お待たせしてすみませんした。
「う、うぅ…」
「バケモノ……」
灼熱の太陽の下、何百という単位の者達がおよそ200メートルにわたって地面に倒れふす。本来路上を所狭しと埋めつくしそうな人数の彼らは、しかし道路の真ん中のラインには1人も伏してはいない。故意に避けているかのように。
その道は、例えるならば獣道。獣が道を進むのではなく、進みたい方向に道を作ることでできる道。障害物を薙ぎ倒すことでできる道。
「ありゃりゃ、こりゃまた随分と派手にやっちゃって」
その道を悠々と歩く2人の人影。
「出門頭、 硬破流徒、うおっ!武頼漢までいる!今回は大分徒党を組んだな」
「塵がどれだけ集まろうと意味はない。」
「いやでも流石に今回のは多すぎでしょ」
いつもの様子で軽く会話を交わす彼らは、一見するとこの連合を2人で蹴散らしたようにも見える。確かに、この2人は自他共に認める手練れではある。並みの不良ならば片手であしらわれ、かなりの実力者でも拮抗することすら難しいだろう。
実際彼ら2人が手を組めばこの大群相手に勝利するのはできない話ではないかもしれない。
しかし、この死屍累々を作り上げたのは彼らではない。彼等はこの惨状を作り出した本人を知っている。たった1人で、欠伸をしながら猛威を振る人物。
それは、この道の終点でうちわを仰ぎながら寝そべっていた。
「それで、多少骨のある奴はいましたかい?」
声をかけられ、うちわを仰ぐ手を止める。
そして顔だけこちらを振り返る。
「いや、1人もいなかったな」
「まあそうでしょうね。あんたと対等に渡り合う奴なんか見たことないっすからね。東条さん」
虎を思わせる目つきに丸太のような豪腕。
ー東条英虎。東方神起最後の1人であり、東方神起の中で別次元の強さを誇る。
「庄次もかおるも悪かったな。この分じゃ海の家のバイトはクビだ」
「まあまあ、それはまた探せばいいじゃないっすか」
「焼きそば……食いたかった」
東条があまり悪びれずにいう言葉に庄次は笑って返したものの、かおるはすこし不機嫌顔だった。
「しかし散々だ。バイト中断して喧嘩おっぱじめてみりゃ、骨のある奴は1人もいねえ」
言うと同時に東条は空を仰ぎ見る。
「どっかに奴みてえな化け物はいねえもんか」
そして思い出す。それは1年前。自分がまだ2年だったころ。忘れもしない、圧倒的敗北の記憶。
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『おい、東条が久し振りに顔を出したらしいぜ』
『やっとか、腕がなるぜ。奴には前回痛い目見さしてもらったからな。今度は俺のばんだ』
当時から石矢魔で頭角を現していた東条は、やはり神崎姫川と比べても頭1つ抜きん出て恐れられていた。当時の3年を抑え、最強の呼び声すら上がってきていた彼に、それでもなお挑もうとする輩は多かった。
その日も例に漏れず、東条が久し振りに登校するとそこには打倒東条を掲げる生徒が徒党を組んで待ち伏せていた。
『こんちは東条くん。殺しにきましたー』
各々手には武器やらなんやらを持っており、臨戦態勢に入っているのは明らかだった。
ならば、東条の返答はすでに決まっている。売られた喧嘩は買う一択なのが東条のポリシー。
そこからは、一方的な虐殺だった。
『ぐあー!』
『がふっ!』
たった1人で大衆をなぎ倒していく様はまさに獣。それでもなお怯みなくかかってくる相手を歯牙にもかけず圧倒的実力差で潰していく。
東条が死屍累々の中1人立つのに、10分とかからなかった。
『おい』
今回も自分に匹敵する奴はいなかったと思う東条の背に声がかかる。まるで声そのものが物理的な重さを持ったと錯覚するほどの威圧感。反射的に東条は振り返って距離を取る。
『てめーは…』
灰色の髪をした長身の目つきの悪い男だった。この状況でもまったく物怖じしない目。
それは久しく見ぬ、強者の目。
ーー強えな。
強者に対する鼻が特別効く東条は、瞬時に目の前の男がそこらの有象無象と違うことを感じ取った。
出方を伺う東条に、男は一度息を吐き告げる。
『つくづく石矢魔の奴らは礼儀ってもんを知らねえ…が、まあ今はいい。実はな、人を探してるんだ』
この惨状を見てなお目の前の男は平然と人探しをしてると言う。その異常性をうすうすながらも東条は感じ取っていた。
『人?』
『ああ、東条っつー奴はどこだ?』
その一言で東条は全身の血が滾るのを感じた。なるほど、この強者も俺を打ち倒さんとする奴だったか、と。
ーー最後の最後でとんだ大物が釣れやがった。
ならば、これからすることは1つ。
東条は一瞬にして足に力を込め、男に飛びかかった。
『俺がその東条だ』
拳を振り上げ顔面めがけて振り抜く。
ーー初撃はもらったぜ。
直後、スパァン!!という音が男の顔面からした。クリーンヒットと笑う東条だが、違和感に気づく。
男の顔面が微塵も歪んでいない。さらに殴った拳の感触もおかしい。
すぐさま確認すると、なんと男の顔面と拳の間のすれすれの隙間に、男の手が割り込んでいた。
(まじかよ…。いつの間に…)
東条ですらどのタイミングで受け止められたのか理解できない。
ーーこいつは想定以上の相手かもな。
『やるなお前。こいつは久し振りに本気を出しても良さそうだ』
東条は一度バックステップで距離を取る。そして、
『いくぜ』
初撃以上のスピードを持って男に向かっていった。移動速度を拳にそのまま乗っけ、さらに加速して突き出す。が、男はそれを顔を少し背けるだけで回避。東条も動きを止めずすぐに別の攻めへと転じる。
殴っては受け止められ、蹴りを放っては回避される。東条の集中力もますます上がっていき、攻防は苛烈を極めた。が、そんなやりとりも終わりを迎える。
『ッラァ!!!』
一層力を込めた拳が東条によって放たれる。
この攻防の中1番の威力と速さを持った拳。己の今届く最高峰のその拳を、
ダン!!!
男は何の苦労もなく受け止めた。
『はあ……。しょうがねえか』
そして、初めて男が拳をあげる。今まで避けるや受け止める一択だった男の初めての攻め。ゆっくりと拳を振りかぶる。
(あれをくらったらやべえ!!)
東条の本能が警報を鳴らす。避けるしかない。まともにくらうは論外、受け止めるのも自殺行為。残された道は回避の一択。
すぐさま距離を取ろうとする東条。しかし
ーーは、はずれねえ!!
受け止められた己の拳が、男の手から離れない。どれだけ足に力を入れてもピクリとも動かない。
ーーどんな握力してやがんだ!
奮闘する東条に、しかし時は無情にも時間切れを知らせた。最後に見た光景は迫り来る死を体現した拳と、
『落ち着け』
そんな言葉だった。
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「あいつは俺が今まで出会ってきた中でも最強ランクにつええ奴だった。あのレベルの奴を俺はアイツと、もう1人しか知らねえ」
「でも東条さん。あんな化け物がそこら辺にいると思えないっすよ。それにいたとしてもそんな奴とは遭遇もしたくないですし」
やれやれといった調子でいう庄次に、東条は至って真面目な表情で返す。
「いや、そうでもねえさ。強者同士ってのはいずれ引かれ合うんだよ。」
そして、庄次とかおるのやや後ろ側を見る。
「そうだろ?佐々木」
瞬間、庄次とかおるが振り返る。いつからいたのか、そこにはいつもの通り目つきを鋭くした佐々木が立っていた。石矢魔で夏休み中決して出会いたくないランキング堂々1位の人物である。
「はあ、佐々木先生だ。何が強者は引かれ合うだ。今日の家庭訪問におめーがこの場所を指名したんじゃねえか」
「いや、この場所を指定したのは俺のバイト先が近かったのと、ここなら伸び伸び出来そうだったからだ」
「あ?」
東条の意味深な物言いに佐々木は眉を上げる。それに対し、東条はニヤリと口角を上げる。
「佐々木先生。喧嘩、しようぜ」
(これはちょっとやばいかも)
佐々木と東条の視線が交差したのを見て、その2人に挟まれてる庄次は心中でそう呟く。
石矢魔生徒の中でも実力で言えばかなりの高さを誇る庄次だが、その庄次からしてもこの2人は化け物のランクに入る。激突すればその規模は先程の東条対連合軍とは比にならないものになるだろう。
しかし、庄次の懸念はそこではない。
1年前1度負けてるとはいえ、そこからさらに急成長している東条。対し、不動の最強が囁かれる佐々木。その2人が激突することはつまり、
(石矢魔の勢力が一気に傾く危険性だってある…)
基本的に勢力図なんてものに無関心な庄次だが、それでも佐々木と東条のいる位置が頂点にかなり近いということはわかる。どちらが勝つにしろ、それがトリガーとなり戦争が始まる可能性は極めて高いことは明白。
(止めた方がいいんだろうけど……なー)
自分が立ち入る隙はない。それはかおるも分かっているのか黙して事の成り行きを探っている。
(一か八か口出してみっかな)
このままでは少しまずいと判断した庄次が満を持して口を挟もうとする。が、
「何馬鹿なこと言ってやがる」
佐々木のその一言により張り詰めていた空気が霧散する。というか、佐々木が無理矢理解いたというべきか。
「俺がお前と喧嘩するわけねえだろ」
この話はやめだと示す佐々木だが、それにも東条は食い下がる。
「それは生徒と教師という立場故か?それとも……実力差がありすぎて喧嘩にすらならねえからか?」
「…………んな無駄話をする気はねえ。さっさと面談始めんぞ」
一瞬の沈黙。それは呆れからくるものか。それとも、確信をつかれたが故のものか。
「ほう?いいのか、こんな場所で」
見渡せばそこら中で虫の息の不良どもが転がっている。見る限り特にくつろげそうな場所もない。第一、家庭訪問なのに家庭でないと言うのが1番大きな問題だった。
「まあ本来は生徒側が場所指定なんてアホみたいな真似許可しないんだがな。お前んちの事情は一応理解してる。だからお前に関してはもともと一対一で面談する気だった」
家庭訪問とは名ばかり。つまり、東条に関しては佐々木はもともと家庭で親も交えての面談はする気が無い。確かにそれが理想といえば理想だが、佐々木は東条の家の事情を知っている。それを踏まえ、東条だけは特別処置でもいいと言う結論になった。
「そいつはありがてえ。じゃ、喧嘩すっか」
瞬間、空気が凍った。およそ先程までの話のくだりを理解してればまずでてこない言葉である。これには流石のかおると庄次も固まる。そしてその2人ほどではないが、佐々木も呆れながら後頭部をかく。
「…………お前話理解してんのか?しねえって」「男なら拳で語れってやつだ。それに拳でしか伝わらねえこともあんだろ」
佐々木の発言に東条が被せる。先の会話で東条の闘争心が萎えたかと思いきや、むしろ俄然やる気を出していることに再び庄次が焦る。が、
「ねえよ。言葉っつーもんがあんだから会話すりゃいいだろ」
「………」
佐々木の速答により東条が撃沈した。頭の弱い東条の弱点として、正論で返されると何も言葉が出なくなる。もはや東条には何も言い返せない。普通ならばこのまま面談へと移りそうなものだが、庄次の表情は晴れない。何故なら庄次は知っている。己の苦手分野で追い詰められた東条がどんな行動をとるか。
即ち、
「ええい御託はいい!!喧嘩だ喧嘩!」
自分の得意分野で強硬手段に出る。
ーーあちゃー……。
こうなってしまっては庄次とかおるは見ることに徹するしかない。
御託を言っているのは完全に東条の方なのだが、そのことを指摘する間も無く東条は拳を振り上げ佐々木に特攻する。
「おめーは俺の持った生徒の中でもトップクラスの問題児だな」
「そいつはどうも!」
一瞬にして東条は距離を詰め、微動だにしない佐々木に対して拳を放つ。圧倒的なスピードを持った拳は空気を裂きながら佐々木の顔面に向け真っ直ぐ飛んで行く。しかしそれでも佐々木は動かない。さらに進み、もはや当たる必須の距離。
直撃寸前、妙にスローモーションに感じる世界で、その危険性に感づいたのは東条だけだった。
東条が強引に拳を引っ込め、そのままバックステップで距離を取る。豪腕により生まれた風が佐々木の髪を僅かにたなびかせた。庄次には、何故東条が攻撃を無理やりとも言える動きで中断したのか理解できなかった。
「どうした。素直に話し合う気にでもなったか」
「そんなんじゃねえ。今拳を出していたら前の二の舞を踏むと思っただけだ」
そういえば、と庄次は以前東条から聞いた佐々木との対決のことを思い出す。確か、拳を受け止められ、一撃で沈められたと言っていた。つまり、今の拳を出せば受け止められ、そのままとどめを刺されると東条は判断したわけである。
(今の一撃が止められる?俺には単純に佐々木先生が反応できてないだけのように見えたけど)
事実、佐々木は動揺こそしている風には見えなかったが、あそこまで拳が接近していて動く気配すらみせなかった。あの寸前で拳と顔の間に手を滑り込ませることができるか……。少なくとも、庄次ならば無理と即答する。とはいえ、庄次は未だ佐々木の実力は正確には把握していない。佐々木と一度ぶつかったことがある東条がそう言うのだから、考えすぎと思うのは愚考だろう。
「本当に……。聞き分けのねえ生徒ばっかで嫌になるぜ。そのまま拳を収めてくれりゃあ、俺的には嬉しいんだが」
「そいつは聞けねえ……なっ!」
再度、東条は佐々木に突っ込む。が、もう一度真正面から馬鹿正直というわけではなく、やや斜めから回り込み、胴に向けて鋭い拳を放つ。が、今度は寸前の佐々木のバックステップによりその蹴りは空を切った。
「もともと長期戦は覚悟の上だ。1時間だろうが2時間だろうが付き合ってもらうぜ」
「おめーの中に人と話すって選択肢はねえのか」
「なんども言わせんなよ」
佐々木の問いに対して東条の答えは当然否。
己の行動でもってその意思を表そうと、東条はさらに佐々木に追い打ちをかけようと思い、
「そうか」
出来なかった。
足は踏み出したまま、拳は振りかぶった状態で、東条は行動停止を余儀なくされた。
具体的にどうこうというわけではない。決して目に見えない何か。その何かが確かに東条を縛っていた。東条はこの正体を知っている。以前にも一度浴びたことのある、佐々木からの圧。そばで見ていただけの庄次とかおるにさえ影響を及ぼす、規格外のプレッシャー。
「俺の目的はおめーとは真反対なようだ。俺は1秒でも早く面談を始め、1秒でも早く帰宅してえんだよ」
言うと同時に佐々木が腕をまくる。瞬間、庄次やかおるも含め、東条ら3人は己の動悸が激しくなるのを感じた。
「そのためには、仕方ねえ」
石矢魔着任当初と比べ大分なりは潜めたものの、今でも佐々木がその武力を行使することは多い。故に、それは石矢魔生ならば大半が知っている。
曰く、佐々木には構えがない。
構えとは何も武術に富んだ者だけが取るものではない。それは少しの労力で攻守を補うと同時に、明確な戦意を表す。故に、ただの一般人であっても喧嘩中に拙いながらも構えを取ることはよくある。
が、再度言うように佐々木にはそれがない。
しかしそれはなにも佐々木が臨戦態勢に入っていないからというわけではない。攻撃の意思ならこれ以上なく明確に表されている。これまた石矢魔生ならば知っておくべき常識の1つ。
佐々木がプレッシャーを放ち始めたらプライドをかなぐり捨てて全力で謝れ。
佐々木が腕をまくったら……まあ、諦めろ。
強いて言うならこれが佐々木なりの構えといったとこだろう。それが示すことはつまり、
「とうとう、きやがるか」
理不尽なまでの圧倒的力の行使。
負けるつもりなど毛頭ない。以前の自分と比べ、実力は飛躍的に上がっている。以前の東条を相手にすれば佐々木がやったように自分も勝てるだろう。が、この圧を浴びると決まって思う。
勝てるビジョンが全く見えない。
「ぐ、おおお!」
そんな不穏な考えを振り払うように東条は首を振り、無理矢理四肢を動かし佐々木に迫る。
(せめて一撃はいれてやる)
自分の全力の一撃がクリーンヒットすれば、流石の佐々木もノーダメージとはいかないはず。東条を動かしたのはまさしくその思考。
そしてその思考は、東条に今出せる最速を叩きださせた。
でかい図体からは想像もつかないほどの、切り裂くような鋭利な拳が佐々木に向かう。狙うは人体の急所とされる顎。例の如く佐々木は避けるそぶりを見せない。それが先ほどと同様余裕の現れなのか、ただ単に見えてないのかはわからなかった。が、既に東条の拳は常人なら回避不可能なまでに佐々木に接近している。ここまでくれば、後はどうでもいい。
当たれば良し。もし先ほど同様ギリギリでガードをされたとしても、そのガードごと押し込み佐々木にダメージを与えられる。
東条の拳がここに来て更にパワーを増す。
ーーくらいやがれ!
拳がクリーンヒットする直前、東条だけは見えていた。佐々木の腕が一瞬ブレるのを。そして
ズガンッ!!!
盛大な打撃音が響く。一瞬の攻防の末倒れる結果となったのは、東条の方だった。側で見ていたはずの庄次とかおるでさえ、今の一瞬で何が起きたのか理解できなかった。が、しかし、正面からやりあっていた東条には何が起こったのか理解できた。
「あ……りえねえ…」
うつ伏せの状態で、目は虚ろのまま絞り出すように東条は呟く。
「ガードするならまだわかる。かわしたと言っても信じる。が、あの状態で逆に殴り返すなんざ、できるわけがねえ…」
東条とて、はっきり見えたわけではなかった。しかし一瞬ぶれる佐々木の腕。それとほぼ同じタイミングで感じる頬への衝撃。ここまできてはもはや疑いようもない。即ち、佐々木はあの瞬間に一瞬で殴り返してきたのだ。己の最速の拳など嘲笑うかのような圧倒的スピードで。
「そりゃ、勝てるビジョンが見えねえはずだ」
スピード、パワー、タフネスにおいてこれほど圧倒的な差を見せつけられれば、負けず嫌いの東条でさえ認めないわけにもいかない。
「まだまだ、遠い……ってか…」
紛れもなく己の全力をぶつけた。が、それを歯牙にも掛けない圧倒的実力。どれ程遠くにいるのかさえ、今の東条には把握できない。
「とりあえずこれで満足したろ。オラ、さっさと始めんぞ」
佐々木が袖を元に戻す。気付けば佐々木から発せられていたプレッシャーも鳴りを潜めていた。時間にして10分も経たなかった攻防は、しかしかおると庄次には何時間にも感じられた。
「おい、いつまで倒れてんだ」
佐々木が足下の東条に声をかける。が、返事がない。
「……あ?」
流石に気になった佐々木は東条の容態を確認するため仰向けにする。そして顔を確認して気づく。
「気絶してやがんな」
東条は見事に白目を向いていた。佐々木とて東条の鎮静化が目的であり、意識を飛ばすことが目的ではない。なので極力手心は加えたつもりだった。が、加減を間違えた結果がこれである。
「おめーが起きなかったら面談できねえだろ。おい」
結果、東条が目覚めるまで数時間を要し、佐々木の本来予定していた終了時間を大分オーバーして面談は終わった。
Q.遅くね?
Q.の割にクオリティ低くね?
Q.男鹿パートマダー?
A.完成した話がメモ帳より消えました。
感想にて待ってると来たので気合を入れて仕上げて投稿しようとした矢先最新話がぶっ飛びました。これから投稿すると言ってから数ヶ月音沙汰なしだったのはそういうわけです。
そこから筆が進まなかったのですが、感想より力をもらいましてなんとか書けました。
1話で佐々木視点の東条の話が出て来ますが、事実はこんな感じです。
落ち着いてもらった(佐々木視点)→ぶん殴る(事実)
ぼちぼちまた頑張ります。