オラリオの黒騎士   作:コズミック変質者

8 / 8
色んな作品に浮気してました。作者デス!

半年以上更新しないで本当にすいませんでした!
更新しなかった理由はモチベーションの低下、感想欄に書かれていたレフィーヤについて、そして今後の展開、違う作品を作ったり。

今年から受験生ということもあり、早くて月一更新になりますが、止まらずに続けていこうと思っています。

最後に、期待して更新を待ってくれた皆様、本当にすいませんでした。




ミハエル・ヴィットマンが敗れたという情報は、一夜どころかものの数刻でオラリオ中に、はたまたオラリオの外にまで広がった。

 

ミハエルの戦闘を目撃していた者が広めた話では、白い髪に黒い眼帯を付けた少年が馬ではない高速で動く何かに乗り、ミハエル・ヴィットマンを終始圧倒し、殺気だけでロキ・ファミリアの第一級冒険者数人を倒した、と。

 

この情報でオラリオ内は恐慌状態。ギルド、そしてフレイヤ・ファミリア団長であり、唯一ミハエルに並ぶ可能性があったオッタル、そしてロキ・ファミリア団長のフィン・ディムナを中心として、眼帯の少年の捜索に当たった。

 

当初、同じ白い髪ということでヘスティア・ファミリアのベル・クラネルが容疑者に一時は上がったが、ミハエルの戦闘中に逃げ出したモンスターのシルバーバックと戦闘をしていた所を多数の住人に目撃され、すぐに容疑は晴れた。

 

捜索から数日。とうとう犯人は見つかることがなく、捜索は打ち切られた。

 

——————————————————————————

 

ミハエルがゆっくりと目を覚ます。ミハエルが目覚めた場所は自室。ベッドの横にある窓から月の光が差し込み、ミハエルを照らしている。

ミハエルは布団をめくり、包帯の巻かれた体の調子を確かめる。

傷は治っているがまだ少し傷んでいる。かなりのダメージを受け、肉を抉られたりもしていたが流石はレベル7。常識では考えられない回復能力を持っている。

 

「ウォルフガング・シュライバー・・・」

 

ミハエルが人生で経験した三度目の大敗。自分と最も相性が悪く、正攻法でも搦手でも勝ち目がほとんどない相手。範囲魔法ならば捉える可能性はあるが、詠唱中に逃げられるだろう。

あれは獣だ。紛れもない純粋な。戦闘をすべて持ち前の勘だけでこなしてしまう、武人にとっては厄介極まりない相手だ。

 

「今の俺では・・・勝てないか・・・」

 

月光の下に、ミハエルの声が哀しく呟かれた。

 

——————————————————————————

 

胃が痛い。

 

それがここ数日、ロキが最も感じたことだ。

 

タシン怪物祭《モンスターフィリア》でのモンスターの脱走。そして同時刻に行われた正体不明の人物とミハエルの交戦、そしてミハエルの敗北。

一番厄介なのがモンスター討伐を協力していたレフィーヤだ。

 

戦闘中に神の力を借りずに、ステイタスの更新。レベルは変わらなかったものの、自動で追加された新たな発展スキルと、『4個目』の魔法と、追加されたスキルと魔法の内容。

有り得ない話でしかない。ステイタスの更新は神にしか出来ないはず。それが戦闘中に更新されたのだ。誰の力も借りずに。

レフィーヤ本人はなぜ更新されているのか分からず、戦闘中には背中が熱を発していたとしか言っていない。周囲に神はおらず、誰も更新する人物はないない。全くの謎てしてすぐに迷宮入りとなった。

 

そして『4個目』の魔法。

魔法のスロットは本来3個までだ。それ以上は絶対にありえない。同じロキ・ファミリアのレベル6冒険者であり、レフィーヤと同じエルフであるリヴェリアでも3個。

過去の冒険者達を見ても、魔導書を使ったとしても3個までしかない。今回の新たな魔法は、まるで後から追加したかのように他のステイタスを押しやって追加されていた。

これに関してはロキが『神の力』を使ったのではないかと疑われたが、使用痕跡はなく、神の嘘さえ見抜ける神に来てもらって確認した結果、ロキは無実。それどころか他の神も無実だった。

 

さらに拍車をかけるのが4個目の魔法、そして発展スキルだ。ロキがすぐさま確認したところ、発展スキルに『渇望| D』『永劫破壊|B』。そして追加された魔法は『創造 拷問城の食人影(Csejte Ungarn Nachtzehrer)』。

追加されたスキル、魔法共にミハエルと『同種』のスキルということが判明した。

 

ただでさえエルフの魔法を詠唱を憶えているのなら全て使用可能という、リヴェリアをも超えるレアスキルを持っているにも関わらず、オラリオ最強の冒険者であるミハエルと効果は違えど同じスキル。

 

そう、少しづつロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアの均衡が崩れてきている。

今ではロキ・ファミリアは世界有数のファミリアだ。

『鋼の英雄』ミハエル・ヴィットマンに『勇者(ブレイバー)』フィン・ディムナ、『九魔姫(ナインヘル)』リヴェリア・リヨス・アールヴ。上記の者達には劣るが、オラリオ屈指の冒険者である『豪傑』ガレス・ランドロック。

勿論フレイヤ・ファミリアにも強い冒険者はいるが、ロキ・ファミリアのように異様に突出した者はいない。

 

 

良くも悪くも有名なロキ・ファミリア。主神であるロキの胃はまだ休むことは無い。

 

——————————————————————————

 

拳が大気を切り裂く。何度も、何度も。一回放つ度に重く鋭く速く、舞い上がった砂埃は嵐のように吹き飛んでいく。

 

既に何百回打ち込んだか既に分からない。拳の主であるミハエルは拳を打ち込んだ姿勢で動きを止める。そこからゆっくりと、直立姿勢に戻る。

張っていた筋肉を緩め、息を吐き出す。

 

ここは闘技場。ロキ・ファミリアの敷地の一つで、主に団員達が特訓を行う場所である。今は訳あってミハエル以外の団員はいない。ミハエル自身も何故いないのか全く分からないが、気にもとめない。

 

入口に気配を感じたのでゆっくりと入口を見る。そこには少し疲れたような顔をしたロキがいた。

 

「なにか用か、ロキ?」

 

「頼みたいことがあるんやけど・・・まぁ今は休んで汗ふきや」

 

ロキが持っていたタオルを投げる。ミハエルは焦らず掴み取り、顔の汗を拭き取る。汗をふくと地面においてあったボトルを手に取り、その中身を一気に煽る。

 

「病み上がりっちゅうのにやり過ぎや。リヴェリアたんがいたら間違いなく怒られてるで?」

 

「止まるわけには・・・いかないんだ。止まる時は俺が滅びる時と、決めているんだ」

 

知ってた、と言ってロキは苦笑いする。例えミハエルの主神であるロキでもミハエルは止められない。それこそ神の力(アルカナム)を使っても、ミハエルは止まることはないだろう。

 

「本当は今のマキナの状態で頼みたくないんやけど・・・」

 

ロキは語り出す。今、ロキ・ファミリアが直面している状況を。どんなことに関わっているか、何が起こっているか。

 

「皆を、助けてくれへんか・・・?」

 

本当は頼みたくない。ミハエルの傷は癒えていない。ボロボロもいい所だ。肋骨は何本も折れ、傷もようやく完全に塞がる目処が見えてきたところ。体内の血液量もまだ完全ではない。

レベル7としての性能を、完全に発揮できない状態なのだ。

 

「是非もない」

 

ロキの心配をミハエルは一刀両断する。

 

「命令しろ。俺はロキ・ファミリアの団員で、ロキ、お前の手駒でもある。命じられれば、終焉を掴みとるその時まで、俺は従い続けよう」

 

ミハエルの言葉に、ロキは泣きそうになる。言いたいのに、言えない。止まってと、ただその言葉が言えない。おそらくロキが命令すればミハエルは止まるだろう。だが、疾走を止めたミハエルはどうなるのだろうか。

無二の親友を失い、迷い、葛藤し、今の道を選び、走り続けたミハエルは、おそらく壊れてしまうだろう。

自分だけ生きているという罪悪感。ロキはロートスについてのとある事情を知っているから、余計にミハエルが気負っているのを知っている。

 

「お願いやマキナ。みんなを助けて・・・生きて戻ってくるんや・・・!」

 

「了解した」

 

ミハエルは立ち上がり、闘技場を後にする。残されたロキは、ごめんな、と言い、自分の無力さを漂った。

 

——————————————————————————

 

ダンジョン奥深く。まだ冒険者たちが到達していない、もしくは見つかっていない場所で一組の男女がいた。

 

一人は暗いダンジョンの中でも妖しく輝く銀髪に髑髏の眼帯、ミハエルを地上で襲ったウォルフガング・シュライバー。

もう一人は顔の半分を火傷で傷付きながらも、美しいと言える容姿を持った赤いポニーテールの女性。

 

「それで、『鋼の英雄』はどうだった、シュライバー」

 

「うん、それなりに楽しかったよ。それで君の方は『アレ』を見つけたのかい、ザミエル?」

 

「いや、どうやら冒険者を雇って運ばせたらしい。全く、劣等共の無駄な足掻きに付き合わされるとは・・・!」

 

ザミエルと呼ばれた女性は持っていた葉巻を握りつぶす。開いたその手には火傷はなく、また傷一つなかった。

 

「それはそうとシュライバー、何故『鋼の英雄』を殺さなかった?報告によれば、貴様は奴に圧勝した筈だが?」

 

「うーーん。なんて言うのかなぁ」

 

シュライバーは困ったように首を傾げる。その動作はシュライバー自身の容姿と相まって可愛らしいが、彼の本性を知る者からすれば、可愛いなどという感想は出てこない。

 

「アレ以上殺しにいけば、逆にやられるって僕の勘が言ってたんだよねぇ。まぁ、あれだけやっておけば暫くは動けないはずだから問題はないと思うけど」

 

シュライバーは今でも思い出す。ミハエルを打ちのめした時、ミハエル自身に手をかけようと動き出そうとした。だが何故か足は進まず、ただ自分の勘が警鐘を鳴らしていた。

 

シュライバーは自他共に認める獣である。獣にとって勘とは絶対。それに反してしまえば何が起こるか分からない。最悪待っているのは死である。

 

「まぁいい。私は上の連中を焼き払ってくる。貴様はどうする?」

 

「僕は適当にさせてもらうよ。あ、君が死んだら魂は回収させてもらうから」

 

「戯け。あの程度の連中に、この私が遅れをとるなど有り得ん」

 

ザミエルはそう言うと姿を消す。おそらくは上に行ったのだろう。気配が少しづつ上へ登っていく。一人残されたシュライバーはため息を吐き出す。

 

「頭が硬いってのは面倒だね。警戒するのは『鋼の英雄』なのに。まっ、死ねばその時か」

 

シュライバーはザミエルとは逆に降りていく。最悪、自分がいるこの場所さえも襲われると、自分の勘が告げていたから。




相変わらずいいタイトルが思いつかない・・・。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。