晴太は日輪の元へ歩く。そして彼女に『帰ろう』と言っても日輪は何もしない。いや、出来なかった。彼女は足の筋を切られ、歩くどころか立つことすら不可能だった
「8年前と同じだな。希望を託し地上にワッパを逃がす様。全く同じだ。一つ違うのは、今回ワッパは逃げられぬということだけだ。日輪、お前は母親などになれはしない。それを今証明してやろう。そのワッパを殺して」
「やれやれ・・・ホント、あんたも変わらないね」
「何を言いたい?」
神威が鳳仙に物申す
「8年前から進歩してないってこと。遊女を傷物にし、モノとしての価値を奪ってもなおそばに置くなんて。どうやらあんたにとってあの女、道具としてではなく、一人の女として必要らしいな」
「必要?その逆だ。わしはこれまでこの力で金も、権力も、女も手にしてきた。しかし、それでも手にできないモノもある。わしの、いや夜兎にとっての唯一無二の天敵、そう、太陽だ!どんな逆境にもにも耐えるその姿、まさしくあの忌まわしき太陽!これがあるかぎり、わしの渇きは癒えることはない。
太陽を屈服させる。それ以外にわしの魂の渇きを癒す術はない!日輪、お前の全てを壊し、お前の全てを―――」
鳳仙の言葉が途切れる
「ん?貴様は・・・あの男の敵討ちか?」
「敵討ち?それよりあの人を太陽と重ねて足切って監禁?どんなプレイだじーさん」
鳳仙をじーさん呼ばわりしたのは銀平だった。彼は腰の二本の刀を抜き、鳳仙に挑む
鳳仙が番傘を振り下ろす。それを防ごうと刀を交差させる銀平。刀が傘に接触する瞬間、彼は横向きに回避し、右腕を突き出す。しかしその時の刀の向きが普通の刀なら鳳仙の逆側にくる向きだった。だが彼が右手で持っていた刀は峰と刃が逆転した逆刃刀。刃は鳳仙の方を向いていたため、手前に引くように斬り、鳳仙の肩に傷を付けられた
「貴様・・・何者だ?」
「昔はこんな暗い色した格好から黒夜叉なんて呼ばれてたけどな。今は・・・そうだな、ロン毛のおっさん・・・かな?そういう意味ではあんたと同類」
次の瞬間、鳳仙の足元に大量のクナイが刺さる
「貴様らァ!何の真似だ!!この夜王に盾突くなど!」
「わっちらは悪い客にひっかかっただけじゃ。吉原に太陽を打ち上げるなどと聞かされた。この者たちも皆、その男に騙されたクチでのう」
鳳仙の周りを月詠率いる百華が囲む
「まったく・・・信じてみればこのザマ。笑わせるではないか。太陽などどこに上がっている?信じたわっちがバカだった。この・・・大ボラ吹きめが!!」
月詠が銀時にクナイを一本投げる
しかし、それは銀時に刺さることはなかった
「太陽なら上がってるじゃねぇか。そこらにたくさん」
銀時は立ち上がり、地面に刺さっている真剣を抜きとる
「なぜ立ち上がる!なぜ死なぬ!なぜ・・・貴様はその眼をしている!!」
「行けェ!!晴太ァァ!!」
銀時たちが鳳仙に再び挑む。そして銀平は晴太と日輪の護衛についた少数の百華と共にこの場を去る