鴉か夜叉か   作:鮭愊毘

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エースのアフロと疑惑のアフロ

Zさん、あなたの友達候補の柱さんは新人ですよね?もしそうなら、彼を仕事に連れ出し質問をさせれば会話は生まれます。

それと、柱さんは『〇〇じゃない〇〇だ』という言葉を使いますか?使うとしたら彼は柱でもアフロでもありません。ストレートロングのヅラです。

 

 

この返信をもらった終は柱をある場所に呼び出す。その呼び出し方が『お前ちょっと体育館裏来いよ』みたいな感じだったので柱はビクビクしていた。

 

終が柱を連れた場所には、なんと真選組の隊服を着たエリザベスが逆さ釣りされていた。

 

柱はこれを見て拳に力を入れ震えていたが

 

「いいサンドバックですねこれ!」

 

エリザベスを思いきり殴る。

 

「どこで見つけたんすかこれ!うちにも一つほしいなぁ!(エリザベス、今は耐えろ。お前の仇は俺が必ず……)」

 

しかしエリザベスからのカウンターを受ける。そして終は『Zザべスのエサやり当番』というボードを取り出す。彼はエリザベスをZザべスとして手懐けていたのだ。

 

「うそだ……嘘だァァァ!!」

 

 

 

~一か月後~

 

 

攘夷志士の潜伏しているビルへ真選組が到着する。そして隊士の指揮を執るのは

 

「行くぞ。真選組三番隊アフロ部隊突入だ!!」

 

「「おぉー!!」」

 

阿腐郎。さらに周りの隊士も全員アフロになっていた。

 

ーーーー

 

「三番隊アフロ部隊の帰還だ~!かぶき町にて過激派攘夷志士と目される36名を一斉検挙!阿腐郎隊長がやってくれたぞ~!」

 

さらに彼は真選組のエースとして皆から尊敬される存在となった。

 

「おお、今日もやってくれたかエース殿」

 

「フン、これぐらいやってもらわないと困るぜ」

 

「――と言って内心凄く焦っている土方であった」

 

「局長……副長……沖田殿……」

 

「柱、これからもよろしく頼むぞ!」

 

「ああ。共に江戸の平和を護って行こう!」

 

 

 

 

 

 

屯所を出、桂は空を見上げる。

 

「うむ。今日も江戸は平和だ」

 

「じゃねぇだろ~!!」

 

そこに待ち構えていた銀平のひと蹴りを食らう。

 

「ああ……ヅラが……」

 

転げ落ちたヅラを拾い上げる銀平。

 

「はいヅラ」

 

「ヅラじゃなくて桂……じゃなくて今は柱だ」

 

「お前いつから……」

 

「言わなくてもわかるぞ。なぜ俺が真選組に加入しているのかだろう?理由は簡単、真選組の前にあのアフ狼を排除するためだ。やつは無口。これを利用し、奴の三番隊をダブル隊長体制にし、俺を信用させる。その後に奴のあらぬ噂を吹き込めば……ということだ。奴は明日処断される」

 

これを聞いた銀平は屯所に侵入し、終が囚われている建物を見つけ、近くにあった木箱などを使い彼の顔が見える位置までよじ登る。

 

「おい!このまま黙ってると処刑されるぞ!お前の友達になろうとしていた男はお前が一番斬らなきゃいけないやつだったんだよ!」

 

しかし終は下を向いたまま涙を一滴落とす。

 

「Z~」

 

それは涙ではなく、よだれだった。

 

 

 

ーーーー

 

斎藤終処断の日――

 

 

「まさかこんな日が来ることになろうとは。あの終が隊規違反を犯すなど……」

 

「終兄さんは無口だから誤解を招きやすい。考えすぎじゃありませんか柱さん」

 

「俺だって信じたいさ。だが真実を捻じ曲げるわけにはいかぬ。それに古株の仲間とはいえ彼のことを知っているのか?語り合ったことがある者がいるのか?」

 

「言葉なんぞ交わさなくても行動でわかるさ。……だがこうなった以上、自分の口からことを言わせるしかない」

 

「土方さん、終兄さんは口が……」

 

「あのー」

 

近藤たちが話している中、あまり聞き覚えのない声が割り込んでくる。

 

「どうでもいいけど早くしてくんないっすか?さっきからコソコソコソ、堂々と語り合いましょうや」

 

この声の主は終。突然喋った彼に周りの隊士が驚愕する。

 

「しゃ、喋ったァ!」

 

「あの斎藤隊長が!?」

 

「ど、どうした終……」

 

「どうしたも何も、首がかかってんのにだんまり決め込むとでも?ゴリラどんだけ~。無口なミステリアスキャラもクソもないって話ですよ。そんな設定した覚えないですよほんと局長どんだけ~」

 

「おいィィ!!堰が切れたように喋り倒してんぞ!!」

 

「喋っちゃダメなんですか?じゃあ帰っていいですか?社長が土管から復活するとこ見直したいから帰っていいですか」

 

「あいつあんな喋り方だったの!?なんかショック!」

 

終がこんなに喋れているのには理由があった。

それは彼の胸元につけられている機械により、後方から銀平がアテレコをしているからだ。

 

ーーーー

 

「おー、結構バレないもんだな」

 

「あれだよ。コ〇ンのあれだよ」

 

しかし、アテレコをしていたのは銀平一人だけではなかった。

 

「あーなるほど」

 

ーーーー

 

「どうりでバレないわけだ」

 

「斎藤殿今の発言は何だ!やはり何かよからぬことを隠しているな?」

 

先ほどの会話も全て相手に聞こえてしまった。

ちなみに、銀平と共に終のアテレコをしている人物の名は服部全蔵。元御庭番衆筆頭 現フリーターの忍者である。

彼と銀平が出会ったのは数時間前……

 

ーーーー

 

全蔵はジャンプ愛読者である。バイトをこなしながら毎週ジャンプを買い、穴が開くほど読む。このことでかつて侍(銀時)と争ったこともあった。

 

「ハァ~……」

 

今日は愛しのジャンプの発売日。しかし彼はジャンプを買いそびれてしまった。『こういう日もあるよね』と自分を慰めてはいるのだが、中々立ち直れない。そんな中、彼の前にジャンプが差し出される。

 

「ほら」

 

「……ん?」

 

全蔵はジャンプを差し出して来た銀平を銀時と思っている様子だったので、銀平は名を名乗り、誤解を解く。

 

「どうりで顔が似て……ん?」

 

「兄さんから聞いてるよ。職は持ってなくても痔は持っている忍者 ハットリ君……だろ?」

 

「あいつどういう説明の仕方してんだァァ!!それに"はっとり"違いィィィ!!

 

……ああそうだよ。俺はただのフリーターさ……痔の事はそっとして置いてくれ……」

 

「そうか。じゃあ声優やってみないか?」

 

「え?」

 

「時給2100円」

 

「正規雇用より高くね!?」

 

全蔵は最初は断った。しかし『時給2100円』に結局負けてしまい今に至る。

 

ーーーー

 

「……」

 

「おい斎藤殿!聞いているのか!」

 

「あ?聞いてんだろオラ」

 

今のアテレコは全蔵である。ついオラと言ってしまったが、銀平と交代してペースを戻す。

 

「あっ、すみません。今のオラっていうのは挨拶。そう挨拶。外国の」

 

オラ ※スペイン語で『こんにちは』

 

「なんで今挨拶した!?……にしてもそんな挨拶聞いたことないぞ」

 

「知らないんですかぃ土方さん?ここ日本の外には100を超える国々があるんですよ。つまり、終兄さんは実はスペインから来た人……であってますかぃ?」

 

少し悩んだ素振りをして答える終。

 

「惜しい。日本人じゃないことは確か」

 

ーーーー

 

「いつの間に外国人設定になってるが大丈夫か?というか俺に喋らせてくれよ。給料が……」

 

「はいはい」

 

再びアテレコを全蔵へ。

 

ーーーー

 

「じゃあ母国は」

 

「何いってるかわかりませんよ土方さん」

 

「母国。故郷のことね」

 

「何いってるかわかりませんよ土方さん」

 

「……母国!答えねぇと処刑だコラァ!!」

 

終の返答にストレスが溜まっていく土方。

 

 

「ナニイッテルカワカリマセンヨヒジカタサン連邦」

 

 

終がどや顔を見せる。といっても口元は見えていないが。

 

「それ国名だったの!?総悟の言う通り世界は広いな!」

 

「いい国ですよくたばれ副長」

 

「おい今なんつった!!」

 

「ごめんなさ~い。私の国で『くたばれ』は日本でいう『~さん』。つまり、さっきは副長さんって言ったんですよ。誤解させてすみません」

 

すぐに謝る終にあっけを取られる土方。

すると近藤と総悟も終と同じ呼び方をしようと提案する。

 

「じゃあ俺たちもそうしたほうがいいかもなくたばれ副長」

 

「おめぇらまでやんなくていいんだよ!」

 

「そういうことなら仕方ないですよね く た ば れ 副長」

 

「今のは完全に暴言だったろ!!」

 

沖田たちに続き隊士も続く。

 

「「「くたばれ(くたばりやがれ)副長ー!!」」」

 

「いまくたばれに混じってくたばりやがれまで混じってたぞ!!」

 

「おー。いまの『くたばりやがれ』は『~様』って意味ですよ土に顔突っ込んで窒息しながらくたばれ副長」

 

「マジで殺してやろうかてめぇ!!」

 

 

 

 


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