死を軽く見てはいけない
「旦那、そろそろ店じまいだ。最近は物騒だぞ」
「はぁ~?そんなのいつものことだろぉ~?」
深夜、銀時はある居酒屋で酔っていた。
「お前さん、酔っ払い狙った辻斬りの話、知らないのかい?一昨日も路地裏で死体が見つかったってね。でその死体が奇妙でね、一見ただの酔っ払いに見えるんだが、首の皮一枚残してバッサリ。そのせいで『死神の仕業じゃねぇか』って話もある」
「だ~から人がいねぇのか~。死神でもいいからいっぱい付き合ってほしいもんだ」
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「アホらし。な~にが首の皮一枚だ。そんなの俺もやろうとすればできる……」
銀時は千鳥足で自宅を目指す。
「それ本当ですか?」
「あ?」
突然聞こえる人の声。その方を銀時が向くと、そこにはドクロ顔の死神。
「ならお願いしたいのですが……私の介錯を」
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「君が切腹なんて……思い直したほうがいいよ……なんて言ったらいいか……元気出せよ!」
「あなたに私の何がわかるって言うんですか!!」
突然キレだす死神。
「イヤ……色々丸出しだし」
「人を見た目で判断しないでください!」
「……」
この後も銀時が何とかこの死神の介錯をしない方向へ話を持っていこうとするが、失敗。
「私はこの手で奪って来た命の償いをしなくてはいけないんです」
「でもそれ、死神としての仕事でしょ?みんなわかってくれてるって……」
と、次の瞬間、死神は切腹する。
「お、お願いします……介錯を……はやく楽に……!」
「後悔しないね?俺の命縮めたりしないね?」
「いだだだ!死ぬゥ!死ぬゥ!!」
暴れだす死神。そのせいで中々介錯ができない銀時。
「行くぞ……」
刀を振り上げる銀時、しかし彼の鼻にハエが入りその時出たくしゃみのでいで刀を壁に刺してしまう。
「ま、まだですか!」
「まってろ!今狙い定めてるから!」
こう言って刀を引き抜く銀時。しかし引き抜くことに成功したが、先端が折れてしまう。
「そろそろマジで痛いんで……お願いします……」
「わーってる!それがお前が奪って来た者たちの痛みだ!」
ガムテープで折れた先端をくっつけ、死神に振るう。だが、刀を振り上げた時に先端が銀時の頭部に刺さり介錯はできなかった。
「ちょっとォォ!!なにやってんですゴヘェ!!」
腹から血とモツが出ている死神。
「ごめんなさい!やっぱ無理!」
「もう遅いんだよ!こっちは内蔵出てんだぞ!」
「ある意味俺も出てるから!おあいこってことで!」
「今更おじけついてんじゃねぇ!殺れェ!私を殺せェェ!!」
モツで銀時の首を絞め始める死神。
「死ぬ!こっちが死ぬゥ!!」
銀時はこのままでは自分か死ぬことを察し、近くにあった石を死神の頭部にぶつけ気絶させる。
「介錯というか……ただの殺人になったァァー?!どうしよう……俺のせい?これ……
あ、そうだ!」
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銀時は万事屋に何事もなかったような顔をして帰宅。
死神を背負って。
「サイレンうるさいな。何か事件でもあったのかな?」
「今ここで事件起きてんだろうがァァ!!何死神連れてきてんだ!」
血だらけで銀時にくっついている死神を見て新八が叫ぶ。
「ほら、あれだよ……銀平、お前攘夷戦争の時、軍医だったろ?」
「といっても切り傷とか弾丸の撤去ぐらいだぞ?できるの。
それよりもっと楽な方法があるぞ」
「え?」
「自首」
「……」
「自首」
「聞こえとるわ!これは正当防衛だし介錯を頼まれ……」
「介錯はもういりません」
すると寝かせていた死神が起き上がり、ドクロの面を横にずらす。
「に、人間!?」
「いいえ、死神です。池田朝右衛門。罪人の首どころか自分の首すら切り落とせない哀れな死神です」
そう言うと彼女は万事屋から立ち去ってしまった。
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「池田朝右衛門……幕府の首切り役人に首切ってくれなんて頼まれるなんて思わなかったよ」
夜、立ち去った朝右衛門を見つけ、池田家のところまで連れて行く銀時たち。朝右衛門は神楽と共に定春に乗せ、銀時は原チャリに新八ともに搭乗。
残った銀平は真挑組だったころの金で購入したバイクに乗って池田家を目指す。
「私も首切りに手を貸してくれと頼んだのにセクハラされるなんて思いもしませんでしたよ」
「だから触ってないって言ってんだろ」
「死神はね、女の子より一つ触ってはいけない"パイ"が多いんですよ」
「だからおっぱいなんて触ってないって……」
「"パイ"レーツオブ狩美闇」
どうやらこれは彼女が頭につけているドクロのことのようだ。
「ただのドクロだろうが!」
「死神の神聖なおっパイに触ったからには"うちくび"は免れません」
「そんなナリでどうやって打ち首にするんだか」
今の朝右衛門は縄で腕を拘束されている。
「打ち首じゃありません。うっ乳首です」
朝右衛門の手にはピンク色の丸い球。それを道路に飛ばす。
銀時は左胸が出血している様を見て動揺。丸い球こと乳首を回収しようとするが、車に潰されてしまった。