個性:心を読む程度の能力   作:波土よるり

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[前回のあらすじ]
トラウマを抉りつつ、轟君に辛勝。ヴィランチーム勝利!

[注意]
・最初は緑谷君の視点です。
・試験開始の時にも ちょろっと説明出ていましたが、原作と違ってモニタールームにも戦闘している時の音声が聞こえています。

峰田君のくだりは感想でヒントもらいました|д゚)アリガトデス


No.7 講評の時間

 最初の対戦チームは、ヴィランチームが障子君と古明地さん。ヒーローチームが葉隠さん、砂藤君、轟君だ。それ以外の人はモニタールームで観戦。建物内に設置された無数のカメラから映像がモニターに映し出されるし、インカムを通じて音声も流れる。

 

 みんな雄英のヒーロー科に受かった実力者たち。みんなに負けないためにも、みんなの戦いをしっかり見て、僕も頑張らなくちゃ。

 

「うわ~、さとりちゃんと障子君、すごいねデク君……! あんなにしっかり作戦立てとる。私らの時も作戦立てなくちゃね!」

「そ、そうだね麗日さん」

 

 麗日さんの言う通り、古明地さんたちの作戦は理にかなっている。ヒーローチームは互いに連絡が取れないハンデがあるし、素早く各個撃破がベストだ。

 

 加えて驚いたのは古明地さんの個性だ。もちろん、障子君の個性も索敵能力があるし、純粋なパワーもあるから凄いけど、古明地さんのはもっとすごい。

 

 測定テストの時にかっちゃんの『爆破』を使っていたから他人の個性をコピーできる個性だとは思ってたけど、相手のトラウマになっている個性を再現できるものだったとは思わなかった。測定テストの時に僕に「手伝って」とお願いしてきたのは、かっちゃんの個性をコピーさせてということだったのだろう。

 

 コピーに加え、さらに相手の心も読むことが出来る。というより、こちらが個性の主能力だという。

 

 デメリットもいくつかあるようで、使い勝手のほどは良く分からないけど、現時点で僕が得られた情報から推察すると、かなり強い個性だ。

 

「デ、デク君。ぶつぶつ言ってて怖いよぅ……」

「え、ご、ごめん! 口に出てた! あはは……」

 

 ぶつぶつ言いながら考えてしまうのは僕の悪い癖だ。

 

「さあ、少年少女! そろそろ始めるから、しっかり目に焼き付けるんだぞ!」

「「はい、先生!」」

 

「あー、あー、聞こえるかな? さあ、少年少女! いよいよだぞ、屋内対人戦闘訓練、スタートだ!!」

 

 いよいよ訓練が始まった。

 

 訓練開始の合図と同時に古明地さんが部屋を飛び出す。作戦通り、砂藤君を素早く倒すようだ。

 

《――想起『テリブルスーヴニール』》

 

 砂藤君との戦闘が始まって、古明地さんはすぐに個性を使った。

 

 光を自分の周り展開し強烈な光を放つ技のようだ。これも誰かの個性をコピーしたものなのだろうか。

 ただ、砂藤君に目に見えたダメージはないし、目くらましにしても、古明地さんがすぐに攻撃するそぶりも見せない。何のために使ったのかよく分からないけど、攻撃前の準備だったりするのかな。

 

 結局、光の技の正体はよく分からないまま、近接戦闘が始まった。

 

 砂藤君の素早い拳を、余裕を持って回避する古明地さん。なるほど、近接が主のスタイルである相手なら、心を読んで回避できる。砂藤君と戦闘の相性がいいと言っていたわけだ。

 

《あらあら、私を差し置いて地面と戯れるなんて、よっぽど地面の事が大好きなのですね。とっても無様で滑稽なヒーローさん?》

 

 砂藤君が地面に倒れると、悪戯(いたずら)が成功した子どもの様に無邪気に笑い、これでもかと煽る。相手の集中力を切らすためにやっているのだろう。心が読める古明地さんらしい戦法だ。

 

「うわぁ… なんつーか、古明地って結構えぐい事すんなぁ……」

「集中力を乱そうとしてるんじゃないかしら。古明地ちゃんは普段やさしいけど今はヴィランだからだと思うわ」

 

 クラスの皆の反応はマチマチで、切島君はちょっと引いている感じ。たいして蛙吹さんは状況を判断して古明地さんの煽りを的確に分析している。普段、古明地さんと蛙吹さんは一緒にいることが多いし、信頼している部分もあるのだろう。

 

 その後も古明地さんはヒット&アウェイを繰り返しついには砂藤君を倒した。圧倒的な勝利にオールマイトも含め、クラスのほとんどが驚いていた。

 

「古明地さん凄いね、デク君! 砂藤君の猛攻もサッと避けちゃうし、なんかこう~かっこよかったね!!」

「そ、そうだね凄かった」

 

 砂藤君との戦闘の後、古明地さんはいったん部屋に戻り今度は障子君が葉隠さんの対処に向う。そして、障子君が葉隠さんに難儀している中、轟君と古明地さんの戦闘が始まった。

 

 一言で言うと、圧巻だった。

 

 轟君は氷の個性を使い、古明地さんは轟君のお父さんであるエンデヴァーの『ヘルフレイム』をコピーし、氷と炎がぶつかり合った。

 

 古明地さんはこの戦いでも相手のトラウマを抉るようなことを言っているようだった。内容はところどころ聞き取れなかったけど、どうやら轟君の家庭のことの様。家族の仲でも悪いのだろうか。

 

 そして、おそらくお互いの最高火力がぶつかり合い、水蒸気爆発が起きた。このモニタールームは古明地さんたちが戦っている建物からだいぶ離れているけど、その衝撃が少し伝わってきた。

 

 障子君も多少手間取っていたものの葉隠さんを危なげなく確保し、すぐに古明地さんに加勢、結果は古明地さんと障子君のヴィランチームの勝利となった。

 

「ヴィランチーム…… WIIIIIN(ウィーーーン)!!」

 

「おおー!! すげぇぜあいつら! ハンデ有りとはいえ、三人チームに勝ちやがったぜ!」

「どちらのチームも素晴らしかったね☆ 僕も頑張らなくちゃ☆」

「古明地ちゃんと轟ちゃん、怪我が酷そうだけど大丈夫かしら……」

 

 オールマイトの勝利宣言とともにモニタールーム内も大いに盛り上がる。凄い戦いだった。みんなの個性もそうだけど、それを生かした戦闘スタイル。帰ったら早速ノートにまとめなくちゃ。

 

 戦闘の後にも古明地さんと轟君が何やら話していたが、インカムが壊れてしまったのかモニタールームに音声は入ってこなかった。

 

「さあ、少年少女たち! 彼らが帰ってきたら講評の時間だ! 皆にもいろいろ意見を聞くから、そのつもりでな!」

 

 

 

***

 

 

 

「着いたぞ古明地」

「ありがとうございます。すみません、障子君も疲れているのに()ぶってもらって」

「気にするな」

 

 結局、モニタールームまでほとんど障子君に背負ってもらっていたので、なんというか不甲斐ない…… 戦闘では割かしかっこいいとこ見せられたと思ったんだけどなぁ。

 

「障子ぃぃぃい! てめぇぇぇぇええ! 古明地おんぶするとか、役得すぎるだろうぅぅう!!!」

 

 モニタールームにつくや否や、私の半分くらいの背しかない男の子が血涙を流しながら走ってきた。ホラーかな?

 

 えっと、確か…… 峰田君。

 

 頭にブドウの房みたいに丸いボールがついているが、アレを取って壁に張り付けていたのを見たので、そういう個性なのだろう。……何に使うんだ?

 

「ところで障子、どうだった?」

「何がだ?」

 

「アレだよア・レ! 古明地おんぶしてたんだろ? 胸の感触はどうだったよ?」

「気にしてなかったから良く分からん」

「はぁぁああ?! お前バカだろ?!」

 

 峰田君が何やらいやらしい表情で障子君に話しかけているが、そういうことは私がいないところでやってくれ。あとヒソヒソ声で話してるけど、思いっきり私に聞こえてるよ?

 

「よしよし、みんな戻って来たな! ダメージが多そうな古明地少女と轟少年は講評を聞けるだけの余裕はあるかな?」

 

「……俺は大丈夫です」

「私も大丈夫です。授業終りにリカバリーガール先生のところに寄るくらいで問題ないでしょう」

 

 私の場合、外傷はあまりなかったので、もうほとんど大丈夫だ。っていうか轟君マジでタフだね…… 障子君のパンチをモロにもらっていたはずだけど……?

 

「よし、講評を始めよう! つっても今回のベストは障子少年だ! 次いで古明地少女!」

 

「やっぱり勝ったチームの方がいい評価をもらえるのかしら?」

「ん~! 勝ち負けはあんまり関係ないぞ~? なぜこの二人なんだろうな~~~~~? 分かる人!!?」

 

 オールマイトが勢いよく手を上げて挙手を促す。勢いよく上げすぎたせいで、こちらにまで風圧が来た。さすがNo.1ヒーロー。

 

 それにしても勝ち負け以外で評価された部分はどこだろうか。ヴィランの演技頑張ったからそこを評価してもらえたかな?

 

「ハイ、オールマイト先生。それはヴィランチームのお二人が一番状況設定に順応していたからです。お二人ともヴィランになりきれていたと思います。作戦も見事でした。古明地さんが二番目なのは、轟さんを挑発しすぎたせいで危機に陥っていたからでしょう。

 

 轟さんは挑発されて、『核爆弾』があるのにも関わらず高火力の技を放ち減点。砂藤さんは古明地さんに行動が読まれているのに単調な攻撃をそのまま繰り返していました。葉隠さんは可もなく不可もなくといったところでしょう。

 なので、ヒーローチーム内の順位は葉隠さん、砂藤さん、轟さんといった感じでしょうか」

 

「まあ…正解だよ。くう…!」

「常に下学上達! 一意専心に励まねばトップヒーローになどなれませんので!」

 

 オールマイト、「思っていたより言われた!!」って内心で若干落ち込んでるけど、そんなに気にしないで。

 

 それにしても八百万さんはさすがの分析力だ、推薦入学者なだけある。まあ、そのエロいレオタードのコスチュームはどうかと思うがな!

 ……もちろん、決して、八百万さんのナイスバディが羨ましいわけではないのは、確定的に明らかなところである。

 

「今回、(ふる)わなかった人は反省をしっかりして次回頑張れば大丈夫だ! さあ、次のチームいってみようか!!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「お疲れさん!! 緑谷少年以外は大きな怪我もなし! しかし真摯に取り組んだ!! 初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」

 

 私たちの後も順々に戦闘訓練が行われ、すべての訓練が終わった。緑谷君の個性はどうやら反動が強いみたいで、十分に制御できておらず訓練で重傷を負っていた。強い個性なのにもったいない。

 

 ……ん?

 

 何か、オールマイトがやけに慌てている気がする。緑谷君のお見舞いに早くいきたいからか? いや、それにしては……

 

 気になる……

 先生、すみません心読みます……!

 

《マズイ…… そろそろ限界だ…… 授業やってるとマッスルフォームを保つのもギリギリだ…》

 

 限界?

 もう少し、深くまで読んでみよう。

 

 ……どうやらオールマイトは五年前に大きな怪我を負って、筋肉ムキムキの身体を維持するのに制限がついてしまったらしい。

 怪我を負った事件の詳細は読めなかったけど、もし仮にオールマイトが弱体化していることが世間に広まったら混乱は避けられないだろう。

 

 んで、授業をやっているとその制限ギリギリで、今すぐ生徒の視界から外れたい、と。

 

 

 なるほど、これは――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――オールマイトの後をつけるしかありませんねぇ

 

 

 思わず、ニヤリと口元が緩む。

 いけないいけない。誰かに見られたら気持ち悪がられてしまう。 

 

「それじゃあ、私は緑谷少年に講評を聞かせねば! 着替えて教室にお戻り!」

 

 そういうと、オールマイトは目にもとまらぬ速さで演習場の出口通路を駆け抜けていき、途中の職員専用通路の扉を開けて中に入っていった。

 

 クラスの皆には少し用事があると適当にごまかして、私はオールマイトが入った扉へと向かう。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ゴホッ、ゴホッ。やっぱり授業やってると時間ギリギリだ…… シット……」

「大変そうですね、大丈夫ですか?」

 

「――ッ!? や、やあ。こんなところでどうしたのかな? こ、ここは先生しか入っちゃダメなところだよ? あ、わ、私はここの先生なんだ」

 

 職員専用通路に入ると、筋肉ムキムキの姿とは似ても似つかない、痩せ細ったオールマイトが壁にもたれかかっていた。オールマイトはゴホゴホと咳き込みとても辛そうである。

 話しかけると自分がオールマイトだと悟られないように必死に(つくろ)っているが、焦っているのが丸わかりだ。

 

 

 そして、私はそんなオールマイトにニッコリ微笑(ほほえ)んで語りかける。

 

 

「――そんな他人行儀にしなくても大丈夫ですよ、オールマイト先生(・・・・・・・・)?」

 

 

 

 




2017/06/15 描写の追加
2017/06/16 注意書きに文言の追加
2017/06/17 峰田君と八百万さんの口調の修正

話が進んでない?
知らんな!←( ゚д゚)

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