「もうくだらん喧嘩は終いだ。うちの店においで。仲直りの宴会といこうじゃないか」
「はぁ!?」
「平子、あんたもだよ。あんたは色々やってくれたからねぇ・・・タコ踊りの一つや二つじゃすまないよ!」
「ババア!こっちはそんな場合じゃねぇんだよ!」
ヤクザの一人がお登勢に叫ぶ。
「……ほら何やってんだい。こんなバーさんが重傷の身体引きずって来たってのに立てねぇとは言わさないよ。くだらん喧嘩はおしまい。こっからが江戸の華、本物の喧嘩といこうじゃないか。あんたらが守らないで誰がこの街守るんだい?向いてる方向は一緒でも、根は一緒だろ?ヤクザも、オカマも、キャバ嬢も、侍も。みんなこの町が好きなだけじゃないかい。ただ、それだけじゃないかい」
次の瞬間、辰羅がお登勢に急接近する。だがお登勢はその場に立ったままだ。
「おい、わしらより先んじて四天王の
そこに勝男が現れ、辰羅二人を屋根に叩きつける。
「何しとるんじゃ己らァ!借りたモンは三借りたら七返せ言うたろうが!のぅ、バーさん」
「ああ。私たちの、かぶき町の力、見せてやろうじゃないかい」
「か、勝男……」
「お嬢、わしらは皆、オジキに拾われた、社会からクズどもです。オジキんためなら、このクズみたいな命、捨てる覚悟はできてる。せやけど、オジキが護ってきたこの町を、捨てることだけはできへん。わしはかぶき町に通す仁義ってモンがある。見とってください!これがあんたの親父が護ってきた町です!!
行くでェェ!!次郎長一家の名、宇宙中に轟かせろォ!かぶき町はァ、わしらのモンじゃァァァ!!」
勝男により士気が高まった次郎長一家は次々と辰羅を倒し始める
「あんたらヤクザのもの……?違うね。お前らァ!思う存分暴れられる時が来たよ!かぶき町は……あたしらオカマのモンじゃァァァ!!」
西郷達オカマもそれに続く。
銀平もそれに続き、辰羅を斬っていく。斬れば斬るほど彼らの返り血が身体に付着していき、髪が赤く、そしてだんだん黒くなっていく。これが彼が"黒夜叉"と呼ばれる理由。攘夷戦争時代のようにはなっていないが、傍からみれば今の銀平は
「テメェらにはわかりゃしねぇが、これが……これが、かぶき町だァァァ!!」
ーーーー
かぶき町、そして銀時と次郎長の決着がついた夜、傷の深いものは大江戸病院で安静にしてた。しかしそこに、後がなくなった華陀が復讐しにここへ来た。
すると、彼女の背後から部下が斬られ倒れる音と同時に平子の声が聞こえてくる。
「待ってましたよ華陀様」
「お、おぬし!ぬかせ!一番の邪魔物が貴様だとまだわからぬか!!」
「わかってますよ。邪魔物は消えます。ただし、邪魔者を道連れに……」
「消えるのは貴様だけじゃァァ!!」
華陀がこう叫んだ瞬間、彼女は気を失い倒れる。
「あ、アニキ……」
「道連れねぇ……そんなの、誰も望んではいないさ。で?平子、お前はどうする?」
華陀を気絶させた銀平が平子に問う
「私の役目はもう終わりました。後は煮るなり焼くなり何なりと……」
「先に言っとくが、お前の親父に関することへの礼は俺の兄の方の"兄貴"に言いな」
「……私はもういいんです。私の待ってた親父は……もう、帰ってきたから……」
こう話す平子の目からは涙が流れる。
「最後に、私をかぶき町の住人として扱ってくれて……ありがとうございました!どうか、落とし前を……!」
頭を下げる彼女に、銀平はある紙切れを渡す。
「落とし前?俺は、いや、俺たちはお前に恨みなんか抱いちゃいねぇよ。その命、大切にしな」
こう言って銀平は夜の闇に消えていった。
ーーーー
翌日、平子は銀平の渡した紙に書いてあった場所へ向かった。そこには、一人の男が立っていた。
「アニキ……ですか?」
するとその男は彼女に右手の平を上に向け、こう話し始める。
「お控えなすって。あっしは生まれも育ちも江戸はかぶき町。ならず者の町にて、ならず者として生き、ながらく刀槍剣戟の中に身を置いておりやしたが、兄弟たちの助けにより己の真にゆくべき道を諭され恥ずかしながら渡世の道すがら落としてきたものを詫びる旅をしておりやす。
名は大親分、大侠客色々呼ばれてきやしたが、今はすべて捨てやした」
そしてかぶっていた編み笠を取り、顔を見せる。
「椿平子が父 次郎長と申すものでござんす
失礼ながらお手前は」
「あ……あっしは……江戸はかぶき町……万事屋一家が末弟……行方不明の父を探す旅をしておりやす……兄弟達の……厚き義侠の心によりここまで……きまし……た
次郎長が娘 椿平子と申します……!」
「こんなところで出会ったのも何かの縁
よろしければ……あっしもご一緒させちゃくれやせんか」
ーーただいま
~完~