紫炎.2の短編集   作:紫炎.2

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前回のあらすじ

「おのれ、ザイガル! よくも松本さんの命を!!」
「ハッハッハ! 来るがいい、ボボボーボ・ボーボボよ! 貴様の命を刈り取ってくれる!!」

魔王ザイガルによって命を奪われた相棒、松本さん!
その敵を討つため光の勇者ボーボボは最後の戦いに挑む!


「って、違――――う! デタラメを書くなぁーーーー!!」


※松本さんは出ません。


バカの進化形はハジケリスト2

第二話:今日は楽しいショッピング♪ ママ、僕おやつがほし~い!

 

「いらっしゃいませ~」

「さて、さっさと買い物を済まそうっと」

 

毛狩り隊が襲ってきた日から翌々日。日曜日の夕飯の為に今日は大型デパート「強奪デパート」に来ていた。名前に反して、お値段がお手頃価格で売られていることで有名だ。

 

「明久、今日の夕ご飯は何なんだ?」

「今日はピーマンの肉詰めとその他諸々」

「え~、ピーマンがあるの~?」

「我が儘言わない。いい大人が好き嫌いするって格好悪いよ?」

「やだやだ! ピーマンなんてしょっぱくて苦くて臭くてドロドロしていてレーズン臭くてやだー!」

「ピーマン一つでぼろくそな言い様だね!? ていうかレーズン関係ないよ!?」

 

店内でピーマンが嫌だと駄々こねる大の大人が一人。傍から見たら異様としか言い様がない光景に周りの人たちもヒソヒソと遠ざかっていく。正直、すごい恥ずかしい。

 

「ちょ、ボーボボ、やめて! 周りの人が見ているから!」

「やだやだやだー! ピーマンなんてやだやだやだ!」

「だからやめてってば!!」

「わかった」

「あっさりやめた!? じゃあさっきの駄々コネはなんだったの!?」

「何となくやってみた。いや~大の大人がするもんじゃないな」

「じゃあすんなやぁ!?」

 

頭を掻きながら平然と言い放つボーボボに僕はツッコミを入れる。やっぱりボーボボは意味が分からない。これ以上ここにいてもしょうがないので、僕とボーボボは食品売場に向かった。ここで僕はボーボボにお小遣いの300円を上げて、一人で買い物を始める。ボーボボが「よっしゃー! ヤンバルクイナ買ってくるぜ!」と言ってどっかに消えていった。

 

あれからボーボボは僕の家に居候することになり、夢の一人暮らしは夢幻のごとく崩壊した。まぁ、いつもボケ続けていると言うわけではないが、それでも隙あればボケるので思わずツッコミを入れてしまっている。

 

(まぁ、それぐらいなら問題ないんだけどね)

 

家の中が明るくなったり、この頃良いことがなかったからいい気分転換にもなったので、それは別に良いことだ。だが、僕の頭を悩ませているのはボーボボのことではない。

 

「ママ、あの人、髪の毛がなが~い」

「そうね~」

「うぅ……」

 

そう、ボーボボに被せられたカツラが取れないのである。おかげでカツラと地毛と同時に洗うことになり、ものすごく大変なのだ。さらに町中ではどうゆうワケか女の子と間違えられるし。

 

「秀吉もこんな気持ちだったのかなぁ……」

 

男なのに外見だけで女と間違えられるのってやっぱり辛い。僕の顔は365度、どこからどう見ても男の子なのに。

 

「まぁ、気にしてもしょうがないよね。さて、食材食材っと……」

 

気を取り直して買い物をすることにした。今日はピーマンの肉詰めに野菜炒め煮といった具合にする予定だ。野菜が若干多いが、まぁ、大丈夫だろう。

 

「まずはピーマン。次にキャベツに……あ、もやしが安い。買っとこ」

 

なるべく質が良く、安い商品を買っていく。今日は安売りが多くあるので、あっという間にカゴの中身が一杯になっていく。

 

「これぐらいかな? おっと、糸こんにゃくを忘れていた」

 

ふと思い出し、練り物のコーナーに向かう。糸こんにゃくは色々と使えるから便利なんだよね。カゴを持って練り物のコーナーに着くと糸こんにゃくを見つける。

 

「あった。糸こんにゃくっと」

「お嬢さん」

「はい?」

 

糸こんにゃくを取ろうとした時、いきなり呼びかけられたので声がした方に向く。

 

 

そこにはこちらを凝視するオレンジの物体とゼリーの物体がこちらを見ていた。

 

 

(……は?)

「お嬢さん、今日はこんにゃく料理かい?」

「偉いねぇ、その年でよ」

 

商品棚に鎮座する形容しがたき何かを前にして僕の頭はフリーズした。

 

(えっ、何、えっ? 何……これ……)

「俺達さぁ、普通なら100円のところだけど今なら10円なのよ」

「10円よ、10円! 安いと思わないあなた!?」

 

何か喋っているけど目の前の事実に頭がついていけず、理解を拒んでいる。というよりもコイツら何?

 

「買い時よぉ! ところ天の助がお買い得よぉ!」

「今ならストラップも付いてきて……お嬢さん、聞いている? 人の話?」

 

オレンジの物体が何か叫んでいるが、やっぱり耳に入ってこない。これほどの衝撃はあの暴走族型野菜集団以来の衝撃だ。

 

「おい、嬢ちゃん」

「えっ!? は、はい。何でしょうか……?」

 

急に呼びかけられ、我に返った。どれぐらい意識が飛んでいたのか分からない。だが、ゼリーとオレンジの物体はこちらを見ていた。

 

「「人の話聞けやぁーーーーーーー!!」」

「ひぃーーー! すみませーーーん!」

 

いきなり怒鳴られて思わず女の子のような悲鳴が出たということも、今回ばかりは仕方がないと僕は思う。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

『ありがとーございましたー!!』

「……はぁ~」

 

デパートから多くの歓声と共に送り出されたというのに、僕の気分は晴れない。どうしてかは目の前の二人のせいである。

 

「やったよー! 僕、買われたよー!」

「苦節数十年、ようやく……ようやく俺は普通の客に買われたのだ!」

 

オレンジの物体こと首領パッチ、ゼリー状改めところ天の何かことところ天の助の二人は周りの人がいるのにも関わらず、バンザーイと大喜びしている。買われたことがそんなに嬉しいのだろうか?

 

「結局コイツらのせいで夕ご飯は買えなかったし……」

 

コイツらに目を付けられた後、カゴの中にあった商品は片っ端から捨てられてコイツらだけを買わされてしまったので、この後またどこかのスーパーで買い物をしなければならない。商品券を大量にもらえたのが、せめてもの救いだ。

 

「ゲヘヘ、お嬢さんよ。アンタは良い買い物したぜ~? 何せこの首領パッチを買ったんだからな?」

「しかもこのところ天の助というまっこと美味な食べ物を買ったんだぜ? あんたいい目しているよ?」

「うぅ……」

 

しかもこいつら、予想以上に鬱陶しい。さっきからこっちに迫ってきては、こうやって絡んでくるのだ。正直、ボーボボ以上だ。

 

「また買い直しか……」

「お~い、明久~」

 

その時、後ろからボーボボの声がしたので振り向くと、そこには満面の笑顔をしたボーボボがいた。すごい、恨めしい。

 

「お帰り……」

「見ろよ、この見事なヘラクレスオオカブト」

「何でカブトムシ!? ヤンバルクイナを買いに行ったんじゃなかったの!?」

「ばっか、おめぇヘラクレスオオカブトだぞ!? 男の子の夢じゃねぇか!」

「うるせぇ! こっちは変な生物を買ってしまって落ち込んでいるんだよ! ツッコミさせんなやぁ!」

「変な生物?」

 

怪訝そうに聞いてくるボーボボにアレと言って指を指す。そこには「乙女のエチケット!」と叫んでタマネギを擦りつけているアホ二匹がいた。その二人を見た瞬間、ボーボボの顔色が変わる。

 

「お、お前らは……!」

「「お、お前は……!」」

 

三人はお互いを見た瞬間、カブトムシを僕に預けてドラマさながらに駆け寄っていった。

 

「首領パッチ~、天の助~!」

「「ボーボボ、ボーボボ~!」」

「あ、その二人のせいでまた買い直しだから」

「なにやってんだテメーらーーー!!」

「「ぎゃあああああああああああ!!」」

 

感動の再会と思いきや、僕の一言で生物二匹はぶん殴られた。何と見事な右ストレートに左ストレートが綺麗に入った。そのまま三人は喧嘩し始めた。

 

「人の邪魔してんじゃねー!」

「うるせー! テメーだけ目立とうたってそうはいかねーぞ!」

「そうだそうだ! 俺達にだって目立つ権利はあるんだよ!」

「バカばっかだね……本当……」

「まぁ、そうしょうげるなよお嬢さん」

「うん……そうだ……キィアアアシャベッタァアアアアア!?」

 

いきなりカブトムシが喋ったので驚いてカブトムシが入っていたケースを手放してしまった。ゴトリと地面に落ちるケース。その瞬間、筋肉ムキムキになってヘラクレスオオカブトがケースから人間サイズで出て来た。

 

「痛てぇな、おい! 何をしやがる!?」

「ヒィイイイ! すみませーん!」

「あー、痛てぇ。ホント痛てぇ。こりゃ、捻挫か打撲したぜ、絶対。どーしてくれるんだよ?」

「ご、ごめんなさい……悪気はなかったんです……」

「ゴメンで済むとおもってんのか!? おい!?」

(だ、だれか……助けて……)

 

今まで祈ったことのない神様、仏様、「ところ天」様……。誰でも良いから、この変な生き物から助けて……。腰が抜けて、うまく身動きができない。その間に奴は近づいてくる。

 

「とりあえず慰謝料500万は(ポンポン)あぁん!?」

「なにやってんだお前」

「調子に乗っているな、この新人」

「締めるか」

 

そう言うと三人はチンピラカブトを空中に放り投げると三人も一緒に飛び上がる。そしてもみくちゃになった後。

 

「「マッスルドッキング!!」」

「「ぐはぁ!!」」

「えぇーーー!? 首領パッチも!?」

 

こうして、チンピラカブトと何故か天の助を退治した二人はお互いに手を合わせて「やったなボボ肉マン」「あぁ、テリの助」とやりきった感じで締めた。

 

「えっと……とりあえずボーボボ。助けてくれてありがとう」

「気にするな」

「俺達は偉大なるグレートの意志を継いだだけだからな」

「誰だよ……グレートって……」

 

これ以上はあまり変なのに関わりたくないため、さっさと夕飯のおかずを買って帰ろうと思ってデパートの方を見たその時、デパートの屋上からビームが放たれた。

 

「ビーム!?」

「こいつに落書きしようぜ」

「『私はオカマです』って書こうぜ」

「内容がヒド!? ってそれどころじゃない!」

 

ビームはチンピラカブトに落書きをしようとしているボーボボ達に向かってきている。二人は気づいておらず、このままでは危ない。僕は二人に向かって走り出した。

 

「危ない! 二人とも!」

「「うおぉ!?」」

「がっ!?」

 

二人を突き飛ばしたが、その瞬間ビームの直撃を喰らってしまう。喰らった衝撃で意識が徐々に薄れていく。薄れる意識の中、ボーボボが心配そうにこっちに向かってきているのが見えたが、首領パッチは一生懸命メイクしている姿が見えた。

 

何でメイクしてんだよ……そう思いつつ、僕の意識は闇へと沈んでいった。

 

 

◇◆◇

 

 

「明久―――!」

 

ビームの直撃を喰らい倒れていく明久にボーボボは急いで駆け寄る。気絶した明久を炊きあげると、明久の額に『抜』という人文字が浮かんでいた。

 

 

 

気が向いたら続くと思う。




ギャグは本当に難しいですね。


知らない人のための諸設定。

吉井明久
文月学園2年Fクラス所属の生徒で誰にでも明るく、他人のために一生懸命になれる少年。原作の主人公で、彼の周りにはいつも彼を含めたバカ騒ぎが起こっている。

ここから本小説の追加設定
家族内では地位が低かったため、せめて理人の前では兄らしくしたいと思っていたのだが、貧乏くじをよく引く運の悪さと、頑張ろうとして空回りするということが重なった結果、だいぶ理人に迷惑をかけてしまった。
そのため、自分自身にあまり自信を持てず、自暴自棄になりかけていた。そこにボーボボが現れたため、現在彼に振り回されている。


ボボボーボ・ボーボボ
毛の王国出身の7代目鼻毛真拳伝承者。全世界の毛の平和のために現在も戦っている。
ハチャメチャで且ついい加減な性格ではあるが、胸の内に秘めた正義感は熱い。鼻毛真拳という明らかにおかしい技を使うが、これでマルハーゲ帝国といった敵を倒している。
今回は明久の召喚獣召喚に呼ばれ、明久の元に馳せ参じ、明久と共に生活している。
ちなみに彼のこれまでのことを説明すると、それだけで笑えるので、皆さんもぜひ彼のことを調べてみて欲しい。


首領パッチ
ハジケ組の親分にして生粋のハジケリスト。
俺様的な性格で、ボーボボ同様ハチャメチャである。彼に対しては今後に期待。


ところ天の助
元毛狩り隊Aブロック隊長にして、コンビニで10円で売られていた何か。
目立ちたがり屋ではあるが、痛い目に遭うのは嫌らしく、戦闘にはあまり出たがらない。ちなみに彼は一応分類として「ところ天」という食品であるため、食べられるのだが、賞味期限切れでマズイらしい。ちなみにゼリーがちょっと含まれている。
彼に関しても今後を期待。

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