それでは、どうぞ。
……これってもう連載になってない?
第4話:サボリとは! 己の淵より湧き出るものであり、生物古来の本能である!
「お~す」
「おはようなのじゃ」
「おはよー坂本」
朝のいつもの時間帯に登校すると、そこには同じクラスメートの秀吉と島田がいた。二人は何か話し合っていたようだ。
「月曜は相変わらず憂鬱だな」
「お主、今の教室の惨状を見ても余り動じないとは……」
「負けは負けだからな。次勝ちゃいいし」
「ウチはこんなの嫌よ」
秀吉と島田に言われて教室を見渡す。相変わらずボロい畳にひび割れた窓で、変わったところと言えば卓袱台がみかん箱になり、元々酷かった環境が余計に悪くなってしまった。
「これもそれもあそこで明久が召喚獣の召喚を失敗するからだ」
「それ以前から負けフラグは立っていたと思うのじゃが」
「ていうか、あれって本当に失敗だったの?」
あの騒動の後、「どうせAクラスが勝っていた」という学園長の勝手な判断でFクラスの敗北が決まった。だが、実際に戦っていないので設備のランクダウンは卓袱台だけで済んだ。それでもルールにより3ヶ月間、試召戦争はできなくなってしまったが。
「あの時、何が起こったのかよく分からなかったのじゃが……」
「俺もだ……明久に確認しようにも『雄二に構っている暇はない!』と言って、話も聞こうともしねぇ」
「アキにかぎって忙しいとかはないと思うけど……」
「おはようございます、皆さん」
明久のことについて話していると、そこに一人の少女が挨拶する。声がする方を向くと、そこにはピンク髪の少女、姫路瑞希がいた。どうやら今、登校してきたようだ。
「おはよー、瑞希」
「おっす、姫路」
「おはようなのじゃ」
「皆さん集まって、何を話していたんですか?」
「あぁ、明久(バカ)についてちょっとな」
「今、明久と書いてバカと読まんかったか?」
アイツのことをバカと言って何が悪いのだろうか?
俺は心底不思議の思い、秀吉を見る。秀吉は「お主という奴は……」とため息混じりに言って呆れていた。何故だ?
「明久はこの頃思い悩んでいたのじゃぞ? 少しは思いやってはどうじゃ?」
「無理だな。アイツが弟の教育を間違えるからあんなことになったんだ。むしろ責任を取って欲しいもんだ」
「いくら何でも言い過ぎじゃない? アキだってお兄さんとして頑張っていたわけだし……」
「その結果がアレだ。そもそも俺が煽るまでもなく、他の連中が騒いでいただけだからな」
「明久君、大丈夫でしょうか……」
明久のこと考えて不安げになる姫路と島田。秀吉も不安げな表情だ。俺からすれば、あの意味不明な状況について説明しろってことぐらいだ。
「……明久のことだから、どうせいつもの調子で来る」
「よぉ、ムッツリーニ。お前も明久を心配しているのか?」
「野郎のことなど心配しない」
「これ以上にない程に断言したな」
「お前ら、席に着け」
ムッツリーニも来て、これからのことを話そうかと思った矢先、何故か鉄人がFクラスにやってきた。何故担任でもない鉄人がやってくるのだろうか?
「あれ? 何で西村先生がFクラスに?」
「そのことも含めて説明してやるから席に着け」
鉄人を敵に回しても良いことはないので、素直に席に着くことにした。全員が席に着いたところで鉄人が話を始める。
「さて、お前ら。各々疑問があると思うが、まず何故俺がFクラスに来ているのか説明しよう」
「そうだ、何で鉄人がFクラスにいるんだよ」
「俺達の担任は高橋先生だろ?」
「バカ、大岩先生だ」
「つーか、担任っていたっけ?」
「お前らは……そんなんだからBクラス、Dクラスに勝ったのも奇跡と言われるんだぞ」
若干数名のバカ共の発言に呆れる鉄人。そういえば、俺らの担任って誰だ?
全く思い出せねぇ。
「いいか、今回の一連の試召戦争。確かにお前らはよくやった。Fクラスがここまでやるとは正直思わなかった。だがな、いくら『学力が全てではない』と言っても、人生を渡っていく上では強力な武器の一つなんだ。全てではないからといって、ないがしろにしていいものじゃない」
「それは分かったが、何で鉄人がわざわざFクラスに来てまで話すんだよ」
「それはな、今日から俺がFクラスの担任になるからだ」
『なにぃっ!?』
いきなりの衝撃発言にFクラス男子一同全員が悲鳴を上げる。当然だ、補習の鬼と言われている鉄人がFクラス担任だと!? ありえねぇ!?
「何せA級戦犯の坂本と観察処分者の吉井兄がいるクラスだ。二人は特に念入りに監視してやるから覚悟しろ」
「そうはいくか! 鉄人の監視の目をくぐり抜けて、いつも通りの生活を送ってやる!」
「……お前には悔い改めるという発想はないのか」
「……そういえば、まだ明久が来ておらんの?」
ため息混じりに呟く鉄人の後に、ふと思いついたように秀吉が明久がまだ来ていないことに気づく。そういえばあのバカ、まだ来ていないな?
「さっそくアイツは遅刻か……誰か、連絡を受けている奴はいないか?」
「アイツのことなんか知るかよ」
「弟の教育もロクに出来ないもんな」
「ふと思ったけど、吉井って女装したら可愛くね?」
「TSなら考える」
「お前……天才か?」
「……いないようだな」
誰も明久のことについて知るものはいないらしく、鉄人は俺の方を見る。
「坂本、一回だけ携帯で電話することを許可してやる。吉井に掛けろ」
「何で俺が……」
「補習時間を吉井兄の分、加算するぞ」
「今すぐ電話を掛けますのでお待ちください西村先生」
俺は快く鉄人の頼みを聞き、自前の携帯電話で明久に電話する。決して補習時間が延びるのが嫌だからではない。3回コールが鳴った後、明久が電話に出る。
『雄二? 何、突然?』
「おい、明久。今何時だと思っていやがる。もう学校、始まってんぞ?」
『いや、そんなことは雄二に言われなくても分かっているよ』
「だったら早く来い。鉄人がお前を待っているぞ」
『そうは言っても「おーい明久、何処に行くか決まったか?」だから待ってって、もう……』
「……お前、今どこにいる?」
何やら要領を得ない会話をする明久を不審に思うのと同時に、一緒に聞こえてくる遊園地のBGMに疑問を持った俺は場所を尋ねる。コイツ、今どこにいやがるんだ?
『え~と「いや~二回目とはいえ、今日は毛狩り隊関係なしに楽しめるから良いよな、ハレルヤランド」ちょっ!?』
「……はぁ?」
『三人とも「だよな。この間は俺、悲惨な目にしかあわなかったし」あ、雄二! 後で電話するから!』
「あ、おい! ちょっと待て!」
気になる言葉が聞こえたため、そこを追求しようとしたが、切られてしまった。ツーツーと音が鳴り響く中、全員が俺を見る。俺に視線が集中する中、俺は鉄人に対して先程のことを言う。
「……明久は今、ハレルヤランドにいるそうです」
「……なに?」
「おい、ハレルヤランドって?」
「お前、知らないのか? 世界一のテーマパークで有名な遊園地だよ」
「一時期、ところ天ランドっていう変なのに乗っ取られたって聞いたぜ?」
「そこからまた再建したとも聞いたぜ」
「……そうか、そんなに吉井兄には補習が必要か」
『ビクゥッ!?』
ザワザワと全員が騒いでいると、教壇の方からとてつもない気配を感じた。全員驚いてそちらを見ると、そこには周囲の景色を歪ませる程のオーラを放つ鉄人がいた。
「無断欠席だけでは飽きたらず、テーマパークで遊ぶとは……学生というものを舐め腐っているな……」
「な、何じゃ……この鉄人のオーラは……」
「い、今まで見たことがない……」
「ア、 アキ……一体どうなるの?」
「少なくても無事じゃ済まないだろうな……」
こりゃアイツ、死んだな……と心の中で明久に合掌した。
◇◆◇
ゾクッ!
な、何だ今の悪寒は!? 今までで感じたことがないぞ!?
「どうした明久?」
「また禿げているかどうかが心配か?」
「あぁ?」
「すみませんでした」
首領パッチが余計なこと言ったため、睨みつけて黙らせた。全く、コイツはどうして余計なことを言うのだろう。
電車を間違えた後、気絶した僕が次に目を覚ましたのはハレルヤランドのホテルの一室だった。最初は呆然としていたが、重要なことを思い出したのと同時に、洗面所に駆けだした。何せ、毛抜きビームなんてものを喰らっていたのだから。
洗面所の鏡で恐る恐る自分の頭を見ると、そこにはいつもの長髪ヘアーが残っていた。あれっと不思議に思い、額を見ると『抜』という文字がちゃんと消えていた。どうゆうことだろうと首をかしげていると、ベッドのある部屋から悲鳴が聞こえ、そちらの方に行く。すると、そこには大量の毛を抱えた首領パッチがいた。
「う、嘘だ……まさか、明久の奴。髪の毛と一緒に消えてしまったのか……」
「い、いや、あの、首領パッチ……実は……」
「だーひゃひゃひゃ! だせぇ、マジだせぇ! 髪の毛と一緒に消えるってバカじゃねぇの!?」
「………」
「プークスクス! いやー、つまりよ。ここから俺が主役ってことだろ! 何せ本来の主役がいなくなったからな!」
「………」
「あーでも、禿げた明久はちゃんと見たかったな、本当。絶対笑いものだったぜ、プッ!」
「(プツンッ!)」
その後のことは良く覚えておらず、気がつけば首領パッチを血祭りに上げていた。途中入ってきた天の助とボーボボ曰く、まるで伝説の超サイヤ人のごとく、首領パッチをしばいていたらしい。
「その後は……どうしたんだっけ?」
「その後、レントゲンを撮った結果、お前に被せたカツラが地毛になったようだ」
「正直ホラーだろ、それ」
確かにホラーだけど、結果的に禿げなかったので良しとした。初めてこの意味不明なカツラに感謝した気がする。
「さて、これからハレルヤランドを回る予定だが……」
「いや、帰るよ」
「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!?」」」
「長い! しかも鬱陶しい!」
僕の帰る発言に過剰なまでに驚く三人。そこまで驚くことだろうか。
「何でだよ!? テーマパークだぞ!? 来たら普通遊ぶだろ!?」
「今日は平日。僕、学校」
「いいじゃねぇか、一日ぐらいサボっても」
「下手にサボったら鉄人に締められるからイヤ」
「「「ブー! ブー!」」」
「文句言わない!」
文句を言う三人を強引に捻じ伏せて、僕は駅の方に向かう。本当は僕だって遊びたいけど、こんなところで遊んだらなけなしのお金がすぐに吹っ飛ぶ。そしたら、また塩水生活に逆戻りだ。こんな問題児三人抱えた状態でそんな生活をしたくない。下手したら倒れる。
「ほら、帰るよ」
「しょうがないか……元は首領パッチのせいでここに来たんだからな」
「またの機会ってことにするか」
僕の呼びかけに応じてボーボボと天の助が渋々ながらも続く。なんだかんだ言っても、最後はちゃんと言うこと聞いてくれるので、こちらも助かる。また、駄々こねられても面倒くさいし。
「イヤァアアアアアアアアアアアア!!!!」
「うわぁ!? 何事!?」
「禁断症状だ!」
突然悲鳴を上げた首領パッチに驚いてそちらを向くと、この世の終わりのごとくムンクになっていた。ボーボボが禁断症状というけど、何の!?
「おっぱいビーム、おっぱいビーム」
「遊べないと分かったショックでおかしくなったんだ!」
「それだけで!? いくらなんでもおかしくなりすぎだよ!?」
「チロチロリン、チロチロリン……」
「こうなったら首領パッチは何をやらかすか、全くわかんねぇぞ!?」
「いやコイツ、元から意味不明「色男ッ!!」ぐへぇ!?」
ボーボボと天の助の二人と話していると、突然首領パッチが右ストレートを僕の鳩尾に叩き込んできた。いきなりのことで反応できず、直撃を食らってしまう。右ストレートをくらって倒れる僕を首領パッチが担いでどっかに連れて行く。
「まずいぞ! 今の首領パッチは何をするかわからない! 追いかけるぞ!」
「おう!」
薄れいく意識の中、ボーボボと天の助が僕を担いで走る首領パッチを追いかける姿が見えた。そして、僕は一言、思って意識が途切れる。
こいつ、何気に強かった……
今回はバカテス側の要素を多くしましたが、どうでしたか?
次回も考え付いたら、書きますので。