「それはそうだよな……日本に地下資源殆ど無いもんな」

 

流石秘書官、ゲームしかした事が無いド素人の俺でも分かるように分かりやすく纏めてくれてある。確かに人工石油プラントも大量建造がされている為石油はまだ余裕があるが他に余裕がない、持って10ヶ月程度……と言ったところだろうか?

 

「なので私からは至急『潜水艦隊』による周辺海域の調査を進言します」

「潜水艦隊?」

「ここからは私が変わろう。現在我が国の海軍の艦隊が再建中であると言う話は先程しましたが、現在周辺海域に調査に出せる長距離を行動できる艦は、損害が軽微であり遠洋練習巡洋艦であった香取、鹿島を除けば燃費が良く脚が長い伊号-400型を中心とした潜水空母艦隊しか存在しません。付け加えるならば潜水空母は特殊攻撃機晴嵐を搭載している為、索敵にも丁度良いかと思われます」

 

深雪補佐官から千冬補佐官が説明をバトンタッチし先に準備していた伊号-400型のスペックが書かれた資料を俺に手渡す。

 

伊号-400型

 

3機の特殊攻撃機が搭載可能であり、史実第2次世界大戦中に就航した潜水艦の中で最大で通常動力潜水艦としては、2012年中国にて竣工した03型潜水艦である水上排水量3,797t、水中排水量6,628tに抜かれるまでは世界最大だった。理論的には、地球上を1周半航行可能という長大な航続距離を誇り、日本の内地から地球上のどこへでも任意に攻撃を行いそのまま日本へ帰投可能で、大柄な船体を持つが水中性能は良好、急速潜航に要する時間は僅か1分と当時規格外の性能を誇る。

確かにこれなら資材の節約になるだろうし同系艦に伊号-500型や伊号-600型も存在する為艦隊を組むのは可能だろう。

 

「それでいきましょう。東西南北の四方に往復可能な限り調査を行えばせめて一方だけでも発見できるでしょう」

「了解です。編成はこちらで決めても?」

「お願いするよ、千冬補佐官なら俺が決めるよりずっと良い結果になるだろうし」

「ありがとうございます、陛下」

 

そう言って彼女は嬉しそうに答える。めっちゃ美人じゃないですか……いや元々美人だけどもさ。せめて現状世界でもこんな美人な人が近くにいたら良かったのに……いやもうここも現実であったか。

 

「……陛下、私はどうすれば?」

「深雪補佐官は引き続き情報の収集とあと俺に内政とかを教えて下さい」

「私が、ですか?」

「はい、深雪補佐官は人に物を教えるのが得意そうですし頼りにしてますから」

「……はい、分かりました。お任せ下さい」

 

俺の申し出にきょとんとした後深雪補佐官は少し恥ずかしそうに目を伏せ頷く。いきなり褒められて驚いたのであろうか?それにしても美人である。いや、やっぱりなんで現実世界でこんな人居なかったんだよ……って何度も言うけどここももう現実だったわ……。

 

「とにかく深雪補佐官、千冬補佐官、至らないトップだけどこれからもよろしく頼む」

「「喜んでお伴します」」

 

俺がにわか仕込みではあるが形だけでも敬礼してみると彼女達はきっちりと敬礼で返してくれた。

 

さて、これで漸くまともに活動ができるようになったけどこれからどうしようか……陸が見つからなかったら完全に詰むんだけど……、あと転生者とか転移者探しだけどどうしよう。深雪補佐官に訳を話して手伝って貰うべきかな?

 

始まったばかりの俺の異世界ライフはまだまだ見通しの立たない不確実なものなのであった。

 




2人のモデルだけど分かる人には分かると思う……え?選んだ理由?私の好みですが何か?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。