由比ヶ浜には姉がいる   作:Ginkaaaaaa

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五話 夏休みと奉仕部の活動

ところ変わり夏休み。

俺は小町のために参考書を買いに来ている最中、あまり会いたくない人と会ってしまった。

由比ヶ浜夕紀、由比ヶ浜の姉であり、由比ヶ浜とはあまり性格が似ていない人物。しかし、時たま見せるやさしい表情は、由比ヶ浜によく似ている。

 

「奇遇だね、比企谷くん」

「………そうですね」

 

俺のそんな心情を無視しながらもこちらに向かってくる、夕紀先輩。なんだか今日の俺、顔見知りのエンカウント率が高すぎやしませんかね。さっきも雪ノ下とかと会ったし。……まあ雪ノ下はこっちのことをガン無視したけどな。夕紀先輩も俺のこと無視してくれればいいのに。

 

「ん?その参考書は……君にも妹か弟がいるんだね」

 

俺が手に持っている参考書に視線を向けながら俺に言う夕紀先輩。

確かに俺には小町という天使がいるが、夕紀先輩には教えたことはない。なんならこの先も自ら教えるつもりはなかった。

 

「何で知ってるんですか」

「だって君の持っている参考書は中学三年と書かれているじゃないか。それにそれは国語。君は確か国語は学年三位と得意な教科だからね、復習として見るには少々学年が低い。つまり君には中学の妹か弟がいるってことだね」

 

訝しそうに目線を送ると、夕紀先輩はくすくすと笑いながら答えてくた。

ていうか、俺の国語の順位まで知っているのか……。本格的に何者だこの人。

 

「あぁ、何で私が君の国語の順位を知ってるか疑ってるんだね。簡単だよ、君と最初にあった日、私は平塚先生といただろう?その時に“たまたま”国語の順位が載っているプリントを見かけたんだよ」

 

…………絶対嘘だろ、これ。特にたまたまとか、うんくせぇ。とかいって、この人が何をしたのかは気になるが聞くのが超怖い。

 

「夕紀ー!」

 

突如、夕紀先輩の背後から声が聞こえる。声の主はどうやら夕紀先輩を呼んでいるらしい。

 

「む?どうやら知り合いがきたみたいだ。私はこれで失礼させもらうよ」

「あっ、はい」

「………それと小町ちゃんにもよろしく伝えておいてね」

「………………はい?」

 

 

何で知ってるんですか、そう言おうとしたら夕紀先輩はその知り合いの下へ行ってしまい、聞けずじまいになってしまった。

ホント、なんで俺の家庭環境知ってるんですかね……。

 

 

   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

ところで夏休みを別の言い方にすると夏季休暇となる。この休暇の意味はいたって簡単だ。夏季の暑熱の回避が主だ。要するに、暑いから休もうぜ!だ。もちろん他にも何かしら要因はあるが、これが主な理由だ。ほら、暑い日に学校とか行きたくないだろう?

そんな夏季休暇に、出動命令が出た。もちろん奉仕部に。

小町に言われて外に出たら、見事平塚先生に捕まった。まさか敵があんなに近くにいるとは……小町、恐ろしい子!

そんなわけでただ今俺はワンボックスカーの助手席に座っております。

さて、次は不思議な点だが、なぜここに夕紀先輩がいるんでしょうか?先日も会って今日も会うとかもう運命しか感じねぇ、そんな運命は嫌だけど。

 

「その顔は、なぜ由比ヶ浜姉がいるのか気になっている様子だな」

「ええ、まあ」

 

俺の考えを読んだのか、運転席にいた平塚先生はどうやら俺に答えをくれるらしい。

 

「簡単なことさ、彼女は由比ヶ浜の姉だろう?だから由比ヶ浜がお願いしたんだ。『お姉ちゃんも手伝ってくれない』って」

「そうだったんですか……」

 

案外、シンプルな理由だった。なんかもうちょっと……あの平塚先生あたりが強制的に……なんでもないですからそんな目でこちらを見ないでください。

ていうか、さっきから平塚先生、俺の心の中のぞきすぎでしょ。アンタはエスパーか。

 

 

「比企谷くん、今日はよろしくね」

 

後部座席から身を乗り出してきた夕紀先輩。近い、柔らかい、いい匂い。

 

「よ………よろしくです」

 

何とか出た言葉、その言葉に夕紀先輩は微笑む。まるで俺が言葉に詰まるのを知っていたみたいに。

やはり、この人は少し苦手だ。底知れぬ恐怖がある、陽乃さんの目に見える恐怖じゃなくて、そこが分からない、それこそ底なし沼のような恐怖が。

 

 


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