オラリオの黒騎士   作:コズミック変質者

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みんな他のDies iraeキャラ出さないの、とかこのキャラ出してよ、とか言うかもしれないが、既にそこら辺は決まっている。

乞うご期待


怪物祭

怪物祭。

年に一度【ガネーシャ・ファミリア】が調教したモンスターを、市民の前で競わせるオラリオの中でも大きな祭り。この日は【ロキ・ファミリア】の冒険者も祭りを楽しんでおり、ダンジョンに潜る者はほとんどいない。

 

 

そう、ほとんど。

 

 

「なんでマキナは帰ってこないの〜!」

 

黄昏の館にティオナの叫び声が響き渡る。ティオナはミハエルを怪物祭に誘おうとしていたが、肝心のミハエルは数日前からダンジョンに潜っており、帰ってこない。

 

(薄々こうなるとは思っていたけどね・・・)

 

フィンは自らが言った言葉を後悔する。ダンジョンに行くなんて選択肢、与えなければ良かった。ミハエルがダンジョンから帰ってこないだけで、幹部の4人の雰囲気が悪くなっていくのだ。

 

アイズとティオナはミハエルが帰ってこないことに怒り、ティオナは腹いせとしてべートを弄る。それをリヴェリアが止めるが、べートが毎度言う余計な言葉のせいで、リヴェリアは怒り狂う。

見事な不協和音である。

 

そんな中でもフィン、ティオネ、ガレスは変わらない。フィンはファミリアの運営を、ティオネはフィンに抱きつき、ガレスは酒を飲む。

 

「アイズたーん!ちょっとウチについてきてや!」

 

砲弾のような勢いで扉を開きロキが女性陣に飛び込むが、全員によけられる。ロキは壁に顔をぶつけ、それでも尚諦めずに飛び込もうとする。

 

「それで、どうしたんだいロキ?」

 

事態の収集がつかなくなってくるので、フィンが話を振るう。ロキも本来の目的を思い出したようで、少しは冷静になる。

 

「そうやそうや。フレイヤとの顔合わせや。あっちが【猛者】連れてくるから、こっちはマキナ連れてこうか思ったんやけど、留守やからな」

 

【猛者】オッタル。【フレイヤ・ファミリア】団長にして、オラリオに二人しかいないレベル7。マキナがいなければ、自他ともに認めるオラリオ最強とされる男。普段は女神フレイヤの世話係をしている。

 

「分かりました。その代わり人前で抱きつかないでください」

 

「あ、ありがとなぁッ」

 

了承とともに過酷な条件(ロキにとって)を付けられ、ロキは血涙を流しながらも言葉を返す。アイズに拒否されたことが、ロキの胸に大穴を開ける。

ロキは必死に自らの渇望を抑えながら、フレイヤとの会談を迎えることとなった。

 

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怪物祭当日。オラリオの街はいつも以上に賑わい、出店は通路一杯に広がっている。

そんな街中のとあるカフェの一角に、二柱の神はいた。

 

一人は紺色のローブを纏った女性、フレイヤ。そしてもう一人はロキ。ロキの背後には邪魔にならないように護衛のような立ち位置でアイズ。

 

この場の雰囲気は他の客には耐えられないものになっている。オラリオの二大ファミリアに加え、【剣姫】の二つ名を持つアイズ。

ただでさえ異様は雰囲気は、神物の話により更に重く、苦しくなっていく。

 

ロキとフレイヤの話は続いていく。その中でロキが、フレイヤの核心を突く。

 

「男か」

 

その言葉とともにフレイヤの目が細まる。フレイヤは気に入った相手を『魅了』し、自らのファミリアに入れる。故にフレイヤファミリアは一人一人の素材が上物。

 

「どんなヤツや、今度自分の目にとまった子供ってのは?」

 

ロキはとにかく情報を聞き出そうとする。バベルに本拠を構える目の前の神友は油断ならない。下手をすれば自分のファミリアの子供を魅了される。

 

「強くは、なぃ。貴方や私の【ファミリア】、そしてミハエルと比べても、今はまだとても頼りない。少しのことで傷付いてしまい、簡単に泣いてしまう・・・そんな子」

 

ミハエルという言葉にロキとアイズは言葉を詰まらせる。フレイヤがミハエルを狙っているという話はオラリオ全体で有名だ。だがミハエルが起こしたとある一件から、神々の勧誘の手は全て止まっていたはず。

 

「でも綺麗だった。透き通っていた。まるであの子に似ていた」

 

「あの子?」

 

フレイヤは一息付き、妖艶な笑を浮かべてから、その人物の名を口にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ロートス・ライヒハート』」

 

ロキの時が止まる。ロートスは【ロキ・ファミリア】の最新の犠牲者。

アイズは必死に記憶を探り思い出す。思い出したのはミハエルのパートナーだった少年。

 

「見つけたのは本当に偶然。分かったのはついこの間。ミハエルと一緒にいるところを見たのよ」

 

「マキナは渡さんで」

 

「ふふ、分かっているわ」

 

含みのある笑いをしたフレイヤはそのまま席を立ち、店から出ていく。途端に緊迫した雰囲気がなくなり、あるのはロキの軽薄な感覚だった。

 

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湿った暗い牢獄の中。そこにいるのは獣達。

捕まり、虐待されたモンスター。

内側から溢れ出る報復心に身を任せ、モンスター達は牢を蹴破る。

 

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オラリオは未曾有の混乱に巻き込まれていた。【ガネーシャ・ファミリア】が捕らえていたモンスター達が、何者かの手によって解き放たれた。

モンスター達は一斉に散開し、各々が本能のままに亜人達を襲っていく。

 

ちょうど良くその場にいた【ロキ・ファミリア】のティオネ、ティオナ、レフィーヤ、そしてアイズは逃げ出したモンスターを追いかけていた。

 

実際には鬼神の勢いでアイズがモンスターを屠っていくせいで、ティオナ達の出番はほとんど無くなっている。

 

「餌を用意されてそのままお預けを食らった気分ね」

 

「あ、分かるかも」

 

「武器もないのによくそんなこと言えますね」

 

呑気なことを言うアマゾネス姉妹に、もう自分がおかしいのでは?と思ってしまうレフィーヤ。基本的に『肉体言語』を得意としているアマゾネスの中で、特に強い2人だから言えることだろう。

 

「なんか・・・地面揺れてません?」

 

「あ、ホントだ」

 

レフィーヤが下を見ながら不安そうにいう。ティオナも同じく下を見てみる。この時点でレフィーヤは嫌な予感が止まらない。危機管理能力だけが異様に長けているせいだろう。

 

次の瞬間、地面が爆発したかのように吹き飛ぶ。石畳を破壊し、その余波で様々なものを吹き飛ばす。地面から這い上がるように出てきたのは、蛇に酷似した巨大なモンスター。

 

冒険者3人の背中に嫌な汗が流れる。彼女達はそれなりに死線をくぐっているため、その汗が何を意味しているのか、直感で理解した。

 

「ティオネッ、アイツやばい!」

 

「行くわよ!」

 

叫ぶと同時にモンスターに向けて走り出す。レフィーヤも魔法を撃ちやすい位置に移動する。

モンスターがその巨大な体をくねらせて、鞭のように襲いかかる。ティオナとティオネはこれを回避。だが彼女達の後ろにあった出店は余波で吹き飛んだ石により、崩壊した。

 

ティオナとティオネは上へ跳び、その拳を打ち込む。

が、

 

「コイツ・・・硬い!」

 

皮膚を打撃した直後、感じたのは鈍痛。レベル5の身体能力を全開で使った打撃がうち通らない。

素手とはいえ、並のモンスターを一撃で沈めるその拳、それに加え元より身体能力が高いアマゾネス。

それらが目の前にいるモンスターには通用しなかった。

 

攻撃されたことによりモンスターが暴れ出す。その体をティオナとティオネを押し潰すために闇雲に振り回す。想定外の速さに、姉妹は避けることしか出来なくなり、隙を見ての攻撃が防がれる。

 

「【解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり】」

 

レフィーヤは片腕を突き出しながら姉妹を助けるために詠唱をする。選んだのは速度優先の魔法。威力は低いが、今の状況では高速戦闘に利がある。

 

山吹色の魔法円を展開しながら、レフィーヤは速やかに魔法を構築した。

 

「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」

 

詠唱を終え、解き放つその時、モンスターが突如姿勢を覆し、レフィーヤに振り向いた。

 

「———え」

 

あまりの反応速度に、レフィーヤの心臓は悪寒とともに震える。今までこちらに反応しなかったモンスターが、その気味の悪い顔で語る。

『魔力に反応した』。

 

直後、レフィーヤの腹部に衝撃が走った。

地面から伸びる黄緑の突起物。防御も装備もない腹部に、レフィーヤの腕ほどもある触手が、叩き込まれた。

グシャり、と不気味な音が体内から聞こえるとともに、吐血する。

レフィーヤが耐えられなくなり、背中から地面に倒れ込む。

 

『オオオオオオオオオオオッ!!』

 

モンスターはそんなレフィーヤを視界に入れずに、自分の体の変化に歓喜したように声を上げる。蛇のようだったモンスターは幾筋もの線が入り、その体を分裂させる。

 

開かれたのは花弁のような体。毒々しいその色は極彩色。

何本もの触手が地面から隆起してくるその光景は、彼女達に王手を入れていた。

 

——————————————————————————

 

そんな事態を余所目に、ミハエルは地上へと帰還した。魔石の換金に行きたいが、ギルドが慌ただしい。ミハエルは日付を確認し、今日が怪物祭だったことを確認する。

 

(だが・・・)

 

ここまでギルドに人がいるのはおかしい。怪物祭がやっているのに、何故ギルド職員はここまで慌てている?一体自分がいない間に、何が起きた?

ミハエルは今起きている事態を確かめるために、適当な職員に話しかける。

 

「おい・・・」

 

「何でしょう・・・は、【鋼の英雄】!?」

 

「何が起きている?」

 

ミハエルに話しかけられた職員は顔を強ばらせながらも、ミハエルの質問に答えていく。職員が叫んだせいか、ギルド内の騒がしさはなくなり、今ではミハエルに視線が向いている。

 

「とのことです・・・」

 

「そうか」

 

ミハエルは短く返答してギルドから出ていく。入口に詰め寄っていた人たちはミハエルが通ろうとするとともに、モーゼのように道を開けていく。

誰一人、言葉を発することが出来ない。

ミハエルの放つ異様なオーラが、言葉を発することを許さない。

人々は、ミハエルの背中姿を見守ることしか出来なかった。


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