最近校内でやたらと問題を起こす生徒がいる。今年から入ってきた1年、男鹿辰巳だ。
勢いだけで言ったら神崎や姫川すら越えるかもしれない。
どうやら中学のころからそのやんちゃぶりは有名だったらしく、なんだっけか、『あばれおーが』だのの呼び名で知られてたらしい。そんな男鹿辰巳だが、現在俺が担任を受け持っている。当初は何か授業妨害でもするんじゃないかと思っていたが、なんてことはない。ただの間の抜けた奴だ。特に授業を邪魔したりしなければ構わない。
それともう１つ。鮫島先生が辞任した。これについて俺がどうこう言う気は一切無い。ただ、圧倒的強さとカリスマ性を備えてなかったと言う話だ。
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男鹿は俺の思ってた以上に不良界隈では有名だったらしい。聞けば起こしていた暴力沙汰のほとんどが売られた喧嘩を買っただけという。そしてその喧嘩を売った連中は口を揃えて『男鹿を倒して名をあげたかった』とぬかしている。はあ…今年入ってきたばかりの1年を倒して名をあげたいとは……聞いてて虚しくなってくる。
とりあえず今日個人面談して見た限りはそんなに悪そうな奴にはみえなかった。そんなに注視しなくても良さそうだ。
それにしても男鹿と聞くとアイツのことを思い出す。
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最近授業をしていて思うことがある。
古市 貴之
奴はいい。すごくいい。授業も真面目に聞いていて成績も悪くない。今年の1年は2年や3年に比べればまだ大人しい方だが、その中でも奴はダントツの普通ぶりを発揮している。
幸い古市のクラスは授業を妨害してくるようなアホはいないので教育的指導をしなくて済んでいる。これからもこの風潮が続けばなお良い。
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以前俺は男鹿を注視する必要はない的なことを思ってたりしたかもしれないが、あれは嘘だ。男鹿の野郎、学校に赤ん坊連れてきやがった。いや、今まで俺も大概ぶっ飛んだ奴ってのを見てきたが、あそこまでぶっ飛んでる奴は初めて見たかもしれねえ。
それと最近3年の、特に神崎の動きが活発になってきてる。男鹿と神崎……。まあ、何が起きても俺は知らんが。学生のうちは少しはやんちゃしたくなるもんだ。いちいちそんなことに目くじらを立てていたらきりがない。
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確かに俺は学生のうちは多少のやんちゃはしょうがないと思って目を瞑るが、流石に校舎を破壊するのは許せねえよな？たとえガラス1枚だとしても学校の備品だ。無断で生徒が壊すなんてこと、あっていいわけがねえ。まあ、俺の言えた事じゃないんだけどな。
なんでこんな話をするかというと、とうとう男鹿と神崎がぶつかったらしく、そん時にガラスやらなんやらが破損した。その際神崎が入院もんの怪我を負ったらしいが、それはまあ当人達の責任というものだ。それに関して俺がとやかくいうつもりはない。しかし器物破損はゼッテー許さん。ガラスを割った男鹿と神崎にはそれなりの罰を与えた。つっても、神崎はもう重症だったのでそれをもって今回の件は不問とした。
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妙な女に急に喧嘩を売られた。はて、金髪ゴスロリなんて学校にいただろうか。というか今校内の女子は全員いないはずなんだが…。まあこの人生どこで恨みを買ってもおかしくないので適当に対応しておいた。
昔からだが女を相手にするのは苦手だ。だからといって対応を間違えると男子から『贔屓だー！』という声が上がるだろう。……これもこれからの課題だな。
話は変わるが最近校内の男子が妙に浮ついている。あまりにも浮ついていて、授業にすら身が入っていない古市に聞いてみたところ、もうそろそろ『
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そういえば、姫川の無断欠席が最近続いている。しょうがないので探ったところ、いつの間にか入院していた。とりあえず神崎と姫川の見舞いも兼ねて話を聞きに病院まで行った。その際病室で城山と夏目に遭遇したが、特に驚きはしない。城山と神崎と夏目はいつもセットってイメージだしな。
姫川の話では男鹿にやられたらしい。最初なかなか口を割らないので神崎に聞いたところ事細かく事情を話してくれた。まあ、なぜ神崎が知っているかはおいといて、この事件も完全に姫川に非があるので男鹿のお咎めはなしとすることにした。
そしてここでもやはり『れっどている』が遠征から帰ってくる話題は話されていた。まあ、姫川は以前1度邦枝に言い寄って手痛いしっぺ返しをもらってるから大口は叩けないらしい。神崎も似たようなものだが。
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今朝からやけに古市がうるさいと思ったら、れっどているが今日帰ってくるらしい。
北関東制圧だかなんだか知らないが、帰ってくるならちょうどいい。割と長い間無断欠席しているれっどているの方々を注意しに行く。
まあ、適当に校内を歩いていたら思いの外早く見つかったので声をかけようとする。
が、見たところ大森と下川が今まさにやり合うところだ。とりあえず静観していると案の定邦枝が止めた。
し か し ガ ラ ス を 割 っ た
一気に頭のネジがぶっ飛びかけたが、反対側の廊下から男鹿と古市が駆け寄ってくるのが見えたのでなんとか抑え込む。
男鹿と邦枝が向かい合う。男鹿が邦枝の突きを躱す。そして
邦 枝 が 校 舎 を 大 破 さ せ た
すげえ技を使っていた気がしないでもないがそんなことはどうでもいい。大事なのは校舎を破壊したというたった１つの事実だけだ。これは流石に怒っていいよな。これ以上黙って見ているのは無理だと判断。即説教にはいる。
すこし聞き分けの悪い奴もいたが、口答えはしなかったのでまあいいだろう。
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そろそろ夏休みだ。石矢魔の生徒供は大半が年中夏休みモードの自由ぶりだが、それでもやはり夏休みは楽しみらしい。校内中に浮ついた雰囲気が滲み出ている。かくいう俺も夏休みは楽しみだ。普通教師は夏休みも部活の顧問やら学校の書類整理やらで忙しいが、石矢魔に限ってはそういうものは一切無い。あるとすれば少し問題がある生徒の家庭訪問くらいだ。石矢魔で問題のある生徒など、言ってしまえば全員なのだが、その中でも俺や、もしくは校長がピックアップした生徒の下にだけ家庭訪問に行くことになっている。まだ決まってはいないが神崎、姫川あたりには行うことになるだろう。
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多分だが家庭訪問の件に男鹿と邦枝が加わる。てか絶対加えてやる。あいつらが喧嘩しようが俺の知ったことでは無いが、立ち入り禁止の屋上で決闘した挙句、またもや器物破損という……。とりあえず立ち入り禁止を破った2人には軽くお説教。地面をバッキバキにした男鹿には少しきつく説教しといた。
"少しきつく"というのは何も贔屓じゃない。奴も校舎を壊してはいけないということはわかっている。しかし忘れてしまう。もしくは突発的にやってしまうのだ。悪気がない以上そこまで強くも怒れないというのが教師というものだ。しかし流石に今回の件は見過ごすわけにはいかないので家庭訪問というわけだ。邦枝の真面目ぶりもよく知っているが、2年になってれっどているに本腰をいれたのか少し不真面目になりつつある気がしないでもない。
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まさかの邦枝がれっどているの総長をやめるという。まあ、だからなんだと言われればそれまでだが。4代目を務めるのはいつも邦枝と一緒にいた大森らしい。奴も俺がよく知る生徒の1人だが、悪い奴じゃない。それを分かって邦枝も大森に総長を任せたのだろう。
しかし4代目か……。
ま、とりあえず色々あった1学期が無事に終わる。
何故かは知らないが終業式にはほとんどの生徒が出席していた。俺が石矢魔に着任した時には既に体育館の窓やらドアやらはぶっ壊されていた。そのおかげで冬は寒いがこの時期は通気性抜群で涼しい方である。もし現場に俺がいれば窓を壊した奴の身体を壊してやったものを。
なんだかんだこの1学期は楽しかった。しかしやはり夏休みのほうが胸は踊る。家庭訪問などちゃっちゃと終わらせて後は休みにつぎ込むとしよう。
ちなみにだが、最終的に家庭訪問することになったのは、神崎、姫川、邦枝、東条、男鹿である。
名前は上がったが結局行かないと決定したのは、下川、大森、花澤、真田、阿部………いや、やめよう。挙げだしたらきりがないことを思い出した。
まあ、要は特に問題を起こしている奴が対象というわけだ。ぶっちゃけめんどい。だが、それが終わればパーリー。何をしよう。海などもいい。山もいい。今から楽しみである
ジャックランタンさん。誤字修正ありがとうございます